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2011年1月 4日 (火)

日経センター・日本経済新聞社共同政策提言を考える

正月三が日が明けて、今日から出勤というサラリーマンも多いんではないでしょうか。私も今日は役所に出て御用始でした。一昨日に取り上げた初売りなどは別として、日本国内では世間の経済活動も今日から始まったようで、いきなり、今夜のエントリーのタイトルにした日経センター・日本経済新聞社共同政策提言「2年でデフレ克服を 一層の金融緩和が必要、成長戦略を3分野に集中」と題するリポートなんぞも発表されたりしています。web サイトにはより詳細な pdf ファイルのリポートもアップされています。

日経センター見通し

上のグラフは日経センター「第37回中期経済予測」のサイトから引用していますが、これに見る通り、特段の政策対応なければ2013年度くらいまでマイナスのGDPギャップとそれに起因するデフレが継続することから、以下の5点の提言を示しています。

  1. デフレ脱却を最優先、2012年度までに克服の道筋を
  2. まず金融政策、成長戦略は優先順位付け資源を集中
  3. 環境制約を商機に、環境税は抜本的税制改革の柱
  4. アジアの成長取り込む「開国」、国内規制改革も促す
  5. 高齢化社会の安定、若者・女性の潜在力活用を

第1に、政策的には、財政再建を進めつつ、量的緩和や信用緩和などの非伝統的な金融政策手段を活用して金融緩和を進め、政府と中央銀行で物価上昇率目標を共有すべきであるとしています。前の日銀副総裁が日経センターの理事長として研究会の主要メンバーなんですから、それなりの迫力があります。第2に、環境制約が強まる中で、来年度に導入予定の環境税は既存税制の衣替えであり質・量ともに不十分として、省エネルギー投資の促進や産業構造の大幅な転換につながるような新たな環境税を提案するとともに、2050年までに世界で温室効果ガスを半減する目標は、我が国の比較優位を生かして成長率を高めるチャンスと提唱しています。第3に、アジアを中心とする新興国の経済成長を我が国に取り込むために「より深い経済統合」を目指し、環太平洋経済連携協定 (TPP) への参加とともに、国内改革の原動力として競争力を高めるべきと開国を掲げています。第4に、経済を支える人材については、若者や女性の技能やキャリアを高めるとともに、「時間」や「場所」の自由度を高めた多様で柔軟な働き方を重視する姿勢を示しています。
単純なリポート内容の紹介に止まらず、私自身の視点から3点ほど指摘しておくと、まず、デフレ脱却を最重要視し、政策的には金融政策をその中心に据えたことは注目すべきであると受け止めています。繰返しになりますが、提言取りまとめの中心メンバーのひとりである日経センター岩田理事長が前の日銀副総裁であったことも提言に重みを付け加えているような気がしないでもありません。次に、こういったリポートでは人材について、従来から判で押したように「女性と高齢者の活用」が取り上げられて来ましたが、高齢者ではなく、若者の技能やキャリアの向上に焦点を当てているのは特筆すべきです。私のこのブログでも主張している通り、我が国の高齢者の労働力化率は諸外国と比較してもかなり高い一方で、若年者の失業は高齢者に比べて日本ではより深刻と考えるべきです。高齢化社会で高齢者の雇用を確保する従来論調ではなく、日本では若年者の雇用の重要性を再認識するいい機会かもしれません。以上の2点は私も評価するんですが、最後に、為替について何らの言及がない点はやや奇異に感じています。中長期的な観点からの提言とはいうものの、この最後の点は評価できないというか、少し戸惑っています。

正月ボケから明け切らない経済評論の日記はヨソさまのリポートの紹介で済ませてしまったんですが、あす以降は徐々にペースを上げて行きたいと考えています。

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