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2011年3月28日 (月)

代り映えせずマイナスの続く消費者物価と企業向けサービス物価

私が下の子の卒業式に出席していた先週金曜日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス価格指数(CSPI)が、それぞれ発表されました。いずれもCPIの東京都区部速報を別にすれば、全国ベースでは2月の統計です。下の子の卒業式から週末にかけては、かなりのんびりと過ごしたため、経済指標なんぞは取り上げる気もせず、大幅に遅れまてしまいましたが、一応、このブログで記録に残す意味もありますので、簡単に振り返っておきたいと思います。まず、両統計を前年同月比で見て、生鮮食品を除く全国のコアCPIの前年同月比上昇率は▲0.3%、東京都区部の3月速報のコアCPIも同じく▲0.3%、企業向けサービス価格上昇率も▲1.0%と、いずれもマイナスを記録しました。ハッキリ言って代り映えしません。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、2月は0.3%低下 「下落幅は縮小傾向」
総務省が25日発表した2月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで98.9となり前年同月に比べて0.3%低下した。24カ月連続のマイナスで、下落幅は前月に比べて0.1ポイント広がった。物価が継続的に落ち込むデフレの基調は変わっていないが、昨年10月以降、下げ幅が縮む傾向にある品目が増えていることから、総務省は「下落幅は縮小傾向にある」とした。
生鮮食品を含めた物価の総合指数は前年同月比で横ばいの99.3。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.6%低下の96.8だった。ともに増減率は1月から横ばいだった。
品目別では資源高を受け、エネルギー関連が軒並み上昇。ガソリンが前年同月比7.2%、灯油が17.1%それぞれ上がった。一方で電気代は7カ月ぶりに低下した。
3月以降は東日本大震災の影響で、品薄になった食料や燃料の価格に上昇圧力が働くとの指摘もある。総務省は今後の物価動向の見通しついては「状況が刻々と変化しており、コメントできない」としている。
物価の先行指標である東京都区部の3月のCPI(中旬速報値)は生鮮食品を除いたベースで前年同月比0.3%低下した。調査日は9-11日で東日本大震災の影響はほとんど反映されていない。2010年度全体では、0.9%の低下となり2年連続のマイナスだった。
2月の企業向けサービス価格、29カ月連続マイナス
日銀が25日発表した2月の企業サービス価格指数(CSPI、2005年平均=100)は前年同月比1.0%下落の96.3と29カ月連続で下落した。マイナス幅は前月より0.1ポイント縮小。日銀は「昨年から1%台前半のマイナスで一進一退という傾向に変化はない」(調査統計局)と分析している。
企業向けサービス価格指数は不動産や輸送、情報通信など企業間で取引するサービスの価格動向を示す。
項目別にみると、低下に大きく影響したのは「広告」。自動車やサービス娯楽などのテレビコマーシャルが前の月に大きく増加した反動が出た。
一方、燃料価格の上昇の影響で外航タンカーがプラスに転じるなど、低下幅縮小につながる動きもあった。
11日に発生した東日本大震災の影響については、広告や運輸、労働者派遣サービスなどに影響を与えるとしながらも「どのような影響を与えるのかはわからないため、今後とも注意深く調査していきたい」(同)という。

次に、いつもの通り、生鮮食品を除くコア消費者物価の前年同月比上昇率上昇率は下のグラフの通りです。折れ線グラフは青が全国コアCPI、赤が食料とエネルギーを除く全国コアコアCPI、グレーが東京都区部のコアCPIです。棒グラフは全国コアCPI上昇率に対する寄与度の内訳をエネルギー、食料とその他に分けて示しています。

消費者物価の推移

繰返しになりますが、ハッキリ言って代り映えしません。しかし、消費者物価に関する政策部局ではない総務省が、基調判断めいて「下落幅は縮小傾向」と明言したように報じられています。単純に指数の前年同月比上昇率の最近の動向を言い表したものであると理解していますが、デフレとの関係でこのような表現をすることの適切さについて私はやや疑問に感じます。と言うのは、下落幅が縮小している要因は2つあって、第1にエネルギー価格です。中東における地政学的な要因も含めて、商品市況の高騰による物価上昇、と言うか、下落幅の縮小であるといえます。他方、デフレの原因についてはいくつか論じられていますが、少なくとも、私は寡聞にしてリーマン・ショック後の商品価格の下落が我が国のデフレを引き起こしたという説は聞いたことがありません。逆に言えば、商品価格の上昇では我が国のデフレは解消しないと考えるべきです。下落幅が縮小している第2の要因は計測誤差です。「計測誤差」と言うのは正しい用語ではないかもしれませんが、ラスパイレス指数の本質に起因する過大推計であると表現する方が正しいかもしれません。少なくとも、この第2の点について統計局は熟知しているハズです。そして、何度も書きましたが、多くのエコノミストのコンセンサスと同様に、、4月には高校実質無償化の▲0.5%程度の物価押下げ要因が剥落しますので、コアCPIはプラスに転じる可能性が高いものの、夏に基準改定があれば、大きく下方修正されると私は予想しています。

企業向けサービス価格の推移

上のグラフは企業向け物価のモノとサービスの両方をプロットしています。青の折れ線がCGPI、赤が昨日発表のCSPIです。参考としてプロットしたCGPIの国内物価は商品市況の影響を受けて、プラスに転じて、そのプラス幅を拡大しているように見えますが、いろんな物価指標の中で需給ギャップに最も敏感なCSPIはまだまだマイナスを続けています。CPIと同様に代り映えしません。

最後に、震災の物価に及ぼす影響ですが、中長期的には物価上昇要因になると私は考えています。しかし、短期にはいかにもケインズ経済学的な物価でなく数量での調整が主流となる可能性があります。計画停電なんかは典型的です。しかし、中長期的には単純に需給ギャップが物価をそれなりに決めると仮定すれば、震災による潜在産出の下方シフトと現実の需要の落ち込みを考えれば、特に、後者に復興需要を加味すれば、前者よりも後者の方が小さく、あるいは、前者はマイナスである一方で後者はプラスになる可能性も考えられ、需給ギャップは縮小し、震災の経済的帰結は中長期的に物価上昇に現れると考えるべきです。しかし、この震災に伴う物価上昇はデフレ脱却とは関係ないと受け止めるべきです。

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