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2011年3月 8日 (火)

一時的に貿易黒字が減少した経常収支と上昇基調を戻しつつある景気ウォッチャー調査

本日、財務省から1月の国際収支が、また、内閣府から2月の景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。統計のヘッドラインなどを取りまとめた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

2年ぶり貿易赤字 1月、原油高で過去2番目の大きさ
財務省が8日発表した1月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は4619億円の黒字だった。黒字幅は前年同月に比べ47.6%減少しており、中東情勢の緊迫化に伴う原油高の影響で輸入額が膨らみ、2年ぶりに貿易赤字に転落したことが響いた。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3945億円の赤字で、赤字額は2009年1月(8448億円)に次ぐ過去2番目の大きさだった。
内訳をみると輸出額は2.9%増の4兆7562億円。米国向けは6.0%増と大きく伸びた一方、中国向けは春節(旧正月)の休業の影響で0.9%増と伸びが鈍かった。
輸入額は5兆1506億円で15.6%増えた。原油価格(円換算)が中東情勢の緊迫化や新興国の需要増などで6.8%上昇し、石炭など鉱物性燃料だけで2000億円以上輸入額を前年同月比で押し上げた。
貿易収支が悪化する一方で、投資による稼ぎを示す所得収支は海外株式の配当金が増え、1兆137億円と10.7%拡大した。
財務省は国際収支の今後の見通しについて「原油価格が高止まりすれば(経常黒字の減少として)響いてくるのは間違いない」としている。
2月の街角景気、2カ月ぶり改善 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した2月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.1ポイント上昇の48.4と、2カ月ぶりに改善した。天候の回復で商店などへの来客数が増加したことに加え、エコカー補助金や家電エコポイントなど政策効果による反動減が収まってきたことを反映。海外からの受注増加も寄与し、指数を構成する家計、企業、雇用すべての分野が改善した。
2-3カ月先の先行き判断指数は横ばいの47.2だった。3月末の家電エコポイント制度終了前の駆け込み需要への期待や、求人増の動きがみられることから家計、雇用の指数は改善。一方、中東情勢や原材料価格高騰への懸念から、企業関連の指数は悪化した。
内閣府は基調判断を3カ月連続で「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」とした。現状判断は大幅に改善したものの天候の影響が大きく、原材料価格の高騰による影響を見極めたいとしている。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は2月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。引用した記事が季節調整していない原系列の統計に基づいているのに対して、下のグラフは季節調整済みの系列ですから、少し印象が異なるかもしれません。青い折れ線が経常収支の合計で、この内訳を棒グラフで示してあります。色分けは凡例の通りですが、上に引用した記事にあるように、1月統計は季節調整していない原系列で貿易収支が赤字を記録している一方で、下のグラフに見られるように、季節調整済みの系列でも貿易黒字は大きく減少しています。

経常収支の推移

貿易黒字が大きく減少した背景は輸出入の両方にあります。輸出の方は中国の春節が2月上旬に控えていたために1月中の中国向け輸出が伸び悩んだためであり、輸入の方は商品市況の高騰により原油をはじめとする一次産品の輸入額が増加したためです。前者は一時的な影響で済む可能性が高いと考えられますが、後者はより persistent であろうと考えられます。しかし、貿易統計や経常収支を論評するたびに私が繰り返している主張は、国内生産や輸出のために必要な輸入が存在する限り、何らかの輸入増加はあり得るわけですから、景気動向を見極めるためには輸出により注目すべきである、という意見です。2月23日付けのエントリーで貿易統計を取り上げた際と同じで、私の考えるメインシナリオは、輸出は踊り場を脱却して伸びが加速しつつある段階にあり、その動きが昨年と同じ春節効果などによって一時的に停滞しているだけで、年央くらいまでに増勢を取り戻す、という見方です。貿易収支を離れて他の収支項目に目を転ずると、投資収益収支は引き続き我が国の企業が海外で稼いでいる姿をよく表していると受け止めています。

景気ウォッチャー調査の推移

次に、景気ウォッチャー調査の結果は上のグラフの通りです。赤の折れ線グラフが現状判断DI、水色が先行き判断DIです。影を付けた部分は景気後退期です。先行き判断DIは前月と同じ水準だった一方で、現状判断DIは前月からかなり大幅に上昇し、全体として上昇基調に戻りつつあるように見えなくもありませんが、「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」と、基調判断は据え置かれました。何と言ってもマインド調査ですから、細かな循環を繰り返しながら、方向として上昇をしばらく続けるんではないかと私は見ています。上昇が続くとそのうちに基調判断も修正されるんだろうと思います。

このブログの昨夜のエントリーで景気動向指数を取り上げて、現政権の行方が景気の先行きリスクになる可能性について論じましたが、日経新聞のサイトで、景気ウォッチャー調査を記者発表した際、内閣府の和田政務官が「国内政治の情勢も潜在的な懸念材料」と述べたと報じられています。もちろん、予算関連法案の早期成立を目指す一連の牽制球なんだろうと解釈されているようですが、予算や予算関連法案を駆引き材料にした与野党のチキンレースの行方次第では日本経済に暗雲が差しかねないことは、政府内でも広く認識されているようです。

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