湊かなえ『花の鎖』(文藝春秋) を読む
湊かなえさんの『花と鎖』(文藝春秋) を読みました。上の表紙の画像にはありませんが、作者の「セカンドステージ始動」と帯に銘打たれています。まず、出版社のサイトから本のあらすじを引用すると以下の通りです。
内容紹介
主人公は3人の女性。両親を亡くし、愛する祖母もガンで入院中、さらに講師として働いていた英会話スクールが破綻し金銭的に困っている梨花、建設会社で働いていたが、伯父夫婦のすすめで営業職の和弥と結婚した美雪、公民館で水彩画教室の講師をしつつ、和菓子屋でバイトをしている紗月(さつき)。この3人の視点で構成された傑作ミステリー。湊かなえの「新たな代表作」として、胸をはって刊行いたします。
明日から学校も本格的に始まって、我が家の中学生2人も登校します。春休みがとうとう終わったということなんですが、諸般の事情によりこの春休みはほとんど外出も出来ませんでした。おにいちゃんの中学校なんぞは明確に「なるべく家にいて外出しないように」といった旨の注意を呼びかけたりしていました。仕方がないので、親子で読めるような本を何冊か借りたり買ったりして家で過ごしてました。我が家のおにいちゃんは標準的なミステリ好きで、中学や高校に通う男子らしい読書傾向です。私とほぼミートします。ですあkら、ラドラムやアーチャーを借りたりしています。下の子はホラー好きです。春休みの少し前ですが、3月12日付けのエントリーで取り上げた貴志祐介さんの『悪の経典』も喜んで読んでいたりしました。中学校の入学式を前に私からスティーヴン・キングを何冊か貸しておきました。こういった読書傾向ですので、春休みには以下の4冊を買って親子で回し読みしています。
- 高野和明『ジェノサイド』
- 湊かなえ『花の鎖』
- 貴志祐介『ダークゾーン』
- 今野敏『警視庁FC』
最初の『ジェノサイド』は先週4月7日に読書感想文の日記をこのブログにアップし、私の後、おにいちゃんはすでに読み終えて下の子が読んでいるところです。今日のエントリーで取り上げる『花の鎖』は先におにいちゃんが読んで、この週末に私が読み終えました。『ダークゾーン』は先に下の子が読み終えて、今は私が読み進んでいたりします。『警視庁FC』はおにいちゃんが読み終わっていて、次は私が読もうと考えています。順次、このブログでも読書感想文をアップするつもりです。ということで、今日のエントリーでは港かなえさんの『花の鎖』を取り上げますが、いきなり、以下ではネタバレを含む可能性があります。上の引用にもある通り、「ミステリ」ですので、未読の方が読み進む場合は自己責任でご注意ください。
何と言っても、新機軸が2点読み取れます。第1に、この作者の場合、今までは人間行動の動機について「恨みつらみ」が大きなウェイトを占めていたように私は感じていますが、この作品では必ずしもそうではありません。引き続き、「恨みつらみ」の占めるウェイトは無視できないんですが、未来に向かった希望のような明るさも読み取れます。第2に、モノローグを主体にした文章であることは変わりありませんが、語っている3人の女性が同時代ではありません。すなわち、雪月花の順で3世代になっています。美雪の子供が紗月で、紗月の子供が梨花です。この点は思いっ切りネタバレなんですが、読んで行くうちに理解が進むと思います。ということで、梨花の両親、というか紗月と前田さんがどのような死を遂げるのかがイマイチ不明ですが、入院している梨花の祖母とは美雪のことです。ですから、一応、「セカンドステージ」とか、「新たな代表作」といっても極端な誇大広告には当たらないような気もします。
私や我が家のおにいちゃんのように、この作者のファンであればオススメです。そうでなければ迷うところですが、十分、4ツ星クラスの内容であり、買って損はありません。特に、「ミステリ」の対象となる謎はなかなか興味深いものがあります。
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