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2011年4月18日 (月)

日本学術会議経済学委員会の緊急提言から再び復興財源について考える

4月14日付けのエントリー「今夏のボーナス予想から無理やりに来年の所得環境を占う」において、復興財源については、「高齢者層にも復興に対する一定の負担を求めるのが適当」と私の信念を述べて、エコノミストの間では、「法人税や所得税などの直接税を増税して復興に充てて、消費税率引上げを社会保障に回す」という私のイメージを書いてしまいましたが、私が間違っていたようです。すなわち、日本学術会議経済学委員会の「『東日本大震災』に対する緊急提言」が取りまとめられたようで、その中には、高齢層や富裕層からの支援財源への貢献が大きくクローズアップされています。ただし、まだ学術会議のホームページには掲載されておらず、学術会議経済学委員長である岩井教授のホームページに「本提言は、近日中に日本学術会議ホームページに掲載予定である。」との注釈付きで4月15日付けの日付で示されています。今日になって初めて知ったんですが、私の意見は学術会議経済学委員会のメンバーにかなり近かったと受け止めています。
この「緊急提言」を簡単に紹介すると、経済政策について緊急時、短期、中期、長期に分けて分析しています。まず、緊急時には流動性確保策を筆頭に挙げるとともに、円高対策としての為替介入を評価しています。短期には需要ショックがデフレ圧力となる一方で、供給サイドのボトルネックはスタグフレーション圧力となり、労働市場にデフレ圧力を、財市場にインフレ圧力をもたらすと見込んでいます。中期の政策対応として財源論が現れ、一時的な復興債の発行を念頭に置きつつ、借換えは認めず、復興債償還の財源として、固定資産税の増税、相続税の増税、消費税率の引上げ、所得税の増税、株式譲渡所得等の分離課税優遇廃止、法人税減税の中止あるいは延期、をこの順で候補として上げています。きわめて真っ当な議論だと私は受け止めています。繰返しになりますが、エコノミスト間の議論を把握できていなかったことを反省しています。そして、以下は私の従来からの主張ですが、広範に優遇されている高齢者層からの復興貢献を真剣に考えるべきです。「シルバー・デモクラシー」に抗して復興財源を確保できるかどうかは、国債の増発により世界経済に不安定要因をもたらすことを避けるためにも必要です。最後に、「緊急提言」に戻って、長期的な政策を考える際、「災害以前の状態に戻ることは困難」であることを認識しつつ、先端部品の供給先の西シフト・海外シフトへの動きが現実化する前に、政府が早急に先端的製造業への供給ネットワークの中の集積地の一つとして重点的に復興する意向を表明する必要があると示唆しています。さすがに、私はここまで詰めた議論は考えが及びませんでしたが、少なくとも、短期と中期の政策策定の基本となる考えは学術会議経済学委員会のメンバーとかなりの部分で共通していたように感じています。

実は、日本学術会議のサイトのトップページに、先週までの段階で6次に及ぶ提言が掲載されています。第1次と第3次が総合的な内容を含んでいる一方で、第2次は原発、第4次は環境、第5次が原発事故へのロボット活用、第6次が男女共同参画、とまあ、意地の悪い見方をすれば、各専門分野の震災貢献を個別に取り上げているような気がしないでもありません。役所だけでなく、学界も震災復興支援に走っているのかもしれません。経済学もこの行列に加わるのは当然なのでしょう。

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