« 造幣局の工場見学に行く | トップページ | OECD と ADB の経済見通し、ついでに、日本の景気動向指数をチェックする »

2011年4月 5日 (火)

再集計された日銀短観をチェックし、震災が経済に及ぼすインパクトを考える

昨日、日銀から震災後の回答分を含めた短観の再集計が「東北地方太平洋沖地震の発生前後における業況判断」として発表されています。どこまで実態を表しているかは不明ですが、企業が先行き不透明感を強めている雰囲気は伝わります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

震災後の景況感、先行き悪化 日銀短観 異例の再集計
大企業製造業はマイナス2

日銀は4日、1日公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)について、震災前と震災後の回答を分けて再集計した結果を公表した。震災後の大企業製造業の業況判断指数(DI)は現状がプラス6、3カ月後の先行きがマイナス2で、企業が将来への不安を強めている。震災後に日銀に届いた回答でも、企業が震災前に作成していたものが含まれるとみられ、日銀は「実際の景況感はさらに悪化している可能性がある」とみている。
1日公表分では現状がプラス6、先行きがプラス2だった。3月短観の回答は東日本大震災が発生した3月11日までの回収分が72%、12日以降が23.6%。震災後の状況を十分に反映していなかったため、日銀は異例の措置として再集計を実施した。
震災前の大企業製造業のDIは現状がプラス7、先行きがプラス3。震災後と比べると現状と先行きの差が小さく、不安心理があまり広がっていなかったことが分かる。
震災後のDIは大企業非製造業ではプラス7、中小企業製造業ではマイナス6で、それぞれ1日公表分を上回った。震災後の回答数が少ないため、「震災前と震災後のDIの水準を比較するのは適切でない場合がある」(日銀)という。

次に、大企業製造業と非製造業の業況判断DIについて、震災前回答と震災後回答に分けた表を読売新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

震災前後の業況判断DI

大企業非製造業では最近の業況判断DIはグンと震災後の方が上がっていたりしますが、先行き判断は大きく悪化しているのも事実です。しかし、引用した記事にもある通り、そもそも、震災後に届いた回答が震災前に記入されていた可能性があり、さらに、震災により回答すら出来なかった企業がある可能性も排除できず、何をどこまで読み取るべきなのかは議論の分かれるところです。
企業マインドに関する短観から少し離れて、3月11日の東北大震災の経済に及ぼす影響、さらに、そのルートについて考えたいと思います。第1に供給サイドのボトルネック、第2に需要サイドのマインド悪化、第3に円高、第4に計画停電、がそれぞれ上げられます。第4の計画停電の影響は第1のボトルネックに含めてもいいかもしれませんが、今回の震災のひとつの特徴と考えられますのでシングルアウトしておきます。また、第5に福島第一原発事故があるんですが、何とも私には分かりかねます。第1の供給サイドでは、ハードな資本ストックの滅失や損壊だけでなく、ソフトなサプライ・チェーンの断絶なども含めて、何らかのボトルネックが生じる可能性があります。短期的には、潜在産出水準は大きく下方にシフトしたと考えるべきです。第2に需要サイドでは、将来不安に加えて、今回の震災では放射能汚染に関する風評被害もあり、特定の品目に集中して需要が大きく減少する可能性があります。もっとも、逆に、需要が増加した品目もありますし、供給サイドの潜在産出水準の低下よりは相対的に需要サイドへの影響は小さい可能性があり、需給ギャップは縮小するものと私は見込んでいます。加えて、今年後半からは復興需要が本格化する可能性もあります。第3の円高は、すでに3月15日付けの「どうして地震が起こると円高が進むのか?」と題するエントリーで取り上げましたが、その後のG7協調介入で円高に一定の歯止めがかかっているのは喜ばしい限りです。第4の計画停電は、その名に反してかなり「無計画」に実施されており、シングルアウトするにふさわしく、供給サイドからの経済へのダウンサイド・リスクとなっています。4月に入って気候がよくなり計画停電が実行されない日が続いていますが、夏場の電力需要期に向けて生産のみならず、国民生活への影響が懸念されています。第5の福島原発のインパクトについては、繰返しになりますが、私には分かりかねます。
これらを基に、今年いっぱいくらいの景気のシナリオを考えると、年前半はマイナス成長が続く可能性があり、その後、復興需要とともに年後半は成長率が上振れる可能性が大いにあります。2010年10-12月期もマイナス成長だったので、1-3月期と4-6月期を合わせて四半期連続のマイナス成長の可能性がありますが、リセッションと考えるエコノミストは少ないでしょう。逆に、7-9月期から来年年初の1-3月期にかけては復興需要から高い成長率を記録する可能性が十分あります。微妙なタイミングかもしれませんが、何らかの偶然が重なるにせよ、瞬間風速で前期比年率10%近くに達しても私は驚きません。このような四半期パターンをつけるとすれば、今年平均の成長率は震災なき場合に比較してやや下振れる可能性は大きいものの、決して、カギカッコ付きの「壊滅的な」経済の悪化にはつながらないと私は見込んでいます。年平均でプラス成長を確保し、+1%程度になるものと受け止めています。ただし、金融財政環境が不変という条件、すなわち、円高がこれ以上に進まず、財政が破綻しないという極めてセンシティブな条件の下での見通しです。

World trade is pushing economic recovery

最後に、今日の日本時刻夕刻、経済協力開発機構から OECD Interim Economic Assessment が発表されました。上のグラフは世界経済の回復を後押しする貿易の拡大を示しています。タイトルは "World trade is pushing economic recovery." となっており、OECDのサイトから引用しています。なお、夕刻に発表されたばかりでザッとしか目を通していませんし、日本は地震の影響のため経済見通しから除外されていますので、詳細は明日にでも取り上げたいと思います。

|

« 造幣局の工場見学に行く | トップページ | OECD と ADB の経済見通し、ついでに、日本の景気動向指数をチェックする »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/39501229

この記事へのトラックバック一覧です: 再集計された日銀短観をチェックし、震災が経済に及ぼすインパクトを考える:

« 造幣局の工場見学に行く | トップページ | OECD と ADB の経済見通し、ついでに、日本の景気動向指数をチェックする »