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2011年6月 9日 (木)

国際通貨基金 2011 Article IV Consultation も2次QEも大きな変化なし

昨日、国際通貨基金 (IMF) の調査団から日本に対する Article IV Consultation 結果が公表されました。経済見通しなどの経済の現状と先行きに関する見通しを示した上で、財政赤字に対して消費税率を15%まで引き上げる必要との見方を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

「消費税率、来年2-3%上げを」 IMFが日本に提言
日本経済「今年後半に力強く回復」

国際通貨基金(IMF)は8日、2011年の対日経済審査報告に向けた日本政府などとの協議を終え、「12年から消費税率を2-3%引き上げることを推奨する」との声明を発表した。東日本大震災後の日本経済について「今年後半に力強く回復に向かう」と指摘。11年はマイナス0.7%成長に落ち込むが、12年にはプラス2.9%に回復すると予測した。
声明は「日本は緩和的な金融政策を他の先進国よりも長く維持する公算が大きいため、円が下落する可能性がある」とも指摘した。
復興財源は「消費税率引き上げで賄うことが可能」としたうえで、景気が回復局面となる12年から徐々に引き上げるよう求めた。財政健全化のためには現行5%の消費税率を「数年以内に15%まで引き上げる必要がある」との見方も示した。

経済見通しについては震災の影響を織り込んで、本年2011年は▲0.7%のマイナス成長と、4月の「世界経済見通し」の+1.4%からから大きく下方修正されましたが、来年2012年は+2.9%成長にリバウンドすると見込まれています。IMFのサイトから引用した経済見通しのテーブルは以下の通りです。

 201020112012
(Calendar Year, Growth Rate)
Real GDP4.0-0.72.9
Total domestic demand2.20.02.5
Net exports (contribution)1.8-0.70.4
CPI inflation (average) 1/-0.70.10.0
Current account balance (in percent of GDP)3.62.52.9
General government balance-9.6-10.5-9.1
Gross debt (in percent of GDP)220.4233.7236.2
Net debt (in percent of GDP)117.6131.1137.8
Source: IMF staff estimates.
1/ Projections do not include an estimate of the CPI base-year change scheduled for August 2011.

しかし、国内のメディアで最も重視されたのは財政赤字と消費税率の引上げに関するIMFの見方ではないでしょうか。実は、このブログの昨年2010年5月24日付けと7月15日付けのエントリーで取り上げた前回の結論とほとんどスタンスの変更はないと私は受け止めています。ただし、現在の政府の方向性をいくぶんなりとも考慮してか、来年から2-3%ポイントの消費税率引上げを示唆しつつも、結論として、昨年と同じ15%水準への引上げを推奨しています。"The key revenue measure would be a gradual increase in the consumption tax to 15 percent over several years" ということです。チェックシート付きで、IMFのリポートの Table 2: Possible Options for Reducing the Primary Deficit by 10 percent of GDP over 10 Years を引用した下の表の通りです。

Possible Options for Reducing the Primary Deficit by 10 percent of GDP over 10 Years

最後に、ついでの扱いになりましたが、本日、内閣府から今年1-3月期の2次QEが発表されました。すでに、月曜日6月6日付けのエントリーで取り上げていますが、1次QEからは小幅の上方改定となりました。季節調整済みの系列で見て、前期比は▲0.9%のマイナス成長は変わりありませんでしたが、前期比年率は▲3.7%から▲3.5%にわずかに上方修正されました。簡単に、いつもの前期比伸び率のテーブルと寄与度のグラフを示すにとどめます。

需要項目2010/
1-3
2010/
4-6
2010/
7-9
2010/
10-12
2011/1-3
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+2.3▲0.0+0.9▲0.7▲0.9▲0.9
民間消費+1.0▲0.2+0.8▲1.0▲0.6▲0.6
民間住宅+1.4▲0.6+1.9+3.2+0.7+0.7
民間設備+1.6+2.6+1.0+0.0▲0.9▲1.3
民間在庫 *+1.0▲0.5+0.5+0.0▲0.5▲0.4
公的需要▲0.4+0.1▲0.3▲0.6+0.6+0.6
内需寄与度 *+1.7▲0.2+1.0▲0.6▲0.8▲0.7
外需寄与度 *+0.6+0.2▲0.1▲0.1▲0.2▲0.2
輸出+6.7+5.2+1.6▲0.8+0.7+0.7
輸入+2.9+4.1+2.9▲0.3+2.0+1.9
国内総所得(GDI)+1.6▲0.5+0.9▲0.7▲1.6▲1.5
名目GDP+2.2▲1.0+0.6▲0.9▲1.3▲1.3
雇用者報酬+1.3+0.5+0.6▲0.1+0.2+0.2
GDPデフレータ▲2.8▲2.0▲2.1▲1.6▲1.9▲1.9
内需デフレータ▲1.4▲0.9▲1.5▲1.1▲1.0▲0.9
GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

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