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2011年6月15日 (水)

日経センターの第37回中期予測改定版をどう読むか?

昨日、日本経済研究センターの第37回中期経済予測が発表されました。予測期間は本年度2011年度から2020年度までです。今日の午後には岩田理事長自らがプレゼンを行う説明会も開催されていたようです。まず、日経センターのサイトから予測の概要を引用すると以下の通りです。

第37回改訂中期経済予測(2011-2020 年度)
東日本大震災によって、向こう10年間の日本経済の姿はどう変わるのか。電力不足、津波による破壊と復興需要などの要因を織り込み、2月に公表した「第37回中期経済予測」を改訂した。福島第1原子力発電所の重大事故を受け、原発の安全性には厳しい目が向けられている。定期点検に入る原発が順次停止した場合、電力不足で生産能力は2012-20年度の平均で年1.2%押し下げられ、7兆円の経済損失を生む。需要面からは東北地方のインフラ復興などで成長が押し上げられるが、生産を支えるために原発が火力発電で代替され、化石燃料輸入が急増、貿易・サービス収支は今後、恒常的な赤字となる。経常収支は17年度以降赤字となる。温暖化防止に削減が不可欠であるCO2排出量は20年度には1990年比でむしろ約14%増え、国際的な温暖化ガス削減目標を達成することは極めて難しくなる。復興費用に加え、成長の下振れによる税収減少で財政は一段と悪化、財政破綻を避けるため、負担増が避けられない見通しだ。

次に、この中期予測のポイントを概要から引用すると以下の通りです。

  1. 全原発停止、長期化で供給力(潜在GDP)を引き下げ
    (12-20年度平均で1.2%、年7.2兆円の富が喪失)
  2. 貿易・サービス収支は赤字定着、経常も17年度から赤字に
  3. 財政赤字、一段と膨らむ、負担増が不可避に
  4. 温暖化ガスの排出量は急増

さらに、これも日経センターのサイトから予測期間中の経常収支の見通しのグラフを引用すると以下の通りです。

経常収支の見通し

最大の注目点は供給サイドの潜在GDP成長率の低下がどれだけ実際の成長率に影響するかだと私は受け止めています。もちろん、1990年代半ば以降のいわゆる「バブル崩壊」以降の日本経済の長期低迷を潜在成長率の低下に起因すると実証した Hayashi and Prescott "The 1990s in Japan: A Lost Decade" のような Real Business Cycle 的な観点も中長期の経済予測では重要です。
原発停止などに伴う電力の供給制約がほとんどすべての起点となります。経済的には供給制約のために2010年代前半のうちにGDPギャップは正に転じ、物価が上昇を始めるとともに、財・サービス輸出が生産の増加を見込めないため経常収支が赤字化します。従って、結論として、第1に、このままの財政バランスを続けると国債の国内消化が困難になる可能性が高まります。すなわち、財政破綻の可能性が大きく高まります。第2に、化石燃料輸入のための所得の海外流出が大きくなります。第3に、環境的には温室効果ガス排出削減目標の達成はほとんど不可能となります。
これらの帰結の起点となるのは電力供給ですから、日経センターのリポートでは、第1に、ガス・タービンによる発電量の増加が提唱されています。私はこの技術的な評価は出来ませんのでパスしますが、それでも、一般論として、自家発電を個別バラバラに実施するよりも集中的な発電と配電の方が効率的であるとの観点から電力会社というものが設立されているのではないかと思いますので、少し疑問がないわけではありません。第2に、温室効果ガスに対する環境税を復興税として課税することも提示されています。確かにこれは有効な気がします。
さらに、日経センターのリポートの書いていない重要な論点を私なりに考えると、まず、社会保障の財源を中期経済予測で外すのはいかがという気もしますが、あえてこの点は譲るとしても、TPPや自由貿易協定の展開による新たな比較優位構造の模索を取り上げていないのは大きな欠陥だといわざるを得ません。もちろん、今回の中期予測は第37回予測の改定との位置づけで、電力に起因する供給制約のみを取り上げているとの前提でしょうが、これだけ輸出が減少しているのは、新たな供給制約に対応した比較優位構造の変化が生じていると解釈すべきであり、これは中長期的な経済政策の大きな課題だという気がします。当然ながら、TPPや自由貿易協定の推進を政策的に組み合わせることも考えるべきです。

供給サイドを考慮する際には世界経済の中で、日本がどのような比較優位を持つのかという観点はかなり重要です。次回の中期予測の本格改定を注目したいと思います。

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