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2011年6月30日 (木)

日銀短観に見る企業マインドは一時的に低下した後、秋には回復に向かうのか?

明日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから6月調査の日銀短観予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業の業況判断DIと設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、富士通総研以外は pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、富士通総研は html 形式のリポートとなっています。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査先行き+2
▲1
<▲0.4>
n.a.
日本総研▲8
▲10
<+6.4>
工場や施設の復旧で供給制約は解消に向かうほか、個人消費も消費マインドの改善を受けて持ち直しが見込まれる。
みずほ総研▲2
▲4
<+1.1>
先行きについては、幅広い業種で改善が予想される。夏場の電力不足問題が東京・東北電力管内のみならず、近畿地方などにも拡大しつつあることは懸念材料である。
ニッセイ基礎研▲7
▲4
<+2.0>
震災によって企業マインドが大きく下振れした姿が示される結果になりそうだ。同時に先行きの改善も顕著に現れ、底割れの回避ならびに今後の順調な回復の兆しが示されるだろう。
第一生命経済研▲8
▲4
<+0.9>
6月調査では、まだ震災前の状態には戻り切っておらず、さすがに3月対比では大きく落ち込むと見込んでいるとみる。
三菱総研▲9
▲3
<n.a.>
3月調査比では大幅な悪化が予想されるものの、生産・販売体制体制の正常化への動きが進むなか、企業の景況感は足元既に改善へ向かっている可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲2
▲1
<+4.9>
深刻な影響を受けた自動車でも供給網の立て直しがこのところ急ピッチで進んでおり、企業の生産活動は早晩正常化されると見込まれる。また、需要面でも世界経済の堅調な回復を背景に輸出が持ち直し、国内でも復興需要が徐々に現れてくると見られる。
モルガン・スタンレー・リサーチ▲10
▲5
<+4.0>
前回3月対比では悪化するものの、現状判断の悪化にあまり意味はなかろう。むしろ、先行き判断の改善幅に注目したい。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング▲5
▲5
<+4.0>
足元では、サプライチェーンの復旧が想定よりも前倒しで進んでいることやマインドの悪化にも歯止めが掛かってきていること、復旧・復興需要への期待などから、先行きの業況判断DIは改善するものと見込んだ。
伊藤忠商事▲7
▲4
<+0.7>
企業景況感は月次で考えれば4月をボトムとして持ち直しつつある。しかし、当然ながら6月時点では業況が震災前水準には回復しないため、6月短観の現状判断DIは総じて悪化しよう。一方、先行き判断DIはサプライチェーン復旧などを映じての反転が見込まれる。
富士通総研▲3
▲2
<+4.5>
先行きについては、サプライチェーンが当初見込みに比べ順調に復旧し、秋口には生産が正常化する見込みとなっており、また、消費も次第に通常のパターンに戻っているため、業況判断DIは改善すると考えられる。

見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2011年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除けベースです。
これまた、見れば分かると思いますが、大企業は製造業・非製造業とも足元の業況判断DIはマイナスと予想されています。しかし、上の表には取り上げませんでしたが、先行きについてはほぼゼロ近傍か小幅のプラスを予想する機関が多くなっています。さらに特徴的なのは、大企業の設備投資計画は軒並みプラスに上方修正されると見込まれています。もちろん、被災したセブ美の復旧に加えてインフラなどの復興需要も含めての結果ですが、もしも、この設備投資がプラス修正という予想が正しければ、景気には上向きのドライブがかかる可能性が高いと考えるべきです。

明日は日銀短観に加えて、失業率や有効求人倍率などの雇用統計や消費者物価指数といった政府統計がいっせいに公表されます。3月の震災から2か月を経た5月の統計にも注目が集まります。

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2011年6月29日 (水)

鉱工業生産は秋口には本格回復か?

本日、経済産業省から5月の鉱工業指数が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの前月比は+5.7%の増産と大きく回復しました。市場の事前コンセンサスが+5.5%でしたので、ほぼミートしました。基調判断は「東日本大震災の影響から回復しつつある」に修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産5月5.7%上昇 供給網復旧、58年ぶり伸び
自動車や一般機械けん引、「回復しつつある」

経済産業省が29日発表した5月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は88.8となり、前月比5.7%上昇した。伸び率は1953年3月(7.9%)以来、58年2カ月ぶりの大きさ。東日本大震災で寸断したサプライチェーン(供給網)の復旧が本格化し、自動車や一般機械がけん引役となった。6-7月も生産回復の流れが続く見通しだが、今夏の電力不足などで増産の勢いが鈍る懸念もある。
5月の生産指数は2カ月連続で上昇。上昇率は民間エコノミストの予測中央値(5.5%)を上回った。経産省は基調判断を「回復しつつある」と、前月の「停滞している」から引き上げた。
供給網の回復が生産を大きく押し上げた。輸送機械工業は36.4%上昇し、比較可能な1998年以降で最大の伸びを記録した。一般機械は5.3%上昇し、震災前の2月の水準を上回った。ショベル系掘削機械が部品不足を解消し増産に転じた。
復興需要を取り込む動きもある。漁船に取り付ける船外機が伸びた汎用内燃機関は15.3%上がった。経産省によると、アルミ製品やプラスチック製品で「夏の電力不足を見込んだ前倒し生産が出ている」という。
11業種が上昇した一方、鉄鋼業など5業種は低下した。鉄鋼業は国内や韓国向けにH形鋼などが伸び悩み2.2%低下。液晶テレビやパソコン向けが低調だった電子部品・デバイス工業は0.6%下がった。
生産の回復基調は続く見通しだ。同日発表した製造工業生産予測調査によると、6月は5.3%、7月は0.5%上昇する見通し。輸送機械工業などの増産が寄与する。予測通りなら7月は94.0となり、震災で落ち込んだ分の4分の3を取り戻す。
ただ夏場の電力不足はなお不安定要素として残る。海外経済も成長ペースがやや鈍っており、「外需が生産の足を引っ張る可能性がある」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との指摘もある。

次に、鉱工業生産と出荷の推移をプロットすると以下の通りです。上のパネルは生産、下は出荷で、いずれも2005年=100とする指数の季節調整済みの系列です。影をつけた部分は景気後退期です。

鉱工業生産の推移

見ての通りなんですが、3月の震災で大きく落ち込んだ後、4月のリバウンドは大きなものではなかったものの、5月は大きく回復しているのが見て取れます。しかし、まだ震災前の水準には達していません。生産と出荷が回復していない最大の要因は需要の不足ではなく、震災により供給能力が回復していないからです。生産の回復を被災地とそれ以外に分けて見ると、被災地は+18.8%、被災地以外は+4.5%のそれぞれ増産となっていますから、特に被災地において急ピッチで供給体制の回復が進められていることがうかがえます。特に、自動車を含む輸送機械の増産が5月は+36.4%と大きくなっています。しかし、夏場は電力制約もありますし、現時点における多くのエコノミストのコンセンサスに従えば、生産が震災前の水準に復帰するのは秋口くらい、場合によっては少し前倒しされる、と見込まれているようです。引用した記事にもある通り、生産予測指数から見て、このシナリオはほぼサポートされたと私は考えています。なお、5-6月が5%超の伸びを示した後、7月の予測指数の伸びが小幅にとどまっているのは、夏場の電力制約だけでなく中国経済の不透明感との合わせ技であろうと私は受け止めています。もちろん、生産の増産に従って、雇用も回復を示すことが期待されます。

資本財と耐久消費財の出荷の推移

さらに、財別に出荷を見ると、輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷は上の通りです。いずれも2005年=100とする季節調整済みの指数であり、影をつけた部分は景気後退期です。資本財については先行きの設備投資の増加を示唆していると私は受け止めています。耐久消費財についても、生産が本格回復する秋口を目指して増加が続くように見えなくもありません。

Comparing countries' performance in digital reading

最後に、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から発表された PISA 2009 Results のうちの Students On Line: Digital Technologies and Performance (Volume VI) から Figure VI.2.11 Comparing countries' performance in digital reading を引用したのが上の表です。デジタル読解力の総合評価で日本はOECD加盟国の4番目に位置しているようです。なお、表の色分けですが、韓国からベルギーまではOECD平均から有意に上位に位置し、ノルウェイとフランスは統計的に平均と異なるところはなく、マカオ以下は平均から有意に下位に位置することを示しています。

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2011年6月28日 (火)

そろそろブラゼル内野手がお目覚めか?

  HE
阪  神020031001 7100
広  島000100021 473

最後の方は安心してお風呂に入ってしまい試合の中継はそんなに見ていませんが、遠く北陸の地で広島に完勝です。いよいよ眠れるブラゼル砲が目を覚まして打ち始めた気がします。スタンリッジ投手も安定していました。ハッキリと投打の調子は上向いてきましたので、何度も書きましたが、後は先発投手の頭数だけが問題です。

連勝目指して、明日も、
がんばれタイガース!

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商業販売統計から消費の先行きを考える

本日、経済産業省から5月の商業動態統計調査の結果が発表されました。ヘッドラインとなる小売販売は前年同月比▲1.3%減の10兆9170億円と震災発生以来3か月連続で減少しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の小売販売額1.3%減 節電グッズ好調で下げ幅縮小
経済産業省が28日発表した5月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は10兆9170億円で、前年同月比1.3%減少した。東日本大震災が発生した3月以降は減少が続いているが、マイナス幅は前月の4.8%から大幅に縮小した。扇風機やクールビズ衣料など節電関連の売り上げが好調だったため。ただエコカー補助制度が終了した自動車の販売が低調で、全体としてはマイナスだった。
機械器具小売業は扇風機や発光ダイオード(LED)製品など節電関連のほか、7月24日の地上デジタル放送移行を控えて地デジ対応テレビやチューナーが好調で、3.8%増加した。ミネラルウオーターなどの販売増で飲食料品小売業も1.7%増えた。一方、自動車小売業は24.4%の大幅な減少。エコカー補助金の終了や大震災に伴う生産低迷が響いた。
コンビニエンスストア販売額は7192億円で、7.3%増加した。デザートやたばこの販売が好調だった。被災地で活動するボランティアらの利用が増え、東北地方のコンビニ販売額は10.9%増加した。
大型小売店の販売額は1兆5776億円で、1.3%減少した。減少は3カ月連続。大震災以降は外国人観光客の減少で、化粧品など高額商品の販売が伸び悩んでいる。

次に、いつもの小売販売と卸売販売のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比、下は季節調整済みの指数の系列をそのまま、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた部分は景気後退期です。

商業販売統計の推移

季節調整前の小売販売は3か月連続の前年同月比マイナスながら、季節調整済みの指数では3月を底つとして4-5月は上昇しています。原系列の5月前年同月比マイナスにしても、自動車が寄与度で▲2.8%ほどありますから、これを別勘定にして自動車を除く消費は前年同月比プラスとも考えられます。我が家でも扇風機を買い求めましたが、節電需要による白物家電の販売はかなり好調と報じられています。日銀短観は今週金曜日に発表されますが、景気ウォッチャー調査や消費者態度指数などの月次の各種マインド調査を見ても、足元で消費はそろそろ底打ちして反転しつつあると私は受け止めています。ただし、商業販売統計にはサービスは含まれませんので、自粛ムードの影響をモロに受けている旅行や外食などはこの統計よりもさらに大きく落ちている可能性も見逃せません。
ただし、底入れから反転への動きはあくまで足元の動向であり、もう少し先、すなわち、梅雨明け以降の電力需要が本格化する夏季については不透明です。最大の不透明要因は電力消費がどこまで可能かということです。逆から見れば、どの程度の電力供給が出来るかということです。私には確たる見通しはないながら、電力の不透明要因を別にすれば、基本的なシナリオとして、マインドの改善に従って自粛ムードが徐々に払拭され、旅行や外食などのサービスも含めて消費は盛り返す、と考えていますが、首都圏大停電などがあれば、この限りではありません。そんな事態は想定しづらいんですが、もしもそうなれば、消費だけでなく生産にも悪影響を及ぼすのは確実です。

サラリーマン小遣い調査

最後に、誠についでながら、新生フィナンシャルから発表された「2011年サラリーマンのお小遣い調査」の結果は上のグラフの通りです。なお、欠損値となっている1991年、1993-4年は調査が実施されていません。2011年調査での平均小遣い額は月額36,500円と昨年比▲4,100円と大きくダウンし、4年連続で減少するとともに、バブル期の1990年76,000円に比べて半減となりました。サラリーマンのオフィス周辺での消費は期待できないのかもしれません。

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2011年6月27日 (月)

国際決済銀行「年次報告」に見るバブルの BIS View

昨日、国際決済銀行 (BIS) から「年次報告」 BIS Annual Report 2010/11 が発表されています。もちろん、全文リポートの pdf ファイルもアップされています。基本的には、低金利の継続に起因するインフレを含め、新たな金融不均衡の是正を目指して、各国中央銀行に対して政策金利を引き上げることを求める内容となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

超低金利の長期化「金融に深刻なゆがみ」 BIS年次報告
国際決済銀行(BIS)は26日に2011年の年次報告を公表し、主要国の中央銀行が3年近く低金利政策を続けた結果として「深刻な金融のゆがみなどを生むリスクがある」と警告した。危機対応の国債買い入れや自国通貨高を防止するための為替介入で、各国中銀の資産規模が膨れていることへの懸念も示した。
BIS報告は各国の金融政策に絡んで「歴史的にみて政策金利が低すぎる」と指摘。物価上昇の懸念に加え、資金余剰が新興国での資産価格の急上昇などを招き、「金融安定を脅かすリスクを高めている」とした。
中央銀行の貸借対照表(バランスシート)が膨らんでいることも問題点に挙げた。国内総生産(GDP)に対する中銀の資産規模は金融危機前には米国が8%、ユーロ圏が13%だったが、ともに20%程度に上昇。日本では30%に達している。先進国中銀は経済や市場の安定に向けて量的緩和や国債買い入れを進め、新興国では介入で外貨準備が積み上がっている。
BISはこうした政策が金融危機対応に役立ったとしながらも、金利や為替面でのリスクを中銀が抱え込んだことで「市場変動で大きな損失となりかねない」と警戒感を示した。異例の政策を平時に戻す「出口戦略」にも触れ、「政策当局は非常に困難な問題を抱えている」と結論付けた。

今夜のエントリーではバブルに関する見方について少し取り上げたいんですが、その前に簡単にこのBISのリポートを紹介すると、まず、インフレの高進に注意を促しています。下のグラフは全文リポートの p.4 Graph I.3 Inflationary pressures を引用しています。左のパネルが日米英欧4か国のヘッドライン・インフレ率、真ん中が農産物や原油などの商品価格、右がインフレ連動債から計算したブレーク・イーブンの期待インフレ率です。これも日米英欧の4か国です。

Inflationary pressures

次に、全文リポートの p.21 Graph II.3 Debt を引用して、主要国の財政債務残高のグラフです。後に少し書きますが、BISでは財政不均衡も金融不均衡のひとつとして捉えているのかもしれません。話題のギリシアこそ入っていませんが、アイルランド、スペインとイタリアを除くG7各国がプロットされています。

Debt

さて、このリポートの下敷きになっているのはバブルに関するBISビューと呼ばれている基本的スタンスであり、FEDビューと対にして論じられることもあります。以下の表は現在の日銀総裁である白川総裁の『現代の金融政策 - 理論と実践』(日本経済新聞出版社)の pp.400-401 あたりを私が取りまとめて、昨年の長崎大学経済学部研究年報に掲載した紀要論文「ギリシアにおける財政危機に関するノート: 日本への教訓」から p.170 表2: バブルへの政策対応を引用しています。

FED ViewBIS Vew
物価のレンズ金融的不均衡のレンズ
バブル判定の困難性持続困難な現象の組み合わせの判断
プルーデンス政策の必要性金融政策とプルーデンス政策の協力

ということで、FEDビューとはその名の通り、米国連邦準備制度理事会で支配的であったスタンスで、BISビューもその名の通り、国際決済銀行で支配的であったスタンスです。まず、FEDビューは事後対応であり、バブルの認識が困難であることなどを根拠に、金融政策当局は物価安定に専念しバブルの発生については政策対応せず、バブル崩壊に際して事後的に流動性供給などの金融政策で対応し、主として日本の2000年代初頭のデフレを念頭に、バブルが崩壊した後に大規模な金融緩和政策を機敏に実施すれば大きな経済的コストは避けられるとの観点に立っています。対して、BISビューは事前対応であって、金融的なコンテクストにおける不均衡としてバブルを捉え、バブルの発生そのものを事前的な政策対応により抑え込むことを念頭に置いています。サブプライム・バブルの処理でFEDビューは崩壊したように私は受け止めていますが、今年のBIS「年次報告」ではいかんなくBISビューが展開されており、バブル発生という金融不均衡の発生前に金融緩和を終了させたいという意図があるのかもしれません。最後に、FEDビューとBISビューを代表するリファレンスを上げておきます。ご興味ある方のfurther readingとしてオススメです。

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2011年6月26日 (日)

9回の猛反撃も及ばず - やっぱり3つ勝つのは難しい

  HE
読  売100200100 4111
阪  神000000002 2101

9回の猛攻も及ばず負けました。やっぱり、3タテは難しいです。1日で再びBクラスに落ちましたが、まだまだ浮上のチャンスは残っています。いろいろと忙しいので、今日は取りあえず短くここまでとします。

Aクラス目指して、
がんばれタイガース!

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2011年6月25日 (土)

久々のブラゼル選手のホームランといつもの鉄壁のリリーフ陣で巨人に連勝!

  HE
読  売100001000 272
阪  神01011010x 4100

昨日に続いて今日も、相手のミスも利用しつつ、そこそこ打って点を入れ、投手陣、特にリリーフ陣が踏ん張っての勝利で、交流戦明けのペナントレースに戻って甲子園で巨人相手に連勝です。今日に限っては、先発のメッセンジャー投手は6回途中で2失点ですから、投げる方はもちろん合格点で、打つ方でも同点打が高く評価されて、十分な合格点です。もちろん、メッセンジャー投手以外でも、久し振りにブラゼル内野手のホームランが見られましたし、鳥谷遊撃手はタイムリー以外にも鋭い当たりを飛ばしていました。私がブラゼル選手のヒーロー・インタビューを見たのは今シーズン初めてかもしれません。
それから、相手の守備の乱れにつけ込んで点をとれるのは調子のいい証拠ではないでしょうか。投げる方はもともと安定していましたし、後は先発陣の頭数だけです。オールスター前には9連戦があるそうですから、どのようにローテーションを組むかでベンチの考えどころです。それにしても、先発陣が崩壊する前に打てるようになって、ここに来てチーム全体の調子が上がりました。開幕以来の先発投手陣は大したものです。
6月の段階で順位はそれほど意味はないんでしょうが、当面の敵であるジャイアンツをかわしてAクラスに上がったのは気分いいもんです。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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「世界報道写真展2011」を見に東京都写真美術館に行く

東京都写真美術館正面玄関

今日は夕方から雨という天気予報に従って、午前中のうちに「世界報道写真展2011」を見に行きました。恵比寿ガーデンプレイスの一番奥にある東京都写真美術館の地階の展示室で開催されています。写真展だけでなく、震災のビデオ「爪痕」も上映されていました。この「世界報道写真展2011」に関する画像では、世界報道写真大賞2010を受賞されたジョディー・ビーバーの作品をアチコチで見かけます。ネットで検索すればいくつもヒットすると思います。タリバーンの命により暴力をふるう夫の下から逃げ出したアフガニスタン女性が鼻と耳を削ぎ落された写真です。非常にショッキングな写真で、私のブログで引用するのは控えました。その代わりにもなりませんが、一番上の画像は東京都写真美術館の正面玄関です。恥ずかしながら、私が撮影しました。
ビーバーの作品の先入観があったからかもしれませんが、私には「日常生活」の部でランクインしたインドの写真が目につきました。オランダ人のマルティン・ルーメルスの作品で、コルカタやムンバイにおける現地インド人の日常生活をクリアに写真に収めた作品、あるいは、アミット・マデシヤの作品で、移動映画館の夜間上映を楽しむ人々、といった写真です。いずれも組写真です。でも、もっとも迫力を感じたのはドイツ人写真家トマス P. ペシャクの「自然」の部で単写真第1位に輝いた作品です。マルガス島に飛来するケープシロカツオドリを真っ正面から捉えていて、しかも、鳥の方もカメラ目線を送っている、というものです。さすがに、プロの写真には脱帽でした。

毎年、報道写真は年末に三越日本橋本店で開催される展覧会を見に行っていましたが、久し振りに東京都写真美術館に足を運びました。残念ながら、日本人写真家の出展はありませんでした。報道写真については何度か同じことを書きましたが、「安全への逃避」で世界に名高い沢田教一のような写真家が日本でも現れるように願っています。

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2011年6月24日 (金)

甲子園でジャイアンツ相手に完璧な勝利!

  HE
読  売002000000 282
阪  神11020000x 480

交流戦の終盤を上り調子で終え、今日から甲子園に巨人を迎え撃つ3連戦、その第1戦はほぼ完璧な勝利でした。とっても強烈に打ったという印象はないんですが、何となく中盤から終盤に入るころにはリードしていて、結局、投手が抑えて逃げ切ってしまう、こういった勝ち方が私には完璧な勝利に見えます。ここ数試合は、明らかに波に乗って調子が上向いているのは間違いありません。

巨人相手に3タテ目指して明日も、
がんばれタイガース!

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下の子の中学校の文化祭に行く

今日はよんどころない用件で朝から出勤した後、午後からは仕事を休んで下の子が通う中学校の文化祭に行きました。というか、中高一貫6年制ですから中高の文化祭というべきかもしれません。高校生がいますから中学生だけでは出来ないような立派な文化祭だったりします。
今年の文化祭のテーマは Be Life at Will だそうです。私には意味は分かりません。例年の文化祭の時期は5月3-5日のゴールデンウィークらしいんですが、今年は震災で春休み中の準備が出来ず、今日からの3日間に時期をずらせて開催されました。何分、我が家の下の子は今年から通い始めたので、昨年までの前例はよく知らないんですが、今年は例年とは異なる入場制限を実施し、校内滞留者数の上限を2500人に設定して、時間ごとの入場者数を制限する予定だそうです。でも、今日は平日でしたし、入場制限には、少なくとも私は引っかかりませんでした。そういった趣旨で、保護者は今日の金曜日、すなわち、土日を外して来るように推奨されていて、受験を目指す小学生は土曜日の来校を勧められていたりします。
ウチの子は体育系ではなく文化系の部活をしているんですが、中学1年生ですからまだ本格的に文化祭の準備はしていなかったようです。ウチの子の入っているクラブだけ4階で展示していたんですが、そこまで上る階段の前にある名曲喫茶で私は少し休憩していたりしました。ウチの子のクラブの展示室はなぜか撮影禁止でしたので写真はありません。男子単学の中学高校なんですが、当然のように女子中高生もいましたし、受験を目指しているのか、小学生らしき一団もアチコチで見かけました。私が卒業した中学高校もそうなんですが、それなりに文化祭を重視して派手なことでも有名な学校ですので、とっても楽しめました。

校門入口の立て看板

校庭でのアトラクション舞台

ポケモン・センターのイッシュ地方のジオラマ

撮った写真は上の通りです。一番上は校門を入って左側にあった立て看板です。真ん中は校庭でのアトラクション舞台ですが、ステージ左端に入場制限の目安となる校内滞留者数が表示されていたりします。最後はポケモン・センターにあったイッシュ地方のジオラマです。私がもっとも感激した展示のひとつでした。

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2011年6月23日 (木)

ヨーロッパ出身のピアノ・トリオを聞く

私は中学生や高校生の昔からジャズを聞き続けてすでに40年近くになりますが、このところ、年齢的なものもあってピアノ・トリオの演奏を聞くことが多くなっています。今年2011年3月21日付けの「家にこもって2000年以降くらいのジャズ・ピアノを聞く」でも何枚か紹介しましたし、その後の4月29日付けでも「ヨーロピアン・ジャズ・トリオの「ジャパネスク - 日本の詩情」を聞き、日本を代表する曲について考える」といったエントリーをアップしています。ということで、今夜は、最近聞いたヨーロッパのピアノ・トリオの演奏をいくつか取り上げたいと思います。もちろん、私ハジャズ評論家ではありませんし、ありとあらゆるヨーロッパノピアノ・トリオを聞きまくっていて、その中からのオススメというつもりはありませんので、私が聞いた範囲での一例ということです。なお、アルバム・ジャケットの画像はそれぞれのアマゾンのサイトから引用しています。

European Jazz Trio - Best of Chopin

まず、どうしようもなく、名前でヨーロッパを代表するピアノ・トリオと考えられるヨーロピアン・ジャズ・トリオの「ベスト・オブ・ショパン」です。オランダ出身ではなかったかと記憶していて、このアルバムはその名の通りショパンの作品集です。「マズルカ」など、今までも何度かヨーロピアン・ジャズ・トリオが手がけてきた曲が入っています。2枚組の「ベスト・オブ・クラシック」を第2集まで出しているピアノ・トリオですから、当然、ショパンは取り入れられています。もっとも、リストは少なそうな気がします。

Walter Lang Trio - 746 and Eurasia

次に、ホントに私は注目しているのはこのウォルター・ラング・トリオの「746」と「ユーラシア」です。ドイツ出身のピアニストです。前者がトリオ・エルフと称しているグループの演奏で、後者はそうでないトリオです。後者には「リンゴ追分」が4曲目に入っており、ヨーロッパとアジアにまたがるアルバム・タイトルにふさわしい選曲で、アルバムとしての完成度は高いんですが、「746」のほうが演奏自体はスリリングです。

Karel Boehlee Trio - Love Dance

次に、1990年代半ばに現在のマーク・ヴァン・ローンに交代するまでヨーロピアン・ジャズ・トリオのピアニストを務めたカレル・ボエリーの「ラブ・ダンス」です。当然ながら、基本的なラインは現在のヨーロピアン・ジャズ・トリオとほとんど変わりません。気合を入れてスリリングなアドリブが聞きたいファン向けではありませんが、典型的なリラックス・ジャズのひとつであり、私のように読書しながら夜中に静かにBGMとして聞くにはいいかもしれません。もっとも、口の悪い私の知り合いに言わせれば、「どれも似たような演奏なので、1枚持っていれば十分」なのかもしれません。

Trio Töykeät - Kudos

最後に、トリオ・トウケアットの「キューダス」です。フィンランド出身のグループと聞いています。私が知る限り、10枚ほどアルバムを出して2008年に解散したんですが、輸入盤とかでなく日本で発売されたアルバムはこれだけだと思います。高度な演奏テクを駆使していろんな演奏スタイルを持っていて、何とも表現しがたく、入手しにくいアルバムですが、聞いていただくしかないのかもしれません。私が知る限りでは、新宿区立図書館に所蔵されています。

私がジャズを聞き始めたころは、ジャズといえば米国の黒人の音楽という色彩が強く、ヨーロッパや日本の出身プレイヤーで注目されていたのは限られた範囲だけでした。今ではヨーロッパのミュージシャンが我が国ジャズ市場向けのアルバムを東京で録音するとか、日本のジャズ市場の規模が大きくなるとともに、同時に、音楽としてのすそ野が大いに広がった気がします。

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名人戦第7局は森内九段が制して名人位を奪回!

羽生名人と挑戦者の森内九段の3勝3敗のタイで迎えた将棋の名人戦第7局最終戦は、昨夜9時過ぎに終局し、挑戦者の森内九段が名人位を奪還しました。勝負は123手までで、森内新名人は4期振り通算6期目の名人位ということになります。敗れた羽生前名人は王座と棋聖の二冠に後退しました。下の子が物心ついてから一貫して羽生ファンの我が家ですから、勝負ごとながら誠に残念な限りです。また名人位に挑戦していただきたいと思います。

おめでとう森内名人!

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2011年6月22日 (水)

今夜は消費を占ういくつかの調査から!

昨夜は産業を取り上げましたので、今夜は今後の消費動向を占う上で参照すべき調査について、いくつか取り上げたいと思います。まず、今日の日経新聞の朝刊にあった2011年上期の日経MJヒット商品番付は以下の通りです。日経新聞のサイトから引用していますが、このサイトを見るには何らかの無料登録が必要かもしれません。悪しからず。

2011年上期ヒット商品番付

見た通りなんですが、東の大関である節電ツールについては該当なしにするんであれば横綱でもいいような気もします。これが一番であるのは衆目の一致するところです。以下、それらしい顔ぶれです。前頭のマッコリについては、流行っていることは知っているんですが、私自身がお酒を飲まないもので、2-3週間前に職場の同僚に「マッコリとは何だ?」と聞いた記憶があります。いまだによく分かっていません。幕尻のトーニングシューズは「トレーニングシューズ」のミスタイプではありません。Googleに聞いてもいまだに「もしかして: トレーニングシューズ ?」と聞き返されます。Toning Shoes と綴り、極端には「履くだけで痩せる」と宣伝されています。私はかろうじて知っていましたが、持っていません。

順位商品・サービスシェア
① 国内旅行22.2%
② LED電球9.6%
③ 贅沢な外食7.6%
④ ブルーレイディスクレコーダー6.1%
⑤ 海外旅行5.7%
⑥ 地デジ対応テレビ4.8%
⑦ 扇風機4.7%
⑧ スマートフォン4.4%
⑨ 節電・節水家電3.9%
⑩ 冷却マット3.2%

次に、電通総研から発表された『消費者気分調査』レポートVol.10から消費者マインドを占うひとつのポイントである夏季ボーナスの使い道ランキングについて、1-10位を表にすると上の通りです。朝日新聞のサイトでも取り上げられていました。ボーナスの使途ですから、普段買いを含むヒット商品とは少し違って、① 、③ 、⑤ などは明らかにストレス解消の意味合いを含んでいると私は受け止めています。電通のリポートでは「ハレ系サービス」と称しています。もちろん、節電関係もいっぱいランクインしていることは見ての通りです。

消費気分指数(自粛意識あり層・なし層比較)

そのストレスをもたらす一因は明らかに震災と節電なんですが、自粛も大きな要因です。自粛と消費者マインドの関係について、私が従来から注目している時系列的な動向を観察した結果が上のグラフです。『消費者気分調査』レポートVol.10 p.5 ②  消費気分指数(自粛意識あり層・なし層比較) のグラフを引用しています。震災1か月後から3か月後への2か月の変化で、自粛意識ありグループはマインドを改善させているのに対して、自粛意識なしグループは逆に悪化させていることが読み取れます。私はマインドや心理学的な専門知識は持ち合わせていませんが、次の地域別とともに非常に興味深い結果です。

消費気分指数(地域別比較)

よく似た推移を地域ごとに見たのが上のグラフで、これも『消費者気分調査』レポートVol.10 p.5 ③  消費気分指数(地域別比較) を引用しています。震災被害やその後の節電の影響が相対的に大きい北海道・東北・関東甲信越ではマインドの改善が見られ、逆にそれ以外の地域では近畿を除いてマインドが悪化していることが観察されます。この地域別の動向は景気ウォッチャー調査でもまったく同じ傾向が観察されます。

ある意味で収束 convergence と見られなくもないんですが、私が考える convergence はともにマインドを改善する中で、自粛意識のあるグループや被災地の改善幅が相対的に大きく、自粛意識の薄いグループや震災被害の小さかった地域に追いつく、というのが思い描いていたパスなんですが、どの調査を見てもそうなっていません。私にはパズルです。

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2011年6月21日 (火)

震災と電力制約は比較優位構造にどう影響するか?

昨日、みずほ総研からみずほ日本経済インサイトのシリーズのリポート「業種別にみた震災後の製造業活動 - 出荷・在庫の変動からみえる各業種の特徴」が発表されました。昨夜のエントリーでも強調した私自身の興味は、電力供給の制約を織り込んだ中長期的な日本経済の比較優位構造なんですが、それに至る一段階前ながら、震災によるサプライ・チェーン等の棄損と回復について手際よく取りまとめてありますので、いくつか図表を引用しつつ、今夜のエントリーの前半で紹介したいと思います。後半では経済産業省の資料から電力制約について考えます。なお、個別には示しませんが、前半部分では図表は番号とともに、すべてみずほ総研のリポート「業種別にみた震災後の製造業活動 - 出荷・在庫の変動からみえる各業種の特徴」から引用しています。

図表1 業種別の出荷・在庫・輸入動向

まず、上の表は製造業を業種別に出荷・在庫・輸入の動向について鉱工業生産指数から把握を試みています。まだ5月統計は発表されていませんから、震災の月である今年3月とその次の4月について、鉱工業生産指数から出火、在庫、輸入のそれぞれの季節調整済みの前月比を取っています。見れば分かると思いますが、増加がピンクで、減少が青でセルを色分けしています。これを基に、サプライ・チェーンの棄損と回復についてAからEまでの5つのグループに製造業を分類しています。以下の表の通りです。

図表4 業種グループの分類

これも見れば明らかですが、Aが震災のダメージが小さい、もしくは、回復が早い業種、Bが供給制約から輸出よりも国内向け出荷を優先した業種、特にB-①は在庫を取り崩して出荷に対応し、B-②は輸入により対応したと考えられる業種です。Cは国内外向けとも出荷が大幅に減少した業種であり、このCの大幅な出荷減の業種に我が国の主要な輸出産業である自動車などが含まるわけです。Dは供給サイドというよりも需要サイドの要因から出荷が低迷している業種、Eは3月末で期限切れを迎えたエコポイントに伴う調整局面に入っていた業種、となっています。繰返しになりますが、この大幅な出荷減のグループに入った自動車などで輸出の減少も観察されます。

図表6 生産回復のイメージ

そして、各グループの生産回復の短期的なイメージは上の通りです。早いところではAグループが5-6月には生産が回復し、遅いところで出荷の大幅減を記録したCグループですら本年度前半での復旧が見込まれています。要するに、秋口までにはサプライ・チェーンなどの生産ネットワークはほぼ回復するとこのリポートでは見込んでいます。もちろん、この総似の復旧は、リポートにもある通り「有事における日本企業の対応力の高さ」によるものです。相変わらず、我が国では政治や政府の対応よりも企業の方が上を行くようです。ただし、上のイメージの注にある通り、これは夏場の電力抑制の影響は考慮されていません。

製造業業種別エネルギー消費

ということで、みずほ総研のリポートを受けて、後半では経済産業省の資料から電力制約に絞って考えたいと思います。まず、一般に電力に限らず、エネルギー集約的な産業といえば素材産業と理解されています。上のグラフは経済産業省の「エネルギー白書2010」第2部エネルギー動向、第1章国内エネルギー動向、第2節部門別エネルギー消費の動向から引用していますが、鉄鋼、化学、窯業土石(セメント)及び紙パルプの素材系4業種でエネルギー消費の7割を超えています。

業種別電力消費の内訳

しかし、エネルギーを電力に限ると話はかなり違って来ます。上のグラフは経済産業省の産業活動分析のトピックス分析から「電力からみた製造業の生産性について」の p.26 第I-1-13図 業種別電力消費の内訳を引用しています。先の素材系4業種は引き続き大きなシェアを占めていますが、機械産業も電力消費量が極めて大きいことが読み取れます。

電力生産性の推移

しかも、我が国にとって極めて不都合な真実なんですが、上のグラフの通り、我が国産業の電力生産性は長期に渡って低下を続けています。同じく、「電力からみた製造業の生産性について」の p.29 第I-1-19図 電力生産性の推移を引用しています。なお、横軸は平成でスケールされており、西暦ではありません。電力生産性は付加価値額(100万円)を電力使用量(日銀投入物価指数でデフレートした電力使用額100万円)で除した系列となっています。日本の産業が全体として電力集約的、あるいは、電力多消費型に変化しているのは明らかです。

昨年までのように大学に勤務する教員であれば、本筋の比較優位についてデータや既存研究をもっとサーベイして、チャチャッと取りまとめて紀要にでも掲載するようなペーパーを書くんですが、役所の本省課長というサラリーマンではそうも行きません。本筋の比較優位の構造に至る前に力尽きて、取りあえず、このあたりまでとします。

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2011年6月20日 (月)

貿易赤字はいつまで続くのか?

本日、財務省から5月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる貿易収支は8537億円の赤字となり、4月の4648億円から赤字幅が拡大しました。なお、輸出額は前年同月比で▲10.3%減の4兆7608億円を記録し、3か月連続で前年同月比で減少しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、過去2番目の赤字 輸出10%減と低迷
震災で車や半導体落ち込む

財務省が20日発表した5月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出は4兆7608億円となり、前年同月比10.3%減少した。4月(12.4%減)より落ち込み幅は縮小したが、東日本大震災の影響で自動車や半導体などの低迷が続いている。火力発電用の燃料の輸入増もあり、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8537億円の赤字と、過去2番目の赤字を記録した。
輸出の減少は3カ月連続。震災によるサプライチェーン(供給網)の寸断で減産に追い込まれた自動車は38.9%減。米国向けの大型車や中国向けの中型車などが減少した。自動車部品も18.5%減り、自動車と同部品で輸出全体の減少の半分以上を占めた。
半導体など電子部品も18.5%減。パソコンなどに使う半導体メモリーのDRAMがシンガポール向けを中心に落ち込んだほか、台湾向け集積回路が減少した。
地域別では米国向けが14.6%減少。欧州連合(EU)向けも8.8%、アジア向けも8.7%それぞれ減った。
供給網の復旧前倒しで生産は最悪期を脱しつつある。これを受け、5月の輸出は季節調整済みの前月比では2.5%増と3カ月ぶりに増加に転じた。先行きは夏の電力制約や海外経済の減速などリスクもあるが、「供給網が想定通りに復旧すれば、輸出は10-12月期に震災前の水準に回復する」(農林中金総合研究所の南武志主任研究員)との見方もある。
一方、輸入は5兆6145億円で、前年同月比12.3%増加した。増加は17カ月連続。原子力発電所の事故を受けて火力発電へのシフトが進んだ結果、石油など化石燃料の需要が増加。原粗油は30.7%、液化天然ガス(LNG)は33.0%それぞれ増えた。原油相場などの上昇に加え、数量面での増加も輸入金額を押し上げた。
輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、リーマン・ショックを受けて世界的に需要が落ち込んだ2009年1月(9679億円)以来の赤字幅となった。貿易収支の2カ月連続の赤字は、08年10月-09年1月の4カ月連続以来となる。

次に輸出入とその差額たる貿易収支のグラフは以下の通りです。水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフが貿易収支となっています。上のパネルは季節調整していない原系列の統計、下は季節調整済みの系列です。

貿易統計の推移

報道などでは震災の影響により供給サイドがダメージを受けて輸出できなかった、ということになっています。従って、サライ・チェーンの回復とともに輸出は増加し、貿易赤字が縮小ないし黒字化すると考えられています。例えば、下のグラフは上のパネルが輸出金額指数の前年同月比を数量と価格に寄与度分解したもの、下が輸出数量指数の前年同月比と3か月のリードを取ったOECD先行指標の前年同月比をプロットしています。OECD先行指標で代理した世界需要が下げ止まりつつあるにもかかわらず、我が国の輸出は盛り続けていることが読み取れます。もちろん、OECD加盟国ではないながら我が国の輸出先として重要なシェアを占めている中国の景気が大きく減速していることも、グラフが乖離を示しているひとつの要因ではありますが、併せて、サプライサイドの中長期的な要因も考えるべきです。

輸出の推移

もちろん、短期的にはサプライ・チェーンの立直しや生産の回復とともに輸出が持ち直す可能性が高いものの、中長期的に日本の貿易収支が引き続き黒字を維持するかどうかは疑問が残ります。私が考えるに、先日の日経センターの中期見通しと同じ観点から、いずれも原発停止の影響です。第1に、輸出への影響であり、節電により比較優位の構造が変化するため、産業構造の対応が遅れれば輸出が減少する可能性があります。電力供給の影響で産業構造が大きく変化した歴史的な実例としては、アルミ精錬が思い起こされます。すなわち、ボーキサイトからアルミを精錬する場合のコスト構造は電力価格が非常に大きな割合を占めることから、電力料金が高い我が国ではほぼすべての企業が1980年代にアルミ精錬事業から撤退しています。今回の中期的な節電の影響は比較優位に影響を及ぼし、電力集約的な産業に不利な方向で働くわけですが、生産設備などがこの比較優位構造の変化に追いつかない場合、輸出が中期的に伸び悩んだり、減少したりする可能性は否定できません。第2に、輸入への影響としては、原発が停止されるとすれば石油輸入が増加します。単に量的に輸入が増加するだけでなく、我が国は決して経済学的にいうところの小国ではありませんから、我が国が石油輸入を増加させればその価格は上昇します。すなわち、量的にも価格的にも鉱物性燃料輸入は増加します。もちろん、石油だけではなく天然ガスであっても価格には基本的に同じことが起こると私は考えています。日本では先週号の週刊「エコノミスト」で「ガス復権」と題して取り上げられましたし、国際的にも、国際エネルギー機関の今年の「世界エネルギー見通し」 World Energy outlook 2011 の特別リポートは "Are We Entering a Golden Age of Gas?" と題されていますが、エコノミストから見て中長期的には石油と天然ガスの価格は裁定の範囲内にあり、輸送手段や埋蔵量とかの技術的な側面はいざ知らず、経済的な価格は同等・代替のエネルギーとして同じ動きをすると考えるべきです。加えて、もしも原発の稼働がかなりの程度に止まれば石油であれ天然ガスであれ、日経センターの中期見通しが示すように、温室効果ガスは増加するに決まっています。

繰返しになりますが、これらの動向は短期的、あるいは、循環的な動きではなく、中長期的、あるいは、構造的な変化であると認識すべきです。しかも、必ずしもエコノミスト的な観点だけでなく、安全なエネルギーの確保は原発の安全性の徹底とともに、国家安全保障につながる重要な問題です。少なくとも、経済的な比較優位の観点はまだ誰も主張していないので、このブログでしつこく取り上げておきます。

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2011年6月19日 (日)

スタンリッジ投手の完封と3-4番の打棒爆発で交流戦を白星で終える!

  HE
楽  天000000000 042
阪  神01130200x 7101

交流戦前半はあれほど調子を落としていた我が阪神タイガースですが、今日の試合は投打がかみ合ってお目覚めの快勝でした。投げる方ではスタンリッジ投手がまさかの完封で楽天打線を抑え切り、打つ方では3-4番、特に鳥谷遊撃手の打棒が爆発し、2ケタ安打で7点も取りました。藤井捕手のガッツあふれるプレーも見ごたえありました。
負け続けていた時にも投手陣はそこそこ抑えていたんですが、あれほど打てなかった打線が調子を取り戻しつつあるのは力強い限りです。後は、ブラゼル内野手だけが心配ですが、城島捕手と金本外野手が戻って来たら、スタメンはどうするんでしょうか?

来週はジャイアンツを甲子園に迎え撃つべく、
がんばれタイガース!

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2011年6月18日 (土)

国際通貨基金 (IMF) の「改定世界経済見通し」で日本は今年マイナス成長か?

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「改定世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) Update が発表されました。ほとんど震災の影響を盛り込んでいなかった4月の見通しでは今年2011年+1.4%、来年2012年+2.1%の成長を見込んでいたんですが、新たな改定見通しでは2011年▲0.7%のマイナス成長の後、来年は+2.8%と今年の反動や復興需要などもあって成長が加速すると見ています。主要な国の成長率見通しは以下の通りです。IMF のサイトから引用しています。なお、クリックすると別窓で pdf の全文リポートの p.2 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections だけを抜き出した pdf ファイルが開きます。

Latest IMF projections

それから、世界全体の成長率とインフレ率の見通しは以下のグラフの通りです。来年半ば以降も特に途上国でインフレが高止まりすると見通しを修正しています。IMF のサイトから引用しています。

Figure 1. Global GDP Growth and Inflation

さらに、経済見通しではないんですが、同じ IMF から、6月9日付けのエントリーで取り上げた IMF Article IV Consaltation の結果が IMF Staff Discussion Note SDN/11/13 "Raising the Consumption Tax in Japan: Why, When, How" として取りまとめられているとともに、「改定世界財政見通し」Fiscal Monitor Upate も明らかにされています。世界経済の不安定要因になりかねない日本財政を立て直すべく矢の催促です。前者の p.6 から Figure 3. General Government Tax Revenue in 2007 を以下に引用しておきます。以下に日本の税収が少なく、増税の余地が残されているかを表しています。

Figure 3. General Government Tax Revenue in 2007

非常に興味深いテーマですし、国際機関などの海外情報を詳しく取り上げるのは私のこのブログの特徴のひとつなんですが、週末の土曜日ですので簡単に済ませておきます。

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2011年6月17日 (金)

国民の平均IQが高いと1人当たりGDPは豊かになるのか?

今夜のエントリーでは、最近のアジアに関する研究成果を紹介しようと思います。世界的なレベルではなく、アジア地域だけのお話なんですが、標題に明らかな通り、国民の平均IQが高いと、1人当たりGDPは豊かかどうか、もっと、ぶっちゃけ明け透けに表現すれば、国民の頭がいいと国は豊かになれるのか、という極めて興味深い点に関する研究です。実は、先に種明かしをすれば、既存研究では、「頭がいいとしても個人の賃金には反映される度合いは小さいが、集団的な国としては生産性が高くなり、これは外部経済効果に基づく」というのが定説になりつつあり、今夜紹介するペーパーもこの点をサポートしています。ということで、アジア開銀が発行している研究誌 Asian Development Review の最新号から、以下の論文をナナメ読みした結果を紹介します。


まず、ペーパーの p.52 から Figure 1. National Average IQ and GDP per Capita across ADB Member Countries を引用すると下のグラフの通りです。タイトルはアジア開銀加盟国となっていますが、データの制約があって、実質的には極めて限られた国だけプロットされています。直観的に正の相関が読み取れます。すなわち、国民の頭がいいと国は豊かになれるという関係が成立しているようです。もっとも近似線から外れていそうなのが中国です。

National Average IQ and GDP per Capita across ADB Member Countries

そして、intelligence があって頭がいい場合、個人の賃金に反映される度合いよりも、一国全体としての生産性に貢献する度合の方が大きい、とする通説及びこのペーパーの結論を導く関係として、以下の貯蓄率、協力関係、技術、市場の4点で、国民の頭がいいと国全体の経済で有利であると論じています。

  1. intelligence is associated with patience and hence higher savings rates
  2. intelligence causes cooperation
  3. higher group intelligence opens the door to using fragile, high-value production technologies
  4. intelligence is associated with supporting market-oriented policies

計測可能な一例として、ペーパーの p.65 Figure 4. National IQ and Institutional Quality では、国民の平均IQと制度の質をプロットしています。なお、縦軸は上の方で数字が小さいほど制度の質が高いことを表しています。IQが制度の質を経由して1人当たりGDPという豊かさに結実しているのかもしれません。上のグラフと違って国数が増えていて、さらに、国名を明示していませんが、以下の通りです。IQが105のラインで下に外れているのは、やっぱり、中国なんだろうか、と勘繰ってみたくなります。

National IQ and Institutional Quality

最後に、今回発行の Asian Development Review 最新号では、ほかに "Infrastructure and Growth in Developing Asia" なども私がナナメ読みした範囲では興味ある分析を提供しています。最後の最後にいつものお願いですが、ナナメ読みしかしていない私がエラそうにいうつもりはないものの、この記事に目を通しただけでペーパーを読んだ気にならず、学術論文はキチンと読むようにしましょう!

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2011年6月16日 (木)

サマータイムの導入は節電と消費喚起に効果があるか?

私は20年近く前に3年間駐在していた南米チリでサマータイムの経験がありますが、今夏は国を上げてのサマータイムの導入こそ見送られたものの、震災の影響に伴う節電の必要などから、地域ベースで、あるいは、会社単位でサマータイムを導入する例が増えています。反対論が根強い一方で、節電をはじめとするエネルギー消費の削減に一定のの効果があるとの試算例もあります。例えば、やや古いんですが、環境省の中央環境審議会地球環境部会第28回会合において提出された「サマータイム制度導入による省エネ効果試算結果」では、社会経済生産性本部の試算結果を引用して、サマータイム導入による二酸化炭素削減効果は25-123万トンとしています。環境省の算定に従えば、2009年度で12億トンを超える我が国の温室効果ガスの排出量から見れば微々たるものですが、サマータイムの温室効果ガス排出削減効果はゼロではありません

退社後の時間の過ごし方

他方、6月14日に発表されたマクロミルの「サマータイム導入による 'アフター4' の過ごし方に関する調査」結果によれば、勤務先がサマータイムを導入し退社時刻が早くなった会社員・公務員について調査したところ、上のグラフの通り、男女ともほぼ過半が「まっすぐ帰宅する」と回答している一方で、「ショッピング」、「飲みに行く」も無視できない割合、特に女性では「ショッピング」が高い割合を示しています。これまた、温室効果ガスの排出削減と同じで、サマータイムの消費喚起効果は微々たるものながらゼロではないという結論になりそうな気がします。

省エネや温室効果ガス排出削減にせよ、消費の喚起にせよ、かなり効果は小さいのではないかと推定されるサマータイムなんですが、実際に体験した私の感想は少し違います。チリのような西に向かった海岸線が長々と続く国で、午後9時ころに太平洋に沈む太陽の眺めは格別です。それを見るころまで昼間と変わらぬ活動が可能なのも魅力です。せいぜい7時に起きる私のようなサラリーマンにとって、4時半に日の出があっても太陽の恵みがムダになっているとしか思えません。無用の残業が増えるとか、反対論が根強いことは承知していますが、今年だけでも2時間くらい時計を早めるサマータイムを実施してはどうでしょうか?

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2011年6月15日 (水)

無失点記録を続けるダルビッシュ投手から2点を奪って阪神が連勝!

  HE
日本ハム000001000 162
阪  神00100010x 290

調子を取り戻しつつある阪神打線が、無失点を続けるダルビッシュ投手から2点を奪って日本ハムに連勝です。3回ウラの得点こそ暴投によるものでしたが、7回ウラのラッキーセブンはマートン外野手のタイムリーでした。それにしても、7回ウラは藤井捕手のバント失敗のゲッツーでチャンス潰えたかに見えましたが、マートン外野手がよく打ちました。アッパレです。投手の方では先発のメセンジャー投手が6回1失点としっかり投げ切りました。決勝点を上げたマートン外野手とともにヒーロー・インタビューを受けてもおかしくないと感じました。また、投手陣の心配は8回のセットアッパーだったんですが、小林投手も見事な投球でした。特に3人目の稲葉選手を三振に切って取ったワンバウンドの球をしっかり捕球した藤井捕手のキャッチングが光ります。
それにしても、私の勘違いでなければ、捕手と左翼手を交代させてから、特に若手を起用したとも思えませんが、チームの雰囲気が見違えるように上向いた気がします。それとも、単なる私の勘違い?

交流戦最後の楽天戦も、
がんばれタイガース!

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日経センターの第37回中期予測改定版をどう読むか?

昨日、日本経済研究センターの第37回中期経済予測が発表されました。予測期間は本年度2011年度から2020年度までです。今日の午後には岩田理事長自らがプレゼンを行う説明会も開催されていたようです。まず、日経センターのサイトから予測の概要を引用すると以下の通りです。

第37回改訂中期経済予測(2011-2020 年度)
東日本大震災によって、向こう10年間の日本経済の姿はどう変わるのか。電力不足、津波による破壊と復興需要などの要因を織り込み、2月に公表した「第37回中期経済予測」を改訂した。福島第1原子力発電所の重大事故を受け、原発の安全性には厳しい目が向けられている。定期点検に入る原発が順次停止した場合、電力不足で生産能力は2012-20年度の平均で年1.2%押し下げられ、7兆円の経済損失を生む。需要面からは東北地方のインフラ復興などで成長が押し上げられるが、生産を支えるために原発が火力発電で代替され、化石燃料輸入が急増、貿易・サービス収支は今後、恒常的な赤字となる。経常収支は17年度以降赤字となる。温暖化防止に削減が不可欠であるCO2排出量は20年度には1990年比でむしろ約14%増え、国際的な温暖化ガス削減目標を達成することは極めて難しくなる。復興費用に加え、成長の下振れによる税収減少で財政は一段と悪化、財政破綻を避けるため、負担増が避けられない見通しだ。

次に、この中期予測のポイントを概要から引用すると以下の通りです。

  1. 全原発停止、長期化で供給力(潜在GDP)を引き下げ
    (12-20年度平均で1.2%、年7.2兆円の富が喪失)
  2. 貿易・サービス収支は赤字定着、経常も17年度から赤字に
  3. 財政赤字、一段と膨らむ、負担増が不可避に
  4. 温暖化ガスの排出量は急増

さらに、これも日経センターのサイトから予測期間中の経常収支の見通しのグラフを引用すると以下の通りです。

経常収支の見通し

最大の注目点は供給サイドの潜在GDP成長率の低下がどれだけ実際の成長率に影響するかだと私は受け止めています。もちろん、1990年代半ば以降のいわゆる「バブル崩壊」以降の日本経済の長期低迷を潜在成長率の低下に起因すると実証した Hayashi and Prescott "The 1990s in Japan: A Lost Decade" のような Real Business Cycle 的な観点も中長期の経済予測では重要です。
原発停止などに伴う電力の供給制約がほとんどすべての起点となります。経済的には供給制約のために2010年代前半のうちにGDPギャップは正に転じ、物価が上昇を始めるとともに、財・サービス輸出が生産の増加を見込めないため経常収支が赤字化します。従って、結論として、第1に、このままの財政バランスを続けると国債の国内消化が困難になる可能性が高まります。すなわち、財政破綻の可能性が大きく高まります。第2に、化石燃料輸入のための所得の海外流出が大きくなります。第3に、環境的には温室効果ガス排出削減目標の達成はほとんど不可能となります。
これらの帰結の起点となるのは電力供給ですから、日経センターのリポートでは、第1に、ガス・タービンによる発電量の増加が提唱されています。私はこの技術的な評価は出来ませんのでパスしますが、それでも、一般論として、自家発電を個別バラバラに実施するよりも集中的な発電と配電の方が効率的であるとの観点から電力会社というものが設立されているのではないかと思いますので、少し疑問がないわけではありません。第2に、温室効果ガスに対する環境税を復興税として課税することも提示されています。確かにこれは有効な気がします。
さらに、日経センターのリポートの書いていない重要な論点を私なりに考えると、まず、社会保障の財源を中期経済予測で外すのはいかがという気もしますが、あえてこの点は譲るとしても、TPPや自由貿易協定の展開による新たな比較優位構造の模索を取り上げていないのは大きな欠陥だといわざるを得ません。もちろん、今回の中期予測は第37回予測の改定との位置づけで、電力に起因する供給制約のみを取り上げているとの前提でしょうが、これだけ輸出が減少しているのは、新たな供給制約に対応した比較優位構造の変化が生じていると解釈すべきであり、これは中長期的な経済政策の大きな課題だという気がします。当然ながら、TPPや自由貿易協定の推進を政策的に組み合わせることも考えるべきです。

供給サイドを考慮する際には世界経済の中で、日本がどのような比較優位を持つのかという観点はかなり重要です。次回の中期予測の本格改定を注目したいと思います。

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2011年6月14日 (火)

見事な投手戦の幕切れは関本内野手のサヨナラ打!

  HE
日本ハム000000000 051
阪  神000000001x 161

なかなか見ごたえのある投手戦の幕切れは関本内野手のヒットでサヨナラ勝ちでした。岩田投手は先日の能見投手に続いて、今季2人目の完投完封勝利です。この2人がヒーロー・インタビューだったのは当然でしょう。
相変わらず、サッパリ打てませんが、少しずつチーム状態は上向いているのか、勝ち星につながる試合が増えたように感じます。それにしても、ひょっとしたら、藤井捕手に任せて城島捕手を引っ込めてから上向きになったという気がしないでもありません。あるいは、私の勘違い?

明日も甲子園で、
がんばれタイガース!

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上原ひろみの新しいアルバム『VOICE』を聞く

上原ひろみ『VOICE』

すでに3月に発売されているCDですが、上原ひろみの『VOICE』を買いました。初回限定盤の CD+DVD バージョンです。実は、この日曜日に届くように注文したつもりだったんですが、少し当てが外れて昨日の月曜日に届きました。モロに平日に届いたので時間がなく、まだDVDの方は見ていません。アルバムの構成は以下の通り9曲です。

  1. Voice
  2. Flashback
  3. Now or Never
  4. Temptation
  5. Labyrinth
  6. Desire
  7. Haze
  8. Delusion
  9. Beethoven's Piano sonata No.8, Pathetique

コンボの構成は、6弦ベースを操るアンソニー・ジャクソン、2ベース・ドラムスのドラム・セットを叩くサイモン・フィリップスからなる極めて標準的なピアノ・トリオで演奏しています。前のアルバム『Place to Be』は、どうしても映画「オリヲン座からの招待状」のサウンド・トラックという印象がぬぐい切れなかったですし、グラミー賞を受賞したとはいえ、スタンリー・クラーク・バンドでの演奏も「ヨソのバンド」という印象がありましたから、自前のピアノ・トリオの演奏を大いに期待して聞いたところ期待にたがわぬ素晴らしい出来栄えでした。
かつて、来日していたチック・コリアと17歳で共演し、バークリー音楽大学ジャズ作曲科を首席で卒業した天才少女も、昔ながらの童顔ながら30歳を超えて、いよいよジャズ・ピアニストとしては脂がのって来ました。小曽根真とともに日本を代表するジャズ・ピアニスト、作曲家と私は受け止めています。相変わらずよく動く指が30年後、40年後にどうなるかは私には確かめられないのが残念ですが、デュエット・アルバムも出したチック・コリアのラインに加えて、キース・ジャレットのようなテンションの高い魂のピアノを聞かせ続けて欲しいと思います。

最後に、スタンリー・クラーク・バンドでも演奏していて、新しい『VOICE』にも収録されている「ラビリンス」の動画を引用しておきます。

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2011年6月13日 (月)

機械受注から見た設備投資は先行き楽観的か、悲観的か?

本日、内閣府から4月の機械受注統計が発表されました。コア機械受注と呼ばれる船舶と電力を除いた民需は設備投資の先行指標と見なされています。季節調整済みの系列で見て、このコア機械受注は4月に7119億円となり、前月に比べ▲3.3%減少しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、4月3.3%減 内閣府「一部で弱い動き」
内閣府が13日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は7119億円となり、前月に比べ3.3%減少した。減少は4カ月ぶり。機械メーカーへの発注のキャンセルなど東日本大震災の影響が一部に表れた。4-6月は前期(1-3月期)に比べ10.4%増を見込むが、実績はこの見通しを下回る公算が大きくなってきた。
内閣府は3月に「持ち直し傾向にあるものの、非製造業で弱い動きがみられる」としていて、今回は製造業にも一部に弱い動きがあると指摘した形。ただ内閣府は「基調判断を下方修正したわけではない」としている。
市場では4月の機械受注について、2%程度のプラスを見込んでいたが、予想に反して減少に転じた。内閣府は「一部の業種で発注のキャンセルが出た」としている。震災の影響を受け、宿泊業などでキャンセルが出たとみられる。
発注した企業を業種別にみると、製造業が2.7%減。一般機械が建機などの発注を減らし15.0%減と大きく落ち込んだ。3月に18.0%減少した自動車・同付属品は1.3%増にとどまり、震災で投資を見送る動きが出た可能性もある。
非製造業(船舶・電力を除く)は2.9%増加した。船舶用エンジンなど内燃機関が増えた農林漁業は17.2%伸びた。電子計算機の大型案件が出た情報サービス業も14.4%伸びた。一方、運輸業・郵便業や卸売業や小売業は減少した。
内閣府が機械メーカーを対象に調査した4-6月の見通し(携帯電話を除く)は前期比10.4%増だった。4月が前月比3.3%減だったため、5-6月に12.3%ずつ増加しないと見通しを達成できない。見通しの達成に向けたハードルは高い。
大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「機械受注の増加基調そのものは崩れないだろう。サプライチェーン(供給網)の復旧は予想以上のペースで、設備投資の先行きに悲観的になる必要はない」としている。
内閣府は4月調査より、携帯電話を調査対象から外した。携帯端末は通信業者が機械メーカーに発注するが、端末を購入するのは個人。国内総生産(GDP)でも設備投資ではなく個人消費に分類される。

次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルが船舶と電力を除くコア機械受注とその後方6か月移動平均をプロットしてあり、下のパネルは需要者別の機械受注です。下のパネルの非製造業には船舶と電力は除いてあります。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。なお、引用した日経新聞の記事にもある通り、この4月統計から携帯電話を調査対象から外し、「機械受注統計調査票における需要者分類等の変更について」で示されている分類を反映しています。そのため、2005年4月以降の統計しか利用可能でなく、上のパネルでは6か月後方移動平均を取っていますので、グラフは2006年1月からプロットしています。

機械受注統計の推移

まず、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスの前月比+2%に比べて大きく下回っており、しかも、製造業が前月比▲2.7%減となりましたから、製造業が震災を契機に生産拠点を海外に移転するため設備投資が盛り上がらないとする悲観論もあり得るわけですが、私は何ら悲観するに当たらないと受け止めています。第1に、季節調整の技術的な要因によりマイナス幅が大きく見えている可能性があります。すなわち、繰返しになりますが、製造業が前月比▲2.7%減、船舶と電力を除く非製造業は+2.9%増であるにもかかわらず、コア機械受注では▲3.3%減となっており、外需の▲1.2%減を考え併せても整合性が取れません。2005年4月以降の少ないサンプルの中で、季節調整で何かわけの分からないことが生じていそうな気がしないでもありません。第2に、4-6月期の見通しが+10%超の増となっており、達成はそれほど容易ではないものの、足元から目先にかけて、それなりに上向き傾向が読み取れます。第3に、需要サイドから、景気ウォッチャーや消費者態度指数で見た消費者や生産者のマインドが急速に改善しています。特に、被災地のマインド改善が大きく、夏にかけて自粛ムードは影をひそめる可能性すらあります。第4に、供給サイドから、最近になればなるほど、自動車や電子機械などのサプライチェーンの復旧が前倒しで見込めるようになっています。相変わらず、被災地域や関東だけでなく、夏場の電力需給の見通しは不透明ですが、ここまでサプライチェーンの復旧が進めば、製造業が震災を契機に大挙して海外移転する可能性は大いに低下したと考えるべきです。もしも、いわゆる「空洞化」が生じるとすれば、震災というよりも現下の円高に起因すると考える方が自然な気がします。大雑把にまとめると、震災の起こった3月以降、直近の4-5月くらいまでと違って、足元の6月から先行きは、日本経済すべてをひっくるめて決して悲観する必要はないと私は受け止めています。設備投資やその先行指標であるコア機械受注についても、あるいは、マインドが改善しつつある消費も含めて、このコンテクストの中で私は楽観的に捉えています。

設備投資の先行きを考える場合、7月1日に発表予定の6月調査の日銀短観設備投資計画が次の注目点です。6月29日に公表される鉱工業生産指数を除いて、7月1日には日銀短観をはじめ、5月の失業率や有効求人倍率などの雇用統計、さらに消費者物価など、重要指標がいっせいに公表されます。

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2011年6月12日 (日)

有川浩『県庁おもてなし課』(角川書店) を読む

有川浩『県庁おもてなし課』(角川書店)

有川浩さんの『県庁おもてなし課』(角川書店) を読みました。実は、この作者は以前に『阪急電車』と『フリーター、家を買う』といった話題の本は読んでいます。もっとも、今度読んだ『県庁おもてなし課』を含めて3冊とも図書館で借りています。初期の自衛隊3部作や『図書館戦争』シリーズは読んでいません。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

あらすじ
とある県庁に突如生まれた新部署"おもてなし課"。
観光立県を目指すべく、若手職員の掛水史貴は、振興企画の一環として、
地元出身の人気作家・吉門喬介に観光特使就任を打診するが…。
「バカか、あんたらは」。吉門にいきなり浴びせかけられる言葉に掛水は凍りつく―いったい何がダメなんだ!?
悩みもがく掛水は、そんな中、県庁内でも知る人ぞ知るおよそ20年前に提唱された、
革新的な地域振興プラン「パンダ誘致論」に行き着く。
掛水は県庁内で伝説となっているその地方振興プランを探り始めるが……!?
「パンダ誘致論」とは一体何なのか、そして、それを提唱した人物とは? そしてその先に見え隠れする突破口とは!?
"お役所仕事"と"民間感覚"の狭間で揺れ動く、掛水とおもてなし課の地方活性にかける苦しくも輝かしい日々が始まった!

私が従来からこの作者の作品、読んだ限りですが、『阪急電車』と『フリーター、家を買う』とこの『県庁おもてなし課』について感じているのは、確かにハッピーエンドで終わっていて、読後感もよくて適度にラブストーリーになっているんですが、ホントに現実的なんだろうか、ということです。内輪の出来過ぎた話で終わっている可能性はないだろうかという気がします。特に、今回の物語は作者の出身の高知県における実在の「おもてなし課」を舞台にしているだけに、観光という市場で価値が貨幣単位で計測される成果をお手盛りの評価で終わらせていないか、という不安があります。エコノミストの考え過ぎなのかもしれませんが、しばしば官庁というのはこういった自己満足で終わることがあり、市場で計測される「民間感覚」との大きな隔たりを生んでいることは、この小説の中で作者自身が指摘しているところです。もちろん、この小説自身はベストセラーに名を連ねて市場での評価は誠に素晴らしいものがありますが、物語の中身、すなわち、高知県の観光振興がどこまで市場で評価されているかは私の知らない範囲ですので、ついつい不安になってしまいます。特に、高知県といえば、私が昨年まで単身赴任していた長崎や島根、青森などと並んで衰退の著しい地方として名を上げられる場合の多い県です。ホントに県庁おもてなし課がうまくいっているんであれば、とってもハッピーなんでしょうが、地方振興や観光についてはトンと専門外の私にまで情報は伝わって来ません。でも、繰返しになりますが、楽しく読めて適度にラブストーリーになっていて、読後感もさわやかで、小説としてはとってもいい出来に仕上がっている気がします。素直に市場に判断されている通りです。

市橋達也『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』(幻冬舎)

次に、これも話題の書で、市橋達也被告の『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』(幻冬舎) も図書館で借りて読んでみました。2007年3月、千葉県市川市のマンションで英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさんが殺害された事件で殺人と強姦致死の罪で起訴されている著者が、事件の後、2009年11月に逮捕されるまでの約2年7か月の間、どこにいて、どのような生活をし、何を考えて来たかを取りまとめたものです。すでに朝日新聞の書評でほぼ私の言いたいことが簡潔に取りまとめられていますので、簡潔に、特に強く同意する最後のパラだけを以下に引用します。

「文学」に昇華した逃亡物語
本書を「不道徳」と非難する人は、罵りながらも本書を買っているのだろう。テレビのワイドショーで、司会者が「許されませんね」と眉をひそめつつも殺人事件をエンターテインメントとして消費するのと、同じ構造だ。本書を「不道徳」と捉えることは、実は自らが衆愚的なニュースの消費者に陥りかねない、という危険な罠が潜んでいるのである。

図書館にリクエストしていたスティーヴン・キングの最新刊『アンダー・ザ・ドーム』上下が届きました。この大作を読み終えるまで、しばらく読書感想文の日記はお休みになるかもしれません。

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2011年6月11日 (土)

映画「プリンセス・トヨトミ」を見に行く

映画「プリンセス・トヨトミ」ポスター

今日は朝から雨が降っていてお天気が冴えなかったものですから、室内競技に的を絞り映画「プリンセス・トヨトミ」を見に行きました。先日5月15日付けのエントリーで取り上げた万城目学さん原作の『プリンセス・トヨトミ』を映画化した同タイトルの劇場版映画です。上のポスターにある通り5月28日の封切りです。ポスターの上段と下段真ん中は会計検査院のキャスト、下段の真ん中以外は大阪のキャストです。
決して原作に忠実に作られている映画とはいえないかもしれませんが、当然ながら、豊臣家の末裔のプリンセスを大阪を上げて守るシステムが出来ている、という点に関しては決して外せるわけではありません。会計検査院のキャストの鳥居役とゲーンズデール役の男女が逆だったりしますが、それはそれなりに楽しめます。さらに、大阪城地下の国会議事堂に延びる赤じゅうたんとか、大阪府庁に集う大量の中年男性とか、映画ならではの画像の迫力は感じられました。ただし、難点が3点あります。第1に、撃たれるのが真田ではなく松平に設定されています。これでは、「父の言葉」という観点ではなく、単に暴力に屈したとも取られてしまう恐れがあります。第2に、ラストに蜂須賀組の組長が中学校の校門前にベンツを乗り付け、息子とともに頭を坊主にして土下座して詫びるシーンは抜かして欲しくなかった気がします。第3に、小説と映画の大きな差は画像だけでなく音楽にもあります。エンディングを含めて音楽がゆったりしたリラックス調のものではなく緊張感あふれる曲であったら、もっと効果的だった気もします。でも、これらの難点を含めても素晴らしい映画に仕上がっていたように私は受け止めています。

昨年暮れから今年前半は、よく映画を見ている気がします。家族で見に行ったハリー・ポッターや名探偵コナンのシリーズを別にしても、「武士の家計簿」、「白夜行」、「まほろ駅前多田便利軒」に加えて、この「プリンセス・トヨトミ」も鑑賞していたりして、単なる偶然ながら、ほぼ毎月1本のペースを堅持しているような気がします。

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2011年6月10日 (金)

企業物価も消費者物価も震災の影響は受けないのだろうか?

本日、日銀から5月の企業物価指数が発表されました。ヘッドラインとなる国内企業物価は前年同月比で+2.2%の上昇と、4月から上昇率が鈍化しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業物価指数、前年比2.2%上昇 伸び鈍化
日銀が10日に発表した5月の企業物価指数(2005年=100、速報値)は105.5となり、前年同月比で2.2%上昇した。上昇率は2年半ぶりの高水準だった4月(2.5%)に比べて縮小した。新興国の需要増に伴う資源高を受け8カ月連続で上昇した。ただ、足元は国際商品価格が下落に転じたうえ需要減による機械などの価格引き下げもあり、上昇の勢いは鈍った。
企業物価指数は製品の出荷や卸売りの段階で企業同士が取引する商品の価格水準を示す。日銀は「このところの上昇ペースに一服感が見られる」と指摘している。東日本大震災による影響は限定的だった。
項目別では、資源価格の上昇で上昇傾向が強かった鉄鋼は前年同月比5.7%と、前月(8.3%)より減速。金属製品も同様に上昇率が鈍った。一方、需要減速などから、情報通信機器はマイナス5.8%(前月はマイナス5.1%)となった。
調査対象の855品目のうち、上昇したのは372品目(43.5%)、下落したのは309品目(36.1%)。前月に続いて上昇品目数が下落品目数を上回った。
前月比ではマイナス0.1%で、8カ月ぶりに下落した。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは国内、輸出、輸入の各企業物価のそれぞれの前年同月比上昇率、下のパネルは国内物価を需要段階別に素原材料、中間財、最終財のそれぞれの前年同月比上昇率です。色分けは凡例の通りです。

企業物価上昇率の推移

私の率直な実感として、この企業物物価でなく、消費者物価も含めて、物価に対する震災の影響が小さいことに少し驚いています。実は、震災の影響がまだ統計に表れていない分野はもうひとつあって、それは雇用統計、特に失率です。失業率についてはやむを得ない理由があり、総務省統計局が震災3県を除いた集計を発表しているからです。震災の影響が小さいのは当然です。
従来からこのブログで主張している通り、震災の影響は需要と供給の両面に現れ、サプライ・チェーンなどの供給サイドからの下押し圧力、消費者マインドの悪化による需要に起因する下押し圧力、などが主たるものと考えられ、財市場ではインフレ的、労働市場ではデフレ的、両者を合わせてスタグフレーション圧力が国内経済に加わる、と私は想定していました。鉱工業生産指数で見た生産や家計調査で判断する限りの消費は、想定通りにかなり大きなダメージを受けたんですが、サプライ・チェーンなどの供給サイドのダメージにもかかわらず物価については震災の影響はほとんど見られません。基本的には、経済学的に見た「短期の現象」であって、要するに、価格により調整する「長期」の前段階にまだあり、量で調整している「短期」なんだろうと解釈していますが、ややパズルです。ここまで価格の調整速度が遅いとは想定していませんでした。こんなに遅くて市場メカニズムが正常に作用するのか心配なほどです。

物価はその本質から名目値で決まる金融市場を大きく動かす場合もあるんですが、我が国の場合はかなり物価が persistent なんではなかろうかと考える今日このごろです。

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2011年6月 9日 (木)

国際通貨基金 2011 Article IV Consultation も2次QEも大きな変化なし

昨日、国際通貨基金 (IMF) の調査団から日本に対する Article IV Consultation 結果が公表されました。経済見通しなどの経済の現状と先行きに関する見通しを示した上で、財政赤字に対して消費税率を15%まで引き上げる必要との見方を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

「消費税率、来年2-3%上げを」 IMFが日本に提言
日本経済「今年後半に力強く回復」

国際通貨基金(IMF)は8日、2011年の対日経済審査報告に向けた日本政府などとの協議を終え、「12年から消費税率を2-3%引き上げることを推奨する」との声明を発表した。東日本大震災後の日本経済について「今年後半に力強く回復に向かう」と指摘。11年はマイナス0.7%成長に落ち込むが、12年にはプラス2.9%に回復すると予測した。
声明は「日本は緩和的な金融政策を他の先進国よりも長く維持する公算が大きいため、円が下落する可能性がある」とも指摘した。
復興財源は「消費税率引き上げで賄うことが可能」としたうえで、景気が回復局面となる12年から徐々に引き上げるよう求めた。財政健全化のためには現行5%の消費税率を「数年以内に15%まで引き上げる必要がある」との見方も示した。

経済見通しについては震災の影響を織り込んで、本年2011年は▲0.7%のマイナス成長と、4月の「世界経済見通し」の+1.4%からから大きく下方修正されましたが、来年2012年は+2.9%成長にリバウンドすると見込まれています。IMFのサイトから引用した経済見通しのテーブルは以下の通りです。

 201020112012
(Calendar Year, Growth Rate)
Real GDP4.0-0.72.9
Total domestic demand2.20.02.5
Net exports (contribution)1.8-0.70.4
CPI inflation (average) 1/-0.70.10.0
Current account balance (in percent of GDP)3.62.52.9
General government balance-9.6-10.5-9.1
Gross debt (in percent of GDP)220.4233.7236.2
Net debt (in percent of GDP)117.6131.1137.8
Source: IMF staff estimates.
1/ Projections do not include an estimate of the CPI base-year change scheduled for August 2011.

しかし、国内のメディアで最も重視されたのは財政赤字と消費税率の引上げに関するIMFの見方ではないでしょうか。実は、このブログの昨年2010年5月24日付けと7月15日付けのエントリーで取り上げた前回の結論とほとんどスタンスの変更はないと私は受け止めています。ただし、現在の政府の方向性をいくぶんなりとも考慮してか、来年から2-3%ポイントの消費税率引上げを示唆しつつも、結論として、昨年と同じ15%水準への引上げを推奨しています。"The key revenue measure would be a gradual increase in the consumption tax to 15 percent over several years" ということです。チェックシート付きで、IMFのリポートの Table 2: Possible Options for Reducing the Primary Deficit by 10 percent of GDP over 10 Years を引用した下の表の通りです。

Possible Options for Reducing the Primary Deficit by 10 percent of GDP over 10 Years

最後に、ついでの扱いになりましたが、本日、内閣府から今年1-3月期の2次QEが発表されました。すでに、月曜日6月6日付けのエントリーで取り上げていますが、1次QEからは小幅の上方改定となりました。季節調整済みの系列で見て、前期比は▲0.9%のマイナス成長は変わりありませんでしたが、前期比年率は▲3.7%から▲3.5%にわずかに上方修正されました。簡単に、いつもの前期比伸び率のテーブルと寄与度のグラフを示すにとどめます。

需要項目2010/
1-3
2010/
4-6
2010/
7-9
2010/
10-12
2011/1-3
1次QE2次QE
国内総生産(GDP)+2.3▲0.0+0.9▲0.7▲0.9▲0.9
民間消費+1.0▲0.2+0.8▲1.0▲0.6▲0.6
民間住宅+1.4▲0.6+1.9+3.2+0.7+0.7
民間設備+1.6+2.6+1.0+0.0▲0.9▲1.3
民間在庫 *+1.0▲0.5+0.5+0.0▲0.5▲0.4
公的需要▲0.4+0.1▲0.3▲0.6+0.6+0.6
内需寄与度 *+1.7▲0.2+1.0▲0.6▲0.8▲0.7
外需寄与度 *+0.6+0.2▲0.1▲0.1▲0.2▲0.2
輸出+6.7+5.2+1.6▲0.8+0.7+0.7
輸入+2.9+4.1+2.9▲0.3+2.0+1.9
国内総所得(GDI)+1.6▲0.5+0.9▲0.7▲1.6▲1.5
名目GDP+2.2▲1.0+0.6▲0.9▲1.3▲1.3
雇用者報酬+1.3+0.5+0.6▲0.1+0.2+0.2
GDPデフレータ▲2.8▲2.0▲2.1▲1.6▲1.9▲1.9
内需デフレータ▲1.4▲0.9▲1.5▲1.1▲1.0▲0.9
GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

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2011年6月 8日 (水)

輸出が大きく落ち込んだ経常収支とリバウンド激しい景気ウォッチャー

本日、財務省から経常収支などの国際収支が、また、内閣府から景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。国際収支は4月、景気ウォッチャーは5月の統計です。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

経常黒字、4月は7割減の4056億円 震災で輸出減響く
財務省が8日発表した4月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支の黒字額は4056億円と前年同月比で69.5%減少した。4月の黒字額としては比較可能な1985年以降で最低となった。
4月は貿易収支が4175億円の赤字に転落した。訪日外国人の落ち込みで、旅行や輸送などのサービス収支も赤字額が前年同月比で6.3%増加した。
一方、利子や配当にかかわる海外との取引を示す所得収支は黒字額が前年同月比34.9%増と大幅に増えた。海外からの投資信託の分配金が増えていることが一因。財務省は「分配金は地震と関係があるとは考えにくく、当面続く可能性が大きい」(国際局)と説明。当面は経常収支の黒字の目減りを抑える要因となる可能性がある。
一部の金融機関が前年同月に海外支店へ多額の送金をした反動で、海外へのお金の流出が減ったという特殊要因も所得収支の黒字増加に寄与した。
街角景気2カ月連続改善 5月現状判断は09年3月以来の上昇幅
内閣府が8日発表した5月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比7.7ポイント上昇の36.0と、2カ月連続で改善した。リーマン・ショック後の改善がみられた2009年3月(9.0ポイント上昇)以来の上昇幅で、比較可能な00年1月以降でも3番目の大きさ。2-3カ月先の先行き判断指数も6.5ポイント上昇の44.9と2カ月連続で改善した。
内閣府は基調判断を「東日本大震災の影響により厳しい状況が続いている」から「震災の影響により厳しい状況が続いているものの、上向きの動きがみられる」と上方修正した。
東日本大震災発生後の自粛ムードの弱まりによる購買意欲の回復や復旧・復興による需要期待、生産の早期回復への期待が背景。夏場に向けた節電対策として、照明器具やエアコンなど家電製品の需要、生産前倒しによる増産もみられた。
一方、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響や観光業などの落ち込み、夏場の電力供給の不透明さを懸念する声は強い。原材料価格の高騰をコスト転嫁できないといった声も聞かれた。
地域別にみると、現状判断は全国的に回復がみられるなか、沖縄のみ3カ月連続で低下している。記者会見した和田隆志内閣府政務官は「製造業より非製造業の立ち直りが弱く、なかでも観光業が極めて悪い。原発事故の風評被害を脱却する必要がある」と指摘。また、大幅に改善した東北地方についても「サプライチェーンの代替効果を見極める必要がある。これから先そのまま回復していくかは極めて慎重な見方をしないといけない」との認識を示した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は5月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支尻で、棒グラフがその内訳となっています。いずれも左軸の単位は兆円です。棒グラフの色分けは凡例の通りです。なお、グラフは季節調整済みの系列に基づいてプロットしていますので、引用した記事と少し印象が異なる可能性がありますが、引用した記事と共通する明らかな特徴は、黒い棒グラフで示した4月の貿易収支が赤字になっていることです。季節調整済みの系列での貿易赤字は2008年9月のリーマン・ショック後以来なんですが、当時よりも現在の方がかなり赤字幅が大きいことが読み取れます。震災に伴う供給制約のために輸出が大きく減少した影響が表れています。もっとも、この貿易赤字はかなり短期の減少であり、震災からの復興が始まればV字回復する可能性が大いにあると私は受け止めています。

経常収支の推移

別の面で、日本経済のV字回復の可能性を示唆しているのが下のグラフの景気ウォッチャー調査結果です。引用した記事にもある通り、赤い折れ線の現状判断DIも、水色の先行き判断DIも、いずれも大きくリバウンドしていますが、先行きの方がより大きく回復していことが、この4月から5月にかけての特徴です。単純に捉えると、先行きがだんだんと明るくなっていくという意味ですが、これがいつまで続くか、すなわち、現状判断DIの折れ線が先行き判断DIを下から切るのはいつか、を私は注目しています。景気の本格回復のシグナルかもしれません。いずれにせよ、消費もひょっとしたらV字回復するのかもしれないと注目しています。

景気ウォッチャー調査の推移

最後に、適当なものがなかったので図表の引用はしませんが、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects, Volume 3, June 2011が公表されています。いくつかのメディアで報じられている通り、我が国の今年2011年の成長率は+0.1%と見込まれています。もっとも、来年2012年の成長率は+2.6%に大きくリバウンドし、さ来年2013年も+2.0%と順調な成長を続けると予想されています。pdf の全文リポートの p.2 の Table 1 The Global Outlook in summary と、p.5 の Box 1 Short-term impact of the disaster in Japan を、それぞれ今夜のエントリーの参考にしています。

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2011年6月 7日 (火)

国際決済銀行 (BIS) 四半期報の震災記述と景気動向指数を読み解く

昨日、国際決済銀行 (BIS) から四半期報 BIS Quarterly Review, June 2011 が発表されました。リポートの p.4-5 の 囲み記事で The Japanese earthquake and tsunami と題して、いくつかグラフを示しながら、ごく簡単に東北大震災の経済的影響を振り返っています。

Market reactions to the Tohoku Pacific earthquake

まず、上のグラフは BIS のサイトから引用した Market reactions to the Tohoku Pacific earthquake です。左のパネルに見られるように、東証の日経平均株価は震災で大きく下落し、まだ、震災前の水準には復帰していません。しかし、私の目から見て、上値は重いんですが、下値も堅いように見受けられます。真ん中のパネルは円レートの推移を示しています。私のこのブログでも3月15日付けのエントリーで地震が起こると円高になるという経験則を披露していますが、G7の協調介入により円の独歩高には歯止めがかかりました。でも、またしても最近時点で円高が進んでいるのは報じられている通りです。右のパネルでは我が国のソブリンに対するCDSスプレッドがプロットされています。復興財源を考慮して財政悪化が見込まれたことから、一時、大きく跳ね上がりましたが、今では震災前の水準に戻っています。震災が日論と背系の経済に及ぼす影響について、BIS は "The possible implications of these events for the Japanese economy as well as the global economic outlook and financial markets are manifold, and uncertainties associated with these effects continue." と結論しています。 もっとも、"manifold" と言ってしまえば「何でもアリ」のような気もします。

VIX index の推移

ついでながら、震災後の市場環境を確かめるため、VIX指数のグラフを書いてみました。5月11日付けのエントリーに書いた通り、VIX指数とはシカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P 500 を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出している指数で、大きいほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる指標です。別名で「恐怖指数」とも呼ばれます。私は Yahoo! Finance からデータを取っています。上のパネルが2008年1月以降、下が今年3月以降のデータです。福島第一原発の事故を主因として3月16日に30近くまで跳ね上がりましたが、その後は落ち着いた動きを示しています。下のパネルでは震災前水準を黒い棒グラフで示していますが、このラインを超えることはなくなりました。

景気動向指数の推移

最後に、本日午後、内閣府から4月の景気動向指数が発表されています。上のグラフの通り、輸送機械を除く投資財出荷指数の寄与などで一致指数は4月に反転しましたが、ほぼ底をはっている状態ですし、先行指数は落ち続けています。

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2011年6月 6日 (月)

木曜日発表の1-3月期2次QEは1次QEから小幅の改定か?

内閣府国民経済計算部による今週木曜日6月9日の発表を前に、被災地域が入っていない速報バージョンながら先週発表された法人企業統計を含めて、GDP統計2次速報に必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから2011年1-3月期の2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。2次QEですから、特筆すべき内容は見受けられませんでした。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.9%
(▲3.7)
n.a.
日本総研▲0.9%
(▲3.6%)
設備投資と公共投資が下方修正される一方、在庫投資は上方修正される見込み。
みずほ総研▲1.0%
(▲4.0%)
民間在庫投資がGDP下方修正の主因であるが、公共投資についてもわずかながら下方修正される見込みである。
ニッセイ基礎研▲0.9%
(▲3.6%)
GDPベースの設備投資は今回の法人企業統計の結果をかなり割り引いて考える必要がある。
第一生命経済研▲1.0%
(▲3.9%)
月次で見れば3-4月を底として明確な持ち直しが展望できる状況になっており、事態は既に改善に向かっている。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.7%
(▲3.0%)
上方修正される見込みである。
三菱総研▲0.9%
(▲3.4%)
小幅上方修正を予想する。
伊藤忠経済研▲0.9%
(▲3.6%)
2次推計での設備投資は過小に推計される可能性がある。

以上の通り、各機関の予想では上方修正もあれば、下方修正もあるというところで、要するに、修正幅は小さいと私は受け止めています。もっとも、私が直観的に下方修正を見込んでいる背景は、本質的な経済実体というよりも技術的な推計方法に関する要因が大きいと受け止めています。例えば、伊藤忠経済研究所のリポート Economic Monitorから基礎統計及び推計方法における大震災対応について引用すると以下の通りです。なお、引用元では強調のためにゴシック字体や下線が使われていますが無視しました。悪しからず。

基礎統計及び推計方法における大震災対応
設備投資や在庫投資の基礎統計である法人企業統計について、被災3県などについて調査困難の現状を踏まえ調査が延期されている。加えて、被災に伴う回答延期(通常→6月末日)も認められており、多くの法人が現時点で回答していない模様である。今回公表された4-6月期の法人企業統計はそうした調査延期及び回答延期分(合計で全国3万社中の1千社程度)を全国平均値で補完し推計された「速報値」である。全国平均値による補完のため「速報値」では大震災の影響が十分に反映されず、いずれの計数も実勢より高めとなっている可能性が高い。こうした法人企業統計における対応を踏まえ、内閣府では法人企業統計の調査延期分について3月11日以降の設備投資が行われていないと仮定して、GDP統計の2次推計では対応する旨を明らかとした。

そして、この先行きの景気シナリオについては、第一生命経済研究所のように「月次で見れば3-4月を底として明確な持ち直しが展望できる状況」というのはやや言い過ぎとしても、四半期GDPをベースにすれば、明確に、4-6月期を底として7-9月期から持ち直す可能性が高いと私は受け止めています。しかも、7-9月期と10-12月期は復興需要次第では極めて成長率を示す可能性が十分あります。
意見が分かれるのは、昨年10-12月期から今年の4-6月期までの3四半期連続のマイナス成長を景気後退と判断するかどうかです。NBER の FAQ の通り、景気後退は2つのDですから、期間 duration はやや短いものの、深さ depth を含めて総合的に考え合わせると、景気後退と同定すべきであると考えています。もちろん、実際に景気後退を判断するのは内閣府の研究会ですから、何らかのエコノミスト的なるもの以外の判断要因が加わる可能性は否定できません。経済学が科学になり切れない要因のひとつです。

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2011年6月 5日 (日)

低調なバッティングに続いて、いよいよ投手陣崩壊が始まる前兆か?

  HE
オリックス522100220 14170
阪  神200010000 363

私が1回表のゲーム開始から見始めたとたん、アッサリとT-岡田選手にスリーランが出て、オリックスが初回に一挙に打者一巡で5点を入れて、そのウラに冴えない当たりの内野ゴロ2本で2点を返したものの、4回までに10点を取られてしまい、今の阪神打線を考えると、序盤で決定的な点差となりました。
打つ方は点差も開いてオリックス投手陣に緊張感がなくなったこともあり、3点くらいは取れたんでしょうが、問題はここまで踏ん張って来た投手陣です。右のエース久保投手が2回途中で早々にノックアウトされた後は、久保田投手が見事なピッチングで6者連続三振に切って取った他は、小島投手や若竹投手が軒並み追加点を入れられて、彼我の得点差は開いて行くばかりでした。我が阪神はパリーグの投手陣だけでなく、打撃陣にも大盤振舞いの大サービスを始めたような気がします。
それにしても、今日は久保投手の先発でしたが、金本外野手がレフトを守っていました。やっぱり、金本選手が守っていると久保投手が力が発揮できないんでしょうか。久保投手の先発に対する金本外野手の守備というのは、スーパーマンに対するクリプナイトのような関係だったりするんでしょうか?

明日は連敗を避けるべく、
がんばれタイガース!

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万城目学『偉大なる、しゅららぼん』(集英社)を読む

万城目学『偉大なる、しゅららぼん』(集英社)

万城目学さんの『偉大なる、しゅららぼん』(集英社)を読みました。この作者の長編は、すでに『鴨川ホルモー』、『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』をすべて読んでいて、実は、短編も『ホルモー六景』を読んでいたりしますので、私はかなりのファンといえます。ただし、残念ながら『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は読んでいません。長編の『鴨川ホルモー』と短編の『ホルモー六景』は京大生を主人公に京都を舞台にしており、『鹿男あをによし』は軽く想像される通り奈良ですし、『プリンセス・トヨトミ』は大阪で展開されるストーリーです。そして、次は神戸に行くのかと勝手に想像していたものの、この『偉大なる、しゅららぼん』はタイトルからだけは分かりにくいんですが、琵琶湖湖岸で繰り広げられる物語です。舞台の地図は出版社の特設サイトから引用すると以下の通りです。

万城目学『偉大なる、しゅららぼん』地図

次に、同じ出版社の特設サイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

代々琵琶湖から特殊な力を授かってきた日出家。それは生まれてすぐに湖のご神水をいただくことによって宿る他人の心に入りこみ、相手の精神を操れるという、不思議な力だった。
高校入学をきっかけに、本家のある琵琶湖の東側に位置する石走に来た涼介。本家・日出家の跡継ぎとして、お城の本丸御殿に住まう淡十郎の"ナチュラルボーン殿様"な言動にふりまわされる日々が始まった。ある日、淡十郎は校長の娘に恋をするが、その直後、彼女は日出家のライバルで同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海が好きだと分かる。恋に破れた淡十郎は棗広海ごと棗家をこの街から追い出すと宣言。両家の因縁と三角関係がからみあったとき、力で力を洗う戦いの幕が上がった!

なお、以前のこの作者の長編と違って、この作品は明確な「犯人」がいるミステリ仕立てになっています。つきましては、以下にネタバレを含む可能性がありますので、未読の方は自己責任でご注意ください。
相変わらず、私のような常人にはにわかに理解しがたい万城目ワールドが展開されます。段々と大がかりになるような気がします。というのは、『プリンセス・トヨトミ』がピークなんでしょうが、巻き込む範囲が広がっています。日出本家に下宿する涼介と清子・淡十郎の本家姉弟のやり取りは関西風のまったりした関係がにじみ出て、なかなか味があると私は感じました。棗と校長の娘である速瀬と淡十郎の三角関係も青春まっただ中の高校時代にいかにもありがちで、ほほえましかったんですが、パタ子さんは謎の存在のままに終わった気がします。もう少し謎解きがほしかった気がします。圧倒的な存在感のある日出家と棗家がかなわない相手が速瀬校長であるのは、情趣を先祖に持つとはいえ意外感がありました。さらに、その速瀬校長を操る源爺が「二度付け」された名を持ち、八郎潟からやって来た別の湖の民だったという落ちは、想像も出来ませんでした。しかし、物語は破綻を来たさずに整合性を持って完結しています。万城目作品の極めて優れたところだと受け止めています。しかし、非常にアクの強い作品ですから、決して万人受けするとは思えません。万城目ワールドを好きな読者は大好きでしょうが、まったく好きになれない読書子もいるであろうことは容易に想像できます。私自身はかなり前者に近いです。面白いものは面白いです。荒唐無稽かもしれませんが、ドラえもんの四次元ポケットと同じです。最後に、読後感は微妙です。棗家は歴史から消滅しますが、転校生の正体を明かさずに終わっているところは含みを持たせています。興味深い終わり方です。

一番上に引用した表紙の画像を見て、赤い詰襟とはかくも赤々しいもんだったんだと改めて認識しました。もう少し赤黒い色かと思っていました。制服がなく、自由というよりも勝手気ままな高校生活を送った私の感想です。

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2011年6月 4日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国の労働省から5月の米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は季節調整済みの前月差でわずかに+54千人の増加にとどまり、失業率は同じく季節調整済みの系列で前月よりも+0.1%ポイント上昇して9.1%となりました。まず、New York Times のサイトから記事の最初の3パラを引用すると以下の通りです。

Hiring in U.S. Slowed in May With 54,000 Jobs Added
After several months of strong job growth, hiring in the United States slowed sharply in May, suggesting the economy may be running out of steam once again.
The Labor Department reported on Friday that the nation added 54,000 nonfarm payroll jobs last month, after an increase of about 220,000 jobs in each of the three previous months. May's job gain was about a third of what economists had been forecasting.
The unemployment rate ticked up to 9.1 percent from 9.0 percent in April.

次に、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整済みの非農業部門雇用者数の前月差増減、赤い折れ線が非農業部門全体で、水色がそのうちの民間部門です。下のパネルはこれも季節調整済みの失業率です。影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

米国雇用統計の推移

次に、New York Times のブログサイトである Economix をマネて景気後退期からの雇用の改善をプロットしたのが下のグラフです。Jobless Recovery が明らかです。

Jobless Recovery

米国では再び景気の減速感が強まっています。ひょっとしたら、我が国の震災に起因する可能性もありますが、場合によっては、世界経済全体でもう一度踊り場に入る可能性も排除できません。

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好投の能見投手が最終回に力尽きる!

  HE
ソフトバンク000000002 270
阪  神000000000 030

昨夜の試合を見ていないので何とも言えませんが、この交流戦の首位を走るソフトバンク相手に連勝出来るとは思えませんでした。投手陣が踏ん張る阪神は、8回までは阪神の能見投手、ソフトバンクの杉内投手ともほぼ互角の投げ合いだった気がします。もちろん、低迷の大きな原因となっている阪神打線が2安打とヒット数は下回っているんですが、甲子園の応援でタイガースの方が押しているような錯覚に陥ることもあるほどでした。でも、9回に2点を取られれば勝負ありです。残念ながら、善戦しながら最後に負けるのが現在の力の差だという気がします。7回ウラの攻撃でピッチャーをそのまま打席に立たせた作戦はひとつのポイントです。まったく点が取れそうもないのに、やや消極的だという批判もありましょう。でも結果論かもしれません。

明日は甲子園で、
がんばれタイガース!

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2011年6月 3日 (金)

シルバー民主主義の下で社会保障はあくまで高齢者を優遇し続けるのか?

昨夜、総理大臣官邸で第10回社会保障改革に関する集中検討会議が開催され、社会保障改革案を公表しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費税、15年度までに10%明記 改革原案
医療や介護、負担合算し上限

社会保障と税の一体改革に向けた政府の集中検討会議(議長・菅直人首相)は2日、改革原案を公表した。医療や介護、保育の利用者負担を合算し、自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入など若年層と低所得者への支援強化を打ち出した。財源を確保するため、消費税率を2015年度までに段階的に10%へ引き上げることも明記した。ただ高齢者向け給付抑制に向けた道筋はほとんど示さず、制度の持続性には疑問も残る。
原案は一体改革の狙いを社会保障の充実・強化と財政健全化の「同時達成」と強調。パートなど短時間労働者の厚生年金加入拡大や、年金受給資格をもらえる加入期間(現在25年以上)の短縮などを打ち出した。15年度時点で消費税率5%分の約13.5兆円の財源が必要だとした。
増税で得る税収のうち消費税率3%分(約8.1兆円)は社会保障の拡充や基礎年金の2分の1を国庫負担する制度の維持に使う。残りの2%分は高齢者向けの医療・年金・介護で発生している財源不足の穴埋めなどに充てる。税率引き上げ時期については「段階的に10%まで引き上げる」と明記し、2段階に分けて税率を上げるシナリオをにじませた。
政府・与党は月内に最終案となる「改革案」をとりまとめる方針だ。今年度中に消費税率の引き上げ幅などを盛った税制改革法案の国会提出を目指す。ただ、与党内にも消費税率引き上げに反発する声があり、調整難航も予想される。

すでに、一昨日のエントリーで私の従来からの主張を詳しく繰り返しましたし、諸般の事情により、今夜は帰りが遅くなりましたので、ごく簡単に提出資料などを概観して、従来からの私の主張である「高齢者に余りに偏った社会保障制度を税制よりもまず改革すべき」という観点を補強しておきたいと考えます。まず、下のグラフは昨夜の第10回社会保障改革に関する集中検討会議に提出されたうち、「社会保障に係る費用の将来推計について」の p.3 から給付費に関する見通しを引用しています。我が国の社会保障給付が高齢者向けの「年金」、「医療」、「介護」に圧倒的に偏っており、「子ども子育て」が軽視されている現状を2025年まで続ける決意が示されているんでしょうか。なお、医療については年齢に関係ないとの見方もあるかもしれませんが、少し前のカギカッコ付きの「後期高齢者医療制度」の大騒ぎを見ても明らかな通り、かなりの財源が高齢者に流れていることは明らかであり、シルバー民主主義が圧倒的なパワーで高齢者に不利な政策変更を葬り去ったことは記憶に新しいところです。

社会保障に係る費用の将来推計

この高齢者に社会保障給付を偏らせるという政府の強い決意の下、我が国の子ども・子育てをはじめとする家族関係社会支出の対GDP比は先進諸国の中でもかなり低い現状が下のグラフから読み取れます。「参考資料」の p.5 から各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較を引用しています。2007年時点での比較ですから、子ども手当はまだ始まっておらず、我が国の家族関係社会支出のGDP比はわずか0.79%と、このグラフに取り上げられたG7+スェーデンの8カ国の中で米国に次いでほぼ最低水準となっています。無理やりに1人当たり13000円の子ども手当を上乗せした仮定計算をしても1.13%にしか達せず、3%に上るフランス、英国、スウェーデンに遠く及びません。これら諸国の水準に近づけようとすれば、日本ではGDP比2%、すなわち、10兆円ほどの財源を注ぎ込む必要があります。批判論の中には子ども手当を「バラマキ」と称する場合もあるようですが、事実はまったく逆と言わざるを得ず、大きな財政リソースを注入しているのは高齢者向けの年金・医療・介護であって、先進国水準で見れば子供向けや家族関係の社会支出はまだまだ低水準と言わざるを得ません。

各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(2007年)

今さら日本の財政の状態について言及するまでもなく、ムディーズに日本政府の格付けのアウトルックがネガティブであると指摘される必要もないくらい、かなり多くの日本人が財政破綻を食い止める政策を支持していることは確かです。しかし、この改革案は穴の開いたバケツに水を入れようとするようなものであり、しかも、バケツの穴からは高齢者に向けて貴重な財政リソースが大量にあふれ出しています。ここまで、シルバー民主主義の下では、政策には高齢者の声ばかりが反映され、この増税の大きな部分を負担するハメになる若年層や勤労世代の意見は届かないんでしょうか?

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2011年6月 2日 (木)

企業活動の改善に足踏みが見られる法人企業統計

本日、財務省から今年1-3月期の法人企業統計が発表されました。ただし、今回の集計では岩手県・宮城県・福島県の被災3県に加えて、さらに、青森県と茨城県の一部も含まれておらず、改めて7月29日にこれらを含む確報を発表するとしています。暫定的な統計ながら、通常の金融業と保険業を除く季節調整前の原系列で見て、ヘッドラインとなる売上高は前年同期比+1.4%増、経常利益も同じく+16.4%増、また、ソフトウェアを除く設備投資は前年同期比で+4.2%増、ソフトウェアを含む設備投資は同じく+3.3%増と、それぞれ前の四半期に比べて増勢に鈍化が見られます。季節調整値が公表されているソフトウェアを除く設備投資は前期比で▲0.2%の減少を記録しました。特に、製造業は減益に転じています。被災地域を含む統計では、さらに下振れする可能性が高いと考えられます。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資3.3%増 1-3月の法人企業統計、被災地含まず
財務省が2日発表した1-3月期の法人企業統計調査によると、企業の設備投資は前年同期比3.3%増の11兆5114億円と、3期連続で増加した。ただ東日本大震災の被災企業などが含まれておらず、今後下方修正の可能性もある。収益面では製造業が6期ぶりの減益となった。サプライチェーン(供給網)の寸断による自動車などの減産が響いた。
四半期の法人企業統計は資本金1000万円以上の企業の仮決算をまとめる。今回は大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の企業など2000社弱(調査対象の約6%)から調査票を回収できず、業種や資本金ごとの全国平均値で補った。財務省は、被災地の企業のデータもそろえた確報値を7月29日に公表する。
産業別の設備投資動向をみると、製造業は27.7%増加。比較可能な2002年7-9月以降で最大の伸びとなった。スマートフォン(高機能携帯電話)需要の拡大を受け、メモリーや液晶パネルなど情報通信機械が61.6%伸びた。食料品も飲料品の生産ライン増設が目立った。非製造業は6.8%減。前年に大型投資が出た反動で、不動産業や卸売業が減少した。
震災の影響は企業の収益に表れた。製造業の経常利益は5.3%減少した。部品調達の混乱で大幅な減産を強いられた輸送用機械が71.7%減。鉄鋼業や金属製品も、震災による工場の操業停止で減益となった。一方、非製造業は30.1%増えた。全産業では売上高は1.4%、経常利益は16.2%それぞれ増加した。
財務省が試算した設備投資(ソフトウエアを除く)の季節調整値は前期比0.2%減と小幅なマイナスだった。9日発表の実質国内総生産(GDP)の設備投資の改定値は、速報値(0.9%減)から大きく変わらないとの見方が出ている。

まず、統計のヘッドラインとなる売上高などのグラフは以下の通りです。上のパネルは売上高と経常利益を、下はソフトウェアを除く設備投資を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。見れば分かると思いますが、売上高がジグザグした動きになっていて、経常利益の伸びが鈍化しています。ですから、設備投資にも勢いはありません。繰返しになりますが、1-3月期の設備投資はソフトウェアを除いて前期比▲0.2%の減少を示しました。これは震災の被災地域を含んでいませんから、被災地域を含むという意味での全国ベースではさらに弱い数字になる可能性が高いと理解すべきです。被災地域を除いた集計でも、明らかに、企業活動は鈍化を示し始めていると私は受け止めています。

法人企業統計の推移

次に、法人企業統計の直接の調査項目ではないんですが、インプリシットに計算できる指標を2点ほどグラフに示しています。以下の通り、労働分配率と損益分岐点です。労働分配率は単純に人件費を経常利益と減価償却と人件費の和で除しています。損益分岐点は売上高を人件費と減価償却と支払利息の和で構成される固定費及び売上高から経常利益と固定費を差し引いた変動費に分割して計算しています。いずれも季節調整していない原系列ですので、後方4四半期移動平均で平準化を図っています。労働分配率も損益分岐点も改善にブレーキがかかりつつあるのが読み取れると思います。特に、労働分配率は雇用の改善に足踏みをもたらしかねませんので懸念されるところです。

労働分配率と損益分岐点の推移

最後に、来週6月9日に公表される予定の1-3月期2次QEに設備投資にはこの法人企業統計はほとんど影響ないと考えられますが、別の要因で設備投資は下方修正される可能性が高いと私は受け止めています。というのは、内閣府から6月1日付けで「2011(平成23)年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報値)における推計方法の変更について」が発表されており、これに従えば、「2次QEでは、(法人企業統計)調査延期法人は3月11日以降の設備投資を行っていないものとして、推計する」ことが明らかにされています。このエントリーで取り上げた法人企業統計では他の地域で補完推計されていることから、これをゼロとする2次QEでは設備投資は下振れる可能性が高いと考えるべきです。

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2011年6月 1日 (水)

ダルビッシュ投手相手によく戦いました!

  HE
阪  神000000000 040
日本ハム00000001x 150

ダルビッシュ投手という全日本クラスの投手を相手によく戦いましたが、まあ、散発の4安打ですし阪神打線が打てる相手ではありません。投手はよく投げました。昨夜と違って1点に抑えました。小林投手が出て来たところで私はお風呂に入りました。予想通り、小林投手が1点を献上してしまいましたが、ベンチもよく考えて継投を組み立て、最少失点に抑えたのは評価できます。しかし、攻撃の作戦は疑問が残ります。昨夜からのゼロ行進にもかかわらず、代打さえ送らず漫然と打つだけでは、ダルビッシュ投手相手に点が入りそうな気もしませんでした。金曜日からは甲子園に戻って、交流戦絶好調のソフトバンク相手に苦しい戦いが続くんでしょうか?

甲子園に戻って、
がんばれタイガース!

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社会保障改革の議論で欠けている論点は何か?

諸事情によって取り上げるのが遅れましたが、一昨夜5月30日の夜、第9回社会保障改革に関する集中検討会議が総理大臣官邸で開催され、いくつか、専門の大学教授からリサーチ・ペーパーの要約がプレゼンされるとともに、内閣府などからそれぞれの論点について研究報告書が発表されました。以下の通りです。大雑把に、井堀教授と吉川教授の論点を取りまとめたのが内閣府の報告書であり、田近教授の論点を取りまとめたのが実務上の論点等に関する研究会の報告です。なお、メディアでは「消費税の税率構造のあり方及び消費税率の段階的引上げに係る実務上の論点について」の報告書は財務省が取りまとめたと報じているものもありました。

まず、井堀教授の論点に基づいて作成されている内閣府の報告書について、消費税の逆進性に疑問が呈されています。すなわち、年間所得で見た場合には、所得の低い階層で消費税負担割合が高く、逆に、高所得層で負担割合が低いのは事実としても、生涯所得で見た場合、カナダの研究例では逆進性は大きく低下する、と結論しています。下のグラフは内閣府の「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」の p.7 図表1-2(2)を引用しています。

カナダにおける売上・物品税 (Sales and Excises) の負担率

なお、我が国について2009年全国消費実態調査に基づいて試算したところ、下のグラフの通り、所得税ほどではないものの、消費税も所得階層が高いほど税負担割合が大きいという結果を示しています。内閣府の「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」の p.8 図表1-3(2)を引用していますが、上の水色の実戦は所得税負担額の生涯所得に占める割合、下の赤の破線は消費税負担額の割合です。横軸は上のグラフと同じで所得階級別の10分位です。所得税はもちろん、消費税も正の傾きを有しています。

生涯所得でみた逆進性の計測

その上で、格差の是正や貧困の削減は消費税に割り当てられるべき政策課題ではないことは明らかですから、所得再分配機能を有する税制や社会保障全体で対応すべきであると結論しています。
次に、吉川教授の論点に基づいて作成されている内閣府の報告書は消費税増税とマクロ経済に焦点を当てています。景気循環論的に、1997年5月を山とする景気後退はその土地の4月から消費税率が3%から5%に引き上げられたことが「主因」ではないとエコノミストの多数意見を引用しつつ、マクロ経済の景気循環の観点から消費税率引上げについて議論しています。下のグラフは内閣府の「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」の p.56 図表2-11を引用していますが、1980年以降に付加価値税(VAT)を増税した71ケースのGDPギャップをプロットしていますが、負のGDPギャップ、すなわち、デフレ圧力ある場合でも増税がなされたエピソードは少なくないと結論しています。

付加価値税増税時のGDPギャップ

さらに、消費税率の引上げ幅について議論を進め、日本においては消費税率の引上げによる価格変化がある一時点に集中して生じる傾向が他国に比して強いと主張し、以下の通り、2007年1月に3%ポイントの引上げが実施されたドイツにおけるインフレーション・スムージングに比べて、1997年4月の日本のケースをプロットしたグラフを示しています。結論として、消費税率を一気に5%ポイント引き上げると物価変動から経済を不安定化させる可能性があり、1回当たり2-3%ポイントの引上げに抑えるべきである、としています。下のグラフは内閣府の「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」の p.58 図表2-13を引用しています。

日本とドイツにおける付加価値税率引上げ前後の消費者物価上昇率の推移

次に、田近教授の論点に基づく実務上の論点等に関する研究会の報告では、英国税制に関する The Mirrlees Review や欧州税制に関する Copenhagen Economics のリポートなどを引用しつつ、実務的な観点から軽減税率の導入に関して否定的な見方を提供しています。例えば、下のグラフは軽減税率を導入している英国と同様の付加価値税制を日本に適用した場合、高所得階層の受益額が大きくなる試算結果を示しています。社会保障・税一体改革における消費税の実務上の論点等に関する研究会「消費税の税率構造のあり方及び消費税率の段階的引上げに係る実務上の論点について」 p.30 から引用しています。

軽減税率等による受益額の推移

一応、論理的に社会保障の財源として消費税が適当であり、1回当たり2-3%ポイントに分けて何度か引き上げることを推奨する内容となっており、この内容については私も異論はありません。ただし、議論が不足しているのは社会保障の水準をどこに置くかです。明日の6月2日の会議で「年収1000万円超は基礎年金減額」などが議論されると報じられていますが、少なくとも現時点では、現行の給付を前提としてそのための財源論に終始している印象があります。逆に言えば、高齢者に極めて有利に設計されている現行制度にメスを入れるという姿勢は見られません。少なくとも、2004年改革をはじめとして、小泉政権までは現行の高齢者に手厚い制度の改革もアジェンダに上っていた気がしますが、現在の民主党政権ではスッポリと抜け落ちていて、いかにして高齢者に社会保障給付を提供するか、そのための財源は何か、に焦点を当てた議論になっているように見受けられます。勤労世代をはじめとする国民の視点からのチェックが必要です。下のグラフは一昨日の第9回社会保障改革に関する集中検討会議で配布された資料3-8(1)「世帯類型別の受益と負担について」を引用していますが、負担を差し引いたネットの受益が大きいのは、緑色の「教育」を含めてもなお、70代や60代が上位に並びます。しかも詳しく見ると、オレンジ色の自己負担は60代以上では発生しない仕組みになっています。グラフは縮小してあるため少し見づらいかもしれませんが、クリックすると別タブでpdfファイルが開きます。

世帯類型別の受益と負担について

第9回をさかのぼること1週間前の5月23日に第8回の社会保障改革に関する集中検討会議が開催されていて、その主要な議題のひとつを説明する資料のタイトルは「社会保障財源の確保と税制抜本改革に関するこれまでの議論の整理」となっています。これを読み解くに、抜本改革すべきは社会保障の財源を提供する税制であって社会保障制度ではない、という政権の姿勢が表れています。ホントなんでしょうか。抜本改革すべきは、社会保障の財源を提供する税制なんでしょうか、それとも高齢者に余りに手厚い社会保障制度なんでしょうか。国民のチェックが必要です。

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