国民の平均IQが高いと1人当たりGDPは豊かになるのか?
今夜のエントリーでは、最近のアジアに関する研究成果を紹介しようと思います。世界的なレベルではなく、アジア地域だけのお話なんですが、標題に明らかな通り、国民の平均IQが高いと、1人当たりGDPは豊かかどうか、もっと、ぶっちゃけ明け透けに表現すれば、国民の頭がいいと国は豊かになれるのか、という極めて興味深い点に関する研究です。実は、先に種明かしをすれば、既存研究では、「頭がいいとしても個人の賃金には反映される度合いは小さいが、集団的な国としては生産性が高くなり、これは外部経済効果に基づく」というのが定説になりつつあり、今夜紹介するペーパーもこの点をサポートしています。ということで、アジア開銀が発行している研究誌 Asian Development Review の最新号から、以下の論文をナナメ読みした結果を紹介します。
まず、ペーパーの p.52 から Figure 1. National Average IQ and GDP per Capita across ADB Member Countries を引用すると下のグラフの通りです。タイトルはアジア開銀加盟国となっていますが、データの制約があって、実質的には極めて限られた国だけプロットされています。直観的に正の相関が読み取れます。すなわち、国民の頭がいいと国は豊かになれるという関係が成立しているようです。もっとも近似線から外れていそうなのが中国です。
そして、intelligence があって頭がいい場合、個人の賃金に反映される度合いよりも、一国全体としての生産性に貢献する度合の方が大きい、とする通説及びこのペーパーの結論を導く関係として、以下の貯蓄率、協力関係、技術、市場の4点で、国民の頭がいいと国全体の経済で有利であると論じています。
- intelligence is associated with patience and hence higher savings rates
- intelligence causes cooperation
- higher group intelligence opens the door to using fragile, high-value production technologies
- intelligence is associated with supporting market-oriented policies
計測可能な一例として、ペーパーの p.65 Figure 4. National IQ and Institutional Quality では、国民の平均IQと制度の質をプロットしています。なお、縦軸は上の方で数字が小さいほど制度の質が高いことを表しています。IQが制度の質を経由して1人当たりGDPという豊かさに結実しているのかもしれません。上のグラフと違って国数が増えていて、さらに、国名を明示していませんが、以下の通りです。IQが105のラインで下に外れているのは、やっぱり、中国なんだろうか、と勘繰ってみたくなります。
最後に、今回発行の Asian Development Review 最新号では、ほかに "Infrastructure and Growth in Developing Asia" なども私がナナメ読みした範囲では興味ある分析を提供しています。最後の最後にいつものお願いですが、ナナメ読みしかしていない私がエラそうにいうつもりはないものの、この記事に目を通しただけでペーパーを読んだ気にならず、学術論文はキチンと読むようにしましょう!
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