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2011年6月29日 (水)

鉱工業生産は秋口には本格回復か?

本日、経済産業省から5月の鉱工業指数が発表されました。ヘッドラインとなる季節調整済みの前月比は+5.7%の増産と大きく回復しました。市場の事前コンセンサスが+5.5%でしたので、ほぼミートしました。基調判断は「東日本大震災の影響から回復しつつある」に修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産5月5.7%上昇 供給網復旧、58年ぶり伸び
自動車や一般機械けん引、「回復しつつある」

経済産業省が29日発表した5月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は88.8となり、前月比5.7%上昇した。伸び率は1953年3月(7.9%)以来、58年2カ月ぶりの大きさ。東日本大震災で寸断したサプライチェーン(供給網)の復旧が本格化し、自動車や一般機械がけん引役となった。6-7月も生産回復の流れが続く見通しだが、今夏の電力不足などで増産の勢いが鈍る懸念もある。
5月の生産指数は2カ月連続で上昇。上昇率は民間エコノミストの予測中央値(5.5%)を上回った。経産省は基調判断を「回復しつつある」と、前月の「停滞している」から引き上げた。
供給網の回復が生産を大きく押し上げた。輸送機械工業は36.4%上昇し、比較可能な1998年以降で最大の伸びを記録した。一般機械は5.3%上昇し、震災前の2月の水準を上回った。ショベル系掘削機械が部品不足を解消し増産に転じた。
復興需要を取り込む動きもある。漁船に取り付ける船外機が伸びた汎用内燃機関は15.3%上がった。経産省によると、アルミ製品やプラスチック製品で「夏の電力不足を見込んだ前倒し生産が出ている」という。
11業種が上昇した一方、鉄鋼業など5業種は低下した。鉄鋼業は国内や韓国向けにH形鋼などが伸び悩み2.2%低下。液晶テレビやパソコン向けが低調だった電子部品・デバイス工業は0.6%下がった。
生産の回復基調は続く見通しだ。同日発表した製造工業生産予測調査によると、6月は5.3%、7月は0.5%上昇する見通し。輸送機械工業などの増産が寄与する。予測通りなら7月は94.0となり、震災で落ち込んだ分の4分の3を取り戻す。
ただ夏場の電力不足はなお不安定要素として残る。海外経済も成長ペースがやや鈍っており、「外需が生産の足を引っ張る可能性がある」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との指摘もある。

次に、鉱工業生産と出荷の推移をプロットすると以下の通りです。上のパネルは生産、下は出荷で、いずれも2005年=100とする指数の季節調整済みの系列です。影をつけた部分は景気後退期です。

鉱工業生産の推移

見ての通りなんですが、3月の震災で大きく落ち込んだ後、4月のリバウンドは大きなものではなかったものの、5月は大きく回復しているのが見て取れます。しかし、まだ震災前の水準には達していません。生産と出荷が回復していない最大の要因は需要の不足ではなく、震災により供給能力が回復していないからです。生産の回復を被災地とそれ以外に分けて見ると、被災地は+18.8%、被災地以外は+4.5%のそれぞれ増産となっていますから、特に被災地において急ピッチで供給体制の回復が進められていることがうかがえます。特に、自動車を含む輸送機械の増産が5月は+36.4%と大きくなっています。しかし、夏場は電力制約もありますし、現時点における多くのエコノミストのコンセンサスに従えば、生産が震災前の水準に復帰するのは秋口くらい、場合によっては少し前倒しされる、と見込まれているようです。引用した記事にもある通り、生産予測指数から見て、このシナリオはほぼサポートされたと私は考えています。なお、5-6月が5%超の伸びを示した後、7月の予測指数の伸びが小幅にとどまっているのは、夏場の電力制約だけでなく中国経済の不透明感との合わせ技であろうと私は受け止めています。もちろん、生産の増産に従って、雇用も回復を示すことが期待されます。

資本財と耐久消費財の出荷の推移

さらに、財別に出荷を見ると、輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷は上の通りです。いずれも2005年=100とする季節調整済みの指数であり、影をつけた部分は景気後退期です。資本財については先行きの設備投資の増加を示唆していると私は受け止めています。耐久消費財についても、生産が本格回復する秋口を目指して増加が続くように見えなくもありません。

Comparing countries' performance in digital reading

最後に、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から発表された PISA 2009 Results のうちの Students On Line: Digital Technologies and Performance (Volume VI) から Figure VI.2.11 Comparing countries' performance in digital reading を引用したのが上の表です。デジタル読解力の総合評価で日本はOECD加盟国の4番目に位置しているようです。なお、表の色分けですが、韓国からベルギーまではOECD平均から有意に上位に位置し、ノルウェイとフランスは統計的に平均と異なるところはなく、マカオ以下は平均から有意に下位に位置することを示しています。

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