商業販売統計から消費の先行きを考える
本日、経済産業省から5月の商業動態統計調査の結果が発表されました。ヘッドラインとなる小売販売は前年同月比▲1.3%減の10兆9170億円と震災発生以来3か月連続で減少しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の小売販売額1.3%減 節電グッズ好調で下げ幅縮小
経済産業省が28日発表した5月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は10兆9170億円で、前年同月比1.3%減少した。東日本大震災が発生した3月以降は減少が続いているが、マイナス幅は前月の4.8%から大幅に縮小した。扇風機やクールビズ衣料など節電関連の売り上げが好調だったため。ただエコカー補助制度が終了した自動車の販売が低調で、全体としてはマイナスだった。
機械器具小売業は扇風機や発光ダイオード(LED)製品など節電関連のほか、7月24日の地上デジタル放送移行を控えて地デジ対応テレビやチューナーが好調で、3.8%増加した。ミネラルウオーターなどの販売増で飲食料品小売業も1.7%増えた。一方、自動車小売業は24.4%の大幅な減少。エコカー補助金の終了や大震災に伴う生産低迷が響いた。
コンビニエンスストア販売額は7192億円で、7.3%増加した。デザートやたばこの販売が好調だった。被災地で活動するボランティアらの利用が増え、東北地方のコンビニ販売額は10.9%増加した。
大型小売店の販売額は1兆5776億円で、1.3%減少した。減少は3カ月連続。大震災以降は外国人観光客の減少で、化粧品など高額商品の販売が伸び悩んでいる。
次に、いつもの小売販売と卸売販売のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比、下は季節調整済みの指数の系列をそのまま、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた部分は景気後退期です。
季節調整前の小売販売は3か月連続の前年同月比マイナスながら、季節調整済みの指数では3月を底つとして4-5月は上昇しています。原系列の5月前年同月比マイナスにしても、自動車が寄与度で▲2.8%ほどありますから、これを別勘定にして自動車を除く消費は前年同月比プラスとも考えられます。我が家でも扇風機を買い求めましたが、節電需要による白物家電の販売はかなり好調と報じられています。日銀短観は今週金曜日に発表されますが、景気ウォッチャー調査や消費者態度指数などの月次の各種マインド調査を見ても、足元で消費はそろそろ底打ちして反転しつつあると私は受け止めています。ただし、商業販売統計にはサービスは含まれませんので、自粛ムードの影響をモロに受けている旅行や外食などはこの統計よりもさらに大きく落ちている可能性も見逃せません。
ただし、底入れから反転への動きはあくまで足元の動向であり、もう少し先、すなわち、梅雨明け以降の電力需要が本格化する夏季については不透明です。最大の不透明要因は電力消費がどこまで可能かということです。逆から見れば、どの程度の電力供給が出来るかということです。私には確たる見通しはないながら、電力の不透明要因を別にすれば、基本的なシナリオとして、マインドの改善に従って自粛ムードが徐々に払拭され、旅行や外食などのサービスも含めて消費は盛り返す、と考えていますが、首都圏大停電などがあれば、この限りではありません。そんな事態は想定しづらいんですが、もしもそうなれば、消費だけでなく生産にも悪影響を及ぼすのは確実です。
最後に、誠についでながら、新生フィナンシャルから発表された「2011年サラリーマンのお小遣い調査」の結果は上のグラフの通りです。なお、欠損値となっている1991年、1993-4年は調査が実施されていません。2011年調査での平均小遣い額は月額36,500円と昨年比▲4,100円と大きくダウンし、4年連続で減少するとともに、バブル期の1990年76,000円に比べて半減となりました。サラリーマンのオフィス周辺での消費は期待できないのかもしれません。
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