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2011年8月29日 (月)

「平成22年度 医療費の動向」に見る高齢層への社会保障の偏り

やや旧聞に属する話題ですが、先週の金曜日に厚生労働省から「平成22年度 医療費の動向」が発表されています。pdf のリポートだけでなく、Excel のデータも同時に明らかにされています。金曜日に発表された医療費は概算で、大雑把にいえば、いわゆる「国民医療費」のうちの保険適用分だけを集計し、逆から見れば、全額自己負担医療の部分を除いた医療費であり、保険医療部分という厚生労働省がガッチリ把握している医療費だけですから、「国民医療費」よりも1年ほど速報性を持って公表されています。

医療費総額と伸び率

まず、医療費の総額と伸び率を70歳未満と以上に分けて見ると上のグラフの通りです。上のパネルが医療費総額で縦軸は兆円、下が伸び率で縦軸はパーセントです。青は70歳未満、赤が70歳以上を示しています。最近6年間で70歳以上の伸び率が常に70歳未満を上回っていますから、70歳以上の医療費総額の占める比率は年々上昇し、2010年度では44%を超えました。もちろん、国民全体の高齢化が続いており、また、医療の高度化・高額化も不断に継続していますら、70歳以上の医療費総額が大きく増加することに一定の理由はありますが、2010年度から政権交代に伴う財政リソースの大盤振る舞いが始まって、その一環として診療報酬を増額改定した影響も見逃せません。結果的に、比較可能は2001年度以降で、2010年度は医療費総額はもちろん、伸び率ももっとも高くなりました。膨大な財政リソースが高齢者医療につぎ込まれていることが明らかです。

1人当たり医療費と70歳以上倍率

さらに、医療費総額ではなく、1人当たりの医療費で見ると70歳未満と以上の差が歴然と把握できます。上のグラフの通りです。上のパネルは1人当たりの医療費の年額で、縦軸は1人1年当たりの医療費額を万円単位で示しています。下のパネルは70歳未満と以上の比率を示しており、縦軸の単位は70歳未満の1人当たり医療費を1とした時の70歳以上の倍率です。ここ数年で少し低下しつつあるとはいえ、もしも、負担割合が同じであると仮定すれば、70歳以上の高齢者には70歳未満の5倍近い医療費を財政リソースから注ぎ込まれていることが読み取れます。最後に、下のグラフは都道府県別の医療費総額の比較です。横軸は兆円です。当たり前ですが、東京都をはじめとして人口の多い都市部が医療費も多くなっています。何ら、ご参考まで。

都道府県別医療費総額

この社会保障の現状に関連して、今日の朝日新聞朝刊のコラムで「新首相への注文」として、千葉大学の広井教授が「若者の社会保障 強化を」と題して、従来の退職期以降の引退世代に生活上のリスクが集中していた時代に対応する社会保障制度を見直し、若年層でも非正規雇用に陥るリスクが高まっている現状を踏まえて、社会保障リソースを40歳前後までの人生の前半にシフトすることを提唱しています。まったく同感です。しかし、財源強化として広井教授は消費税のほかに「相続税と環境税」を上げていますが、高齢層に金融資産も実物資産も集中している現状を踏まえれば、資産課税の強化もアジェンダに上げるべきであると私は考えています。

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