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2011年8月28日 (日)

柳広司『ロマンス』(文藝春秋) を読む

柳広司『ロマンス』(文藝春秋)

柳広司『ロマンス』(文藝春秋) を読みました。昨年、一昨年と『ジョーカー・ゲーム』、『ダブル・ジョーカー』と昭和初期の帝国陸軍におけるスパイ組織をテーマにした小説を楽しませてもらった記憶があり、特に、我が家のおにいちゃんの評価が高かったと記憶しています。この『ロマンス』も舞台は昭和8年とされています。まず、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
舞台は昭和8年の日本。子爵家に生まれた麻倉清彬は、職につくこともなく暇を持て余していた。そんなとき友人の伯爵家の長男・多岐川に殺人の疑いがかけられる。殺人現場に呼ばれた麻倉は、機転をきかせて多岐川を解放させるが、それをきっかけに麻倉は大きな事件に巻き込まれていく。退廃的な世相の中で生きていく日本の貴族階級たち。その心の闇に踏み込んだ意欲的長篇ミステリーです。

昭和8年の戦前の日本を舞台にしていますから、軍隊もあれば軍人もいます。爵位持ちの華族制度もまだ存続している時期です。男子のみによる普通選挙が実施され始めたものの、同時に悪名高き治安維持法が施行され、非合法化されていた共産党を特高警察が取り締まっていたりします。他方、中国大陸では武力衝突が生じており、国内でも政治的に不穏な動きがあったりもします。5.15事件は昭和7年、この小説の舞台設定の前年に発生していますし、2.26事件はこの小説の2年後の昭和11年です。
主人公の周囲では、皇太子がお生まれにならないため、友人の妹が伯爵家から天皇家の側室に差し出されようとしていたり、その女性が学習院における共産主義運動で特高警察に逮捕されたり、伯爵家の後継ぎの主人公の友人の周囲で殺人事件が発生します。この殺人事件を特高警察から持ち込まれた主人公が、帽子から人となりを推理するという、まるで、「青い紅玉」のシャロック・ロームズを思わせるような表現で持ち上げられて、特高警察に反感を覚えつつも謎解きめいたことをするんですが、ハッキリ言って、ミステリの謎解きとしては出来がよくないと私は考えています。むしろ、昭和初期の物憂いデカダンスの世相におけるブルジョワ趣味の小説として読めば、それなりに楽しめるかもしれません。『ジョーカー・ゲーム』のスパイ小説もネタ切れなんでしょう。

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