順調に回復しつつある貿易黒字と景気ウォッチャーはこのまま改善が続くのか?
本日、財務省から6月の経常収支が、また、内閣府から7月の景気ウォッチャー調査結果が、それぞれ発表されました。経常収支の中の貿易収支は震災に伴う供給制約から、また、景気ウォッチャーに示されたマインドも自粛ムードから、かなり本格的に脱しつつある姿が示されたと私は受け止めています。ただし、米国や欧州に端を発する世界経済の大幅な減速はこれから織り込まれるのかもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の経常黒字、50.2%減 貿易収支は3カ月ぶりの黒字
財務省が8日発表した6月の国際収支状況(速報)によると、経常黒字額は5269億円で、前年同月と比べて50.2%減った。貿易収支が3カ月ぶりの黒字となり東日本大震災からの立ち直りを示したが、旅行収支の悪化などでサービス収支の赤字幅が拡大。4カ月連続で前年同月を下回った。
貿易黒字額は1315億円で、前年同月比で82.7%減だった。ただ、4カ月連続減となった輸出額は1.1%減の5兆5044億円と、9.8%減だった5月から減少幅が縮小しており、震災による輸出減には歯止めがかかりつつある。輸入額は5兆3729億円で、11.9%増。火力発電所で用いる液化天然ガス(LNG)など、燃料輸入の増加が続いている。
財務省は、輸入額の増加について「国際商品価格の高騰が大きいが、被災地の復興需要などが増えてくる可能性がある」と指摘。今後も輸入が拡大し続けることも考えられるため、先行きを注視していく姿勢だ。
旅行収支は1275億円の赤字だった。震災以来、日本への入国者が減り続けているため。海外旅行などを目的とした出国者も減っている。旅行収支の赤字を受け、サービス収支は1206億円の赤字と前年同月と比べ赤字額が288億円増えた。所得収支は6069億円の黒字だった。
あわせて発表した1-6月期の経常収支は5兆5098億円の黒字で、前年同期比で36.3%減少した。震災で貿易収支が5011億円の赤字となったことなどが背景。
街角景気52カ月ぶりに50上回る 7月52.6、4カ月連続改善
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比3.0ポイント上昇の52.6と、4カ月連続で改善した。景気の横ばいを示す50を2007年3月(50.8)以来、52カ月ぶりに上回った。06年4月(54.6)に次ぐ高水準で、震災前の2月(48.4)も上回る。内閣府は「程度の差はあるが方向としては良くなっている」と説明。基調判断を「景気の現状は、震災の影響が残るものの、持ち直している」とし、3カ月連続で上方修正した。
東日本大震災後に落ち込んだ消費マインドの回復に加え、梅雨明け後の猛暑や節電に伴う省エネ関連やクールビズ関連の商品の売れ行きが好調だった。地上デジタル放送への移行に伴う液晶テレビの駆け込み需要や、自動車産業を中心とした生産の回復も寄与し、指数を構成する家計、企業、雇用の全てで改善した。
一方で2-3カ月先の先行き判断指数は0.5ポイント低下の48.5と、4カ月ぶりに低下した。薄型テレビの駆け込み需要の反動減や、牛肉の放射性セシウム汚染による小売業などの先行き不透明感の高まりを背景にした家計部門の低下が響いた。円高や原材料価格の高騰などを懸念する声も聞かれた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は7月25日から月末まで。
経常収支のいつものグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支、そのコンポーネントが棒グラフで示されています。色分けは凡例の通りです。単位は兆円で示されています。季節調整済みの系列ですから、季節調整する前の原系列で論じている引用記事とは少し印象が異なる可能性があります。
次に、景気ウォッチャー調査結果のグラフは以下の通りです。凡例にある通り、赤い折れ線グラフが現状判断DI、水色が先行き判断DIです。先月の段階ですでに震災前水準を回復していましたが、今月も同様に高い水準となっています。特に、現状判断DIは7月に50を超えました。一般国民を対象にしたマインド調査でDIが50を超えるのはかなり久し振りで、引用した記事にもある通り。景気ウォッチャーでは52か月振りです。
経常収支にでよ、景気ウォッチャーにせよ、少し前までの統計指標では震災の影響を払拭しつつあり、上向きと判断できます。しかし、逆に、足元の円高や世界経済の大幅な減速を織り込んでいない可能性があります。もちろん、景気ウォッチャーで先行き判断DIが低下したことに現れているんですが、近い将来に、現下の株安や金融混乱を含めて、さらに日本経済に対して下押し圧力が増す可能性を見逃すべきではありません。今後の経済指標に注目でしょう。
本日発表された統計指標とは関係ないんですが、最後に、財務省のサイトから「G7財務大臣・中央銀行総裁の声明」を引用しておきます。
Statement of G7 Finance Ministers and Central Bank Governors(August 8, 2011)
In the face of renewed strains on financial markets, we, the Finance Ministers and Central Bank Governors of the G-7, affirm our commitment to take all necessary measures to support financial stability and growth in a spirit of close cooperation and confidence.
We are committed to addressing the tensions stemming from the current challenges on our fiscal deficits, debt and growth, and welcome the decisive actions taken in the US and Europe. The US has adopted reforms that will deliver substantial deficit reduction over the medium term. In Europe, the Euro area Summit decided on July 21 a comprehensive package to tackle the situation in Greece and other countries facing financial tensions, notably through the flexibilisation of the EFSF. We are now focused on the quick and full implementation of the agreements achieved. We welcome the statement of France and Germany to that effect. We also welcome the statement of the Governing Council of the ECB.
We are committed to taking coordinated action where needed, to ensuring liquidity, and to supporting financial market functioning, financial stability and economic growth.
These actions, together with continuing fiscal discipline efforts will enable long-term fiscal sustainability. No change in fundamentals warrants the recent financial tensions faced by Spain and Italy. We welcome the additional policy measures announced by Italy and Spain to strengthen fiscal discipline and underpin the recovery in economic activity and job creation. The Euro Area Leaders have stated clearly that the involvement of the private sector in Greece is an extraordinary measure due to unique circumstances that will not be applied to any other member states of the euro area.
We reaffirmed our shared interest in a strong and stable international financial system, and our support for market-determined exchange rates. Excess volatility and disorderly movements in exchange rates have adverse implications for economic and financial stability. We will consult closely in regard to actions in exchange markets and will cooperate as appropriate.
We will remain in close contact throughout the coming weeks and cooperate as appropriate, ready to take action to ensure stability and liquidity in financial markets.
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