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2011年9月 6日 (火)

高齢者向け社会保障に対する2つの視点の差は何に起因するのか?

最近の日経新聞で社会保障に関する方向性として、一見したところ相異なる2つの主張を見かけました。ひとつは経済教室で関西学院大学の上村教授が主張している高齢者向け社会保障費の管理の問題で、基本的には、赤字公債への依存で世代を超えてツケ回しすることなく、各世代で受益と負担を一致させるべし、という主張であり、私の目から見て極めて真っ当な理論展開になっています。もうひとつは、日経新聞に限らず、いろんなメディアで報じられている通り、新任の小宮山厚生労働大臣が来年度も診療報酬の増額を検討しているという内容です。もっとも、コチラは「たばこ増税」発言にかき消された感があります。それはともかく、8月29日付けのこのブログのエントリーで「平成22年度 医療費の動向」を取り上げた際に論じた通り、医療費の半分近くは70歳以上と定義される高齢者につぎ込まれ、70歳以上の高齢者は70歳未満に比べて1人当たりで5倍近い医療費を使っています。すなわち、小宮山大臣の主張する医療報酬の引上げはかなりオートマチックに高齢者に流れ込むことになります。こういったシステムを見直すべきとして、経済教室の上村教授は「少なくとも消費税の税率引き上げ部分の物価スライドは停止しなければならない」と歳出抑制を主張しています。
小宮山厚生労働大臣は、同時に、いわゆる「第3号被保険者」となる専業主婦の年金制度の見直しにも言及し、勤労世代に厳しく引退世代に手厚い政治家としての姿勢を明らかにした一方で、科学的な知見あるエコノミストは高齢者に偏った社会保障の分配を改善すべきであると主張しています。ここ数年でこの2つの視点の乖離が大きくなったように私は受け止めていますが、この差は何に起因するのかといえば、いわゆる時間軸の違いに端を発していると私は考えています。政治家は各々の時点での投票者の選好を反映した行動を取る可能性が高い一方で、独特の用語かもしれませんが、エコノミストは going concern な国家における異時点間の最適化を考えます。つまり別の表現をすれば、政治家が現時点の投票構造に依存して当落が決まる一方で、国民経済は現在世代で終わるわけではなく、この先も続いていくわけですから、エコノミストは先の世代まで含めた、現実的な意味ではなく理論的な意味で、無限の先の世代まで含めた社会的厚生の最大化を考えます。もしも、私の直感が正しくて、ここ数年で現在世代の利害と将来世代の利害の対立がより深くなってしまっているのだと仮定すれば、現在世代に選出された政治家による利害調整は将来世代に対して好ましくないバイアスを持つ可能性があります。
私はまぎれもなく阪神ファンなんですが、あえて強引に野球の采配に例えると、今日の試合に勝つためにはいい投手を惜しみなくつぎ込んで相手をゼロに抑えればいいかもしれませんが、そんなことをすると、明日の試合、明後日の試合でいい投手が残っていないことになって、結局、シーズンを通していい成績を上げられないことにもなりかねません。ですから、先発投手起用のローテーションを守って将来に備える必要があるわけです。現在の日本の財政は目先の試合にすべての投手を注ぎ込んで、将来のことは何も考慮していない野球の采配のように私には見受けられます。そして、今日の試合を見に来た観客は明日の試合は関係ないので、こういった投手起用が支持されている可能性があるわけです。このままですと、日本の高齢者は若年層のことはなにも配慮していないと評価されかねません。

カギカッコ付きの「世代間闘争」のようなものに突入する前に、何らかの利害調整が図られないものか、それとも、現在世代の得票をバックにしたシルバー・デモクラシーの圧勝に終わるのか、日本経済の再生にも関係して注目されるところです。

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