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2011年9月21日 (水)

IMF World Economic Outlook 見通し編は世界経済の減速を示唆

昨日、国際通貨基金 (IMF) から World Economic Outlook 見通し編第1章と第2章が発表されています。昨夜のエントリーで取り上げた分析編の第3章や第4章とともに pdf の全文リポートもアップされています。今夜のエントリーは簡単にこの見通し編を取り上げておきたいと思います。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米欧成長率1%台に 11年と12年、IMF「危険な局面」
予測を大幅下方修正

国際通貨基金(IMF)は20日、世界経済見通しを改定した。米国とユーロ圏の実質成長率を6月時点から大幅下方修正し、2011、12年ともに実質成長率が1%台にとどまると予測した。世界経済は「危険な新局面にある」と表現したうえで「リスクは明らかに下を向いている」と分析した。日本については、11年はマイナス0.5%で0.2ポイント上方修正する一方、12年は2.3%と0.6ポイント下方修正した。
世界経済全体の成長率見通しは11、12年ともに4.0%で前回6月の予測から、それぞれ0.3ポイント、0.5ポイントの下方修正となった。先進国の成長率が11-12年に1%台半ばから後半にとどまることが響く。
米国は11年の成長率が1.5%、12年は1.8%でそれぞれ1.0ポイント、0.9ポイントの下方修正。ユーロ圏は11年が1.6%、12年は1.1%でそれぞれ0.4ポイント、0.6ポイント下げた。
ただ、今回の見通しは欧州の当局者がユーロ圏の危機を封じ込め、米国の当局者が経済の下支えと中期的な財政再建の間のバランスの取れた政策運営を実施できることを想定しているという。IMFは「万一の事態が(米欧の)どちらかでも起きれば世界の成長に深刻な影響を与える」と指摘した。
新興・途上国の成長率は全体で11年が6.4%、12年は6.1%で小幅な下方修正。新興国は「かなり力強い成長が続くが、不透明感が強まった」と指摘し、先進国の需要減などに警戒を示した。中国の成長率は11年が9.5%、12年が9.0%でそれぞれ0.1ポイント、0.5ポイントの下方修正となった。インドやロシアなどの成長率も小幅下方修正となった。
IMFは日本の財政政策について「東日本大震災後の復興のための緊急の要請に応えながら、巨額の公的債務に対処するために、より野心的な方法を追求すべきだ」と提言した。

続いて、IMF のサイトから成長率見通しの表を引用すると以下の通りです。先週のアジア開発銀行の経済見通しを取り上げた際と同じように、下の画像をクリックするとWorld Economic Outlook 全文リポートから p.2 Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページを抽出した pdf ファイルが別画面で開きます。

Latest IMF projections

上の表や、クリックして現れる pdf を見て明らかな通り、世界経済の成長率見通しは下方修正され、新興国・途上国よりも先進国の方が下方修正の幅が大きく、中でも特に米国が大きく成長率を引き下げる、ということになります。もちろん、世界経済が一様に減速するわけではなく、リポートでは、例えば、p.3 で "uneven expansion" と表現しています。

Figure 2.9.  Asia: Current Growth versus Precrisis Average

上の画像は全文リポートの p.84 Figure 2.9. Asia: Current Growth versus Precrisis Average を引用していますが、アジア域内でも成長のばらつきは同じことで、2000-07年平均の成長率から2011-12年にどのように変化したかを表しており、インドヤインドネシアなどのように成長率が上昇した国や地域もあれば、パキスタンやミャンマーのように2%ポイント超も成長率を下げた国もあります。

また、今回の見通しはかなり楽観的であることは IMF も認めており、引用した日経新聞の記事にもある通りです。特に、財政問題については全文リポートの p.20 で日米欧に分けて以下のように示唆しています。

  • For the United States, the main priority is to soon launch a medium-term deficit reduction plan—including entitlement reform and tax reforms that gradually raise revenues—so as to stabilize the debt ratio by mid-decade and gradually reduces it thereafter under realistic macroeconomic assumptions.
  • Similarly, for Japan a more ambitious fiscal strategy is needed—equivalent to a front-loaded 10 percent of GDP fiscal adjustment over 10 years—that brings the public debt ratio down decisively by the middle of the decade. … Specifically, the strategy should be centered on a gradual increase in the consumption tax to 15 percent.
  • The major euro area economies have made good progress in adopting and implementing strong medium-term consolidation plans. They are committed to reducing deficits to below 3 percent of GDP by 2013 and to stabilizing the level of public debt by 2015.

特に上の引用で強調しておいた通り、IMF は従来から日本の消費税率を15パーセントまで引き上げることを主張しています。その昔に、「ネバダ・リポート」なる荒唐無稽なリポートの存在が国会などで取り上げられたことがありますが、我が国が財政破綻してしまった場合、日本政府の財政改収支善努力は国際的な救済策の策定に何らかの影響を及ぼす可能性は否定できないのかもしれません。もっとも、消費税率を15パーセントに引き上げておけば、財政破綻しても確実に IMF が救済してくれるというわけでもなさそうです。

貿易収支の推移

最後に、本日、財務省から貿易統計が発表されました。震災から数えて6か月振りに輸出の前年同月比が+2.6%と増加になりました。サプライ・チェーンなどの供給サイドの制約がほぼ解消されたと見られますが、この先は世界的な景気の減速に起因する需要サイドの影響が現れる可能性があります。ただし、輸入が前年同月比で+19.2%増と大きく増加していて貿易収支は年内くらいは赤字基調で推移しそうな勢いです。なお、上のグラフは上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支を凡例の通りにプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は季節調整済みの系列です。

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