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2011年9月30日 (金)

政府統計発表の集中日に生産・雇用・物価を評論する

本日、月末の閣議日ということで、政府統計の発表がいくつか集中しました。いずれも8月の統計で、経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計、総務省統計局から消費者物価指数、がそれぞれ発表されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産0.8%上昇 自動車・鉄鋼がけん引
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は93.7と、前月比で0.8%上昇した。前月比プラスは5カ月連続。主力の自動車や鉄鋼で回復が進み、季節調整をしない原指数では東日本大震災後初めて前年同月を上回った。経産省は基調判断を「震災の影響からほぼ回復した」としたが、円高などの影響で先行き不透明感もある。
生産指数の伸び率は市場の事前予想(1.5%上昇)を下回った。原指数が90.6と前年同月を0.6%上回ったため、これまで「回復しつつある」としていた基調判断の表現を変更した。
8月上昇のけん引役は自動車。サプライチェーン(供給網)の回復が進み、北米やアジア向け普通乗用車の生産が回復した。輸送機械工業は6.5%上昇したほか、鉄鋼が2.5%、電子部品・デバイス工業が1.2%上昇した。
一方地上デジタル放送への移行が完了したことで液晶テレビが4割落ち込み、情報通信機械工業は10.8%低下した。ただ東京電力管内などで発動した電力制限令は「大手ではほとんど影響がなかった」(経産省)。
経産省が同日発表した製造工業生産予測調査によると、生産指数は9月に2.5%の低下に転じ、10月は3.8%上昇する見通し。ただ円高の進行や世界経済の減速など懸念材料もある。
8月の失業率、4.3% 職探し断念者増加で低下
総務省が30日発表した8月の完全失業率(季節調整値、被災3県除く)は4.3%となり、前の月に比べて0.4ポイント低下した。失業者が大きく減ったため指標は改善したが、非労働力人口も同時に20万人増えており、失業者が職探しをあきらめて労働市場から退出した可能性が高い。就業者も全体で16万人減った。厚生労働省が同日発表した8月の有効求人倍率は前月に比べて0.02ポイント上昇し0.66倍になった。
小宮山洋子厚生労働相は同日の閣議後会見で「雇用情勢は一部に持ち直しの動きがみられるものの、依然として厳しい」との認識を表明。今後も東日本大震災や円高の影響を見極めたいとの考えを示した。
完全失業者は270万人となり、前月に比べ24万人(8.2%)減った。内訳をみると、自発的に離職した人が18万人減の89万人になったほか、勤め先の都合など「非自発的な離職者」も9万人減って101万人になった。一方で、労働市場に参加しない非労働力人口が20万人増の4322万人になった。総務省は「円高が進むことで(雇用情勢の厳しさを見越し)仕事探しを見合わせる動きがあったようだ」と分析した。
厚労省がまとめた8月のハローワークでの職業紹介状況によると、雇用の先行指標となる新規求人数は前月比0.9%増の67万人になった。2カ月連続で増えたが、伸びは前の月(4.0%増)に比べて鈍化した。ただ、新規求職申込件数が増えたため、新規求人倍率は1.05倍と前月に比べて0.02ポイント低下した。
8月の消費者物価、0.2%上昇 2カ月連続
総務省が30日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.9となり、前年同月比0.2%上昇した。電気料金の引き上げやガソリン高で、2カ月連続のプラスとなった。ただデジタル家電の価格下落に歯止めがかからないなど需要不足に伴うデフレ基調はなお続いている。
消費者物価の上昇は資源高の影響が大きい。エネルギーではガソリン価格が13.1%、電気代が3.4%それぞれ上がった。食品では小麦の国際価格高騰を受け食パンやうどんが上昇した。
一方で耐久財は価格下落の動きが止まらない。テレビや電気冷蔵庫、洗濯乾燥機は3割近く下落。冷房需要も盛り上がらずルームエアコンは1割下がった。食料とエネルギーを除いたCPIは、8月はマイナス0.5%。基調的な物価は下落が続いている。
円高や海外経済の減速の影響で家計の先行き不安は根強く、物価の先行きは再び下落に転じるとの見方が多い。国際原油市況は8月に入って軟調に推移。原油の輸送などに時間がかかるため、秋以降はガソリン価格が伸び悩む可能性がある。また10月には、昨年のたばこ値上げと傷害保険料上げの影響が一巡する。
総務省が同日発表した東京都区部の9月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除くベースで0.1%下落した。CPIは7月分から基準年を05年から10年に切り替えた。

続いて、まず、生産のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもので、下のパネルは輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷の推移です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産指数の推移

引用した記事にもある通り、製造工業生産予測指数に従えば、9月に減産した後、10月には再び増産が見込まれている、ということですが、私を含む多くのエコノミストにはやや怪しい、と受け止められています。世界経済の減速の影響が生産に波及し不透明感が残るからです。資本財や耐久消費財のグラフを見ても、ほぼ震災前の水準に復帰したように見受けられますが、方向感には乏しいと私は受け止めています。

雇用統計の推移

上のグラフは雇用統計について、上のパネルから、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。いずれの雇用指標も改善しているように見られますが、少なくとも失業率の低下については、非労働力人口が大きく増加しており、失業者が職探しを諦めて労働市場から退出した可能性が示唆されていますから、必ずしも雇用の改善とはみなせない部分も残ります。特に、総務省統計局の失業率などの労働力調査は震災3県を除いた統計ですので、信頼性に欠けると言わざるを得ません。いつもと同じ評価ですが、最初のグラフで見たように、生産や資本財の出荷もリーマン・ショック前の水準には遠く及びませんし、同様に雇用もリーマン・ショックを含む景気後退前の水準に戻るには時間がかかると覚悟すべきなのかもしれません。

消費者物価の推移

最後に、消費者物価はエネルギーにけん引されてプラスが続いています。特に、電気料金をはじめとする公共料金の値上げが大きくなっています。上のグラフはコア消費者物価上昇率を折れ線グラフで、そのうちの公共料金の寄与度を棒グラフで、それぞれプロットしています。コア消費者物価上昇を大きく上回る公共料金の上昇が読み取れます。一般物価水準としてプラスのインフレを記録し始めたのは評価すべきかもしれませんが、政策割当てとしては問題があるような気がします。

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2011年9月29日 (木)

商業統計に見る個人消費の動向やいかに?

本日、経済産業省から8月の商業販売統計が発表されました。個人消費の供給サイドの統計である小売業の売り上げを見ると、政策効果の剥落や昨年の猛暑の反動などから、季節調整していない原系列の前年同月比で▲2.6%の減少10兆9480億円となり、3か月振りで減少を記録しました。また、季節調整済みの販売額指数でも前月比▲1.7%減と2か月連続でマイナスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の小売販売額2.6%減 3カ月ぶりマイナス
経済産業省が29日発表した8月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は10兆9480億円で、前年同月比2.6%減少した。減少は3カ月ぶり。買い替え補助制度が終了する前の駆け込み需要が膨らんでいた昨年の反動で、自動車小売業の落ち込みが大きかった。月後半は暑さが和らいだため、エアコンや扇風機など節電関連の家電も伸び悩んだ。
自動車小売業の売り上げは18.8%減、家電など機械器具小売業は19.3%減と低調だった。地上デジタル放送移行前の駆け込みで売れていたテレビや対応チューナーなどの売り上げが反動で減ったことも響いた。
大型小売店の販売額は1兆5573億円で、1.8%減少した。減少は2カ月ぶり。百貨店では高級時計や宝飾品などに動きが見られたものの、クールビズ衣料の販売が一段落した。前年に比べ気温が低かったことから、スーパーでは飲料やアイスなどの販売が伸び悩んだ。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない販売額の前年同月比、下は季節調整済みの販売指数そのものです。いずれも、影を付けた部分は景気後退期で、青い折れ線が卸売業、赤が小売業です。

商業販売統計の推移

変動の大きい卸売業はさて置いて、消費の指標である小売業の動向については、震災によるショックからほぼ回復して、その後、この夏は伸び悩んでいます。第1の要因は政策効果の剥落です。もっとも大きな影響は、昨年9月半ばで終了したエコカー補助金と今年3月に終了した家電エコポイントであることはいうまでもありません。後者のうちのテレビについては、7月の被災3県を除く地デジ移行まで駆込み需要が続きましたし、前者の自動車については需要サイドだけでなく、今年3月の震災に起因してサプライ・チェーンなどの供給サイドから販売制約が生じたこともありました。ですから、自動車については季節調整していない原系列の前年同月比はマイナスながら、季節調整済みの統計では足元の前月比でプラスとなっている一方、テレビについてはいずれもマイナスとなっています。いずれにせよ、政策効果で需要を先食いして来たんですから、何らかの反動はあり得ると覚悟すべきです。
第2の要因は昨年の猛暑からの反動です。主として前年同月比がマイナスを記録したことの要因ですが、8月中旬まで続いた夏らしい暑さが下旬には気温が低下しましたので、衣類などが弱い動きを示しています。節電需要とクールビズ需要は8月下旬から息切れした、と世間一般で報道されている通りです。細かく見ていませんが、飲料やアイスクリームなどもそうかもしれません。

GDPベースの消費を考える場合、小売販売が物販中心ですから、サービス消費の動向も重要な役割を果たします。例えば、今年の夏休みレジャーについては、何かの報道で「近場で涼」という見出しを目にしましたし、外食はかなり停滞しているような報道も見かけました。そうだとすれば、サービス消費は盛上りに欠けている可能性もあります。消費の不調を補いに余りある復興需要で、7-9月は大きなプラス成長を記録するんでしょうか?

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2011年9月28日 (水)

吉田修一『平成猿蟹合戦図』(朝日新聞出版) を読む

吉田修一『平成猿蟹合戦図』(朝日新聞出版)

吉田修一さんの『平成猿蟹合戦図』(朝日新聞出版) を読みました。日本でもトップクラスの売れっ子作家の話題の最新刊です。まず、作者ご自身のサイト出版社のサイトから微妙に異同のあるあらすじを引用すると以下の通りです。なお、誠に申し訳ないながら、明らかな誤字は訂正し、適宜、改行しました。

あらすじ
2年ぶりとなる長編は、閉塞感ある現代社会に一筋の光明となるストーリー。
歌舞伎町でバーテンダーをしていたしがない青年が、ひょんなことから国政選挙に打って出ることに。しかも対抗馬は地盤ガチガチの現職古参議員。
新宿で起きたひき逃げ事件を発端に、心優しき8人の人生が交差する、吉田修一の新境地。今の日本に本当に必要な小説はこれだ!
平成猿蟹合戦図
歌舞伎町のバーテンダーが地元東北から国政選挙に打って出る!
新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡で幸せな暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、いつしか日本をになう若き政治家を生む希望の物語へと転化する!
一人ひとりの力は弱くても、前を向く勇気と信じる力で日本を変えていく8人の主人公たち。2011年、明るい未来を描けない日本に一閃の光が射す、吉田修一の新たな代表作がここに誕生する!

「トップクラスの売れっ子作家」と書きましたが、恥ずかしながら、私は吉田修一さんの作品はかなり初期の「最後の息子」と芥川賞受賞作である「パーク・ライフ」しか読んでいなかったりします。になれば、朝日新聞出版から出ている『悪人』が現時点での代表作ということになるんでしょうが、2007年に出版された後、私が長崎に赴任していた時に映画がクランクインして、長崎をはじめとするロケが行われていた話題作でした。その後、この映画「悪人」はモントリオール世界映画祭ワールド・コンベンション部門に正式出品され、深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞したのは広く知られている通りです。作者自身も長崎の出身だったりします。当然ながら、私に勧めてくれる長崎の同僚や知人も少なくなかったんですが、中には、『悪人』の登場人物について、「福岡、佐賀、長崎などのそれぞれの九州の言葉が、微妙な違いまで含めて完璧に文字で表現されている」点を高く評価している地元長崎の人がいて、当時、長崎の人のやや過剰な郷土愛に閉口していたこともあって、ついつい、読み逃してしまった記憶があります。
ということで、この『平成猿蟹合戦図』は久し振りの吉田作品なんですが、家族3人の小さな物語から始めて、実に巧みにストーリーを進め、新しいタイプの国会議員の誕生という大きな物語に進めるなど、作家としての力量をいかんなく発揮しています。作者の『「新たな代表作」という評価ももっともです。タイトルとなっている民話「猿蟹合戦」は、猿にだまされて殺された蟹の子供が栗や蜂や臼などの助勢を得て復讐を成し遂げる、という因果応報の物語ですが、個人や家庭の小さな物語の復讐劇から始まって、複雑な登場人物の相関関係やストーリーを見事により合わせて、国政選挙までグイグイと引っ張った上で、実は、猿と蟹の関係は2通り、小さな物語と大きな物語で2つあったことが明らかにされ、最後は、やっぱり家族の幸福という普遍的な価値観に立ち戻り、小さな物語で締めくくります。読後感もさわやかです。大枠のプロットの設定とともに細かな表現力と併せて、作者の力量は大いに敬服すべきものがあります。純真な家族を思う心と狡猾な駆引きのいずれもが重要な役割を果たし、見事なエンターテイメント作品に仕上がっています。ミステリと捉える読者もいるかもしれません。

現在の日本を代表する若手作家のうちの1人による最新刊であり、文句なく5ツ星の素晴らしい出来栄えの作品です。予約の待ち行列は長い可能性がありますが、ほとんどの図書館に所蔵されていることと思いますので、ぜひ多くの方が手に取って読むことをオススメします。

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2011年9月27日 (火)

企業向けサービス物価の動向から何を読み取るべきか?

本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されました。前年同月比で▲0.4%の下落と前月よりも▲0.1%ポイント下落幅を拡大しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、8月は0.4%低下
日銀が27日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2005年=100、速報値)は96.1となり、前年同月比0.4%低下した。マイナスは2年11カ月連続となった。円高の進行に伴い貨物用船料が15.2%低下したことなどを反映し、低下幅は前月から0.1ポイント拡大した。前月比では0.4%低下し、3カ月ぶりにマイナスに転じた。
企業向けサービス価格指数は、輸送費や不動産賃貸料、情報通信など企業間で取引するサービスの価格水準を示す。
リースでは2.6%低下。オフィス需給の緩みから不動産も3.7%低下した。ただ、東日本大震災後に一時落ち込んだ広告価格や、建設機械のレンタル料金では上昇基調が続いている。
今後は、東日本大震災の復興需要に伴う価格上昇要因がある一方、円高や海外経済の先行き不透明感などで国内企業が経費の削減を強めれば価格低下につながる可能性がある。

次に、前年号月日上昇率の推移は以下のグラフの通りです。少し前に発表された企業物価の国内物価 (CGPI) も参考までにプロットしてあります。凡例にある通り、青の折れ線が CGPI、赤が CSPI です。

企業物価の推移

業種別で見て、不動産、情報通信、リース・レンタルなどがマイナス寄与が大きく、土木建築や宿泊を含む諸サービス、運輸、広告がプラスの寄与となっています。この業種別のプラスとマイナスとは別に、総合指数で今年に入って下げ幅を縮小して来て、7月には一気に▲0.3%に達した企業向けサービス物価が、商品市況が5月ころから横ばい基調で推移していることもあって、8月は下落幅の縮小に足踏みが見られます。いったい、いつになったら、プラスに転じるのでしょうか。見通しは立ちません。
総合指数でプラスに転じる時期を探るとともに、今月の発表からは業種別の上昇率にも注目してみました。すなわち、6月21日付けのエントリーでも指摘した通り、震災やその後のシホンストックの毀損・復旧などの状況次第で我が国の比較優位構造が変化した可能性があり、この比較優位構造の変化は貿易より先に物価に現れる可能性が高いと私は考えています。サービス業は貿易財ではないと考えられがちですが、輸出財としてではなく日本企業が海外展開するケースもありますから、比較優位の構造を考えるのは無意味ではありません。物価を見る視点も、一般物価水準を表す総合を重視するデフレ脱却の視点に加えて、業種別・財別に相対価格を勘案する比較優位構造変化の視点まで、エコノミストとして幅広く見極めたいと考えています。

直感的には消費者物価は公共料金、特に電気料金によって押し上げられている可能性がありますが、日銀の企業物価や企業サービス物価は業種別に発表される部分もあって、比較優位構造の把握に便利であることはいうまでもありません。

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2011年9月26日 (月)

Communiqué of the Twenty-Fourth Meeting of the IMFC: Collective Action for Global Recovery

IMF-World Bank Meeting logo

Press Release No. 11/348
September 24, 2011

The global economy has entered a dangerous phase, calling for exceptional vigilance, coordination and readiness to take bold action from members and the IMF alike. We are encouraged by the determination of our euro-area colleagues to do what is needed to resolve the euro-area crisis. We welcome that the IMF stands ready to strongly support this effort as part of its global role.
****************

Today we agreed to act decisively to tackle the dangers confronting the global economy. These include sovereign debt risks, financial system fragility, weakening economic growth and high unemployment. Our circumstances vary, but our economies and financial systems are closely inter-linked. We will therefore act collectively to restore confidence and financial stability, and rekindle global growth.

The advanced economies are at the core of an effective resolution of current global stresses. The strategy is to restore sustainable public finances while ensuring continued economic recovery. Taking into account different national circumstances, advanced economies will adopt policies to build confidence and support growth, and implement clear, credible and specific measures to achieve fiscal consolidation. Euro-area countries will do whatever is necessary to resolve the euro-area sovereign debt crisis and ensure the financial stability of the euro area as a whole and its member states. This includes implementing the euro-area Leaders’ decision of July 21 to increase the flexibility of the European Financial Stability Facility, maximizing its impact, and improve euro-area crisis management and governance. Advanced economies will ensure that banks have strong capital positions and access to adequate funding; maintain accommodative monetary policies as long as this is consistent with price stability, bearing in mind international spillovers; revive weak housing markets and repair household balance sheets; and undertake structural reforms to boost jobs and the medium-term growth potential of their economies.

Emerging market and developing economies, which have displayed remarkable stability and growth, are also key to an effective global response. The strategy is to adjust macro-economic policies, where needed, to rebuild policy buffers, contain overheating and enhance our resilience in the face of volatile capital flows. Surplus economies will continue to implement structural reforms to strengthen domestic demand, supported by continued efforts that achieve greater exchange rate flexibility, thereby contributing to global demand and the rebalancing of growth. Fostering inclusive growth and creating jobs are priorities for all of us.

We reaffirm the importance of the financial sector reform agenda and are committed to its full and timely implementation. We will continue our coordinated efforts to strengthen the regulation of systemically important financial institutions, establish mechanisms for orderly domestic and cross-border resolution of troubled financial institutions, and address risks posed by shadow banking.

We call on the Fund to play a key role in contributing to an orderly resolution of the current crisis and prevention of future crises. We welcome the Consolidated Multilateral Surveillance Report as an important tool to focus our discussions on key risks and policy issues. We welcome the directions set out in the Managing Director’s Action Plan. In particular, we encourage the Fund to focus on the following priorities and report to the IMFC at our next meeting:

  • A more integrated, evenhanded, and effective surveillance framework that better captures risks to economic and financial stability, drawing on the Fund’s Triennial Surveillance Review and spillover reports;
  • Early assessment of current financing tools and enhancements to the global financial safety net;
  • Review of the adequacy of Fund resources;
  • Ensuring adequate policy advice and financing to support low-income countries, including to address volatile food and fuel prices; and
  • Further work on a comprehensive, flexible, and balanced approach for the management of capital flows, drawing on country experiences.

Governance reform is crucial to the legitimacy and the effectiveness of the IMF. We will intensify our efforts to meet the 2012 Annual Meetings target for the entry into force of the 2010 quota and governance reform. We call on the Fund to complete a comprehensive review of the quota formula by January 2013 and to report on progress at our next meeting. We reaffirm the commitment to complete the Fifteenth General Review of Quotas by January 2014. We look forward to further enhancing the role of the IMFC as a key forum for global economic and financial cooperation.

We thank Mr. Strauss-Kahn and Mr. Lipsky for their outstanding service at the helm of the Fund in difficult times. We warmly welcome Ms. Lagarde, Mr. Lipton, Ms. Shafik, and Mr. Zhu. Our next meeting will be held in Washington, D.C. on April 21, 2012.

「世界経済は危険な段階に入っている」で始まる国際通貨金融委員会(IMFC)のコミュニケの引用です。
手抜きのエントリーでした。出典はIMFのサイトです。ただし、強調文字は引用者に因ります。

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2011年9月25日 (日)

村上春樹さんの小説に登場するジャズを集めた「ノベルズ・ジャズ」を聞く

ノベルズ・ジャズ

上のジャケットは「ノベルズ・ジャズ」 Novel's Jazz というアルバムで、村上春樹さんの小説に登場するジャズの曲を集めています。村上さんの小説の音楽といえば、最新刊の『1Q84』で最初のタクシーで主人公の青豆さんが聞くヤナーチェクの「シンフォニエッタ」がものすごく話題になったんですが、実は、「ノベルズ・クラシック」というCDも出ています。上のジャケットの色調が赤ではなくて緑になっていて、最後の14曲目に「シンフォニエッタ」が収録されています。私の場合はクラシック音楽よりもジャズの方に親しみを感じますし、何といっても、村上さんは小説を書き始める前はジャズ喫茶のオーナーだったんですから、今日のブログではこの「ノベルズ・ジャズ」を取り上げたいと思います。まず、英語と日本語が混在して長くなりますが、全15曲のラインナップは以下の通りです。情報源はライナー・ノートです。

奏者村上作品
It's Only a Papermoon
イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン
Hank Jones Quintet
ハンク・ジョーンズ・クインテット
『1Q84』
Waltz for Debby
ワルツ・フォー・デビー
David Matthews
デヴィッド・マシューズ
『ノルウェイの森』
Close to You
クロース・トゥ・ユー
Cheryl Bentyne
シェリル・ベンティーン
『ノルウェイの森』
Autumn Leaves
枯葉
French Jazz Trio
フレンチ・ジャズ・トリオ
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
On a Slow Boat to China
オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ
白木秀雄クインテット『中国行きのスロウ・ボート』
South of the Border
国境の南
東京キューバン・ボーイズ『国境の南、太陽の西』、『羊をめぐる冒険』
The Girl from Ipanema
イパネマの娘
Donna Groom
ドナ・グルーム
『ノルウェイの森』、『カンガルー日和』
Begin the Beguine
ビギン・ザ・ビギン
Cheryl Bentyne
シェリル・ベンティーン
『夜のくもざる』
Bag's Groove
バグス・グルーヴ
Mal Waldron
マル・ウォルドロン
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
Airegin
エアジン
Manhattan Jazz Quintet
マンハッタン・ジャズ・クインテット
『蛍・納屋を焼く・その他の短編』
I Can't Get Started
言いだしかねて
L.A. Jazz Trio
L.A. ジャズ・トリオ
『神の子どもたちはみな踊る』
Hallo, Dolly!
ハロー, ドーリー!
外山喜雄 & デキシー・セインツ『ダンス・ダンス・ダンス』
Mack the Knife
マック・ザ・ナイフ
L.A. Jazz Trio
L.A. ジャズ・トリオ
『スプートニクの恋人』
Sophisticated Lady
ソフィスティケーテッド・レディ
Cheryl Bentyne
シェリル・ベンティーン
『アフター・ダーク』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
My Favorite Things
マイ・フェイヴァリット・シングス
Manhattan Jazz Quintet
マンハッタン・ジャズ・クインテット
『海辺のカフカ』

この表にあるすべての音楽をチェックしたわけではありませんが、小説に登場するオリジナルの曲ではないように私は受け止めています。例えば、最後の『海辺のカフカ』で主人公が聞く「マイ・フェイヴァリット・シングス」は明らかにコルトレーン・カルテットの演奏です。「いつの間にかコルトレーンのソプラノサックスのソロが終わって、マッコイ・タイナーのピアノに移っていた」旨の記述があるからです。どうして、こんなに細かいことを覚えているかというと、私のようなコルトレーン・ファンの間でもっとも高く評価されている「マイ・フェイヴァリット・シングス」は、アルバム「セルフレスネス」に収録されているものであると衆目が一致しているんですが、ニューポート・ジャズ・フェスティバルで収録されたこの曲では、マッコイ・タイナーが先にソロを取っていて、後でコルトレーンが登場するからです。また、「ノベルズ・ジャズ」に入っているマンハッタン・ジャズ・クインテットの演奏は最後に拍手が入っているので、来日した時の「マイ・フェイヴァリット・シングス・ライブ・イン・トーキョー」ではないかと思うんですが、私はこのアルバムは持っていません。好みの問題ながら、演奏はオリジナルの映画「サウンド・オブ・ミュージック」に近くて、そういう意味ではジャズ的ではありません。もっとも、ジャズの「マイ・フェイヴァリット・シングス」がすべてコルトレーンをなぞるように演奏されているわけでもなく、アキコ・グレースの初期のアルバムでも映画オリジナルのままのピアノを聞いた記憶があります。テナー・サックス奏者のハリー・アレンとエリック・アレキサンダーも演奏していますが、軽く想像される通り、後者の方がコルトレーン的であることは言うまでもありません。それはともかく、この「マイ・ファイバリット・シングズ」に見られるように、小説のオリジナルの音楽を収録しないところが、私のオムニバス盤に対する評価を低下させている一因のような気がします。
話が「マイ・フェイヴァリット・シングス」ばっかりになってしまいましたが、いろんな小説にいろんな音楽は配置されていて、それなりの効果を高めています。例えば、私と下の子が大いに感激した貴志祐介さんの『悪の教典』では、犯人がこのアルバムにも入っている「マック・ザ・ナイフ」を口ずさみながら犯行を重ねる、というくだりがあります。ということで、私は近くの図書館からエラ・フィッツジェラルドが歌う曲を収録したCDを借りて来て、下の子といっしょに聞いたりしていました。でも、私はどちらかといえば、ソニー・ロリンズのアルバム「サキソフォン・コロッサス」を持っていますから、「モリタート」という曲名で収録されている同じメロディーの方に親しみがあったりします。

少し前にも書きましたが、今年こそ村上春樹さんにノーベル文学賞を期待しています。また、ついでながら、和田誠・村上春樹のセレクションになる「ポートレイト・イン・ジャズ」なるオムニバス・アルバムも発売されています。これには少し趣きが異なる曲が収められています。

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2011年9月24日 (土)

ジャイアンツに完勝しAクラスは目前か?

  HE
読  売002200000 4111
阪  神05000400x 9140

久し振りに野球を見ました。優勝の可能性はもうなくなったと考えていましたから、ほとんど興味は失せていたんですが、テレビを点けるとやっていました。ちょうど、岩田投手が降板するあたりでした。何とか甲子園も巨人に打ち勝って借金1となり3位巨人には1ゲーム差まで肉薄しました。そんなに甘いものではないんでしょうが、3位を目指して欲しいと思います。
もっとも、私はクライマックスシリーズには興味ありません。どうせ負けます。しかし、巨人を倒してのAクラスには意味があると思います。

無理する必要はないものの、最後まで、
がんばれタイガース!

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2011年9月23日 (金)

今年のノーベル経済学賞のゆくえやいかに?

Nobel Medal

9月も終わりに近づき、そろそろノーベル賞発表の季節になりました。10月3日の週から発表が始まります。昨年のノーベル経済学賞は、労働経済学におけるサーチ理論への貢献に対して、ダイアモンド教授、モーテンセン教授、ピサリデス教授に授賞されましたが、今年は誰が栄冠に輝くんでしょうか。10月10日の午後に発表される予定です。例年の通り、トムソン・ロイターでは一昨日9月21日に科学分野のノーベル賞受賞者の予想を「引用栄誉賞」という形で発表しています。秋分の日でお休みの今日は、軽い話題ということで取り上げたいと思います。まず、トムソン・ロイターのサイトから「引用栄誉賞」受賞者を引用すると以下の通りです。

Thomson Reuters Predicts Citation Laureates
Economics

Douglas W. Diamond
Merton H. Miller Distinguished Service Professor of Finance, Graduate School of Business, University of Chicago, Chicago, IL USA
For his analysis of financial intermediation and monitoring

Anne O. KruegerProfessor of International Economics, Paul H. Nitze School of Advanced International Studies, Johns Hopkins University, Washington, DC USA
-and-
Gordon Tullock
Professor Emeritus of Law and Economics, George Mason University School of Law, Arlington, VA USA
For their description of rent-seeking behavior and its implications

Jerry A. Hausman
John and Jennie S. MacDonald Professor, Department of Economics, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA USA
-and-
Halbert L. White, Jr.
Chancellor's Associates Distinguished Professor of Economics, Department of Economics, University of California San Diego, La Jolla, CA USA
For their contributions to econometrics, specifically the Hausman specification test and the White standard errors test

なお、どうでもいい点ですが、2点ほど注意しておくと、第1に、昨年受賞したダイヤモンド教授のファーストネームは「ピーター」で、今年のトムソン・ロイター「引用栄誉賞」筆頭のダイアモンド教授は「ダグラス」ですから、当然ながら別人です。第2に、トムソン・ロイターの日本語サイトでは、ダイアモンド教授が第1グループであるのは英語のサイトと同じなんですが、第2グループは英語サイトがハウスマン教授とホワイト教授であるのに対して、日本語サイトではクルーガー教授とタロック教授が第2グループにおかれています。この異同の理由は不明です。
また、昨年はこのトムソン・ロイターのノーベル経済学賞候補に日本人の清滝教授が名を連ねていて大いに注目され、実は、私のところにまで新聞記者さんが取材に来たほどだったんですが、今年、トムソン・ロイターは物理学分野で東北大学の大野英男教授をノミネートしています。いくつかのメディアでも注目されているところです。私はまったく専門分野が違うので評価できません。悪しからず。
かなり細分化された経済学の分野ですから、私も専門の時系列分析や景気変動以外の分野は必ずしも評価できません。今世紀に入ってからのノーベル経済学賞の受賞者を見渡しても、2001年の情報の非対称性、2002年の実験経済学、2003年の時系列分析、2004年のリアル・ビジネス・サイクル理論、2005年のゲーム理論、2006年のフェルプス教授の自然失業率くらいまではなんとか分からないでもありませんが、2007年のメカニズム・デザインになると一気に理解が怪しくなりました。2008年のクルーグマン教授はともかく、2009年の2人のカップリングは奇妙に見えましたし、昨年のサーチ理論もミクロ経済学の専門外ということで、予想もしませんでした。今年のノーベル経済学賞は、私なりの予想として、開発経済学のフランケル教授とサックス教授を上げておきたいと思います。

最後に、経済学賞を別にすれば、私のノーベル賞に対する興味は、今年こそ村上春樹さんがノーベル文学賞を受賞するんではないか、という1点に尽きます。

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2011年9月22日 (木)

福田和代『リブート!』(双葉社) を読む

福田和代『リブート!』(双葉社)

福田和代『リブート!』(双葉社) を読みました。銀行のオンライン・システムを支えるシステム・エンジニアの活動を描いており、この作者にしてはめずらしく、テロや犯罪とは関係がなく、警察や自衛隊も出て来ません。まず、作者のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

『リブート!』双葉社
銀行の取引システムを支える技術屋たちの奮闘を描く。統合を控えた2つの銀行 の、違うタイプのエンジニアが最後に得るのは不信か友情か。度重なるトラブルに立ち向かう熱い人間ドラマ。毎日を懸命に生きるサラリーマンにエールを贈る!

このブログでは今まで取り上げませんでしたが、実は、私は以下の福田和代さんの作品をほとんど読んでいます。例外は、短編集の『プロメテウス・トラップ』くらいなんですが、現時点で読み終えていないというだけで、パラパラといくつかの短編は目を通していますので、そのうちに図書館で借りて読むつもりにしています。なお、以下の順番は作者のサイトに従っていますが、おそらく、新しい順ではないかと考えています。

  • 『リブート!』双葉社
  • 『怪物』集英社
  • 『タワーリング』新潮社
  • 『迎撃せよ』角川書店
  • 『ハイ・アラート』徳間書店
  • 『オーディンの鴉』朝日新聞出版
  • 『プロメテウス・トラップ』早川書房
  • 『黒と赤の潮流』早川書房
  • 『TOKYO BLACKOUT』東京創元社
  • 『ヴィズ・ゼロ』青心社

どうして、この作者の作品を今まで取り上げなかったかというと、端的に言って、作品の出来がよくないからです。それなりに名を知られるようになったのは、『TOKYO BLACKOUT』からではないかと記憶していますが、『TOKYO BLACKOUT』を含めて、『ヴィズ・ゼロ』、『ハイ・アラート』、『迎撃せよ』、『タワーリング』の5作品は大がかりな舞台装置でもって、特に、『ヴィズ・ゼロ』と『迎撃せよ』については、個人を中心とする「小さな物語」ではなく、天下国家を巻き込んだ「大きな物語」を取り上げたがる傾向が見られました。しかし、ハッキリ言って、作者には登場人物のキャラを書き分ける筆力がなく、個々人はさて置くとしても、大きなテロや犯罪を組織的に実行する場合の個々人のつながりといったものがまったく注意が払われていなかったと私は評価しています。すなわち、かなり大規模なテロや犯罪ですから、個人ではなく何人かの組織で実行する必要があるんですが、どうしてこれらの人々が集まったのかがまったく不明でした。加えて、テロや犯罪の動機というか、出発点がとても非現実的で、さらに、エコノミストの目から見て原価計算が未成熟というか、合理的なコスト・ベネフィットを超えていて、債務超過のテロや犯罪ばかりを取り上げている気がしたからです。もっとも、狂信的なテロはともかく、犯罪はビジネスとして成り立たないのは広く知られているところであろうという気はします。なお、『黒と赤の潮流』についてはタイトルの付け方から始めても、論外というようなひどい出来でした。
長編としては、私は『怪物』から少し変化があったと受け止めています。「馬鹿げた」という形容詞がつきそうなほどの大がかりで組織的なテロや犯罪ではなく、もちろん、天下国家を対象とする「大きな物語」も卒業して、地に足のついたホラー小説です。登場人物を限定してキャラを書き分ける能力の不足を補い、極めて明瞭な終わり方を指向しています。基本的に、この方向性は『リブート!』にも受け継がれていて、さらに画期的にも、最初に書いた通り、この作者にしてはめずらしく、テロや犯罪とは関係がないビジネス小説に仕上げています。全部は読んでいませんが、『プロメテウス・トラップ』もサイバー・テロを取り扱っていて、FBIやインターポール捜査官が登場しますので、その意味では、『リブート!』はこの作者の転換点となる可能性があります。もちろん、キャラやストーリーに関する作者の筆力が向上すれば、もう一度、式的なテロなどのアクションを含む「大きな物語」に挑戦することは将来の課題となる可能性はありますし、現時点で、この作者の作品に満足している読者には誠にお気の毒に感じるんですが、この作者はそれだけの能力は有していません。身近で土地勘のあるストーリーから始めて然るべきです。

誠に申し訳ないながら、福田和代さんについては、最近の直木賞作家である道尾秀介さんや池井戸潤さんに比べて、さすがに2ケタくらいの力量の差を感じました。この評価は正直に図書館の予約に表れ、我が家の近くの区立図書館では4月発売の『タワーリング』、6月発売の『怪物』、7月発売の『リブート!』は、すべてほとんど予約待ちなしに借りられました。しかし、『怪物』と『リブート!』はこの作者の転機になる可能性があります。いくつか連載も続いているようですし、楽しみに次の作品を待ちたいと思います。

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2011年9月21日 (水)

IMF World Economic Outlook 見通し編は世界経済の減速を示唆

昨日、国際通貨基金 (IMF) から World Economic Outlook 見通し編第1章と第2章が発表されています。昨夜のエントリーで取り上げた分析編の第3章や第4章とともに pdf の全文リポートもアップされています。今夜のエントリーは簡単にこの見通し編を取り上げておきたいと思います。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

米欧成長率1%台に 11年と12年、IMF「危険な局面」
予測を大幅下方修正

国際通貨基金(IMF)は20日、世界経済見通しを改定した。米国とユーロ圏の実質成長率を6月時点から大幅下方修正し、2011、12年ともに実質成長率が1%台にとどまると予測した。世界経済は「危険な新局面にある」と表現したうえで「リスクは明らかに下を向いている」と分析した。日本については、11年はマイナス0.5%で0.2ポイント上方修正する一方、12年は2.3%と0.6ポイント下方修正した。
世界経済全体の成長率見通しは11、12年ともに4.0%で前回6月の予測から、それぞれ0.3ポイント、0.5ポイントの下方修正となった。先進国の成長率が11-12年に1%台半ばから後半にとどまることが響く。
米国は11年の成長率が1.5%、12年は1.8%でそれぞれ1.0ポイント、0.9ポイントの下方修正。ユーロ圏は11年が1.6%、12年は1.1%でそれぞれ0.4ポイント、0.6ポイント下げた。
ただ、今回の見通しは欧州の当局者がユーロ圏の危機を封じ込め、米国の当局者が経済の下支えと中期的な財政再建の間のバランスの取れた政策運営を実施できることを想定しているという。IMFは「万一の事態が(米欧の)どちらかでも起きれば世界の成長に深刻な影響を与える」と指摘した。
新興・途上国の成長率は全体で11年が6.4%、12年は6.1%で小幅な下方修正。新興国は「かなり力強い成長が続くが、不透明感が強まった」と指摘し、先進国の需要減などに警戒を示した。中国の成長率は11年が9.5%、12年が9.0%でそれぞれ0.1ポイント、0.5ポイントの下方修正となった。インドやロシアなどの成長率も小幅下方修正となった。
IMFは日本の財政政策について「東日本大震災後の復興のための緊急の要請に応えながら、巨額の公的債務に対処するために、より野心的な方法を追求すべきだ」と提言した。

続いて、IMF のサイトから成長率見通しの表を引用すると以下の通りです。先週のアジア開発銀行の経済見通しを取り上げた際と同じように、下の画像をクリックするとWorld Economic Outlook 全文リポートから p.2 Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページを抽出した pdf ファイルが別画面で開きます。

Latest IMF projections

上の表や、クリックして現れる pdf を見て明らかな通り、世界経済の成長率見通しは下方修正され、新興国・途上国よりも先進国の方が下方修正の幅が大きく、中でも特に米国が大きく成長率を引き下げる、ということになります。もちろん、世界経済が一様に減速するわけではなく、リポートでは、例えば、p.3 で "uneven expansion" と表現しています。

Figure 2.9.  Asia: Current Growth versus Precrisis Average

上の画像は全文リポートの p.84 Figure 2.9. Asia: Current Growth versus Precrisis Average を引用していますが、アジア域内でも成長のばらつきは同じことで、2000-07年平均の成長率から2011-12年にどのように変化したかを表しており、インドヤインドネシアなどのように成長率が上昇した国や地域もあれば、パキスタンやミャンマーのように2%ポイント超も成長率を下げた国もあります。

また、今回の見通しはかなり楽観的であることは IMF も認めており、引用した日経新聞の記事にもある通りです。特に、財政問題については全文リポートの p.20 で日米欧に分けて以下のように示唆しています。

  • For the United States, the main priority is to soon launch a medium-term deficit reduction plan—including entitlement reform and tax reforms that gradually raise revenues—so as to stabilize the debt ratio by mid-decade and gradually reduces it thereafter under realistic macroeconomic assumptions.
  • Similarly, for Japan a more ambitious fiscal strategy is needed—equivalent to a front-loaded 10 percent of GDP fiscal adjustment over 10 years—that brings the public debt ratio down decisively by the middle of the decade. … Specifically, the strategy should be centered on a gradual increase in the consumption tax to 15 percent.
  • The major euro area economies have made good progress in adopting and implementing strong medium-term consolidation plans. They are committed to reducing deficits to below 3 percent of GDP by 2013 and to stabilizing the level of public debt by 2015.

特に上の引用で強調しておいた通り、IMF は従来から日本の消費税率を15パーセントまで引き上げることを主張しています。その昔に、「ネバダ・リポート」なる荒唐無稽なリポートの存在が国会などで取り上げられたことがありますが、我が国が財政破綻してしまった場合、日本政府の財政改収支善努力は国際的な救済策の策定に何らかの影響を及ぼす可能性は否定できないのかもしれません。もっとも、消費税率を15パーセントに引き上げておけば、財政破綻しても確実に IMF が救済してくれるというわけでもなさそうです。

貿易収支の推移

最後に、本日、財務省から貿易統計が発表されました。震災から数えて6か月振りに輸出の前年同月比が+2.6%と増加になりました。サプライ・チェーンなどの供給サイドの制約がほぼ解消されたと見られますが、この先は世界的な景気の減速に起因する需要サイドの影響が現れる可能性があります。ただし、輸入が前年同月比で+19.2%増と大きく増加していて貿易収支は年内くらいは赤字基調で推移しそうな勢いです。なお、上のグラフは上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支を凡例の通りにプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は季節調整済みの系列です。

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2011年9月20日 (火)

IMF World Economic Outlook 分析編を読む

3連休で大学の同窓会やおにいちゃんの文化祭に遊び回っている間に、着々と世銀と国際通貨基金 (IMF) の総会が近づいて来て、先週、IMF から World Economic Outlook 分析編第3章と第4章が発表されています。それぞれの日本語要旨もアップされています。第3章はインフレ、第4章は財政再建を取り上げており、タイトルは以下の通りです。リンクは pdf ファイルに張ってあります。

Figure 3.1. World Commodity Prices, 2000-11

まず、リポート第3章の p.102 Figure 3.1. World Commodity Prices, 2000-11 から引用した上のグラフに示されている通り、現在のインフレ圧力が商品市況に起因するものであり、国内の需給ギャップとは必ずしも無関係に発生している可能性を指摘し、物価を政策目標としている中央銀行の信認と併せて、いくつかの政策対応を分類しています。例えば、日本を含む多くの先進国に当てはまると考えられますが、中央銀行の信認が高く、遊休生産資源があって需給ギャップがデフレ的な場合は、商品価格に起因するインフレには特段の注意を払う必要はない、とされています。

Figure 3.6. Share of Food in the Consumption Basket

もちろん、いくつかの新興国・途上国では中央銀行の信認や国内の需給ギャップについて上の条件に当てはまらないわけで、例えば、リポート第3章の p.109 Figure 3.6. Share of Food in the Consumption Basket から引用した上のグラフに示されている通り、食料が消費に占める比率は新興国や途上国では先進国ほど低くないのが実情です。

Figure 3.9. Pass-through from International to Domestic Food Price Inflation

加えて、上のグラフはリポート第3章の p.112 Figure 3.9. Pass-through from International to Domestic Food Price Inflation から引用していますが、輸入価格から国内価格へのパススルーは先進国よりも新興国・途上国で高くなっており、国際商品市況の変動が国内物価に下り大きく影響を及ぼす構造となっています。ですから、中央銀行や金融政策の信認が十分でなく、需給ギャップがインフレ的であったり、あるいは、食料が消費に占める比率が高かったりする場合は先進国のように「注意を払う必要がない」とは言い切れず、積極的な政策対応を促しています。また、ついでながら、いわゆるヘッドラインの物価上昇率とエネルギーや食料を除いたコアの物価上昇についても分析していて、コアのインフレ率をターゲットとすることが望ましいとしていますが、このブログでは割愛します。

Figure 4.2. Effects on the Current Account of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation

続くリポート第4章は、"Fiscal adjustment will be one of the primary forces shaping the contours of the postcrisis global economy." という書出しで始まっており、財政再建に対する強い意気込みが感じ取れます。まず、上のグラフはリポート第4章の p.141 Figure 4.2. Effects on the Current Account of a 1 Percent of GDP Fiscal Consolidation から引用しています。昨年2010年10月の「改定 世界経済見通し」の第3章で展開されたような action-based の財政再建であれば、従来型の conventional な政策よりも為替の減価が進むことから、財政再建に伴う需要減は外需で相殺される部分があり、上のグラフのように財政再建により経常収支が黒字化する可能性が示唆されています。もっとも、私にはこの action-based アプローチが、Romer and Romer の narrative approach とどう違うのかはハッキリしません。

Figure 4.11. Planned Fiscal Adjustment and Its Current Account Impact: GIMF Simulations

最後に、上のグラフはリポート第4章の p.150 Figure 4.11. Planned Fiscal Adjustment and Its Current Account Impact: GIMF Simulations から引用していますが、日米独のG3やユーロ圏などの国別に財政再建の経常収支への影響を IMF の GIMF (Global Integrated Monetary and Fiscal Model) のシミュレーション結果で示しています。注目すべきは右上のパネルなのでしょう。従来から、このブログで主張している通り、財政政策がルーズなほど、金融政策がタイトなほど、自国通貨は増価します。

今夜のエントリーでは IMF の「改定 世界経済見通し」について、日本語サマリーも参照しつつ、第3章と第4章の分析編に焦点を当てました。日本時間の今夜には第1章と第2章の見通し編が発表され、金曜日には IMF 世銀総会で取り上げられる予定です。

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2011年9月19日 (月)

私の誕生日を祝ってランチバイキングに出かける

今日は昼過ぎに一家で出かけて、私の誕生日を祝うため、赤坂東急ホテルのスクエアでランチバイキングを楽しみました。定刻の1時半に着いた時にはすでにお料理の前に行列が出来ていましたから、人気なのかもしれません。食事を終えて一家で記念撮影をしたんですが、2人の子供達が中学生に上がって身長も伸びて、すでに女房を超えてしまったような気がします。

赤坂東急ホテルのスクエアで記念写真

いつもの通り、ジャンボくす玉を置いておきますので、私の誕生日がめでたいとお考えの向きはクリックして割って下さい。

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2011年9月18日 (日)

おにいちゃんの中学校の文化祭に出かける

今日は朝から出かけて、おにいちゃんの中学校の文化祭に行きました。もっとも、「中学校の文化祭」とはいっても、我が家のおにいちゃんは6年制一貫の男子校に通っていますので、クラブには高校生もいっぱいいます。しかも、おにいちゃんの中学校は下の子と違って制服がありますから、同じような年ごろの少年がたくさんいて、私には我が子以外は見分けがつきません。客層は私のような在校生の親というよりも、中学受験を考えている小学生とその親という組合せが多かったような気がします。もちろん、男子校ですから女子中高生も数多く見かけました。逆に、女子中高の文化祭には男子校の中高生が行ったりしているんだろうという気がします。
私が学校に着いて、まず、一番大きな校舎をエレベーターで上がってから、1階ずつ階段で下りて展示や催しを拝見します。中学校や高校の定番となっている鉄道研究会や山岳部、落語研究会などを見た後、我が家のおにいちゃんが活動している模型部の部屋にたどり着きます。昨年もガンプラの写真を撮った記憶がありますが、下の写真が我が家のおにいちゃんの作品です。この文化祭の期間中、おにいちゃんはほとんど模型部の展示室で過ごしているらしいんですが、もちろん親子で事前に相談して、私が模型部の部屋を訪れる時間帯にはおにいちゃんが外していて、親子で顔を合わせて気まずい思いをしないよう取り計らっておきました。

おにいちゃんの作品のガンプラ「グフ・カスタム」

おにいちゃんの作品のガンプラ「ラファエル・ガンダム」

模型部の展示とは別の校舎で、理系の化学部、物理部、地学部、生物部などの展示や催しも拝見しましたが、さすがに進学校らしくレベルの高さを実感しました。「親バカの日記」でした。

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2011年9月17日 (土)

京都大学経済学部同窓会東京支部総会に出席する

今日は昼過ぎに出かけて、学士会館で開催された母校である京都大学経済学部同窓会東京支部総会に出席しました。午後の2時から5時までで、最初の1時間が猪木先生の講演会、後は総会と懇親会です。
大学の同窓会に行くたびに感じるんですが、出席者の年齢がとてつもなく高いことに驚かされます。出席者の中心は昭和30年代から40年代の卒業生ではないかという気がします。名簿にはありませんでしたが、蜷川ゼミのご出身という先輩とお話をさせていただきました。知る人ぞ知るでしょうが、京都大学経済学部の教授をされ、7期務められた京都府知事としても高名な伝説の大先生のゼミのご出身の先輩と畏れ多くもお話をさせていただく機会があるとは思いませんでした。なお、私の役所からの出席者も何人かおられましたが、いずれも退職されたOBの方々でした。現役は私だけかもしれません。
先月8月15日付けのエントリーでさくらバレーに出場した高校の母校を取り上げた際に書いた通り、2年後輩が高校の母校の教師をしていて部活の顧問なんですが、大学の母校である京都大学ではゼミの1年先輩が教授をしていて同窓会担当だそうです。今日は上京して同窓会東京支部総会にご出席でした。下の写真にある通りツーショットで記念写真に収まり、日帰りで京都に新幹線でお戻りになる前にいろいろとお話をさせていただきました。同世代の友人が高校や大学の母校で教鞭を執って後輩の指導に当たっていただいているのは心強い限りですし、私がこの年齢に達しても高校や大学の母校から同窓会の出席や部活の応援のお声がかかるのは光栄であると喜んでいます。
下の写真は総会であいさつされる田中学部長、そして、ゼミの先輩教授と私のツーショットです。

京都大学経済学部同窓会東京支部総会にて挨拶する田中学部長

京都大学経済学部同窓会東京支部総会懇親会にてツーショット

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2011年9月15日 (木)

東野圭吾『マスカレード・ホテル』(集英社) を読む

東野圭吾『マスカレード・ホテル』(集英社)

東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』(集英社) を読みました。ガリレオこと湯川学、加賀恭一郎に続く新たな謎解き役をヒーローに据えたミステリです。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下のとおりです。

東野圭吾 作家生活25周年特別刊行第三弾
新ヒーロー誕生! 華麗なる長編ミステリ

都内で起きた不可解な連続殺人事件。現場に残されたある手がかりから、次の現場が超一流のホテル・コルテシア東京と割り出された。容疑者もターゲットも不明のまま、警察は大胆にも潜入捜査を開始。やり手の刑事・新田浩介は一流のフロントスタッフ・山岸尚美とコンビを組むことに。そこへ、次々と怪しげな客たちがやってくる。

ターゲットは、そして犯人は誰なのか。
誰も予想しえなかった驚愕の真相とは?
東野圭吾史上最高に華麗な傑作長編ミステリ。

最後の「東野圭吾史上最高に華麗な傑作長編ミステリ」というのは決して誇張ではありません。シティ・ホテルのさまざまな出来事が詰まっていて、まさに、仮面をつけたような登場人物が繰り広げるストーリーは「華麗」といえます。また、作者自身が「未熟者」という新たな謎解き役のヒーロー新田浩介も、ガリレオ湯川学や加賀恭一郎のようなスーパーキャラではありませんが、かなり出来のいい刑事です。所轄の刑事と組んで立派な手柄を立ててくれます。ミステリの最重要ポイントである謎の部分も一連の連続殺人事件と見せかけて無関係な殺人を組み合わせ、あるいは、関連性を察知させないような殺人を企むなど、この面でも、東野さんが新たな境地を切り開いたと評価できます。

売れっ子作家のミステリ最新作ですし、話題作でもあります。読んでみた私も作品の出来は保証します。我が家は私とおにいちゃんが東野ファンですから買い求めましたが、多くの図書館に所蔵されていると思います。多くの方が手に取って読むことを願っています。

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2011年9月14日 (水)

積極的な若手起用も坂選手は結果を残せず!

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中  日100010000 261
阪  神00000201x 371

阪神のペナントレースには秋風が吹き始めましたが、Aクラスを目指しつつ、若手を積極的に起用するという方向に舵が切られたようで、坂選手がスタメンに起用されました。しかし、今日のところは俊介外野手とともに結果を残せませんでした。明日以降に期待したいと思います。さらに、捕手についても、藤井選手を休めつつ若手捕手の起用を模索して欲しいと私は期待しています。
あ、それから、試合結果は勝って5割復帰のようで、誠にめでたい限りです。

取りあえず、もう少し明日もということで、
がんばれタイガース!

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アジア開発銀行の「経済見通し改定版」と経済協力開発機構の「図表で見る教育」

本日、アジア開発銀行から「アジア開発経済見通し改定版」 Asian Development Outlook 2011 Update が発表されました。また、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「図表で見る教育 2011」 Education at a Glance 2011 も公表されています。こういった国際機関の発表物を取り上げるのは、私のこのブログの特徴のひとつですので、今夜のエントリーで簡単に振り返っておきたいと思います。

Table 1 Growth rate of GDP

まず、「アジア開発経済見通し改定版」の成長率の総括表は上の画像の通りです。pdf の全文リポートのハイライト p.xix から引用しています。少し縮小していますので、字が細かくて見づらい向きには、画像をクリックすると、成長率とインフレ率の総括表2ページだけを抽出した pdf ファイルが別タブか別ウィンドウで開くようになっています。大雑把にいって、今年から来年にかけて成長は鈍化しインフレは上昇する、というのが多くのアジア新興国・途上国のシナリオとなっています。もちろん、4月見通しから大きな改定はなく、従来の見通しの延長線上での小幅な改定と受け止めています。

Baseline assumptions on the international economy, 2011-2012

商品価格の高騰に伴うインフレの上昇はともかく、いくぶんなりともアジア新興国・途上国における成長の鈍化は先進国経済の減速に起因しています。全文リポートの p.4 Baseline assumptions on the international economy, 2011-2012 から引用した上の表の通りです。特に、我が日本は2011-12年は震災とその後の復興需要でいたし方ないながら、その前からマクロ経済安定化政策がいかにも不首尾な印象で、マイナス成長とプラス成長がともにジェットコースターのように大きく乱高下しています。加えて、2011年の日本のマイナス成長というのは、需要面だけでなく供給面のサプライチェーンも含めて、アジア経済の足を引っ張っている可能性があります。もはや死語になったのかもしれませんが、デカップリングは成立していないわけです。

主要国における公財政教育支出の対GDP比

次に、OECDの「図表で見る教育 2011」については、我が国教員の労働時間が授業以外の事務処理などのために長い一方で、給与は下落を続けていることがメディアにおいて注目されていますが、よく読めば、相変わらず、教育や家族などの勤労世代に財源を振り向けない日本の姿が浮かび上がります。上の表はリポートの日本語サマリー「カントリー・ノート: 日本」の p.5 の表を引用していますが、日本の教育への公財政支出額のGDPに対する割合はわずかに3.3%に過ぎず、先進諸国の中で際立って低水準にあることが明らかにされています。このような状態が長く続けば、一国経済として生産性に支障を来たしかねないと憂慮されます。

政策分野別社会支出の対国内総生産比の国際比較

参考まで、上の画像は昨年11月16日付けのエントリーで取り上げた「平成20年度 社会保障給付費」 の p.40 参考表3-2 政策分野別社会支出の対国内総生産比の国際比較から引用していますが、フランスには及ばないものの、我が国における「高齢」分類の社会保障給付のGDP比は、高福祉国として有名な北欧のスウェーデンを上回るほどの優遇ぶりとなっている事実を見落とすべきではありません。

ADBのリポートからは、アジア新興国・途上国の成長鈍化の背景に我が国景気や世界経済の減速が感じられます。相変わらず、OECDの「図表で見る教育」など、いろいろな社会支出関連の指標から、我が国における財政支出の大きな特徴である、引退世代の優遇と勤労世代の軽視が垣間見えます。偏った財政支出の使い方をされる限り、増税に対する反対意見が根強いのも仕方がないのかもしれません。

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2011年9月13日 (火)

甲子園でも負けてほぼ終戦か!

甲子園に戻っても中日に負けて、これで4連敗になります。ペナントレースはほぼ終戦になりました。たぶん、クライマックス・シリーズというか、Aクラスもかなり絶望と言う気がして来ました。いつものスコアボードを書く気にもなりませんでした。明日も負けて、「完全に絶望」とならないことを祈るばかりです。

取りあえず、もう少しがんばるということで、
がんばれタイガース!

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為替相場と物価の政策割当ての問題

昨日の午後は少し役所を離れて外に出かけて、知り合いのエコノミストやエコノミストでない人達と交流したんですが、経済政策の割当ての問題について雑談を交わして来ました。具体的には、強烈な円高が進んだ為替レートに関する対応、そして、デフレの続く物価への政策対応です。

為替レートの推移

上のグラフはカナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学アントワイラー教授が運営している Pacific Exchange Rate Service なるサイトから円ドルと円ユーロの日々の為替レートのデータを取ってプロットしてあります。ギリシアの財政問題に端を発して2008年中から対ユーロでかなりの円高が進んでいますが、2009年9月の政権交代後は対ドルでも対ユーロでもほぼ一貫して円高が進んでいるのが読み取れます。最近の民主党政権下の財務大臣は、現在の野田総理も財務大臣だったころはそうなんですが、円高に対しては為替介入を政策として割り当てているように私には見受けられます。余りにも原始的に為替市場に直接介入する政策手段であることは言うまでもありません。もちろん、実際に介入するだけではなく、最近のスイス国立銀行が採用したように、対ユーロで一定の水準を示した上で無制限介入を制度化することにより期待に働きかける政策もあります。しかし、価格を直接に統制する手段が物価に割り当てるべき政策ではないのと同様に、市場介入を為替相場に対する政策として割り当てるのが正しいかどうかは疑問です。それよりも、現在の円高は古今東西に例を見ない財政赤字と引締め気味の金融政策の組合せによりもたらされていると考える方がエコノミストとしては受け入れやすい気がします。

コアCPI上昇率と公共料金寄与度の推移

デフレの続く消費者物価については、知り合いのエコノミストに指摘されて初めて気づいたんですが、最近、消費者物価がプラスに転じたのは公共料金の寄与が大きいためなのかもしれません。上のグラフは生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率とそれに対する公共料金の寄与をプロットしています。もっとも、8月26日付けのエントリー「消費者物価上昇率の計算方式変更について考える」で指摘した通り、上昇率算出の基礎となる端数付きの指数を総務省統計局は発表していませんから、私の方で発表された端数のない指数から上昇率と寄与度を計算していますので、いわゆる「丸めの誤差」はあり得ます。ご容赦ください。それはともかく、この4月から公共料金の寄与度がかなり大きく、0.3から0.5%ほどあります。現在のコアCPIの前年同月比上昇率が0.1%とか0.2%とかですから、公共料金の寄与度で物価上昇率がプラスに転じたと見えなくもありません。猛烈なインフレ期などで政府が直接に価格を統制して物価上昇を抑え込むことは過去の経験でありましたが、その逆で、デフレ脱却を目指して物価をプラスにするために政府が公共料金の引上げに乗り出したわけではなかろうと私は想像していますが、結果的に、そのようになっていることも確かです。しかし、物価を政策目標にする日銀には公共料金決定の権限があるわけではありませんから、日銀の金融政策に信頼を失った政府が為替と同様に、極めて原始的に公共料金という価格を直接に操作対象としていたりする可能性は排除できないかもしれません。ものすごく考えにくいことですが、中央銀行の金融政策がまったく発動されない状況下で、本来のマクロ政策を為替や物価に割り当てることを諦めて、政府が市場に直接介入し始めると何かよくないことが起こりそうな気がします。少なくとも、政府は万能ではありませんし、「政府の失敗」の可能性もゼロではありません。

くつろいだ仲間内での他愛のない噂話ではありますが、一片の真実を含んでいないとも限りません。日本人は政府に頼ることに慣れ切って、特に、震災以降は政府が大きな役割を果たす状態が続いています。大きな政府の下で増税を容認する意見も日増しに強まりつつあるように私は感じています。ホントにそれでいいのか、政策割当ては間違っていないか、考えるべきポイントのひとつではないでしょうか。

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2011年9月12日 (月)

企業物価と第3次産業活動指数から内外景気の動向を探る

本日、日銀から8月の企業物価が、また、経済産業省から7月の第3次産業活動指数が、それぞれ発表されました。いずれもやや下向きに変化し、内外景気の減速を示唆していると私は受け止めています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月国内企業物価、前年比2.6%上昇 商品価格下落で伸び鈍化
日銀が12日発表した8月の国内企業物価指数(2005年=100、速報)は105.5と前年同月に比べ2.6%上昇した。11カ月連続の上昇だが、上昇幅は7月の2.9%に比べ縮小し、前月比では0.2%下落した。国際的な商品価格の下落に加え、円高により国内品に値下がりの動きが出始めているためだ。
項目別にみると、石油・石炭製品が前年同月比で18.0%上昇(前月比は1.5%下落)、非鉄金属は8.7%上昇(同2.3%下落)した。一方、情報通信機器は7.5%下落(同0.9%下落)した。
日銀は「前月比で下落ペースが続くとは考えておらず、横ばい圏内で推移する」(調査統計局)としている。
円高を背景に、円ベースでみた輸入物価は前月比2.4%下落。金属・同製品や木材・同製品の下落が目立った。円ベースの輸出物価は1.8%の下落だった。
企業物価指数は製品の出荷や卸売りの段階で企業同士が取引する製品の価格水準を示す。
第3次産業指数、4カ月ぶり低下 7月0.1%マイナス
経済産業省が12日発表した7月の第3次産業活動指数(速報、2005年=100、季節調整値)は98.4と、前月比0.1%低下した。低下は4カ月ぶり。6月に高速道路の無料化実験が終了したため通行台数が減り、運輸業が0.7%低下した。企業や家庭の節電意識の高まりで、電気料金の支払いが減り、電気業も1.5%低下した。

グラフは、まず、企業物価の上昇率です。上のパネルは国内・輸出・輸入の別で、下のパネルは需要段階別に素原材料・中間財・最終財で、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整していない原系列の前年同月比上昇率となっています。

企業物価の推移

次に、第3次産業活動指数の推移は以下のグラフの通りです。2005年を100とする季節調整済みの系列をそのままプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。

第3次産業活動指数の推移

国内物価の総平均や第3次産業活動指数が最新月でやや下向きに変化を示しているのが読み取れると思います。いずれも景気動向の減速に従った結果だと考えられますが、地域はやや異なります。すなわち、第3次産業活動指数は直接には国内景気の減速に対応しています。もっとも、欧米をはじめとする世界経済の減速を背景にして、その間接的な影響であることは明らかです。これに対して、企業物価はより直接的に世界経済の減速を反映した素原材料や輸入物価の上昇率低下に起因していますが、コチラは欧米先進国とともに新興国も含んだより広い範囲の世界経済の減速を反映しているといえます。

世界経済が新興国・先進国を問わず、我が国の内外で減速しつつあります。日本も震災に伴い復興需要は自律的な拡大要因かもしれませんが、10-12月期から来年にはこの余波を受けるのは当然です。さらに、近い将来に何らかの増税が始まる可能性も否定できません。

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2011年9月11日 (日)

東京ヤクルトに3連敗してペナントレースに秋風が吹く!

  HE
阪  神000001010 271
ヤクルト00020002x 430

ヤクルトに3連敗してペナントレースはかなり厳しい状況になりました。ヤクルトは阪神守備陣最大のウィークポイントを巧みについて先制し、何とか尺取り虫のように追いついたものの、最後は榎田投手がヤクルト4番の畠山選手にツーランを浴びて万事休すでした。長らく言われ続けて来た「登板過多」の影響が出たのかもしれません。
貯金はなくなって5割に戻り、首位ヤクルトとは7ゲーム差、3位巨人とも1.5ゲーム差です。もちろん、リーグ優勝を諦める必要はありませんが、ペナントレースとクライマックス・シリーズの両にらみのスタンスに変更すべき時期が来ているような気がしてなりません。どうせ、クライマックス・シリーズに出たところで、なすすべもなく負けるのは明らかですが、何とかAクラス3位に入ればファンの満足度はそれなりに高まるような気もします。

この3連敗で一気にヤル気がしぼんだものの、
がんばれタイガース!

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2011年9月10日 (土)

親子で神宮球場に参戦の甲斐なく東京ヤクルトにボロ負け(怒)!

親子で神宮球場に参戦
  HE
阪  神000110000 2112
ヤクルト00321000x 680

我が家のおにいちゃんとともに親子2人で神宮球場に参戦したにもかかわらず、実に不甲斐なく東京ヤクルトに連敗してしまいました。先発の久保投手はランナーを貯めてホームランを打たれ、中継ぎ陣は内野手のエラーがあったとはいうものの、出て来た投手が順々にザルのように失点する一方で、打撃陣は尺取り虫のように1回に1点しか入らず、東京ヤクルトを上回る11安打を放って塁上を賑わしながらも決定力が不足していました。連敗すればアッという間に貯金は減って行き、首位は遥か彼方に遠くなります。

せめて明日は、
がんばれタイガース!

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2011年9月 9日 (金)

下方修正された2次QEとOECDの経済見通しやいかに?

本日、内閣府から4-6月期の四半期別GDP速報の改定値、一般に2次QEと呼ばれている成長率指標が発表されました。先月発表の1次QEから下方修正されて、季節調整済みの前期比成長率は▲0.5%、前期比年率で▲2.1%のマイナス成長を記録しました。マイナスは3四半期連続です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP、年2.1%減に下方修正 設備投資減少響く
4-6月、7-9月はプラスの見方大勢

内閣府が9日発表した2011年4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%減、年率換算で2.1%減となった。速報値より0.2ポイント、年率換算で0.8ポイントの下方修正となった。速報段階でプラスだった設備投資が減少に転じたためだ。
実質GDPの減少率は、民間エコノミストの予測と同じだった。3四半期連続のマイナス成長だが、1-3月期(3.7%減)より、マイナス幅は縮まった。生活実感に近い名目GDPは前期比1.5%減、年率換算で6.0%減だった。
GDPの改定値は、速報値の公表後に明らかになった法人企業統計などのデータを使って推計し直した。実質GDPの下方修正は設備投資の伸び率が0.9%減(速報値は0.2%増)とマイナスに転じたことが主因。企業が震災の影響を見極めるため、一時的に投資を先送りする動きが広がった。
個人消費は前期比でほぼ横ばいとなり、速報段階(0.1%減)からわずかに上方修正された。公共投資は4.3%増だった。被災地の復旧需要が押し上げた。政府消費は0.6%増。被災地の自治体で復旧関係の物件費が増え、小幅な上方修正となった。
7-9月期は生産正常化で、4四半期ぶりにプラス成長に戻るとの見方が大勢を占める。ただ「海外経済の下振れや円高の長期化がリスク要因となる」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との声も出ている。

記事の次に、いつもの寄与度のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが季節調整済みの実質GDP前期比成長率をプロットしてあり、それに対する需要項目別の寄与度が棒グラフで示してあります。色分けは凡例の通りなんですが、4-6月期については、復興需要などで黄色い公的需要がプラスになる一方で、世界的な景気減速に起因して黒の外需がマイナスに落ち込んでいるのが見て取れます。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

基本的な景気の現状認識としては、昨年10-12月期からマイナス成長に突入したものの、今年1-3月期にはボトムアウトし、4-6月期はまだマイナス成長を続けているものの、おそらく、7-9月期にはかなり高い成長を記録した後、10-12月期は再び減速するがプラスは維持する、というものです。大雑把に多くのエコノミストのコンセンサスだと私は受け止めています。リスクファクターとしては、設備投資の慎重姿勢がどこまで続くか、さらに、世界経済の減速とともに外需がどこまで冷え込むか、ということであり、すなわち、先行きリスクは設備投資と外需の2点であると私は考えています。

Growth has decelarated in major OECD economies

我が国のGDP統計に加えて、昨日、経済協力開発機構 (OECD) から「経済見通しの中間評価」 The Interim Projections が発表され、先進国の成長率は徐々に低下すると見込まれています。上のグラフはOECDのサイトから引用しており、タイトルにある通り、日本を除くG7諸国の成長率をプロットしています。今夏からの先進国経済の大きな減速は年内いっぱい継続するとの見立てです。10-12月期にはドイツはマイナス成長に落ち込み、日本もゼロ成長まで低下すると見込んでいます。下の表はOECDの記者発表におけるプレゼンテーション資料の p.8 を引用しています。

Annualised quarter-on-quarter GDP growth, in per cent

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2011年9月 8日 (木)

3回のビッグイニング一挙7点で広島に圧勝の3タテ!

  HE
広  島100000200 351
阪  神00700101x 9120

3回ウラ一気の集中打と関本選手のスリーランで一挙7点のビッグイニングを作り早々に試合を決め、終盤はエース能見投手を温存する投手起用で広島に圧勝でした。先月の3タテのお返しをするとともに、広島に引導を渡したのかもしれません。3回以降も6階には平野選手のスリーベース、8回は森田選手のツーベースと、効果的な長打でダメを押しました。実に左ウチワの安心して見ていられる試合でした。投手も能見投手がツーランを打たれるとサッサと引っ込めて、福原投手と西村投手が少しヤル気のなくなった広島打線をピシャリと抑え切りました。3タテで貯金3は今季初めてで、東京ヤクルトを追いかける体制が十分整った気がします。

明日からの神宮球場での首位決戦でも、
がんばれタイガース!

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黒字幅の縮小した経常収支、市場予想を下回った機械受注、低下に転じた景気ウォッチャー

本日、財務省から7月の経常収支が、内閣府から7月の機械受注と8月の景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。経常収支は貿易赤字のために黒字幅が縮小し、機械受注は船舶と電力を除く民需のコア機械受注の季節調整済みの前月比で見て、「持直し」の基調判断こそ変更なかったものの、市場の事前コンセンサスよりも大きく減少しました。長らく強気だった景気ウォッチャーも小幅ながら悪化に転じています。これらの統計の結果について、私は円高の影響がジワジワと出始めたんではないかと心配しています。長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

7月の経常黒字、5カ月連続減少 貿易黒字が縮小
財務省が8日発表した7月の国際収支状況速報によると、経常収支は9902億円の黒字だった。前年同月と比べ42.4%減と、5カ月連続で前年を下回った。原油・粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額増による貿易黒字の縮小や、訪日外国人数の減少による旅行収支の赤字幅拡大が原因とみられる。
貿易黒字は前年同月比86.3%減の1233億円にとどまった。自動車や半導体等電子部品の輸出が落ち込む一方、火力発電所の稼働率上昇に伴うLNGの需要増などが輸入額を押し上げたため。「サプライチェーン寸断の影響か、海外経済によるものかの見極めは難しい。円高の影響は間違いなく反映されている」(財務省)。
サービス収支は3062億円の赤字と、前年同月から赤字幅が広がった。日本を訪れる外国人旅行者の減少が続き、旅行収支が悪化しているため。貿易、サービスを合わせると、6月の黒字から一転して1829億円の赤字となった。前年同月は7479億円の黒字だった。
投資信託の配当金受け取りを主因として、所得収支は1兆2467億円の黒字と、前年同月から18.1%増加した。
7月の機械受注8.2%減 「持ち直し」判断は変えず
内閣府が8日朝発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比8.2%減の7252億円で、3カ月ぶりに前月実績を下回った。電気機械や情報通信機械が落ち込んだことが影響した。
ただ、内閣府では「大きく下振れはしておらず、緩やかな持ち直し傾向が続いている」として、基調判断を「持ち直し傾向にある」で据え置いた。
製造業は5.2%減と2カ月ぶりのマイナス。電気機械では地上デジタル放送開始に伴う薄型テレビの生産増の反動が影響したもようで、情報通信機械ではパソコン関係や電子部品・デバイスが落ち込んだ。一方で、一般機械や自動車・同付属品では東日本大震災による落ち込みからの回復が続いており、「全体としては横ばい圏内」(内閣府)という。
非製造業も2カ月ぶりのマイナスとなる1.4%減。金融・保険業や卸売業・小売業で弱含みの状態が続く一方で、鉄道車両などの大型案件があった運輸・郵便業が上昇。情報・サービス業も増加しており、「緩やかな持ち直し傾向が続いている」(同)としている。
内閣府では先行きについて「7-9月見通しの0.9%増を達成するには、8月と9月で3.6%ずつの増加が必要になる。達成が難しいわけではないが、海外経済の動向が懸念材料となっており、減速すれば国内の設備投資に影響が出る」とみている。
円高響く 8月の街角景気、5カ月ぶり悪化
内閣府が8日発表した8月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比5.3ポイント低下の47.3と、5カ月ぶりに悪化した。天候不順や地上デジタル放送への完全移行に伴う薄型テレビ駆け込み需要の反動減に加え、円高の進行や放射性物質による農畜産物汚染への懸念などを背景に、指数を構成する家計、企業、雇用の全てで悪化した。
内閣府は、景気の現状に対する基調判断を「東日本大震災の影響が残るものの、持ち直している」から「震災の影響が残る中で、このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」と4カ月ぶりに下方修正した。
円高の影響については「輸出向け販売の採算が悪化している」「取引先からのコストダウン要請が始まっている」「価格競争力が失われ受注に至らない」といった声が製造業で聞かれた。内閣府は「(非製造業よりも低下幅が大きく)円高の影響が数字に表れている」とも指摘した。自動車を中心とした生産活動の回復は続いているものの「極端な円高傾向により今後の採用を慎重に考えている企業が増えている」など、雇用への影響もみられた。
2-3カ月先の先行き判断指数は1.4ポイント低下の47.1と、2カ月連続で悪化した。円高による設備投資の縮小など経営環境の悪化を懸念する見方が強まり、家計、企業、雇用の全てで低下した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は8月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支を示しており、その内訳が棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。なお、グラフは季節調整済みの系列で書いているため、季節調整していない現稀有列に基づいて書かれている引用した記事と少しトーンが異なる部分があるかもしれません。

経常収支の推移

さらに、機械受注統計の推移は以下の通りです。上のパネルがコア機械受注と呼ばれている船舶と電力を除く民需の季節調整済みの系列で、下のパネルは外需・製造業・非製造業の需要者別の機械受注です。いずれも左軸の単位は兆円、影を付けた部分は景気後退期となっています。

機械受注の推移

最後のグラフは景気ウォッチャー調査結果のうち、現状判断DIと先行き判断DIです。棒グラフの色分けは凡例の通りで、影を付けた部分は景気後退期です。50が景気判断の分かれ目なんですが、一般的な国民の間にある悲観バイアスにより、50を超えることは稀です。

景気ウォッチャー調査結果の推移

昨日の景気の現状認識に関するエントリーと似た結論なんですが、震災からの復興過程は、毀損されたサプライ・チェーンの回復など、供給制約の解消に起因するV字回復の時期を夏くらいまでに終え、その後、足元では欧米の財政危機や米国の雇用停滞などに起因する世界経済の減速と円高に伴う外需の停滞により、国内経済が停滞する局面に入りつつあると私は受け止めています。今日発表された経常収支、機械受注、景気ウォッチャーの指標もある程度はそのコンテクストで捉えることが出来ます。ただし、機械受注について、日経新聞の論調ほど私は悲観していません。もともと、月ごとの振れの激しい指標ですし、ならして見れば増加基調を失ったわけではないと受け止めています。もっとも、業種別に詳しく見ると、海外需要に基づく機械受注は国内よりも確かに不振の度合いが大きいように見えます。機械受注のグラフの下のパネルから明らかなように、国内の製造業・非製造業はまだ増加基調を示していますが、外需は今年2月をピークにハッキリと減少基調に転じたと見受けられます。景気ウォッチャーだけは低下に転じたものの、まだかなり高い水準を続けており、マインドは悪くないと受け止めています。

明日発表される4-6月期の2次QEは法人企業統計に基づく下方修正もあって、前期比年率で▲1%台半ばから▲2%くらいのマイナス成長となると見込んでいます。その後、7-9月期はそこそこの高成長とを記録することが確実なんですが、その後、目先の10-12月期の景気動向は不透明です。出し渋った金融緩和カードを日銀がいつ出すのかもひとつの注目です。

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2011年9月 7日 (水)

ラッキーセブンに新井選手の勝越し打から広島を圧倒して連勝!

  HE
広  島000001000 160
阪  神10000040x 5120

昨夜は若きチームリーダー鳥谷遊撃手が2打点の活躍をし、今夜は4番に復帰した新井選手の勝越し打からラッキーセブンで広島を圧倒し連勝です。私はテレビ観戦をしていただけで甲子園にいたわけではないんですが、7回から球場の雰囲気が大きく変わった気がしました。流れが変わって、マートン外野手と関本内野手もタイムリーで続き完勝でした。巨人が負けて貯金2で2位に浮上しました。この週末は私も神宮球場に参戦予定です。

明日はお返しの3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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景気の現状判断やいかに?

本日、内閣府から7月の景気動向指数が発表されました。一致指数が下落した一方で、先行指数は上昇しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

7月景気一致CI、4カ月ぶり低下 内閣府「震災回復過程は終了」
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント低下の109.0だった。4カ月ぶりのマイナス。輸送機械工業や情報通信機械工業の出荷減少により、中小企業売上高がマイナスに転じ指数を押し下げた。生産指数(鉱工業)は0.6%の上昇だが、上昇幅は鈍化している。内閣府では「(東日本大震災からの)回復過程がかなり終了してきており、先行きは需要動向に影響を受けてくるだろう」との見方を示した。
先行指数は2.7ポイント上昇の106.0だった。住宅エコポイント制度の終了前に駆け込み需要があった影響で、新設住宅着工床面積が大幅に伸びた。
基調判断については「改善を示している」に据え置いた。
景気に数カ月遅れる遅行指数は、0.6ポイント低下の90.0だった。

景気動向指数のグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下のパネルはDI一致指数です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

景気の動向は、3月の震災からの復興に伴う供給面からの景気押上げ局面、すなわち、サ棄損されたプライチェーンの回復などに基づく生産回復の局面がほぼ終了し、需要が景気動向を左右する局面に移行したと言えます。今夏から欧米の財政悪化や米国の雇用停滞などに起因して世界経済が減速していますので、震災に伴う供給制約がほぼ回復した途端に世界経済の減速が需要面に影響するようになり、国内の景気動向も停滞気味です。

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合は、相変わらず無策のままに終了しました。日経新聞の記事によれば、「政界や財界などから金融緩和が足りないとの批判が出ていることについて、『明らかに事実に反している』と反論した」と報じられています。では、どうして円高が進んだのでしょうか。8月4日付けの「財政・金融政策は円高にいかに対応するか?」と題したエントリーで論じた通り、マンデル・フレミング・モデルの含意では、資本移動が自由な変動相場制下で、金融政策がタイトで財政政策がルーズなほど、その国の通貨は増価します。日本にピッタリと当てはまるような気がするのは私だけでしょうか。

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2011年9月 6日 (火)

鳥谷選手の虎の子の2打点を投手陣が守り切って広島に先勝!

  HE
広  島001000000 130
阪  神00101000x 280

若きチームリーダー鳥谷遊撃手の虎の子の2打点を投手陣が守り切り、雨の日曜日に横浜に負けた嫌な雰囲気を一蹴して広島に先勝です。メッセンジャー投手とバリントン投手の見ごたえのある投手戦で3回に1点を取り合った後、5回に勝ち越して、盤石のリリーフ陣で逃げ切りました。休養十分の榎田投手が3人でピシャリと抑え、藤川投手は打たれそうな気すらしませんでした。点差以上に余裕ある勝利だった気がします。後は、4番に戻った新井内野手の奮起を期待します。

明日も甲子園で、
がんばれタイガース!

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高齢者向け社会保障に対する2つの視点の差は何に起因するのか?

最近の日経新聞で社会保障に関する方向性として、一見したところ相異なる2つの主張を見かけました。ひとつは経済教室で関西学院大学の上村教授が主張している高齢者向け社会保障費の管理の問題で、基本的には、赤字公債への依存で世代を超えてツケ回しすることなく、各世代で受益と負担を一致させるべし、という主張であり、私の目から見て極めて真っ当な理論展開になっています。もうひとつは、日経新聞に限らず、いろんなメディアで報じられている通り、新任の小宮山厚生労働大臣が来年度も診療報酬の増額を検討しているという内容です。もっとも、コチラは「たばこ増税」発言にかき消された感があります。それはともかく、8月29日付けのこのブログのエントリーで「平成22年度 医療費の動向」を取り上げた際に論じた通り、医療費の半分近くは70歳以上と定義される高齢者につぎ込まれ、70歳以上の高齢者は70歳未満に比べて1人当たりで5倍近い医療費を使っています。すなわち、小宮山大臣の主張する医療報酬の引上げはかなりオートマチックに高齢者に流れ込むことになります。こういったシステムを見直すべきとして、経済教室の上村教授は「少なくとも消費税の税率引き上げ部分の物価スライドは停止しなければならない」と歳出抑制を主張しています。
小宮山厚生労働大臣は、同時に、いわゆる「第3号被保険者」となる専業主婦の年金制度の見直しにも言及し、勤労世代に厳しく引退世代に手厚い政治家としての姿勢を明らかにした一方で、科学的な知見あるエコノミストは高齢者に偏った社会保障の分配を改善すべきであると主張しています。ここ数年でこの2つの視点の乖離が大きくなったように私は受け止めていますが、この差は何に起因するのかといえば、いわゆる時間軸の違いに端を発していると私は考えています。政治家は各々の時点での投票者の選好を反映した行動を取る可能性が高い一方で、独特の用語かもしれませんが、エコノミストは going concern な国家における異時点間の最適化を考えます。つまり別の表現をすれば、政治家が現時点の投票構造に依存して当落が決まる一方で、国民経済は現在世代で終わるわけではなく、この先も続いていくわけですから、エコノミストは先の世代まで含めた、現実的な意味ではなく理論的な意味で、無限の先の世代まで含めた社会的厚生の最大化を考えます。もしも、私の直感が正しくて、ここ数年で現在世代の利害と将来世代の利害の対立がより深くなってしまっているのだと仮定すれば、現在世代に選出された政治家による利害調整は将来世代に対して好ましくないバイアスを持つ可能性があります。
私はまぎれもなく阪神ファンなんですが、あえて強引に野球の采配に例えると、今日の試合に勝つためにはいい投手を惜しみなくつぎ込んで相手をゼロに抑えればいいかもしれませんが、そんなことをすると、明日の試合、明後日の試合でいい投手が残っていないことになって、結局、シーズンを通していい成績を上げられないことにもなりかねません。ですから、先発投手起用のローテーションを守って将来に備える必要があるわけです。現在の日本の財政は目先の試合にすべての投手を注ぎ込んで、将来のことは何も考慮していない野球の采配のように私には見受けられます。そして、今日の試合を見に来た観客は明日の試合は関係ないので、こういった投手起用が支持されている可能性があるわけです。このままですと、日本の高齢者は若年層のことはなにも配慮していないと評価されかねません。

カギカッコ付きの「世代間闘争」のようなものに突入する前に、何らかの利害調整が図られないものか、それとも、現在世代の得票をバックにしたシルバー・デモクラシーの圧勝に終わるのか、日本経済の再生にも関係して注目されるところです。

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2011年9月 5日 (月)

いつもの通り総理大臣の交代で内閣支持率がハネ上がる

組閣を終えた野田内閣に対して、この週末にメディア各社がいっせいに内閣支持率調査を実施しました。前の菅内閣の終盤の支持率が低調だったものですから、それに比較すると野田新内閣の支持率は経験則からもハネ上がりました。しかし、最近の内閣の発足時に比較して、取っても高いというわけでもなさそうです。全国紙のサイトから順不同で引用すると以下の通りです。なお、詳細は失念しましたが、いずれかのサイトを開こうとすると、無料の登録を要求される可能性があります。悪しからず。

今世紀に入って最初の小泉内閣から数えて約10年余りで見ても7番目の内閣で、かなり頻繁に内閣が交代していることが明らかです。最初の朝日新聞と最後の日経新聞が同じ趣向でグラフを構成しているんですが、小泉内閣から始まる自民党の4内閣、鳩山内閣から始まる民主党の3内閣とも、内閣が交代するごとに発足時の支持率が低下しており、何らかの臨界値に達すると政権交代が起こるのかもしれません。このあたりは余りに観測値が少ないので何とも言えません。もっとも、読売新聞の結果に従えば、野田内閣は菅内閣よりも発足時の支持率は僅差で低くなっています。メディアの報道では野田内閣は「党内融和」を最優先したと報じられていますが、毎日新聞の結果に従えば、民主党支持層と無党派層の支持を犠牲にして自民党支持層の支持を取り込んだ、と見られなくもありません。いずれにせよ、民主党代表選の期間も短かったですし、内閣発足時の支持率調査はイメージ次第という側面があることは否めません。今後の政策立案と実行力の発揮の度合いに従って変動するであろうとこは言うまでもありません。

最後に、内閣が頻繁に交代している現象の裏側には、現在の高齢層から支持を受け、高齢層の利益を図る「シルバー・デモクラシー」が行き詰まっている可能性が示唆されている、と私は受け止めています。例えば、聞こえのいい「国民目線」や「国民の支持」という言葉を使う場合、その「国民」とは誰なのかを問う必要があります。ここ数年、「国民」とは主としてシルバー層を指していて、勤労世代には軽い比重しか置かれていなかったんではないか、と私は疑問に感じないでもありません。もっとも、その理由のひとつは投票率にあるわけで、勤労世代の自業自得という側面は否定できませんが、もともとの人口構成比に偏りがあるわけですから、未成年の投票権を親に付与するデーメニ式投票法の採用など、1人1票の民主主義制度の根幹を問うところまで踏み込みたくはないものの、優遇されている引退世代ばかりではなく、財政リソースへの貢献の大きい勤労世代の利益をもう少し重視したり、引退世代の負担を求めるシステムの導入を考慮すべき段階に達しているような気がしてなりません。

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2011年9月 4日 (日)

ピアノ・トリオで「テイク・ファイブ」を聞く

先月の下旬に買ったジャズ月刊誌「ジャズ・ジャパン」の特集のひとつに海外ジャズ祭があり、イタリアのウンブリア・ジャズ祭に出演した日本人女性ピアニストのひとり、山中千尋が3曲目に「テイク・ファイブ」を弾いた、との記事 (p.15) を目にしました。もうひとりの上原ひろみは何を弾いたのか書かれていませんでしたが、そういえば、ここ数年でピアノ・トリオで「テイク・ファイブ」を聞く機会が増えているような気がします。
「テイク・ファイブ」はその名の通り、4ビートを基本とするジャズにあって、5ビートのいわゆる変拍子ジャズです。下にいくつかのジャズCDのジャケットを並べましたが、一番上のデイブ・ブルーベック・カルテット「タイム・アウト」が「テイク・ファイブ」のオリジナルと考えられていると言って差し支えないでしょう。作曲はこのカルテットでアルト・サックスを吹いているポール・デスモンドです。

Jazz CD's

上のジャケットは私が聞いた範囲で、ピアノ・トリオで「テイク・ファイブ」を演奏しているアルバムです。2番目はグレイト・ジャズ・トリオの「ス・ワンダフル」です。ハンク・ジョーンズの演奏は極めてオーソドックスで、デイブ・ブルーベックに近いと言えます。ハンク・ジョーンズにしては5拍子に乗り損ねて、少しギクシャクするアドリブも聞かれます。3番目はウィル・ブールウェアのアルバム「テイク・ファイブ」です。曲名をそのままアルバム名にしているほどですから気合の入り方が違います。でも、失礼ながら、演奏はそれほどハイレベルとも思えませんでした。その次の4番目がヘルゲ・リエンの「スパイラル・サークル」です。ヨーロッパ的な解釈と言えるのかもしれません。上から5番目、下から2番目が最近聞いた中では最も秀逸な「テイク・ファイブ」だったウォルター・ラングの「トリオ・エルフ」です。原曲を大きく崩したアドリブではないんですが、独特の雰囲気を持っています。ドラムが大昔のカシオペアの16ビートを思い出させます。最後はハクエイ・キムの「トライソニーク」です。軽く流して聞いていると4ビートに聞こえます。逆に言えば、ハンク・ジョーンズと違ってそれほど自然に5ビートを弾きこなしているということもできます。

どうでもいいことですが、私のブログに「音楽鑑賞の日記」のカテゴリーを設けてしまいました。ジャズを中心に少し週末辺りにいくつか取り上げたいと考えています。

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2011年9月 3日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国労働省から米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は増加がストップしてしまいました。まるで、景気後退局面の入口のような雇用情勢です。まず、New York Times のサイトから記事の最初の6パラを引用すると以下の通りです。

With No New Jobs in August, White House Calls for Action
The nation's employers failed to add new jobs in August, a strong signal that the economy has stalled.
The dismal showing, the first time in 11 months that total payrolls did not rise, was the latest indication that the jobs recovery that began in 2010 lacked momentum. The unemployment rate for August did not budge, remaining at 9.1 percent.
As President Obama prepared to deliver a major proposal to bolster job creation next week, the report added to the pressure on the administration, on Republicans who have resisted any new stimulus spending, and on the Federal Reserve, which has been divided over the wisdom of using its limited arsenal of tools to get the economy moving again.
The White House immediately seized on the report as evidence that bold action was needed, calling the unemployment rate "unacceptably high." Secretary of Labor Hilda L. Solis said in an interview that she hoped the president's proposals would be embraced by Congress. "If they're not supported, then he's going to take it out to the public," she said.
Republicans, in turn, argued that the numbers were further proof that the policies of Mr. Obama, whom they quickly dubbed "President Zero," were not working. The lack of growth in nonfarm payrolls was well below the consensus forecast by economists of a 60,000 increase, which itself was none too optimistic. It was a sharp decline from July, which the Labor Department on Friday revised to show a gain of 85,000 jobs.
August's stall came after a prolonged increase in economic anxiety this summer that began with the brinksmanship in Washington's debt-ceiling debate, followed by the country's loss of its AAA credit rating, stock market whiplash and renewed concerns about Europe's sovereign debt.

週末ですので簡単にグラフィックを示すと以下の通りです。上のパネルは非農業部門全体の雇用者数の前月差増減とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。

米国雇用統計の推移

New York Times のブログサイトである Economix の記事を真似た Jobless Recovery のグラフは以下の通りです。

Jobless Recovery

日本でも同じことですが、もともとが雇用の回復が極めて緩やかな景気回復局面でしたから、これで景気がさらに減速したりすると、米国のように完全に雇用の回復がストップする可能性も否定できません。

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2011年9月 2日 (金)

法人企業統計から企業セクターを概観する

本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が発表されました。この時期の企業活動は3月の震災や円高の影響などで少し停滞気味のように見えます。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

設備投資7.8%減 4-6月、4四半期ぶりマイナス
法人企業統計

財務省が2日発表した4-6月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資額は前年同期比7.8%減の7兆7145億円で、4四半期ぶりに減少した。うち製造業は2.0%減の2兆7372億円、非製造業は10.7%減の4兆9774億円だった。
ソフトウエアを除いた全産業の設備投資額は8.2%減の7兆634億円で、4四半期ぶりの減少だった。季節調整して前期と比べると6.6%減少した。
全産業の売上高は前年同期と比べて11.6%減の316兆4903億円で、6四半期ぶりの減少。うち製造業が12.3%減の91兆3968億円、非製造業は11.3%減の225兆935億円だった。経常利益は14.6%減の11兆3421億円で、7四半期ぶりの減少。うち製造業が15.3%減の3兆8778億円、非製造業は14.2%減の7兆4644億円だった。

次に、もう少し詳しく法人企業統計を季節調整済みの系列で見ると、売上高と利益は減収減益、また、設備投資も減少に転じていることが読み取れます。以下のグラフの通りです。上のパネルは水色の折れ線グラフで左軸に対応する売上高と赤で右軸に対応する経常利益を、下のパネルはソフトウェアを除く設備投資を、それぞれ兆円単位でプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

法人企業統計の推移

さらに、法人企業統計からインプリシットに計算できる労働分配率と損益分岐点のグラフは以下の通りです。計算に要した統計は季節調整済みの系列が公表されていませんので、後方4四半期移動平均を示してあります。労働分配率は上昇、損益分岐点は低下の気配を示しており、典型的な景気停滞の雰囲気を醸し出していたりします。

労働分配率と損益分岐点の推移

売上げや営業・経常利益、あるいは、設備投資といった量的な指標から見ても、労働分配率や損益分岐点といった質的な指標から考えても、企業活動は停滞の可能性が示唆されていると私は受け止めています。そのひとつの要因は外需に起因し、要するに、円高と世界経済の減速です。

円高への企業の対応については、昨日、経済産業省から「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」の結果が公表されています。「大企業・製造業編」から1ドル76円の為替レートへの大企業の対応のグラフを引用すると以下の通りです。縮小したので見づらいんですが、左側の赤い破線に囲まれた部分は原材料や部品を海外調達する比率の増加、右側が工場や研究開発施設の海外移転です。円高により空洞化が進む可能性が示唆されていると受け止めるべきです。

1ドル76円の為替レートへの大企業の対応

最後に、法人企業統計に戻って、9月9日にこの統計を考慮した4-6月期の2次QEが発表されますが、当然ながら、かなり1次QEから下方修正されると覚悟すべきです。

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2011年9月 1日 (木)

降格7番の新井選手が中日クローザー岩瀬投手を打って引分けに持ち込む!

  HE
阪  神000000201 390
中  日000003000 372

新井選手が7番に降格された上に、守備の負担の少ないファーストに回って、7回にタイムリー、9回に同点打と結果を残しました。ただし、投手起用には疑問が残ります。3点取られるまでスタンリッジ投手を続投させながら、点差をリードされると途端に勝ちパターンの渡辺投手や榎田投手を出すのはいかがなもんでしょうか。結果的に負け試合を引分けに持ち込めてムダ使いにはなりませんでしたが、特に、榎田投手はもう少し配慮した起用方法が必要ではないかと見受けます。最後は藤川投手がさすがの2三振3者凡退でした。いずれにせよ、勝ちたかったとはいうものの、負けていた試合を追いついた引分けですし、何よりも今季のナゴヤドーム最終戦でした。もう今年はナゴヤドームでの試合がないというのは安心感があります。

台風の進路次第ながら、明日は甲子園で、
がんばれタイガース!

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組閣はまだ始まらないのか?

月曜日に民主党の代表選、火曜日に国会での首班指名を経て、昨日と今日の2日間で民主党の役員人事は少し動いたりしていますが、内閣の顔ぶれはまだほとんど決まりません。これだけ組閣に時間をかけるのは、河口湖の別荘にこもった安倍総理以来ではないかという気がしないでもありません。ということで、私が見た範囲で、ということは見落としも多いんでしょうが、米国メディアでは淡々と報道ベースで新総理が選出されたことを報じ、主として英国のメディアで野田新総理の人となりなどが取り上げられているような印象があります。野田新総理の人となりを紹介している海外メディア記事を順不同に引用すると以下の通りです。記事のタイトルにも報道のスタンスが現れているような気もします。

The Wall Street Journal のタイトルは政治スタイルと政策スタンスを表現しており、The Economist は例の「ドジョウ」発言に由来するもので、The Guardian のサブタイトルは "What do we know about Japan's new prime minister?" ですから、国際的な知名度の低さを暗示させているのかもしれません。また、The Guardian ではズバリ英訳されて、"I'll never be a goldfish in a scarlet robe, but like a loach in muddy waters" と発言が引用されています。英語を母語とする人達にこの表現で理解できるかどうかは私には不明です。画像では、私が見た範囲では、小泉元総理以降の日本の総理大臣が短期で交代している事実を示したものが多くなっている印象があります。取りあえず、リンク先だけ引用すると以下の通りです。

特に後者の The Guardian の The Daily Cartoonはとっても秀逸な風刺画ですので、以下にオリジナルを少し縮小して引用しておきます。

Made in Japan

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