« 企業物価と第3次産業活動指数から内外景気の動向を探る | トップページ | 甲子園でも負けてほぼ終戦か! »

2011年9月13日 (火)

為替相場と物価の政策割当ての問題

昨日の午後は少し役所を離れて外に出かけて、知り合いのエコノミストやエコノミストでない人達と交流したんですが、経済政策の割当ての問題について雑談を交わして来ました。具体的には、強烈な円高が進んだ為替レートに関する対応、そして、デフレの続く物価への政策対応です。

為替レートの推移

上のグラフはカナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学アントワイラー教授が運営している Pacific Exchange Rate Service なるサイトから円ドルと円ユーロの日々の為替レートのデータを取ってプロットしてあります。ギリシアの財政問題に端を発して2008年中から対ユーロでかなりの円高が進んでいますが、2009年9月の政権交代後は対ドルでも対ユーロでもほぼ一貫して円高が進んでいるのが読み取れます。最近の民主党政権下の財務大臣は、現在の野田総理も財務大臣だったころはそうなんですが、円高に対しては為替介入を政策として割り当てているように私には見受けられます。余りにも原始的に為替市場に直接介入する政策手段であることは言うまでもありません。もちろん、実際に介入するだけではなく、最近のスイス国立銀行が採用したように、対ユーロで一定の水準を示した上で無制限介入を制度化することにより期待に働きかける政策もあります。しかし、価格を直接に統制する手段が物価に割り当てるべき政策ではないのと同様に、市場介入を為替相場に対する政策として割り当てるのが正しいかどうかは疑問です。それよりも、現在の円高は古今東西に例を見ない財政赤字と引締め気味の金融政策の組合せによりもたらされていると考える方がエコノミストとしては受け入れやすい気がします。

コアCPI上昇率と公共料金寄与度の推移

デフレの続く消費者物価については、知り合いのエコノミストに指摘されて初めて気づいたんですが、最近、消費者物価がプラスに転じたのは公共料金の寄与が大きいためなのかもしれません。上のグラフは生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率とそれに対する公共料金の寄与をプロットしています。もっとも、8月26日付けのエントリー「消費者物価上昇率の計算方式変更について考える」で指摘した通り、上昇率算出の基礎となる端数付きの指数を総務省統計局は発表していませんから、私の方で発表された端数のない指数から上昇率と寄与度を計算していますので、いわゆる「丸めの誤差」はあり得ます。ご容赦ください。それはともかく、この4月から公共料金の寄与度がかなり大きく、0.3から0.5%ほどあります。現在のコアCPIの前年同月比上昇率が0.1%とか0.2%とかですから、公共料金の寄与度で物価上昇率がプラスに転じたと見えなくもありません。猛烈なインフレ期などで政府が直接に価格を統制して物価上昇を抑え込むことは過去の経験でありましたが、その逆で、デフレ脱却を目指して物価をプラスにするために政府が公共料金の引上げに乗り出したわけではなかろうと私は想像していますが、結果的に、そのようになっていることも確かです。しかし、物価を政策目標にする日銀には公共料金決定の権限があるわけではありませんから、日銀の金融政策に信頼を失った政府が為替と同様に、極めて原始的に公共料金という価格を直接に操作対象としていたりする可能性は排除できないかもしれません。ものすごく考えにくいことですが、中央銀行の金融政策がまったく発動されない状況下で、本来のマクロ政策を為替や物価に割り当てることを諦めて、政府が市場に直接介入し始めると何かよくないことが起こりそうな気がします。少なくとも、政府は万能ではありませんし、「政府の失敗」の可能性もゼロではありません。

くつろいだ仲間内での他愛のない噂話ではありますが、一片の真実を含んでいないとも限りません。日本人は政府に頼ることに慣れ切って、特に、震災以降は政府が大きな役割を果たす状態が続いています。大きな政府の下で増税を容認する意見も日増しに強まりつつあるように私は感じています。ホントにそれでいいのか、政策割当ては間違っていないか、考えるべきポイントのひとつではないでしょうか。

|

« 企業物価と第3次産業活動指数から内外景気の動向を探る | トップページ | 甲子園でも負けてほぼ終戦か! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/20840/41672429

この記事へのトラックバック一覧です: 為替相場と物価の政策割当ての問題:

« 企業物価と第3次産業活動指数から内外景気の動向を探る | トップページ | 甲子園でも負けてほぼ終戦か! »