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2011年10月14日 (金)

アジア太平洋地域の先行き経済の下方リスクは日本が主因か?

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「地域経済見通し: アジア太平洋」 Regional Economic Outlook: Asia and Pacific が発表されています。副題はNavigating an Uncertain Global Environment While Building Inclusive Growth となっています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。9月のIMF世銀総会の直前に明らかにされた「世界経済見通し」 World Economic Outlook (WEO) と内容は何ら変わりないく、見通しが修正されているわけではないんですが、地域版ということでやや詳細な分析がなされています。まず、IMF のサイトからサマリーを引用すると以下の通りです。

Regional Economic Outlook: Asia and Pacific
In line with the weaker global outlook, growth in Asia is expected to be slightly lower in 2011-12 than forecast in April 2011, mainly as a result of weakening external demand, but the expansion should remain healthy, supported by domestic demand, which has been generally resilient. Overheating pressures remain elevated in a number of economies, with credit growth still robust and inflation momentum generally high, though inflation is expected to recede modestly after peaking in 2011. The sell-off in Asian financial markets in August and September 2011 underscores that an escalation of euro area financial turbulence and a renewed slowdown in the United States could have severe macroeconomic and financial spillovers to Asia. Against this backdrop, Asian low-income and Pacific Island economies face particular challenges in the near and medium term. In low-income countries, the fight against inflation is complicated by strong second-round effects, the need to phase out subsidies, and less well-anchored inflation expectations. Pacific Island economies need to undertake further structural reforms to lift potential growth.

ラテン・アメリカなどの他の地域経済見通しに目を通しているわけではないんですが、あえて大雑把にいって、アジア太平洋諸国は先進国をはじめとする外需の減速に起因して成長が鈍化するものの、内需に基づく健全な成長が続くであろうという見通しとなっています。というのは、インフレが2011年をピークに終息に向かうと見込まれているのも一因です。もちろん、米欧の金融的な混乱はマクロ経済の実物面でも金融面でもアジアに波及することはいうまでもありません。下のテーブルはリポートの p.5 Table 1.1. Asia: Real GDP を引用しています。アジア太平洋地域の新興国・途上国の成長率見通しは4月から少し下方修正されているものの、この地域の先進国である日本・オーストラリア・ニュージーランドに比べて小幅にとどまっています。

Table 1.1. Asia: Real GDP

リポートでは主として震災に起因するサプライ・チェーンの毀損から説き起こしていますが、アジア太平洋地域の貿易に関して、日本からの輸入が多い国や地域ほど今年4-6月期の貿易の伸びが小さく、あるいは減少となっており、我が国の3月の震災とそれに起因するサプライ・チェーンの損壊がアジア太平洋諸国の貿易や成長にマイナスの影響を持っていたことが確認されています。下のグラフはリポートの p.5 Figure 1.8. Selected Asia: Trade Links to Japan and Export Growth in 2011:Q2 を引用しています。日本からの輸入比率5%がクリティカル・バリューになっているような気がします。それはともかく、やや拡大解釈すると、もしも、TPP交渉などを含めて、日本が世界やアジア太平洋地域における自由貿易協定の流れから取り残されると、日本との貿易の結びつきが強い国ほど悪影響を受ける傾向が強まりかねず、文字通り、日本がガラパゴス化して世界からもアジア太平洋地域の中でも孤立する恐れがあるのではないかと私は危惧しています。

Figure 1.8. Selected Asia: Trade Links to Japan and Export Growth in 2011:Q2

IMF では米欧経済の失速がアジア太平洋諸国の経済にどのような影響を及ぼすかを Global Integrated Monetary and Fiscal (GIMF) モデルを用いて試算しています。その結果をリポートの p.9 Figure 1.16. Selected Asia: Impact of Severe Global Slowdown on Real GDP Growth から引用したのが下のグラフです。注にある通り、欧州で▲3.5%、米国で▲1.0%のベースラインGDPからの乖離が2年間生じた場合、どのような影響が波及するかをシミュレーションしています。グラフから明らかな通り、日本でも▲1%を超える下押し圧力が加わり、そもそも、日本では潜在成長率がそんなもんですから、現在の米欧経済の失速はそれだけで日本経済をマイナス成長させ、景気後退に陥らせるに十分なマグニチュードがあると考えるべきです。加えて、アジア新興国の中でも輸出に依存した中国への影響が大きいと結論されています。

Figure 1.16. Selected Asia: Impact of Severe Global Slowdown on Real GDP Growth

IMFの「地域経済見通し」とは関係なく、本日、日銀から9月の企業物価指数が発表されています。明らかに、輸入物価や素原材料価格にけん引された物価上昇幅の縮小となっています。石油・石炭製品、化学製品、非鉄金属などは前年同月比で上昇しているものの上昇幅が縮小しており、国際商品市況の下落に企業物価が連動していると私は受け止めています。

企業物価上昇率の推移

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