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2011年10月28日 (金)

政府統計集中発表日に見る景気腰折れの可能性

今日は政府統計の集中発表日でした。まず、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局の消費者物価が、それぞれ発表されています。いずれも9月の統計です。生産が大きく減産に転じた一方で、雇用統計は極めて緩やかながら改善を示しました。物価は大きな変動は見られません。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の鉱工業生産指数4.0%低下 6カ月ぶりマイナス
経済産業省が28日発表した9月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)速報値は、89.9と前月に比べ4.0%低下した。マイナスは6カ月ぶり。自動車を中心とした東日本大震災後の急回復が一服し、円高進行や世界景気後退の影響が出始めた。先行きはタイ洪水による減産も予想され、経産省は基調判断を「横ばい」に下方修正した。
9月は全業種がマイナスだった。輸送機械工業は5カ月ぶりの6.0%低下。北米向けの普通自動車などが減った。「生産計画通り」(経産省)ではあるものの、5月以降続いてきた生産回復の流れは一休みになった。
機械部品の一部で円高の影響による生産減が出始めたほか、半導体製造装置や太陽電池モジュールも欧米やアジア向けの生産が減った。
この日発表した製造工業生産予測調査によると、10月は2.3%、11月は1.8%それぞれ上昇する見込み。ただタイ洪水の影響は予測に反映されておらず、先行き不透明感もある。
7-9月の鉱工業生産指数は5四半期ぶりの上昇で、前の期に比べ4.1%増の92.2だった。
9月の失業率、4.1%に 0.2ポイント改善
総務省が28日発表した9月の完全失業率(季節調整値、全国ベース)は4.1%となり、前月に比べて0.2ポイント改善した。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率も0.67倍と、4カ月連続で上昇した。東日本大震災の復興需要やサプライチェーン(供給網)の回復などで、雇用情勢は持ち直しの動きを続けている。
総務省の労働力調査は震災の影響で、8月分まで岩手・宮城・福島を除いて公表していた。9月分からは被災地の8割で調査が再開できたため、全国ベースで数値を公表する。前月と比較可能な被災3県を除く失業率も同じ4.1%だった。
完全失業者数は「被災3県を除くベース」で254万人になり、2カ月連続で前の月を下回った。解雇などで仕事を失った人、自発的に仕事を辞めた人、共に減少した。就業者は5973万人で、前月に比べて30万人増えた。8月は定年や職探しをあきらめて労働市場から退出した非労働力人口が20万人増えたが、9月は減少に転じた。
ただ、厚労省がまとめた9月のハローワークでの職業紹介状況によると、新しく寄せられた求人を示す新規求人数は1.5%減の66万人。3カ月ぶりのマイナスだった。同指標は雇用の先行指数になっており、円高や海外経済の不透明感から、足元には積極的な求人を手控える動きもある。
9月の消費者物価、0.2%上昇 燃料高で
総務省が28日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除くベースで99.9となり、前年同月比0.2%上昇した。上昇は3カ月連続。ガソリンや電気などエネルギー価格が押し上げた。10月からは、昨年のたばこ増税の影響一巡などで物価が再び下落する可能性が高い。
生鮮食品を含むベースは前年と横ばい。食料とエネルギーを除くベースは0.4%下落した。
原油など国際市況の高止まりで、ガソリン価格は10.3%、電気代は3.9%上昇した。燃料費の高騰分が価格に上乗せされた外国パック旅行も2割上がった。液晶テレビや電気冷蔵庫は2-3割下がり、家電の値崩れは止まっていない。
10月からは、昨年のたばこ値上げと傷害保険料引き上げの影響が一巡する。「10月から生鮮食品を除いた消費者物価は再びマイナスに転じる」(みずほ総合研究所の山本康雄シニアエコノミスト)との見方が多い。
総務省が同日発表した東京都区部の10月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除くベースで0.4%下落した。前月よりマイナス幅が0.3ポイント広がった。

まず、鉱工業生産のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる指数そのもの、下のパネルは出荷指数のうちの輸送機械を除く資本財と耐久消費財です。いずれも季節調整済みの系列で、グラフの影を付けた部分は景気後退期です。最近改定されたばかりですが、内閣府の景気動向指数研究会の景気基準日付に従っています。

鉱工業生産の推移

生産動向は微妙な段階に差しかかった気がします。引用した記事にもある通り、9月の減産の後、製造工業予測指数に従えば、10-11月は増産に転じると見込まれていますが、増産ながら力強さが欠けており、出荷の水準も高くないですし、繰返しになりますが、復興需要に支えられて一時的な踊り場で抜け出せるのか、円高の重しなどにより、このまま腰折れになってしまうのか、生産は微妙な段階に差しかかった気がします。10月上旬の輸出は12%のマイナスで始まったようですし、円相場の動向も極めてセンシティブな動きを示しています。私が考える基本シナリオでは一時的な踊り場で切り抜ける確率が高いと見ていますが、世界経済に起因する輸出の動向や為替相場次第でさらに悪化する可能性も残されていると見込んでいます。

雇用統計の推移

次に雇用統計の各指標は上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。各指標とも総じてゆるやかながら雇用の改善を示しているように見受けられますが、9月統計から震災3県を含めるようになった失業率の大幅な改善はにわかには信じ難く、統計の信頼性について疑問を持つ向きがあっても不思議ではないと私は受け止めています。また、単月の動きながら、雇用の先行指標となっている新規求人が悪化を示しているのも気がかりです。

消費者物価の推移

最後に、消費者物価の動向は上のグラフの通りです。棒グラフは青い折れ線で示した生鮮食品を除くコア消費者物価の前年同月比上昇率の寄与度となっています。ただし、上昇率を計算する基礎となる端数を持った指数が公表されていませんから、公表されている限りの指数とウェイトで私なりに計算しています。ということで、大きな動きはないように見えますが、細かく見れば、東京都区部のコアCPIが足元で上昇率を下げ始めているように見えます。少し全国と乖離し始めていますが、東京都区部は全国に先行性がありますので、全国のコアCPIも現在のプラスを続けるのはそれほど長くない可能性が示唆されています。引用した記事にも10月全国コアCPIは再びマイナスに転じるとの見方が示されていますが、私もほぼ同様の見通しを持っています。

最初の生産動向が典型的ですが、足元から目先の経済動向を考える場合、復興需要のプラスと世界経済の失速や円高の影響によるマイナスが天秤にかかることになります。現時点で得られる情報からは、どちらが重いかの判断は私にはつきかねます。

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