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2011年10月24日 (月)

震災後の最高水準に達した貿易収支の先行きを考える

本日、財務省から9月の貿易統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる輸出額は前年同期比+2.4%増の5兆9807億円、輸入額も+12.1%増の5兆6803億円、差引き貿易収支は3004億円を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易黒字、震災前の水準に 自動車輸出など伸びる
財務省は24日、9月の貿易統計(速報値)が3004億円だったと発表した。自動車や自動車部品の輸出額が増えたため。2カ月ぶりの黒字で、東日本大震災が起きる直前の2月の6503億円に次ぐ高い水準だった。原油や液化天然ガス(LNG)といった燃料の輸入額も一方で増え続けており、黒字額は前年同月と比べ61.2%減と減少した。
輸出額は2.4%増の5兆9807億円と、2カ月連続で増えた。自動車が欧州連合(EU)向けを中心に伸び4.9%増、自動車部品は11.5%増で米国、中国などに対して増えた。
輸入は12.1%増の5兆6803億円と、21カ月連続で増えている。原油の輸入金額が増えたほか、火力発電所で用いるLNGも増加。震災以後、同様の流れが続いている。
数量指数でみると輸出は1.7%増、輸入は0.9%増だった。ともに2カ月連続で増加した。
季節調整して前月と比べると、輸出額が2.0%増、輸入額が2.2%減となった。
財務省は、LNGや原油・粗油の輸入額の伸びが輸出を上回り、依然として大きいと指摘。「燃料価格の高止まりや、LNG需要は継続するだろう。海外景気の下振れ懸念や円高もあり、今後の推移を注視する必要がある」と慎重にみている。

続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルはともに、折れ線グラフの輸出入と差額の貿易収支の棒グラフですが、上のパネルは季節調整する前の原系列、下は季節調整済みの系列となっています。いずれも左軸の単位は兆円/月です。

貿易統計の推移

上のグラフを見て明らかなんですが、日経新聞の記事のように、9月の貿易収支が震災前の水準に近づいたとはいうものの、季節変動を織り込んでしまった計数であり、季節長した系列では震災直後の4月統計から6か月連続で貿易赤字が続いています。もっとも、9月統計では赤字幅はほぼゼロとなっています。ということで、第1に、統計発表でもっとも注目すべき足もとの貿易動向は、決して楽観できる状態にはないと受け止めるべきです。第2に、引用した記事にもある通り、海外景気の下振れリスクが顕在化し、我が国の輸出に影響する蓋然性は引き続き高まっていると考えるべきです。輸出に関するグラフは以下の通りです。

輸出の推移

上のパネルは輸出額の前年同月比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解した結果をプロットしています。季節調整していない原系列です。下のパネルは同じく季節調整していない輸出数量指数の前年同月比伸び率とOECD先行指数の前年同月比を併せてプロットしています。いずれも縦軸は2尾率のパーセントです。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。グラフから明らかなように、ホンの1-2か月前までは震災に起因するサプライチェーンの毀損などの供給制約が回復するに伴って、順調に我が国からの輸出は増加を示していたんですが、世界経済の失速とともに輸出の伸びにはブレーキがかかりつつあります。この先、日本製品への需要はさらに悪化することも考えられ、輸出の増加は頭打ちとなる可能性があります。

鉱物性燃料輸入の推移

最近の論調で、輸入の増加に関して貿易収支の観点から危惧する意見を見かけます。私も一瞬そのような意見を持ちそうになったこともあります。しかし、私の従来の見方は、現状の貿易黒字を背景に、国内の生産や輸出に必要な輸入は仕方がないので分析は放棄して来ました。ここで一歩だけ立ち止まって、上のグラフを書いてみました。鉱物性燃料輸入額とそのうちの液化天然ガス(LNG)輸入額をプロットしています。縦軸は兆円です。季節調整していなくて、しかも、月単位なのでやや荒っぽい動きを示していますが、液化天然ガス(LNG)輸入額は確かに既往最高額に迫っている一方で、2008年シーマン・ショック直前の時期と比べて、鉱物性燃料輸入額としては既往最高額からまだかなり余裕があるのが見て取れます。国際商品市況と為替相場の動向次第なんですが、引き続き、輸入には能天気な態度を示し続けてよいデータだと私は受け止めています。なお、この統計でもって7-9月期の貿易収支が出ました。サービス部分が未確定なんですが、強引にGDP統計に引き直せば、外需は前期比成長率に対して、一定のプラスの寄与を示したんではないか、と私は大雑把に見込んでいます。

最後に、貿易統計とは何の関係もなく、今日の日経新聞経済教室の白波瀬教授の「現役世代の再配分強化を」と題する論考に私は大いに賛成するものですが、日を改めて取り上げたいと思います。

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