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2011年11月 7日 (月)

改定された第10次景気動向指数への変更のポイントやいかに?

本日、内閣府から9月の景気動向指数が発表されました。CI一致指数は前月比▲1.4ポイント低下の88.9を記録し、基調判断は「下げ止まりを示している」に据え置かれています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事の最初の5パラを引用すると以下の通りです。

9月の景気一致CI、2カ月連続低下
海外成長鈍化で生産落ち込み

内閣府が7日発表した9月の景気動向指数速報(CI、2005年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.4ポイント低下の88.9だった。世界経済の成長が鈍化し、生産が落ち込んだことが影響した。低下は2カ月連続。
一致CIを押し下げたのは、投資財出荷など生産関連の指標だった。欧米や新興国の景気回復には陰りが出ており、海外向けの需要減退が生産の足を引っ張った。地上デジタル放送への完全移行が終了し、液晶テレビなど消費関連の落ち込みもマイナスに拍車を掛けた。内閣府は、10月以降に関して「タイの洪水の影響も加わり、下振れリスクがある」とみている。
数カ月後の先行きを示す先行指数も2.2ポイント低下の91.6と2カ月連続で低下した。世界的な景気減速の懸念や欧州の債務問題の深刻化を受けて、商品市況や株価などリスク資産の価格が下落したことが影響した。住宅は東日本大震災で見送られていた着工の進捗が9月は一巡。自動車などの海外への出荷が伸びずに在庫率が上昇していることもマイナスに寄与した。
一方で、景気に数カ月遅れる遅行指数は1.7ポイント上昇の85.9。完全失業率の改善や法人税収入の増加が指数を押し上げた。
内閣府は、基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。10月19日開催の景気動向指数研究会(座長・吉川洋東大教授)で基準が見直されたため、基調判断を見直し前の「改善を示している」から「下げ止まり」に修正していた。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数の推移をプロットしています。いずれも影を付けた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

引用した報道にもある通り、10月19日に景気動向指数研究会が開催され、判断基準が見直されていますが、同時に、新しい第10次指数への改定が了承され、一部の採用系列が入れ替えられるとともに、いわゆる「外れ値」の処理方法を変更しています。具体的には、系列の変動を体系全体に発現する「共通循環変動」と当該系列のみに発現する「系列固有変動」に分解し、「外れ値」処理の対象を後者の「系列固有変動」に限定しています。これに従って、リーマン・ショックや東日本大震災のような体系全体に対する共通ショックが「外れ値」として処理されるのを防ぐことが可能となっています。実際に、第9次指数と第10次指数のそれぞれのCI一致系列をプロットすると以下の通りです。

第9次指数と第10次指数の比較 (CI一致指数)

「外れ値」処理が系列固有変動に限定されたため、実は、景気動向指数はもっと下方をはっていたことが発見されました。以前は下方変動をずいぶんと「外れ値」処理していたんだということが理解できます。また、最近時点では、決して景気動向指数は鉱工業生産指数のように経済活動の水準を表現しているわけではないものの、CI一致指数が震災前の水準を超えたことも、必ずしも正しくなかったことが分かります。リーマン・ショックに谷の深さとともに、実感に合致した変更だと評価できます。

何となく、統計の改定の解説に終わってしまいましたが、いつも通り、今後の景気の動向は復興需要と海外経済の失速プラス円高の動向次第といえます。9月の景気動向指数は後者のマイナス要因が前者のプラス要因を上回ったわけですが、今後も同様の傾向が続きそうな予感がしています。

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