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2011年11月21日 (月)

予期せぬ貿易赤字を記録した貿易の先行きを考える

本日、財務省から10月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる輸出入は季節調整していない原系列で輸出が5兆5128億円、輸入が5兆7866億円、差引き貿易収支は2738億円の赤字となりました。市場の事前コンセンサスはわずかながら貿易黒字を記録するというものでしたから、ちょっとびっくりの結果だと私は受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の輸出、3カ月ぶりマイナス 欧州危機・タイ洪水響く
東日本大震災後の落ち込みから持ち直し傾向にあった輸出が足踏みしている。財務省が21日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比3.7%減の5兆5128億円となり、3カ月ぶりにマイナスに転じた。欧州危機の影響で欧州連合(EU)や米国、アジア向けが軒並み減少した。洪水の影響でタイ向けが同5.1%減となるなど海外需要は徐々に減退している状況だ。
10月の輸出額は季節調整済みの前月比でも3.5%減となった。前月水準を下回ったのは震災直後の4月以来、半年ぶりで輸出の復調には陰りがみられる。財務省は「欧州債務問題による世界経済の減速や、円高に伴う海外生産シフトなど輸出の動向を注視していく」(関税局)としている。
10月の輸出額は数量ベースでは前年同月比4.0%減。輸出の足踏みは輸出価格を押し下げる円高よりも、海外需要そのものが落ち込んだ影響が大きい。
地域別にみると、米国、EU、アジア向けがいずれも減少に転じた。欧州危機に直面するEU向けは同2.9%減少。輸出額から輸入額を差し引いた貿易黒字は1002億円と、10月としては1979年以来の最低水準を記録した。米国向けも同2.3%減った。
アジア向けは半導体や船舶を中心に同6.6%減少した。大洪水で生産活動が止まったタイ向けは5.1%減。半導体など電子部品の輸出が約4割減った一方、タイからのパソコン輸入も2割減った。財務省は「11月は洪水の影響がさらに拡大した可能性がある」とみている。
品目別では、一般機械や電気機器を中心に減少が目立った。半導体など電子部品は世界的なIT(情報技術)市況の不調から2割減。船舶も3割減と減少基調が続いており、世界的な荷動きの停滞を反映している可能性もある。海外市場の在庫積み増しを急ぐ自動車は6.1%増加した。
10月の貿易収支は2738億円の赤字で、2カ月ぶりの赤字となった。輸出の減少に対し、輸入額が17.9%増と大幅に増加したのが主因。原子力発電所の停止に伴う火力発電用の液化天然ガス(LNG)の需要が高まっているほか、原油価格の高止まりも輸入金額を押し上げた。

いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は季節調整済みの系列です。水色の折れ線グラフが輸出、赤が輸入、緑色の棒グラフは貿易収支となっています。縦軸の単位は兆円です。

貿易統計の推移

まず、グラフを見れば明らかなんですが、原発停止の影響で燃料輸入が増加しているとはいうものの、貿易赤字の主因は輸出にあります。季節調整済みの下のパネルで見て、輸入が依然として従来のトレンドに乗っている一方、10月統計では輸出が落ち込んでいるのが見て取れます。引用した記事にもある通り、欧州のソブリン危機とタイの洪水が輸出の下押し要因となっています。前者は需要面からの輸出下押し要因、後者は供給面からの要因です。タイの洪水についてはエコノミストの守備範囲外で、私にはよく分かりませんが、欧州をはじめとする先進国経済については、いつものOECD先行指数で見たのが下のグラフです。

輸出の推移

上のパネルは輸出の金額指数の前年同月比を数量指数と価格指数で寄与度分解しています。10月の輸出の落ち込みは数量に起因することが明らかです。下のパネルは輸出の数量指数とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。下のパネルから、欧州のソブリン危機もあり、先進国需要がゆっくりと下り坂になっていることが読み取れます。なお、今年3月から夏くらいまでの輸出指数の下方乖離は震災に起因する供給制約です。欧州初の需要ショックに加えて、タイの洪水についても震災と同じ供給ショックが生ずる可能性があります。

我が国の輸出の先行きについては、タイの洪水がどのくらい長引くかは不透明ですが、欧州のソブリン危機は簡単には終息しそうにありません。年内はもとより、年度内くらいは輸出が足踏みを続ける可能性があると覚悟すべきです。

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