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2011年11月28日 (月)

薬丸岳『ハードラック』(徳間書店) を読む

薬丸岳『ハードラック』(徳間書店)

薬丸岳『ハードラック』(徳間書店) を読みました。作者は2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビューしたミステリ作家です。まず、出版社のサイトからこの作品の「内容紹介」を引用すると以下の通りです。

内容紹介
人生をやり直したい、と願ったネットカフェ難民相沢仁(26)は、闇の掲示板で仲間を募り、応じてきた四人の男女と話すうち金満家襲撃話が持ち上がった。が、決行中に相沢は頭を殴られて昏倒。結局一人逃げるはめになった彼は、報道で邸から3人の他殺体が発見されたと知る。家人には危害を加えないはずが、俺は仲間にはめられた。3人殺しでは死刑は確実。得体の知れない仲間を彼は自力で見つけねばならなくなった……。

圧倒的な支持を受けて江戸川乱歩賞を受賞した『天使のナイフ』こそ書名だけ知っていたものの、誠に不勉強ながら、この作者の作品は初めて読みました。少しネットで調べると、少年犯罪、刑法第39条の責任能力、犯罪者の処罰と更正など、とってもヘビーなテーマを取り上げて来た作者にしては、この作品はホンの少し裏社会が描かれているとはいえ、かなりライトな内容なのかもしれません。その意味で、この作者の小説を初めて読んだ私なんかの初心者ならともかく、ずっとデビュー作から読み続けている愛好家には、ひょっとしたら、少し物足りない可能性もあります。
この作品に描かれている日本の裏社会がどこまで正確なのかは、表社会を代表するがごとき国家公務員をしている私なんぞに分かるハズもありませんが、キチンと書き分けられたキャラと迫力あるストーリー展開で一気に読むことが出来ます。もちろん、プロットも秀逸で、残りページ数がわずかになっても、一向に事件が解決に向かわないイライラした雰囲気をラストで一気にひっくり返してくれます。犯人探しのミステリとしてもなかなかの出来栄えです。

ここ数年でそれなりに名をはせた新進気鋭の作家の最新作です。多くの図書館に所蔵されていることと思いますので、多くの方が手に取って読むことを願っています。

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