よいお年をお迎え下さい!

今年も残すところあとわずか。みなさま、1年間、お世話になりました。
よいお年をお迎え下さい。
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例年、同じネタで申し訳ありませんが、Financial Times で来年の方向性について論じています。FT のサイトから画像とともに引用して手抜きのエントリーとします。
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よしもとばなな『スウィート・ヒアアフター』(幻冬舎) を読みました。あとがきの2パラ目で作者は「とてもとてもわかりにくいとは思いますが、この小説は今回の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものです。」と記しています。ホントに分かりにくい気がします。そして、朝日新聞の書評欄ではこの作品と高橋源一郎『恋する原発』(講談社) を並べて、「震災文学」と称し、現在社会への違和感をモチーフにしている共通点を指摘しています。
この小説のあらすじを簡単に書くと、小夜子という東京の女性を主人公に、結婚まで秒読みの彼女の恋人が京都で運転する自動車が事故に遭い、お腹に鉄の棒が貫通して臨死体験を経験しながらも、彼女は生還した一方で、即死した恋人とは亡きがらも見ないまま死に別れ、結果、幽霊らしき存在が見えるようになり、行きつけのバーにいる長い髪の女や引っ越した取り壊し寸前のアパートでいつも笑っている小柄な女の人が見え、沖縄バーのマスターや同じアパートのゲイの青年との交流を深めて行く、というものです。
タイトルの「ヒアアフター」は hereafter であって、私は副詞でしか使ったことはありませんが、名詞で「来世」とか「あの世」といった意味を持たせているんだと思います。また、高橋源一郎『恋する原発』は読んだことがありませんので何ともいえませんが、朝日新聞のように「震災文学」と呼ぶかどうかは別にして、生死を超越して知り合いと交流したり、「人は死ねば終わり」という単純な人生観とは異なり、死者とも何らかの関係性を保つことが出来る可能性を表現しようとしたことは私は評価したいと思います。もっとも、古くからの一向門徒として、死ねば極楽浄土に行けるという我が家の宗教観とは深刻な齟齬を来たします。そのあたりは無視しています。
よしもとばななは基本的にバブル期の作家ですが、数年前の『ムーンライト・シャドウ』に通じる作品です。特に強くオススメはしませんが、一部に話題作と受け止められているかもしれません。多くの図書館に所蔵されていることと思いますので、ご興味ある方はどうぞ。
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昨日の御用納めを経て、今日から私のような公務員は年末年始休みに入った人も多いだろうと思います。ということで、今日、私は下の子と東京証券取引所の見学に行きました。昨年はおにいちゃんと大納会の見学に行ったんですが、今年は中学生向けの大納会の見学はないとのことで、モノポリーのようなボードゲーム大会に参加して来ました。最初に取引所を見学した後、5卓に分かれてボードゲームです。軽く想像されるように、株価の変動を織り込んだゲームで、何らかのニュースに応じて、例えば、円高が進んだとか、政府の経済対策で減税が実施される、とかのニュースで株価がどう動くかを予測して、200万円を元手に株式を売買して、10回のイベントに関するニュースを経て、一番もうけたプレーヤーが勝つ、というものです。我が家の下の子は200万円を元手に910万円まで増やし、4番テーブルでトップになりましたが、すべてのテーブルを通じてのトップの子は1300万円でしたから驚きです。なかなか楽しい午後のひと時でした。
下の写真は2枚とも下の子なんですが、上から順に、見学中に東証のマーケットセンターの前にてと、ボードゲームのプレー中の写真です。
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今日は、私のような公務員には今年最後のお仕事の日、いわゆる御用納めです。従って、いろんな政府統計がいっせいに発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率、毎月勤労統計などの雇用統計が、総務省統計局から消費者物価が、経済産業省から商業販売統計が、それぞれ発表されています。他にもありますが、今夜のエントリーで取り上げる指標はここまでで、いずれも11月の統計です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産11月2.6%低下 タイ洪水響く
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)速報値は90.1と、前月に比べて2.6%低下した。2カ月ぶりのマイナス。タイの洪水による部品不足などで、自動車や電機の生産が落ち込んだ。ただ減産は一時的で、12月以降は回復を見込む。基調判断は「横ばい」で据え置いた。
生産指数は市場の事前予想(0.7%低下)を下回った。
11月は主力の輸送機械工業が9.5%減と大幅に落ち込んだ。タイ洪水で部品供給が滞り、欧州向けの普通乗用車や国内向け小型自動車の減産につながった。携帯電話やデジタルカメラの部品が届かなかった情報通信機械工業も23.7%のマイナスだった。
最終製品の生産減少は川上の部品・素材産業に波及し、鉄鋼業は1.2%減った。生産指数は8業種でマイナスになった。
一方、電子部品・デバイス工業は3カ月ぶりに0.6%のプラスに転じた。発光ダイオード(LED)などで、タイでの生産分を国内で代替する動きがあった。
経産省が同日発表した製造工業生産予測調査によると、生産指数は12月に4.8%上昇する見通し。1月も3.4%の上昇を見込む。
タイ洪水で傷んだサプライチェーン(供給網)は早期に復旧し、輸送機械工業や情報通信工業、一般機械工業といった主力産業が上昇のけん引役になるとみている。ただ、円高や東京電力による産業用電気料金引き上げなどが、企業の生産活動に影響を与える可能性もある。
11月失業率横ばい4.5% 求人倍率わずかに上昇
総務省が28日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は前月と同水準の4.5%となった。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は前月より0.02ポイント上昇し、0.69倍となった。雇用情勢は東日本大震災後は持ち直しが続いているが、円高やタイの洪水の影響などで製造業の一部では雇用を調整する動きが出ている。
完全失業者数は296万人で前月よりも4万人(1.4%)増えた。自発的に離職した人は4万人増え98万人となり、勤め先の都合など「非自発的な離職者」は5万人減の109万人だった。一方、非労働力人口は前月に比べ8万人減少した。厚労省は「震災の復興需要などで求人が増えているため、求職活動を始める人が増えている」と分析している。
ハローワークに新たに寄せられた求人動向を示す新規求人数は前月比3.4%増の70万人。製造業では、自動車など輸送用機械で新規求人が大幅に増えたが、円高の影響などで電子部品では減少した。新規求人倍率は0.05ポイント上昇し、1.18倍となった。
所定内給与11カ月ぶり増加 11月0.3%増
厚生労働省が28日発表した11月の毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給や家族手当などを含んだ労働者1人当たりの「所定内給与」は前年同月比0.3%増の24万5212円となった。増加に転じたのは11カ月ぶり。
現金給与総額は前年同月比1.0%減の27万6218円で、2カ月ぶりのマイナスとなった。ボーナスなどの「特別に支払われた給与」が減少したことが主因だ。総労働時間は前年同月比0.1%増の148.8時間。労働時間は東日本大震災後に落ち込んだが、足元では持ち直し基調が続いている。
消費者物価11月0.2%下落 2カ月連続マイナス
テレビや冷蔵庫、下げ止まらず
総務省が28日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.6となり、前年同月比0.2%下落した。2カ月連続の下落で、マイナス幅は10月(0.1%)より拡大した。テレビや冷蔵庫の値下がりがとまらないほか、教養娯楽サービスも下落した。
テレビや電気冷蔵庫は約3割下落した。家電エコポイント終了などを背景に販売不振に陥り、値下げ競争が広がっている。外国パック旅行はアジア向けが安かった。一方でエネルギー価格は高止まりしている。ガソリン価格は8%、電気代は6%それぞれ上がった。
生鮮食品を含むベースでは0.5%下落し、食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)は1.1%下落した。
総務省が同日発表した12月の東京都区部のCPI(中間速報値)は生鮮食品を除くベースで、0.3%下落した。テレビやエアコンなど耐久財の価格下落が激しい一方、家族旅行の需要が上向きつつある宿泊料がマイナス幅を縮めた。生鮮食品では、タイの大洪水で輸入が減った影響で、エビの価格が上がった。
11年の東京都区部のCPIは生鮮食品を除くベースで前年比0.4%下落。3年連続のマイナスだが、下落幅は10年(1.2%)より縮まった。
11月の小売業販売額2.3%減 機械器具、大幅落ち込み
経済産業省が28日に発表した11月の商業販売統計(速報)によると小売業の販売額は10兆9400億円で、前年同月比2.3%減と2カ月ぶりに減少した。内訳をみると機械器具小売業が51.8%減で、比較可能な1980年1月以来最大の減少率を記録した。昨年12月の家電エコポイント減額前の駆け込み需要の反動で薄型テレビやエアコン、冷蔵庫などが落ち込んだ。
大型小売店の販売額は1兆6373億円で前年同月比1.6%減と4カ月連続の減少。百貨店は冬物衣料の低迷などで2.2%減、スーパーも昨年のエコポイント減額前の駆け込み需要の反動が出て1.2%減少した。
コンビニエンスストアの販売額は10.5%増の7314億円。昨年10月のたばこ増税に伴う大幅値上げで、たばこの買い控えが起きていたことの反動増などが影響した。
続いて、鉱工業生産のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100とした鉱工業生産指数そのもの、下のパネルは輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷指数です。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。
11月の鉱工業生産は、引用した記事にもある通り、タイの洪水に伴う自動車や電機の部品供給不足に起因する一時的な減産と考えられています。ですから、製造工業予測指数では今年12月から来年1月にかけてリバウンドして増産に転ずると見込まれています。私も基本的に生産は楽観視しています。先行き生産の最大のリスクは円高と報道では指摘されていますが、グラフの耐久財出荷が落ち込んでいるのは、後ほど消費者物価や商業統計でも焦点を当てますが、家電エコポイントの反動に伴うテレビの売行き不振が原因です。11月には景気ウォッチャーや消費者態度指数などのマインド指標が軒並みマイナスに転じていますから、やや気がかりなところです。
上のグラフは、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、賃金指数前年同月比を並べています。最後の賃金指数の前年同月比を除いて、季節調整済みの系列です。鉱工業生産と同じように、影をつけた部分は景気後退期です。一時的に生産が弱含んだので、雇用にも影響を及ぼした部分があります。時間外労働時間、すなわち残業の減少、これに伴う賃金の減少です。しかし、労働の価格たる賃金部分を除いて、基本的に、雇用の数量部分は緩やかながら回復を示していると私は受け止めています。ただし、力強さに欠けており、有効求人倍率は上昇したといえ1にはまったく届きませんし、失業率も本格的な低下につながるまでもう少し時間がかかりそうです。目先のところでは今後の本格的な復興需要待ちと私は見ています。もっとも、復興需要で増加する求人と求職の間でミスマッチが生じないかどうか注意が必要です。
物価は昨年10月のたばこの値上げが一巡し、引用した報道にもある通り、家電エコポイントの対象商品だったテレビや冷蔵庫などの家電耐久財が軒並み大きく値崩れを起こしています。マクロレベルではなく、一部の財のレベルですが、明らかに需給ギャップの拡大が生じていると私は受け止めています。エネルギーに加えて食料まで物価上昇に寄与し始めましたが、エネルギーと食料を除くコアコアCPIはマイナス幅を拡大しています。一向にデフレから脱却する兆しすら見えません。なお、上のグラフについて、いつものお断りですが、総務省統計局では、端数をもった物価指数で上昇率や寄与度を計算しているそうですが、その端数をもった指数は発表されていませんから、私は小数点以下1位までの指数で上昇率や寄与度を計算しています。そのため、統計局発表の数字と異同がある可能性があります。キチンと端数をもった指数を発表すべきだと私は考えていますが、エコノミストの間で世論が盛り上がらないようです。
最後に、商業販売統計では、特に小売りで「機械器具」の販売が大きく落ち込んでいるのは報道の通りです。このブログでは取り上げませんが、総務省統計局の家計調査でも同じ傾向が観察されています。ですから、基本的には、家電エコポイントの制度変更に伴う昨年11月の猛烈な駆込み需要の反動ですが、気にかかるのは、先に指摘したマインドの悪化です。順調に回復して来ていた消費者マインドが11月からマイナスを記録するようになり、円高や海外経済が原因と受け止めていますが、先行き改善するかどうかは不透明です。消費は所得とマインドに左右され、年末ボーナスは大手企業で増加するものの、中小企業を含めれば決して楽観できないと私は考えていますので、所得もマインドも消費にブレーキをかける可能性があります。
今年の仕事納めの最後の勤務日に、少し遅くなったこともあり、ごく簡単に今日発表された指標を振り返りました。ここ数か月の間ずっと主張し続けて来たところですが、この先の我が国の景気動向は復興需要の内需と失速した海外経済の綱引きになります。もっとも、海外経済も一様ではなく、債務問題を抱える不安定な欧州とクリスマス商戦が好調だった米国では大きな温度差があります。複雑な方程式を解いて行った先に、来年の日本経済の見通しが見えて来ます。
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お正月まで指折り数えて、あと数日となりましたが、正月の子どもたちの楽しみのひとつは、もちろん、お年玉でしょう。ということで、季節の話題として、先週12月22日に住信SBIネット銀行から「お年玉に関するアンケート」が発表されています。12月13-19日に実施されたアンケート調査結果ですから出来立てほやほやです。もっとも、調査対象は調査実施銀行の顧客だそうですから、何らかのバイアスがあるかもしれません。まず、ヘッドラインとして4点ほど取りまとめられていますのでリポートから引用すると以下の通りです。
お年玉に関する意識調査
・お年玉をあげる額が増える人、昨年の調査結果よりも「5.3%」増加
・お年玉をあげる額が増える理由、「あげる人の年齢が上昇したから」60.8%
・お年玉の支出総額、昨年の調査結果よりも「約4,900円」増加
・小学生に約3,400円、中学生に約5,900円、高校生に約8,100円、大学生・専門学校生等に約11,000円。
以下に、リポートからいくつかグラフを引用したいと思います。まず、お正月にお年玉をあげるかどうかについて、予定ではありますが、2/3の回答者がお年玉をあげる予定のようです。我が家でも子供達にお年玉を出す予定です。
次に、今冬のお年玉は昨冬に比べて増やすかどうかの質問では、約30%が増やすと回答しており、10%足らずの減らすを大きく上回っています。ただし、この増額のカラクリは、最初の引用にある通り、お年玉をあげる対象者が着実に年齢を重ねているから、ということのようです。景気がいいというのが理由ではないのかもしれません。
お年玉をあげる相手は、親戚の子供が約70%、自分の子供が約40%と圧倒的です。当然です。我が家は私が京都から東京に出て来て、関西方面に厚く分布する親戚との付き合いが薄くなりましたし、もっぱら我が家の子供達がお年玉をあげる対象です。
最後に、多くの人が興味を持っているため、詳しいグラフを作ってしまって、かえって見づらい気もしますが、お年玉をあげる対象年代別の額です。大雑把に、小学校低学年に3,000円、小学校高学年に4,000円、中学生に6,000円、高校生に8,000円、大学生に11,000円、といったところです。このあたりが相場なのかもしれません。なお、我が家は女房が決めるのではないかと考えています。
最後に、昨日12月26日、厚生労働省から「平成23年『子ども手当』の使途に関する調査結果」が公表されています。使途別の使用金額(6月の支給期に満額(平成23年2月分から5月分までの4か月分、52,000円)の支給を受けた人(7,611人)の平均金額)をみると、「子どもの教育費等(予定含む)」が17,878円(34.4%)で最も高く、2番目に高いのは、「子どもに限定しない家庭の日常生活費(予定含む)」で8,282円(15.9%)となっています。我が国の社会保障支出は圧倒的に引退世代に流れていると私は考えており、勤労世代、特に子育て世帯への「お年玉」としての子ども手当の重要性を改めて指摘しておきたいと思います。
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3連休中だったのでブログでは取り上げませんでしたが、先週土曜日の12月24日に内閣府から「国民生活に関する世論調査」が発表されています。いろいろと注目点はあるんでしょうが、今夜は、国民の選好体系の歪みの観点から注目したいと思います。というのも、昨年2010年11月22日付けのこのブログのエントリーで、英国エコノミスト誌の日本特集 "A special report on Japan" を取り上げた際に、デフレと関連して、「名目収入が固定されている年金で生活する引退世代にはデフレは歓迎すべき経済現象であることを喝破し、人口の高齢化により日本経済の選好体系が歪みつつある」と指摘しましたが、「国民生活に関する世論調査」でかなり明確にこの点が示されているように感じました。すなわち、貯蓄や投資などで将来に備えるより、毎日の生活を楽しむ姿勢が過去最高を記録しています。まず、この点を明確に報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
「将来より毎日の生活」が過去最高 生活世論調査
内閣府調べ
内閣府が24日発表した「国民生活に関する世論調査」によると、将来と現在の生活についての設問に「毎日の生活を充実させて楽しむ」と回答した割合が前年比3.0ポイント増の61.0%と過去最高となった。「貯蓄や投資など将来に備える」は31.5%と1.0ポイント減少。将来への不安はあるものの、今の生活を充実させる傾向が強まっている。
生活水準が去年と比べて「向上している」と感じる人は5.1%と1.1ポイント増、「低下している」は24.4%と2.3ポイント減少した。一方、今後の生活の見通しは「悪くなっていく」と回答した割合が30.8%と4.1ポイント増えた。「良くなっていく」はほぼ横ばいで8.7%、「同じようなもの」が57.7%と4.7ポイント減った。
東日本大震災後に強く意識するようになったことは「節電に努める」が59.0%と最も多く、「災害に備える」(44.9%)、「家族や親戚とのつながりを大切にする」(40.3%)などが挙がった。
10月13日-11月6日に全国の20歳以上の男女1万人に面接方式で調査し、6212人から回答を得た。
まず、2000年度以降の「貯蓄や投資など将来に備える」と「毎日の生活を充実させて楽しむ」の比率の推移は以下のグラフの通りです。景気動向や時々の流行などにより変動を繰り返していますが、「毎日の生活を楽しむ」の比率は今年度調査が最高となっています。なお、グラフで中ほどが白抜きになっているのは「どちらともいえない」と「わからない」の合計です。
私の解釈する範囲で、2005年度に「将来に備える」比率が高まっているのは、「貯蓄から投資へ」の一連の政策の一環で2004年10月に投資信託の銀行窓口販売が始まった政策変更により投資意欲を刺激したことが大きいのではないかと想像しています。その後、2006年度から昨年度2010年度までジワジワと「将来に備える」比率が高まったのは年金に対する不安感なのかもしれません。そして、今年度2011年度に「将来に備える」比率がそれほど下がったわけではないものの、「毎日を楽しむ」比率が過去最高を記録しています。引用した記事にはありませんが、高齢化に伴って「将来に備える」必要性が低下し、「毎日を楽しむ」性向が高まるのは当然だろうと私は考えています。すなわち、高齢化に伴って国民の選好体系に何らかの歪みを生じている可能性があると私は受け止めています。すでに、双曲割引などの議論で論じ尽くされた点ですが、高齢化とともに日本国民全体のマクロの時間割引率がハネ上がっている可能性があります。もちろん、現在を楽しむか将来に備えるかは、異時点間の最適化行動のひとつの指標となるものであり、地域性・民族性や政策に基づいて、また、いうまでもなく時々で異なる可能性がありますから、断定的な判断は避けたいと思いますが、ongoing で継続して行く国家の将来を考えないとすれば、ある意味で、無責任な態度である可能性を否定できません。
今年度の調査結果に基づいて年齢別に「毎日を楽しむ」比率をプロットしたのが上のグラフです。大雑把に年齢が上昇するに従って「毎日を楽しむ」比率が上がっているのは当然です。ですから、高齢化が進めば「毎日を楽しむ」比率は上昇します。気にかかるのは、20代の「毎日を楽しむ」比率が30代や40代よりも高い点です。昨年や一昨年の20代の「毎日を楽しむ」比率は30代より高かったんですが、40代よりは低くなっており、20代の方が40代よりも「毎日を楽しむ」割合が高くなったのは初めてか、久し振りではないでしょうか。私が確認したところでは、2007-08年度調査では10歳階級別で見る限り、「毎日を楽しむ」比率がもっとも低く出ていたのは20代でした。余りさかのぼっていないので確たることはいえませんが、20代の若者の間に「将来に対する諦め」が出始めているのだとすれば、一部に由々しき事態と受け止める向きがあっても不思議ではありません。
よく、「国民の視点」とか、「国民目線」といった言葉が使われます。しかし、そういった場合の「国民」が何を指しているのかを確認する必要があります。高齢化が急速に進む中、将来の天下国家よりも現在の個人の生活を楽しむだけの視点しか持ち合わせないカギカッコ付きの「国民」からの得票に惑わされずに適確に我が国の将来デザインを描くことが「政治主導」の役割だと期待して政権交代を見つめていたのは私だけなんでしょうか。
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ようやく、昨夜に表参道のイルミネーションの写真を撮り、今日は出かけた帰り際に六本木に立ち寄って、六本木ヒルズけやき坂のイルミネーションの写真を撮って来ました。けやき坂の位置については、我が家のある青山から見れば六本木ヒルズの「向こう側」なんですが、麻布あたりにお住まいの方から見れば「コチラ側」かもしれません。
六本木ヒルズけやき坂のイルミネーションがお得感があると思うのは、けやき坂は大雑把に東西に延びていて、場所によっては東京タワーが望める点です。私もそれを意識して東京タワーをバックに望む位置から写真を撮ってみました。私は東京スカイツリーも好きですが、東京タワーも大好きです。なお、写真でも雰囲気は伝わると思いますが、表参道のイルミネーションはやや黄色っぽく、けやき坂はやや青っぽい色調をしています。クリスマスイブの表参道とクリスマス当日の六本木ヒルズけやき坂です。
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今年も残すところ、どんどんわずかとなって行き、今日は何とか年賀状を完成させました。その昔は一家で1ロット100枚の印刷に出していた時期もありましたが、最近では職場の同僚宛てに年賀状を出すこともなく、親戚と友人だけの狭い範囲で30枚くらいで済ませています。来年向けの年賀状は上の画像を使わせていただきました。フリー素材だということは確認したんですが、アチコチ見て回ったため、どこのサイトかは分からなくなってしまいました。誠に失礼ながら、無断転載に当たってしまうのかもしれません。
親戚や友人向けが減った分というわけでもないんですが、数年前に役所の課長・参事官クラスになってから、仕事でお世話になっている大学の先生や同業者のエコノミストに出す年賀状が年々増えています。自宅用と職場用で使い分けているわけです。こちらは、役所でロゴを作成するのが流行りになっていますから、私も役所のロゴを使っています。住所も自宅ではなく役所の住所と電話番号です。数年前に始めたころは、年賀状を使い分けるくらいに昇進したんだと充実感がありましたが、今ではメンドウなだけだったりします。
それでも、IT機器の進歩で年賀状作成は大いに合理化されました。私はイラスト部分と年だけを差し替えて、毎年、同じような年賀状を作っていたんですが、今年は「あけましておめでとう」はヤメにして、「今年がよい年でありますように」との表現に改め、少しでも震災の影響を行間ににじませるように配慮しました。我が家に届く年賀状はどのように変化しているでしょうか。
いくつかの報道によれば、年賀状が元旦に届くために25日までに投函するよう呼びかけています。私も忘れず明日に投函したいと考えています。
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今年も残すところわずかとなり、教師は昨年で辞めたにもかかわらず、相変わらず、師走で忙しくしています。「貧乏ヒマなし」のことわざが身にしみます。今日はほとんど外出していて、すっかり暗くなった6時前になってようやくワイシャツをクリーニング屋に持って行ったんですが、青山通りをはさんで向かい側のエイベックス・ビルがあざやかに飾りつけられていました。下の写真の通り、エイベックス・ビルのクリスマス・ツリーです。LEDか普通の豆電球か知らないんですが、いつもながらカッコよくって、しかも、その後ろのエイベックス・ビルが、祝日にもかかわらず、すべての窓に灯りがついていたりします。紅白歌合戦までは忙しいんでしょうか。
とてもきれいで、これだけで満足してしまい、表参道のイルミネーションに立ち寄るのを忘れました。六本木ヒルズのイルミネーションとともに、後日のお楽しみということでご容赦ください。
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年末、残すところわずかとなり、経済週刊誌では今週号が来年の予測、来週号の合併号が今年のベスト経済書と定番特集が続きますが、私のこのブログでは反対の順番で、今夜は先行き経済見通しを取り上げたいと思います。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で、先行き見通しについては特に長々とフォローしています。もちろん、いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 2011 | 2012 | 2012 | ヘッドライン |
日本総研 | ▲0.2 | +1.8 | n.a. | 海外経済の減速や円高による輸出の増勢鈍化、企業の海外シフト加速に伴う設備投資の伸び悩み、などから減速感が強まる見込み。もっとも、①中国をはじめとする堅調な新興国経済が輸出を下支え、②復興需要が本格化し、住宅投資や官公需が増加、③雇用・所得環境の緩やかな改善が見込まれるなか、個人消費が徐々に持ち直し、などから、景気の腰折れは回避される見通し。ただし、景気回復ペースが一段と鈍化するリスクも根強い状況。 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.5 | +1.8 | +1.3 | 2011年10-12 月期はほぼゼロ成長にとどまり、2012 年に入ってからも輸出の低迷は続くが、2011 年度第3 次補正予算の執行に伴い復興需要が本格化することから、景気後退は回避されるだろう。国際金融資本市場は依然として不安定な状態が続いており、世界経済は下振れリスクが高い。当面は復興需要による押し上げ要因と海外経済減速による輸出の低迷という下押し要因が綱引きする展開が続くだろう。 |
大和総研 | ▲0.3 | +1.8 | n.a. | 足下の主要経済指標を見ると、2011年の夏場以降、日本経済・世界経済の減速懸念は着実に強まっている。日本経済は、「輸出主導型」の経済構造を有するため、現状は「踊り場」から「二番底」に入る瀬戸際であると考えられる。とりわけ、最大の懸案である「欧州ソブリン危機」の展開次第では、日本経済が「二番底」に陥るリスクを否定し得ない。 |
みずほ総研 | ▲0.4 | +1.9 | n.a. | 2011年度後半から2012年度にかけての日本経済は、復興需要が顕在化することによって、景気回復を維持するとみられる。(中略)しかし、2012年度後半になると、復興需要の伸びも鈍化してくることが予想される。年度ベースで復興関連支出が最大となるのは2012年度とみられ、事業の進捗ペースにもよるが2012年度半ばには復興関連支出はピークに達する可能性が高い。(中略)最大のリスク・ファクターは海外経済の下振れと円高の進行であろう。 |
三菱総研 | ▲0.5 | +1.8 | n.a. | 先行きの実質GDP成長率は、海外経済の減速などによる輸出の停滞を背景に、10-12月期は前期比年率+0.1%と横ばいでの推移を見込む。その後は、世界的な景気減速による輸出の減速、円高持続による企業収益への影響などのマイナス要因と、国内の復興需要の顕現化が綱引きする形で、12年1-3月期は同+1.2%、4-6月期は同+1.8%を予想する。 |
第一生命経済研 | ▲0.7 | +1.4 | +1.2 | 月次統計で見れば7月以降回復が滞っており、既に景気は足踏み状態にある。足元で輸出が下振れていることに加え、テレビ販売の減少等から個人消費が弱い動きになっていることもあり、10-12 月期の成長率はマイナスに転じると予想している(前期比年率▲0.5%を予想)。海外景気は減速が続き、輸出を下押しする。欧州の債務問題についても、極めて不透明感の強い状況が持続するとみられ、金融市場は不安定な状態にとどまると予想される。IT部門の不振に加え、円高による輸出下押し圧力が強まることもマイナス要因になり、輸出は低迷が見込まれる。また、景気下支えが期待されていた設備投資についても、企業の慎重姿勢が足元で強まりつつあることから、弱含む可能性がある。景気は当面停滞感を強め、踊り場的状況に陥る可能性が高いだろう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.4 | +1.8 | n.a. | 2012年度は、官公需中心に復興需要が高まることに加えて、民需、外需とも増加し、景気の回復力が徐々に盛り返してくると期待される。官公需は下期になると効果が一巡してくるが、海外景気の持ち直しを受けて外需寄与度が小幅ながらプラスに転じてくる。個人消費は雇用・所得状況が改善することから緩やかな増加を続け、企業業績の改善を背景に設備投資は増加基調が維持される。 |
みずほ証券リサーチ&コンサルティング | ▲0.3 | +2.4 | n.a. | 12年度にかけての日本経済に対する見方については、概ね前回予測時点の判断を維持している。すなわち、①官民による復旧・復興需要の顕在化、②海外経済の拡大を背景とする輸出の増加―を支えに、予測期間中、日本経済は緩やかながら回復に向けた動きが継続するとみている。ただし、欧州債務危機の広がりなどにより、外需に不安を抱えるなか、民間需要の回復力に乏しいため、外部ショックに対して脆弱な面を残す点には注意が必要と考えている。 |
伊藤忠商事 | ▲0.5 | +1.9 | +1.7 | 2012年前半は海外経済の低迷により輸出は低調な状態が続くものの、復興投資による押し上げが勝り、プラス成長を確保すると考えられる。2012年後半は復興投資の勢いが鈍るものの、逆に輸出が持ち直すため、成長ペースは大きく変わらない見込みである。(中略)最大のリスク要因は、欧州ソブリン問題の行方である。欧州各国は一定の対応策を取り纏めたが、先行きは極めて不透明と言わざるを得ない。ソブリン問題が、欧州で封じ込められなければ、日本を含め先進国全てが景気後退に陥るリスクがある。 |
農林中金総研 | ▲0.6 | +1.7 | +1.9 | すでに大震災からの復旧といったフェーズはほぼ終了しており、今後は、牽引役として期待されている輸出の裏付けとなる世界経済情勢、さらには震災復興に向けた動きが、国内経済の趨勢を決めると考えるのは極めて妥当であろう。 |
帝国データバンク | ▲0.2 | +2.2 | n.a. | 2012 年度の日本経済は、外需が再びプラス寄与に転じることに加えて、財政支出にともなう公的需要の拡大のほか、震災復興の本格化などで設備投資が成長に寄与する。また、個人消費も再び拡大傾向を示すとみられるなど、日本経済は再び成長過程に向かうと見込まれる。 |
上のテーブルを見れば明らかなんですが、ほぼ各機関とも本年度2011年度がマイナス成長、来年度2012年度で+2%近いプラス成長に回帰し、いくつかの機関では2013年度も順調にプラス成長を維持する、と見込まれています。本日午後の臨時閣議において政府経済見通しが決定され、来年度成長率は+2.2%と見込まれていますから、帝国データバンクを除く他機関はやや政府よりも慎重な見通しとなっています。ただし、この経済見通しに関しては、上振れリスクは極めて少なく、下振れリスクがいっぱいある、と私は考えています。主として対外経済や貿易などに関するリスクなんですが、何といっても、欧州債務危機の深刻化と円高です。基本的に、米国はクリスマス商戦に代表されるように私は楽観していますが、何らかの形で欧州の債務危機が米国や我が国に伝染しないとも限りません。このあたりは、私の貧困なる想像力をはるかに超えていますので、確実なことはいえませんが、直観的に、来年2-3月に集中している返済・借換を乗り切れば、何とか欧州は持ちこたえそうな気もします。問題は円高の方かもしれません。
「来年のことをいえば鬼が笑う」といわれますが、先行きを語らねばエコノミストとは見なされません。しかし、ここまでシンクタンクなどの意見が一致しているわけですから、「来年度は復興需要もあってプラス成長」という大きな方向としては、エコノミストの間で緩やかなコンセンサスがあります。しかし、7-9月期1次QEの段階では今年度プラス成長と見込んでいた機関も少なくありませんでしたから、急激に下振れリスクが顕在化する可能性も頭に入れておく必要があります。
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本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。貿易収支は▲6847億円の赤字となり、2か月連続の貿易赤字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
輸出2カ月連続の減少 11月貿易統計、自動車など需要減が直撃
財務省が21日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比4.5%減の5兆1977億円だった。マイナスは2カ月連続。アジア、欧州連合(EU)向け輸出の減速感が強まった。欧州債務危機に伴い半導体や自動車などの需要が世界的に減少した。タイ洪水による現地工場の生産停止で部品輸出が減った。
11月の輸出額は季節調整済みの前月比でも2.6%減となった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6847億円の赤字。赤字は2カ月連続で、11月単月では過去最大の赤字額となった。輸出の落ち込みに加え、液化天然ガス(LNG)や原粗油などエネルギー製品価格の上昇で輸入が増加した。
今年は東日本大震災の影響もあり、通年で貿易赤字となる公算が大きくなった。財務省は輸出の減少について「輸出が減り輸入が増える傾向はしばらく続く。欧州債務問題、円高、タイ洪水に伴う世界経済、特にアジア経済の動向を注視していく」(関税局)とした。
輸出を地域別に見ると、米国向けは2.0%増と2カ月ぶりにプラスとなった。だがアジア向けは8.0%減、EU向けも4.6%減と大きく落ち込んだ。アジアではタイ洪水の影響が大きく、タイ向け輸出が24.0%減と低迷。半導体電子部品がおよそ8割減、自動車関連部品も2割減となった。中国向けも合成樹脂や鉄鋼が振るわず7.9%減だった。
品目別にみると、世界的なIT(情報技術)市況の低迷で大幅に需要が減少し、電気機器は10.7%減と苦戦。半導体の電子部品(15.1%減)やデジタルカメラなどの映像機器(48.5%減)の不振が際立つ。自動車は0.6%減。低価格の小型車が主力となった影響もあるが、欧州向けなどが振るわなかった。
まず、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしているんですが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は規制つ調整した系列となっています。季節調整済みの系列を見ると、震災のあった3月を境に今年4月からずっと基調として貿易赤字が続いていることが読み取れます。
貿易赤字は季節調整していない原系列でも2か月連続で、季節調整した基調を見るとこの10-11月は特に大きな赤字を記録しています。今年2011年は第2次石油危機後の1980年以来の通年の貿易赤字に陥るのはほぼ確実と私は受け止めています。そして、この貿易赤字の原因は輸出の足踏みと輸入の増加の両面から生じています。もちろん、円高も大きな要因として作用していることは明らかです。
まず、輸出についてもう少し詳しく見ると上のグラフの通りです。上のパネルから、すべて前年同月比で、金額ベースの輸出額の伸び率を数量と価格の寄与度で分解したグラフ、真ん中は輸出の前年同月比伸び率をアジア、北米、EU、その他の地域別の寄与度に分解したグラフ、一番下が輸出数量とOECD先行指数の前年同月比伸び率をプロットしています。ここ2か月の基調的な貿易赤字は輸出の減少、特に数量の減少に起因しており、地域としてはアジアと欧州の寄与が大きくなっています。また、グラフはありませんが、デジカメなどの映像機器の輸出が大きく減少しているのは、IT市況とともにタイの洪水に起因しているんではないかと私は想像しています。一番下のグラフから、我が国の輸出の減少は世界的な需要の減退に基づくことが読み取れます。特に、欧州発の債務危機に伴う需要の失速が大きいことはいうまでもありません。
しかし、欧州の景気も持直しの兆しが見えます。上のグラフはIfo研究所の企業景況感指数、すなわち、我が国の日銀短観に当たる景況感をプロットしています。10月を底にゆっくりと回復の兆しが見え始めています。Ifo企業景況感指数は広く認められたドイツ経済の先行指標ですから期待が持てるかもしれません。もっとも、欧州で債務危機の問題を抱えているのはドイツではなく、南欧のいわゆるPIGSですから、欧州で重きを占めるというものの、ドイツの持直しがどこまでユーロ圏に広まるかは不透明です。また、グラフで取り上げることはしませんが、今シーズンの米国のクリスマス商戦はかなり好調です。まだ疑問を持っているエコノミストも少なくありませんが、米国については我が国の輸出も底堅く推移しており、先行きの世界需要をけん引する可能性があると期待されます。しかしながら、円高とともに日本経済の最大のリスクは欧州にあることは変わりありません。
最後に、輸入の方は何といっても原発停止に伴う火力発電所の負荷増大に起因する燃料輸入の増加が輸入増の大きな要因となっています。数量の増加とともに、一時弱含んでいたWTIが再びバレル100ドルに近づくなど、価格面でも上昇の気配を見せています。鉱物性燃料の中でも液化天然ガス(LNG)の比重が高まっていて、月次ベースの既往最高額に達しつつあります。もっとも、細かな増減は気温をはじめとする天候要因に左右される場合もあります。我が国の場合、例えば、外貨準備の不足から輸入が途絶するケースなどは想定していませんから、基本的に、私は必要な財貨やサービスは輸入すれば足りると楽観視していますが、貿易赤字の額を膨らませる可能性は排除できません。
いずれにせよ、高齢化の進展を引合いに出すまでもなく、我が国が貿易黒字をこの先も長期に渡って維持することは期待できるかどうかは疑わしいと私は考えています。もちろん、投資収益がありますから、経常収支の赤字化はかなり先の長い話だと考えていますが、高齢化がさらに進めば貯蓄率が今以上に低下しますので、経常収支が永遠に黒字を続けることはできないのは明らかです。短期ないし中期の景気循環を超えた長期の日本経済を考える場合には、単に我が国の需要の漏出という実物面だけでなく、金融や財政収支に及ぼす影響まで視野に含める必要が出て来ます。
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今年もいろいろと経済書が出版されました。来週号あたりで各経済週刊誌でも今年のベスト経済書の特集が組まれることと思います。長崎大学の教授をしていたころには、私にもアンケートが回って来たりしたんですが、今では誰も聞いてくれませんので、このブログで自説を展開したいと思います。特に、私の勝手な方針で、このブログには小説の読書感想文は書いても、経済書のレビューは書かないことにしていますので、この年末に今年の経済書のレビューを一挙に取り上げたいと思います。もっとも、いちいち取り上げない理由のひとつが、膨大な数に上るという点にありますから、特に、私の印象に残ったものだけに限りたいと思います。もちろん、私が読み逃した本もいっぱいあると思います。悪しからず。
ということで、もったいぶらずに明らかにすると、今年一番の感銘を受けたのがカルメン・ラインハートとケネス・ロゴフの共著になる『国家は破綻する』です。定評ある経済学の学術誌である American Economic Review に掲載された一連の論文を基に、かなり長期にわたるデータを用いて定量的な分析を広範に試みています。テーマは表題から明らかですが、政府の債務問題です。数年前に富田俊基『国債の歴史』(東洋経済)という、これも立派な本が出版されましたが、同様の問題を扱っています。欧州だけではなく、日本でも政府債務問題は大きな転機を迎えつつあり、エコノミストとして読んでおくべき本だという気がします。なお、同じ問題をレギュラシオン学派の観点から分析したロベール・ボワイエ『金融資本主義の崩壊』(藤原書店)も読みましたが、オーソドックスな分析では『国家は破綻する』の方が1枚上だという気がします。また、日本に焦点を絞った本では土屋剛俊・森田長太郎『日本のソブリンリスク』(東洋経済)も論理が明確に展開されていて、資産運用を担当している人以外でも興味深く読めると思います。さらに、必ずしも政府債務問題だけでなく、金融政策を広く論じた出版物では、日銀金融理論のオーソリティが書いた翁邦雄『ポストマネタリズムの金融政策』(日本経済新聞)もなかなかの出来だった気がします。もっとも、現在の日銀総裁の手になる白川方明『現代の金融政策』(日本経済新聞)に比べればやや小粒感が否めません。また、話題の欧州統一通貨であるユーロに焦点を当てたデイヴィッド・マーシュ『ユーロ』(一灯舎)も読みましたが、ユーロが成立するまでの歴史を人物を中心に取りまとめた書物であり、昨年出版された田中素香『ユーロ』(岩波新書)の方が現在の通貨問題を理解するのにずっと参考になります。
必ずしも私の専門ではないんですが、壮大なテーマを扱ったハーバート・ギンタス『ゲーム理論による社会科学の統合』(NTT出版)も印象に残りました。決して一般向きの本ではありませんし、日本語タイトルは少し過大な表現で、英語ではホントは「社会科学」ではなく「経験科学の統合」なんですが、ゲーム理論を専門にしているとはいえない私でも理解が進むように初歩から丁寧な解説がなされています。「最後通牒ゲーム」がゲーム理論の世界を一変させたことは私の記憶にすら残っていますし、比較的簡単に実験できるので実験経済学に道を開いたともいえますから、ゲーム理論の世界では大きな転機となったことがサラリと触れられています。また、今年最大の話題の書のひとつであり、また、今年4月7日付けのエントリーでも取り上げた高野和明『ジェノサイド』のような普通の小説でも神の戦略として「しっぺ返し戦略」が触れられるくらいまで、ゲーム理論は広く社会一般に応用されるに至りました。1944年のフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの『ゲームの理論と経済行動』から70年近くを経て、さらにゲーム理論を身近に感じる最近ではエコノミストとして、この本くらいの基礎知識は身につけておきたいところです。また、我が国のゲーム理論の第一人者のひとりが書いた松井彰彦『不自由な経済』(日本経済新聞)もゲーム理論に限らず、経済社会一般を論じて参考になります。ただし、自由な経済から規制を重視する昨今の論調にやや偏っている印象は否めません。
少し毛色の変わったところでは、デレック・ボック『幸福の研究』(東洋経済)が上げられます。今週号の「ダイヤモンド」誌の書評欄にも取り上げられています。この私のブログでも最近の12月5日付けのエントリーで内閣府の「幸福度に関する研究会報告」を取り上げましたが、エコノミストの間でもGDPや成長が唯一の目標ではないというコンセンサスは昔からあるものの、国民の幸福という観点は希薄で、ブータン国王夫妻の来日を機に私も少し勉強してみました。「第7章 苦痛を軽減する」のようにエコノミストにはサッパリ理解できない部分がある一方で、「第5章 不平等にどう対処すべきか」のようにダイレクトにかかわる部分もあり、また、「第8章 結婚と家族」のように専門外ながら興味ある部分もあります。すでに、幸福度を定量的に把握することは今までの研究成果として蓄積されて来ており、例えば、12月5日付けのエントリーでも紹介しましたが、幸福度は年齢とともにU字型を描くとか、学術的な研究はすでにかなり進んでいます。しかし、私の職場であるお役所ではまだまだ頭が固いというか、「幸福度は定量的に計測できるか?」とか、「政府が幸福度を統計として国民に明らかにすべきか?」といった周回遅れの議論がなされているのも事実です。ひょっとしたら、何の勉強もしていない旧態依然たるお役人の議論と見る向きもありそうな気がしますので、専門的な文献を読みこなすには至らないまでも、概括的な研究成果の勉強はエコノミストとして不可欠です。
上の画像だけ意図的に小さくしてありますが、エコノミストとして、というよりも、定義として国家公務員である官庁エコノミストとして興味深かったのは上の2冊、すなわち、上神貴佳+堤英敬『民主党の組織と政策』(東洋経済)と読売新聞政治部『亡国の宰相』(新潮社)です。経済書ではないような気もします。前者の『民主党の組織と政策』はフォーマルな定量分析もまじえて、政権交代までの民主党の組織と政策を分析しています。もっとも、政策よりも圧倒的なボリュームで組織の方に焦点が当てられています。後者の『亡国の宰相』では読売新聞から見た菅前総理の負の業績が、これでもかとばかりに取り上げられています。いくつかの点では私も同感でした。最後に、画像は上げませんが、新書では戸堂康之『日本経済の底力』(中公新書)、八代尚宏『新自由主義の復権』(中公新書)、橘木俊詔、浜矩子『成熟ニッポン、もう経済成長はいらない』(朝日新書)などが面白かった記憶が残っています。どうしても、私は新書には目が向きませんので悪しからず。
今夜のエントリーで取り上げた本は、『国家は破綻する』を購入したのを別にして、すべて図書館で借りました。ですから、手元にない本も多く、やや記憶が混乱している部分もあるかもしれません。そして、何よりも、ここで取り上げた以上のボリュームの本をムダに読んだ気がします。特に、読み始めて半分も行かずにギブアップした新書は数冊に上りました。
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正午過ぎの北朝鮮金正日総書記死亡のニュースから、韓国ウォンが急落して、日本でも東証の日経平均株価が反落しており、いくつかの政府部門ではバタバタの対応が続いているようです。例えば、月例経済報告閣僚会議は延期されました。他方、私の課は何の影響もありません。政府の中枢部局に含まれていないことの証しなのかもしれません。といった世間の話題とは何の関係もなく、今夜は読書感想文です。
沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉社) を読みました。純粋なホラーでもなく、一般的なミステリでもなく、何やら不思議なサスペンス小説をものにする作者ですが、この本もそんなカンジです。まず、出版社のサイトから本の紹介を引用すると以下の通りです。
本の紹介
亮介が実家で偶然見つけた「ユリゴコロ」と名付けられたノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。創作なのか、あるいは事実に基づく手記なのか。そして書いたのは誰なのか。謎のノートは亮介の人生を一変させる驚愕の事実を孕んでいた。圧倒的な筆力に身も心も絡めとられてしまう究極の恋愛ミステリー!
私のこのブログでこの作者を取り上げるのは初めてなんですが、短編集を別にすれば、一応、私はこの作者のかなりの作品を読んでいます。すなわち、デビュー作の『9月が永遠に続けば』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『猫鳴り』、『アミダサマ』といった中編ないし長編の作品です。短編集の『痺れる』だけはまだ読んでいません。ですから、ほぼ私は沼田まほかるファンと言っていいと思うんですが、なぜか、このブログで取り上げるのは初めてになってしまいました。
この作品『ユリゴコロ』は、直感的に、1986年の第96回直木賞を受賞した逢坂剛さんの『カディスの赤い星』を思い起こさせました。本の紹介にあるように「殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文」の部分はフォントを変えてあり、この部分を中心に読めばホラー小説ともいえますし、タイトルになっている「ユリゴコロ」と名付けられたノートの作者を推理すると考えればミステリともいえます。そして、このノートの作者は最後に明らかにされます。最後まで緊張感が途切れることなく、一気に読ませてくれます。そして、ラストでびっくりするような事実が明らかにされます。このあたりは『9月が永遠に続けば』と似ている気がします。ホラー小説としては『アミダサマ』に通じる部分もありますが、『アミダサマ』では住職の母親が段々とおかしくなって行くのに対して、この作品では「ユリゴコロ」と名付けられたノートの作者は最後の殺人の後には極めてノーマルになります。そのあたりは大きく違います。
いずれにせよ、短編集『痺れる』は読んでいないながら、この作者の作品はかなり水準が高く、作品数は少ないとはいえ、ハズレの作品は目につきません。それから、私はこの作者の作品はすべて図書館で借りて読みました。申し訳ないながら、作者の印税には貢献していません。待ち行列は長そうですが、ほとんどの公立図書館に所蔵していることと思います。他の作品とともに多くの方が手に取って読むことを願っています。
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今日は朝から出かけて、日本橋三越で開催されている2011年報道写真展を見に行きました。私は自転車で日本橋まで行って、南側の新館から7階に上り、北側の本館すぐの催し物会場で開催されていました。第1会場と第2会場に分かれて、第1会場はいろんな報道写真をテーマ別に並べてあり、第2会場では今年11月までの出来事を報道写真とともに振り返ることが出来るようになっていました。特別展示として、毎年あるんですが、皇室関係の報道写真や今年に亡くなった方の生前の写真なども展示されていました。
今年は何といっても3月11日の震災の報道写真が大きな部分を占めていました。津波が街を襲うリアルタイムの写真や震災後の人々の表情など、動画とは一味違う写真の魅力がいかんなく発揮されていた気がします。さすがにプロの写真は出来が違うと感心させられました。スポーツでは上の画像にある通り、なでしこジャパンのワールドカップ制覇、久し振りの日本人大関に昇進した琴奨菊関の伝達直後の破顔一笑の場面、早稲田大学から日本ハムに入団した斉藤投手の初勝利の晴やかな笑顔など、盛りだくさんでした。私が好きなだけなんですが、東京スカイツリーの写真も見るべきものがありました。雲海から顔を出したスカイツリーの頂上部の少し先には東京タワーが見渡せるという、シロートでは絶対に無理な高度のあるポジションからの写真があり、ため息が出てしまいました。
写真が素晴らしいのはいうまでもありませんが、今年1年を振り返る意味でもオススメです。昨日の16日金曜日に始まって、25日の日曜日まで開催されており、もちろん、入場無料です。
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今週半ばに、Time 誌で年末恒例となっている Person of the Year は The Protester と発表されました。いうまでもありませんが、最新号のカバーストーリーとなっており、前世紀最後の10年の共産主義政権の崩壊、あるいは、崩壊はしませんでしたが、中国の天安門事件などから説き起こし、いうまでもなく、エジプトやリビアをはじめとする今年の「アラブの春」、ウォール・ストリートを占拠した格差に対する抗議活動などが象徴されています。何となく、最初に掲げたカバー写真は前者の「アラブの春」のイメージに見えます。もっとも、この Person of the Year の候補者に The 1% も入っていたりします。
来年はどの顔が表紙を飾るんでしょうか?
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本日、12月調査の日銀短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から▲6ポイントの大きな悪化の結果、▲4となりました。欧州債務危機に起因する海外経済の失速に加え、円高の打撃による輸出産業の景況感が悪化し、製造業を中心に企業マインドの冷え込みにつながったと考えています。ただし、大企業非製造業の業況判断DIは+4と、9月調査より+3ポイント改善しました。内需中心に上向いているのかもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
景況感、半年ぶりマイナス 日銀12月短観
日銀が15日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス4となり、前回9月調査から6ポイント悪化した。マイナスは半年ぶり。欧州債務危機による世界景気の減速懸念や円高の長期化、タイの洪水の影響で輸出企業を中心に景況感が落ち込んだ。先行きDIもマイナス5と慎重にみる企業が多い。
企業の業況判断DIは景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。大企業製造業のDIは9月調査でプラス2と、東日本大震災後の落ち込みからいったん浮上したが、欧州危機や円高の影響で持ち直し基調に水を差された。
大企業製造業のDIは全16業種のうち10業種で悪化。特に電気機械は、海外景気の減速による世界的なIT(情報技術)関連製品の在庫調整の影響で、16ポイント悪化のマイナス21と落ち込んだ。非鉄金属や石油・石炭製品も大幅に悪化。ただ自動車は回復基調が続き、7ポイント上昇のプラス20だった。
一方、大企業非製造業のDIはプラス4と前回比3ポイント上昇した。全12業種のうち10業種で改善。震災で打撃を受けた消費や旅行などが徐々に回復しているのを受け、宿泊・飲食サービスなどが持ち直した。今年度補正予算の執行による復興需要もあって、建設は3ポイント上昇した。
3カ月先の先行きDIでは、全産業で慎重な見方が多い。大企業製造業でマイナス5と小幅悪化を見込むほか、大企業非製造業は4ポイント悪化し、DIがゼロになる。
中小企業のDIは今回、製造業で3ポイント上昇してマイナス8まで持ち直したが、先行きはマイナス17と再び悪化を見込む。復興需要が支えとなる大企業の非製造業以外は、3カ月先もDIは軒並みマイナス圏内にとどまる。
企業心理の重荷になっているのは、欧州危機による世界景気の減速懸念と、1ドル=78円近辺で長期化する円高だ。事業計画の前提となる2011年度の想定為替レートは大企業製造業で1ドル=79円02銭と、調査開始以来、最高の円高水準となった。年度上期の想定は80円26銭で、下期は77円90銭。円高がさらに長引けば、競争力の低下で輸出が落ち込み、生産に影響が広がるおそれがある。
こうした懸念は11年度の収益計画にも表れた。大企業製造業の経常利益は前年度比6.7%減と、前回の0.3%減から大幅に下方修正。11年度の設備投資計画も大企業全産業で前年度比1.4%増と、前回から1.6ポイントの下方修正となった。
まず、ヘッドラインの業況判断DIについて、製造業と非製造業の産業別かつ規模別のグラフは以下の通りです。見れば分かると思いますが、上のパネルが製造業の規模別業況判断DI、下が非製造業の規模別です。折れ線グラフの色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期です。
この12月調査の短観で意外だったのは、非製造業の足元12月の業況判断DIが9月調査から改善したことではないでしょうか。しかも、大企業非製造業だけでなく、中堅企業や中小企業でも非製造業は+4から+5ポイントの幅でそれぞれ企業マインドの改善を示しています。非製造業は建設、不動産などの12業種で構成されていますが、大企業・中堅企業・中小企業のそれぞれの規模別で10業種以上が9月調査から12月調査で改善しています。7-9月期の2次QEの発表時に復興需要の遅れを指摘しましたが、さすがにこの時期に至って、足元で復興需要が内需を押し上げていることが統計的に示された可能性が高いと私は受け止めています。もっとも、先行きについては大企業非製造業でも▲4の落ち込みが見込まれています。非製造業の足元マインドが底堅いこととともに、製造業・非製造業とも先行きが悪化することが特徴です。
いつも気になっている遅行指標の要素需要に関する判断DI、すなわち、設備と雇用に関する判断DIと設備投資計画のグラフは上の通りです。一番上のパネルが設備判断DI、真ん中のパネルが雇用判断DIで、どちらもプラスが過剰感、マイナスが不足感をそれぞれ示しています。一番下のパネルは調査時期別の設備投資計画の推移です。設備については過剰感の払拭にブレーキがかかっています。雇用についてはかなり過剰感が薄れて、特に、中堅・中小企業については過剰感は+2から+1とほぼなくなりつつあります。深刻なのは設備の方で、収益計画が大企業製造業で前年度比▲6.7%減、大企業非製造業で▲10.6%減と、いずれも9月調査から大きく下方に見直されたこともあり、2011年度の設備投資計画はかろうじて前年度比でプラスを維持したものの、9月調査から大幅に下方修正されました。
6月調査と12月調査で実施される新卒採用計画の最近の推移は上のグラフの通りです。リーマン・ショックのあおりを受けて2010年度が大幅に減少した後、今年初の2011年度にはプラスに転じ、2012年度は大企業と中堅企業でプラスを維持し、中小企業ではマイナスが見込まれています。雇用については各企業とも、設備よりは先行きも明るい見通しが立てられているのかもしれません。
ヘッドラインとなる大企業製造業の先行きに関して、3月の先行きで業種別に最大の落ち込みを示しているのは電気機械の▲13ポイントです。しかし、自動車は足元の12月調査で+7ポイントの改善を記録して+20となった後、3月にかけてもさらにマインドが改善すると見込まれています。重量税などの優遇策はホントに必要なんでしょうか?
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明日15日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIを取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回は、来年以降の先行きに関する見通しを可能な範囲で取りました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、富士通総研以外は pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、富士通総研は html 形式のリポートとなっています。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
9月調査先行き | +4 +1 <+3.0> | n.a. |
日本総研 | ▲2 +1 <+2.5> | 先行き見通しDI(大企業)は、復興に向けた動きにより、景気の押し上げが見込まれるものの、海外経済の減速や円高が引き続き企業活動の重石となり、製造業で▲3%ポイント、非製造業で0%ポイントと、わずかに低下すると予想。 |
みずほ総研 | 0 +2 <+3.5> | 今回の短観は、製造業の業況悪化など日銀の景気認識よりもやや厳しい結果が予想される。ただし、非製造業は改善が見込まれるほか、製造業の業況悪化幅も小幅にとどまるとみられることから、一段の金融緩和を促すには至らないだろう。 |
ニッセイ基礎研 | 0 0 <+2.1> | 大企業製造業の足元の業況判断D.I.が再び下落に転じ、欧州財政危機の緊迫化や円高の影響などで企業の景況感改善が途切れた姿が明らかになるだろう。先行きについても不安要素が多く、さらなる悪化が予想される。 |
第一生命経済研 | ▲5 +1 <+2.1> | 欧州不安や円高という現在も継続するリスク要因がある。今後、ギリシャから欧州本体に波及した危機が予想以上に大きくなれば、景気後退に向かう可能性は否定できない。 |
三菱総研 | ▲2 +1 <n.a.> | 先行きについては、内需面では3次補正予算成立による復興需要の本格化が予想されうこともあり底堅い推移が見込まれるが、外需面では、債務問題解決の糸口がみえない欧州で景気後退確率が高まっているほか、中国やブラジルなど新興億でも景気減速リスクが強まっている。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲1 +1 <+1.9> | 世界経済の減速や円相場の高止まりが輸出の伸びを抑制し、企業収益を圧迫していることが背景にある。化学や鉄鋼、電気機械や生産用機械など、自動車を除く主要業種で景況感が悪化するだろう。先行きについてはさらに悪化が見込まれ、今後の景気に対しても企業が慎重な見方をしていることが示されるだろう。欧州の財政金融危機が世界経済の急減速を招くリスクが高まっていることや円相場の高止まりなどが、企業マインドを悪化させる要因になるとみられる。 |
みずほ証券リサーチ&コンサルティング | ▲1 0 <+2.0> | 震災後のサプライチェーンの復旧に伴う回復の動きが概ね一巡するなか、海外経済の減速や円高の進行などもあり、生産の回復ペースが鈍化してきていること、欧州債務問題の深刻化が先行きの不透明感を高めていることなどから、製造業を中心に業況判断DIは前回調査から悪化し、企業マインドが慎重化していることを示す結果になると想定した。 |
伊藤忠商事 | 0 +1 <+2.2> | 世界経済の減速や円高に加え、先行きの不透明感の高まりにより、業況判断は、製造業で悪化が見込まれる。一方、復興需要などの恩恵により、非製造業は悪化を何とか回避するだろう。また、不透明感の高まりによる投資見送りで、設備投資計画は下方修正を予想。 |
富士通総研 | ▲2 0 <+2.4> | 輸出環境の悪化により、製造業の景況感はやや悪化すると見込まれる。非製造業については、サービス消費が持ち直しているなどの好材料もあるが、先行き不透明感からやはり小幅悪化すると考えられる。 |
見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2011年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。日銀短観では大企業製造業の業況判断DIがヘッドラインとなっていることはよく知られた通りです。
ということで、12月調査の日銀短観では企業マインドの悪化が示されるという予想が大勢を占めています。さらに、先行きについても悪化か、せいぜい横ばいが続くと見込まれています。上の表の調査機関のうち、先行きが上昇に転ずると見込んでいるのは第一生命経済研だけだったりします。設備投資計画についても下方修正されるものの、プラスを維持するとの見方が大勢を占めます。
この企業マインド悪化の要因は、すでに何度も繰り返しましたが、第1に、世界経済の失速と円高による輸出の停滞に起因する需要面の影響です。ですから、非製造業よりも製造業の方がマインド悪化が強く出る形になっています。第2に、かなり収束しつつあるとはいえ、タイ洪水に伴う供給制約です。これも製造業の方により大きな影響を及ぼすと考えられます。他方、まだ舞台に上っていないのが復興需要です。かねてより、マイナスの海外要因とプラスの国内復興要因の綱引きが景気動向を決める、と私は考えていましたが、現時点で、前者の方が圧倒的で、後者の復興需要は姿が見えません。内閣が交代すれば復興が進むと私は見込んでいたんですが、TPPや消費税増税などの議論は進んでいるものの、震災復興のプライオリティが高まらないのは不思議です。
いずれにせよ、明日の日銀短観では企業マインドの悪化が明確にされ、日銀が想定する景気パスとのギャップが明らかになると私は考えています。それでも、世界的に見てめずらしいくらいの無策の中央銀行の姿勢が続くんでしょうか?
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昨日、漢字検定協会から今年の漢字は「絆」に決定と発表されました。いつもの通り、清水寺で森清範貫主が特大の和紙に揮毫していました。2位は「災」、3位は「震」だったそうです。「今年の漢字」は阪神大震災が起きた1995年の「震」に始まり、今年で第17回目になります。テーブルにまとめると以下の通りです。
年 | 漢字 | 理由 |
2011 | 絆 | 日本国内では、東日本大震災や台風による大雨被害、海外では、ニュージーランド地震、タイ洪水などが発生。大規模な災害の経験から家族や仲間など身近でかけがえのない人との「絆」をあらためて知る。 |
2010 | 暑 | 夏の全国の平均気温が、観測史上最高を記録して、熱中症にかかる人が続出。また、チリ鉱山事故で熱い地中から作業員全員が無事に生還。 |
2009 | 新 | さまざまな「新しいこと」に期待し、恐怖を感じ、希望を抱いた1年。世の中が新たな一歩を踏み出した今、新しい時代に期待したい。 |
2008 | 変 | 日米の政界に起こった変化や世界的な金融情勢の変動、食の安全性に対する意識の変化、物価の上昇による生活の変化、世界的規模の気候異変などさまざまな変化を感じた年。 |
2007 | 偽 | 身近な食品から政界、スポーツ選手にまで、次々と「偽」が 発覚して、何を信じたら良いのか、わからなくなった一年。 |
2006 | 命 | 悠仁様のご誕生に日本中が祝福ムードに包まれた一方、いじめによる子どもの自殺、虐待、飲酒運転事故など、痛ましい事件が多発。ひとつしかない命の重み、大切さを痛感した年。 |
2005 | 愛 | 紀宮様のご成婚、「愛・地球博」の開催、各界で「アイちゃん」の愛称の女性が大活躍。残忍な少年犯罪など愛の足りない事件が多発したこと。「愛」の必要性と「愛」欠乏を実感した年。 |
2004 | 災 | 台風、地震、豪雨、猛暑などの相次ぐ天災。イラクでの人質殺害や子供の殺人事件、美浜原発の蒸気噴出事故、自動車のリコール隠しなど、目を覆うような人災が多発。 「災い転じて福となす」との思いも込めて。 |
2003 | 虎 | 阪神タイガースの18年ぶりのリーグ優勝、衆議院選挙へのマニフェスト初導入で政治家たちが声高に吠えたこと、「虎の尾をふむ」ようなイラク派遣問題など。 |
2002 | 帰 | 北朝鮮に拉致された方の帰国、日本経済がバブル以前の水準に戻ったこと、昔の歌や童謡のリバイバル大ヒットなど「原点回帰」の年。 |
2001 | 戦 | 米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変して、対テロ戦争、炭そ菌との戦い、世界的な不況との戦いなど。 |
2000 | 金 | シドニーオリンピックでの金メダル。南北朝鮮統一に向けた“金・金”首脳会談の実現。新500円硬貨、2000円札の登場など。 |
1999 | 末 | 世紀末、1000年代の末。東海村の臨界事故や警察の不祥事など信じられない事件が続出して、「世も末」と実感。来年には「末広がり」を期待。 |
1998 | 毒 | 和歌山のカレー毒物混入事件や、ダイオキシンや環境ホルモンなどが社会問題に。 |
1997 | 倒 | 山一證券など大型倒産の続出や、サッカー日本代表が並いる強豪を倒してワールドカップ初出場決定。 |
1996 | 食 | O-157 食中毒事件や狂牛病の発生、税金と福祉を「食いもの」にした汚職事件の多発。 |
1995 | 震 | 阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関などの崩壊などに"震えた"年。 |
もちろん、今年最大の注目点は震災だと私も思いますし、漢字1文字で今年を表すにピッタリ、というか、これしかない結果だと受け止めています。ただ、もっともめでたい出来事のひとつに上げられるなでしこジャパンのワールドカップ制覇も「絆」のうちに織り込んで欲しかった気がします。
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本日、日銀から企業物価 (CGPI) が、また、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ発表されました。いずれも11月の統計です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
11月企業物価、1.7%上昇 原油値上がり反映
日銀が12日発表した11月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は104.7となり、前年同月比で1.7%上昇した。前年比での上昇は14カ月連続。原油の国際市況の値上がりを映し、前月比では0.1%上昇と、4カ月ぶりにプラスとなった。海外の需要減少で、一部で下落した品目もみられる。
品目で見ると、石油製品や農林水産物が上昇した。原油や豚肉などの国際商品市況の値上がりが影響した。一方、欧州債務不安による海外の需要減少で、鉄くずが下落。国内でもスマートフォン(高機能携帯電話)の販売競争によって情報通信機器が値下がりした。
タイの洪水については、ハードディスクなどで品薄感から大幅に値上がりした品目もあるが、「被災した工場の再稼働や代替生産が進み、企業物価全体への大きな影響は表れていない」(日銀)という。
企業物価指数は、企業間で取引される製品の価格水準を示す。調査対象855品目のうち、393品目が上昇し、全体に占める割合は46%だった。
消費者態度指数、11月前月比0.5ポイント低下 2カ月連続下方修正
内閣府が12日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.5ポイント低下の38.1だった。前月を下回るのは4月以来7カ月ぶり。景気に対する先行き不透明感の高まりが指数に反映した。
指数を構成する「雇用環境」、「暮らし向き」、「収入の増え方」でいずれも低下。今後半年間の見通しを「変わらない」と答える人が減少し、「やや悪くなる」や「悪くなる」と答える人が増加した。内閣府では東日本大震災からの回復が一巡しつつあるうえ、夏場以降、欧州債務問題や円高、タイの洪水といった「追加的なショック」で不透明感が高まっているとの認識を示した。
基調判断を「持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「ほぼ横ばいとなっている」に2カ月連続で下方修正した。前月と比べてマイナスとなったことにより「持ち直しが緩やかになっているとは言えなくなった」ことが理由。
1年後の物価見通しについて、「上昇する」と答えた消費者の割合は65.0%と前月(69.6%)から4.6ポイント低下した。一方で「低下する」と答えた消費者の割合は8.1%と1.2ポイント増加、「変わらない」と答えた消費者は19.8%と2.6ポイント増加した。
調査は全国の6720世帯が対象。今回の調査基準日は11月15日、有効回答数は5033世帯(回答率74.9%)だった。
次に、企業物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価の仕向け地別の上昇率、下は素原材料、中間財、最終財の需要段階別の上昇率です。いずれも前年同月比上昇率であり、色分けは凡例の通りです。
消費者物価指数上昇率も10月からは下げ幅を拡大しましたし、企業物価もおしなべてデフレの傾向を強めている可能性が高いと私は受け止めています。上のパネルでは、輸出物価は円高もあってマイナス幅を拡大し、国内物価もプラス幅を縮小しています。下のパネルでも、先月から最終財がマイナスに突っ込んでいます。欧州発の債務危機に起因する世界経済の失速や円高による需要ショックに加え、タイの洪水などに起因する供給ショックもあって、需給ギャップが拡大している可能性が否定できません。
消費者態度指数の推移は上のグラフの通りです。季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。今年3月の震災からのV字回復の期間を終え、むしろ、弱含んだ動きを示しています。これも欧州債務危機に起因する世界経済の失速と円高による需要面の弱さに加え、タイの洪水による供給面の下押し圧力があることから、消費者マインドも先行き不透明感を強めています。引用した記事にもある通り、基調判断は2か月連続で下方修正されています。
本日午後に清水寺で発表された今年の漢字は「絆」でした。やっぱり、という気もしますが、1995年に始まったこのシリーズの最初の神戸震災の年の漢字は「震」だったんですが、15年余りを経てセンス・アップしたように感じます。可能であれば、日を改めて取り上げたいと思います。
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金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」を聞きました。これだけで、金子三勇士というピアニストがリストの作品を集めたアルバムだということが明確に理解できると思います。まず、若きピアニスト金子三勇士のプロファイルをオフィシャルウェブサイトから抜粋すると以下の通りです。
Miyuji
1989年9月22日生まれ。
6歳でハンガリーのピアノ教育第一人者Cs.Nagy Tamasne教授に師事する事になり、単身ハンガリー留学。祖父母の家からバルトーク音楽小学校に通う。1997年と2000年に全国ピアノ連弾コンクールで優勝し、2001年には全国学生ピアノコンクールで優勝。
2001年(11歳)飛び級で国立リスト音楽院大学ピアノ科に入学し、Eckhardt Gabor教授、Kevehazi Gyongyi教授、Wagner Rita教授に師事。
2006年(16歳)、ピアノ科全課程修了とともに日本に帰国。東京音楽大学付属高等学校2年に編入し、現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンス4年在籍。三浦捷子氏、迫昭嘉氏、清水和音氏に師事。2009年シャネル・ピグマリオン・デイズ参加アーティスト。2010年よりジャパンアーツ所属アーティスト。同年10月にリリースされたデビューアルバム「Miyuji プレイズ・リスト」はレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。2011年第12回ホテルオークラ音楽賞受賞。スタインウェイ・アーティスト。
昨日は、ジャズ・ミュージシャンのエピソードを集めた『バット・ビューティフル』の読書感想文を取り上げましたが、今日はクラシック・ピアノの若き俊英にスポットを当てます。引用したプロファイルにある通り、16歳でリスト音楽院大学ピアノ科を卒業し、帰国した金子三勇士のデビュー・アルバムです。昨年10月の発売ですが、私はもっぱらジャズでしたので、少し前に知り図書館で予約しておいたのを聞きました。私が知る限り、都内では新宿区立図書館しかこのアルバムを所蔵していませんが、現時点では私が借りていますので貸出し中となっていると思います。
彗星のごとく現れた超大型新人ピアニストと私は認識しています。でも、「三勇士」と書いて Miyujiと読ませるんですから、音楽一家に生まれ育ったんだろうと想像されます。なお、公式プロファイルにはありませんが、ハンガリー人の母と日本人の父との間に生まれたとも聞きます。アルバムの曲の構成は以下の通りです。いうまでもありませんが、すべてリストの作曲になり、演奏はジャズでいえばソロ・ピアノです。
最初のピアノ・ソナタ ロ短調が時間に換算して全体の半分を占めます。この曲が古今東西のピアノ曲の最高峰のひとつであることは衆目の一致するところです。今年2011年はリスト生誕200年でもあり、歯に衣を着せぬ物言いで有名な清水和音さんなども、本来はショパンの弾き手と思っていたんですが、今年発売のアルバムでロ短調ソナタを取り上げていると記憶しています。どうでもいいことですが、昨年2010年はショパン生誕200年だった気がします。
リストを弾く金子三勇士の演奏は、ある意味で、とても個性的です。ジャズ・ピアノの場合、当然ながら、アドリブのパートで個性が出ます。例えば、チック・コリアと上原ひろみによる「デュエット」では右に上原、左にコリアと、私のようなシロートでも聞き分けることが出来ます。しかし、楽譜の通りに弾くクラシックの世界では、特に、ヴァイオリンなどと違ってピアノは音で区別できませんから、個性を出すのは難しいと私は考えていましたが、この私の常識は覆されました。多くのクラシック・ピアノを聞いて来たと自慢できるわけではありませんが、少ない経験ながらも、独特のタッチやトーンを感じることが出来ます。何よりも、伸びやかでみずみずしく、若いピアニストの演奏であると実感できます。しかし、決して荒削りではなく繊細ですらあります。スタンウェイのひとつの特徴といってしまえばそれまでかもしれませんが、ハンガリアンの血のなせるワザとか、そういったものとは何の関係もなく、世界最高峰とは決していえないものの、非常にレベルの高い演奏に接することが出来ます。
ピアノの金子三勇士のほか、ヴァイオリンの三浦文彰も今年「プロコフィエフ ヴァイオリンソナタ第1番、第2番」でCDデビューしています。小林愛美は少し違う気がしないでもないんですが、金子・三浦の2人はいずれも注目すべき日本人若手演奏家であると私は受け止めています。将来が楽しみです。彼らのデビューCDを聞いたことを後の世代に自慢できるように、世界最高峰を目指して欲しいと思います。
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先ほど10時前から月食が始まりました。南の空、かなり高い位置に月があり、左方やや下から欠け始めています。広く報じられている通り、今回は皆既月食です。一応、デジカメを向けてみましたが、うまく撮れません。マシンと腕前の限界かもしれません。
子供達とチラリと観察しました。
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ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』(新潮社) を読みました。村上春樹さんの翻訳です。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。
その共和国にはとてもシンプルな名前がついている。ジャズ――。
酒、ドラッグ、そして自らの音楽に蝕まれていくミュージシャンたち。悲しみと孤独に満たされた彼らの人生には、それでも美しいジャズの音色があった――。モンク、エリントン、ミンガスら、伝説のジャズ・プレイヤーのショート・ストーリーを村上春樹が完全翻訳。巨人たちの音楽が鳴り響く、サマセット・モーム賞受賞作。
次に、各章のタイトルとその章で取り上げられているジャズ・ミュージシャンは以下の通りです。7人の代表的なアーティストに焦点を当てています。これらのエピソードのインタールードのように、章と章の間でデューク・エリントンとハリー・カーネイの会話が挿入されています。また、あとがきもかなり読み応えがあります。
まず、いうまでもありませんが、本のタイトルとしている「バット・ビューティフル」というのはジョニー・バークの詩にジミー・ヴァン・ヒューゼンがメロディをつけた1947年の曲であり、ジャズのスタンダードとなっており、多くのミュージシャンに取り上げられています。一応、歌詞も知っているんですが、著作権の関係が不明ですので引用するのは控えます。
上に上げたように、最後の2人を除けば黒人のミュージシャン5人で、黒人差別がまだまだ激しい時代背景を基に、レスター・ヤングが徴兵された折に、軍隊で徹底的に差別されイジメ抜かれたエピソードから始まって、音楽に対するインスピレーションを高めるため、酒やドラッグに手を出して体調を悪くし、人格まで崩壊させるアーティスト達、音楽以外では社会への適応力を欠いて大きな問題を抱えるミュージシャン達、孤独ではかない人生を送る芸術家、などとして見事に7人を取り上げて描き出しています。でも、彼らが素晴らしいジャズを紡ぎ出したことも事実です。加えて、「あとがき」では素晴らしいジャズ芸術論を展開しています。特に、ジョン・コルトレーンやキース・ジャレットを論じたパートでは、私も好きなミュージシャンだけに、共感を覚える部分も少なくないと感じました。この「あとがき」だけでなく、多くのジャズ・ファンにオススメです。村上春樹さんの翻訳もとっても魅力的です。
最後に、引用にもある通り、この本はサマセット・モーム賞を受賞しています。The Society of Authors のサイトに従えば、サマセット・モームにより創設され、35歳以下のイギリス人作家に与えられる賞であり、海外経験を基に作品を豊かにすることを目的としています。戯曲以外のすべての文学作品が対象となっています。今年2011年には、ミリアム・ギャンブル The Squirrels Are Dead ほか2作品に授賞されています。
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本日、内閣府から景気の総合的な指標のひとつである四半期別GDP統計が発表されました。我がエコノミストの業界で2次QEと呼ばれている指標です。季節調整済みの前期比実質成長率は+1.4%と、1次QEの+1.5%から少し下方修正されました。ほぼ、12月6日の火曜日のエントリーで取り上げたのに近い結果と受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
実質GDP、年率5.6%増に下方修正 7-9月
内閣府が9日発表した2011年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.4%増、年率換算で5.6%増となった。速報値と比べ年率で0.4ポイントの下方修正。速報値でプラスだった設備投資がマイナスに転じた。海外景気の減速や円高で輸出の回復が鈍っており、11年度の政府経済見通し(0.5%増)の達成は困難な情勢だ。
内閣府は7-9月期改定値からGDP統計の基準年を2000年から05年に変更。統計の基礎となる国勢調査や産業連関表をより実勢に近い05年分に切り替えた。銀行利ざやの加算など推計方法も見直した。
従来統計でマイナス成長だった10年10-12月期が0.03%とプラス成長に転じたため、11年7-9月期のプラス成長は3四半期ぶりとなった。伸び率は改定値でも10年1-3月期(6.5%)以来の大きさ。生活実感に近い名目では前期比1.2%増、年率換算で5.0%増となった。速報値から年率で0.6ポイントの下方修正となった。
前期比1.4%増となった実質GDPを寄与度でみると、内需は0.8%分、輸出から輸入を差し引いた外需は0.6%分だった。
下方修正の主因は設備投資の減速。伸び率は速報値の1.1%増から0.4%減に落ち込んだ。円高や海外経済の変調などから企業の慎重姿勢が強まった。
個人消費も0.7%増と、速報値(1.0%増)から下方修正。自動車購入の伸びが鈍ったほか、「基準年変更も押し下げ要因になった」(内閣府)という。輸出は基準年変更の影響で上方修正された。
古川元久経済財政担当相は9日の閣議後記者会見で「海外景気の回復が弱まっている」と述べ、日本経済の下振れリスクを注視する姿勢を強調した。
政府経済見通しでは、11年度の実質GDPは前年度比0.5%増。達成には11年10-12月期、12年1-3月期にそれぞれ前期比1.4%増の伸び率が必要になる。10-12月期から成長率は減速するとの見方が多く、政府見通しの達成は難しい状況になっている。
まず、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。
需要項目 | 2010/ 7-9 | 2010/ 10-12 | 2011/ 1-3 | 2011/ 4-6 | 2011/7-9 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産(GDP) | +0.5 | +0.0 | ▲1.7 | ▲0.5 | +1.5 | +1.4 |
民間消費 | +0.8 | +0.2 | ▲2.1 | +0.0 | +1.4 | +1.1 |
民間住宅 | +0.6 | +2.9 | +1.8 | ▲2.0 | +5.0 | +5.2 |
民間設備 | +0.5 | ▲0.7 | ▲0.9 | ▲0.5 | +1.1 | ▲0.4 |
民間在庫 * | +0.3 | ▲0.0 | ▲0.7 | ▲0.0 | +0.2 | +0.3 |
公的需要 | +0.3 | ▲0.4 | +0.1 | +1.9 | ▲0.1 | +0.0 |
内需寄与度 * | +0.6 | +0.1 | ▲1.5 | +0.5 | +1.0 | +0.8 |
外需寄与度 * | ▲0.1 | ▲0.0 | ▲0.2 | ▲1.0 | +0.4 | +0.6 |
輸出 | +0.7 | ▲0.1 | ▲0.0 | ▲5.9 | +6.2 | +7.3 |
輸入 | +1.7 | +0.2 | +1.1 | +0.4 | +3.4 | +3.5 |
国内総所得(GDI) | +0.5 | ▲0.2 | ▲2.4 | ▲0.8 | +1.3 | +1.1 |
名目GDP | +0.1 | ▲0.8 | ▲1.7 | ▲1.6 | +1.4 | +1.2 |
雇用者報酬 | +0.8 | +0.6 | +0.3 | +0.3 | +0.0 | ▲0.3 |
GDPデフレータ | ▲2.0 | ▲1.9 | ▲1.9 | ▲2.4 | ▲1.9 | ▲2.2 |
内需デフレータ | ▲1.4 | ▲1.3 | ▲1.0 | ▲1.1 | ▲0.4 | ▲0.7 |
テーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの系列の前期比成長率に対する寄与度で、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7-9月期の最新データでは水色の棒グラフの民間設備投資を除いて、すべての需要項目がプラスの寄与を示しています。赤の消費と黒の外需が特に大きいことが読み取れます。他方、復興需要をはじめとする公的需要は成長にサッパリ貢献していないことが明らかです。
1次QEからの修正は設備投資の下方改定が中心です。1次QEの時点ではプラスと出ていた設備投資が、法人企業統計を受けて2次QEではマイナスに改定されました。しかし、12月6日のエントリーで書き留めておいたように、供給サイドの資本財出荷などとの整合性には私は疑問を持っています。意地の悪い見方をすれば、法人企業統計から抜け落ちている可能性もなしとはしません。将来、別の統計ソースを用いた推計を行えば、もう一度プラスに改定される可能性も排除できません。
2次QEとしての評価は以上として、93SNAへのより本格的な対応として、いくつかの改定が実施されたんですが、特に私が重視している項目として、FISIMの導入に伴う修正の影響を考えたいと思います。内閣府から11月18日付けで発表された「国民経済計算における平成17年基準改定の概要」 p.3 に従えば、基準改定の概要は資産推計の充実・改善、財政推計の充実・改善、「間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM)」の導入、の3点に取りまとめられています。特に、FISIMの導入については金融仲介業の産出の一部が家計等の最終消費支出に配分され、それだけGDPは増加すると解説されており、2000年基準と2005年基準の平均消費性向をプロットすると、上のグラフの通りになります。ここでは、「平均消費性向」は単純に個人消費をGDPで除した比率で計算しています。分母も分子も実質値です。グラフから明らかに、2005年基準の国民経済計算の方が平均消費性向が高くなっています。1-2%くらいの乖離があり、時を経てこの幅は大きくなっています。逆から見ると、実は、2005年基準を導入すると我が国の貯蓄率はかなり低かったといえます。この議論が何に波及するかといえば政府債務問題です。実は、国債発行が国内の貯蓄でファイナンスされる余地がかなり小さかった、あるいは、財政サステイナビリティの条件がより厳しかった可能性が示唆されていると私は受け止めています。すなわち、現在の国債発行を続けていると、我が国の財政が破綻する時点はそんなに先のことではなく、実はもっと早かった可能性があると覚悟すべきです。
FISIMの導入に伴って、GDPの規模そのものがやや膨らんだこととともに、この財政のサステイナビリティに関する議論についても、かなりのエコノミストは気付いています。しかし、政府債務問題はハードランディングする可能性が大きいと悲観的に見るエコノミストも少なくありません。エコノミストの専門知識である経済学の理論が政策に活かされるんでしょうか?
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本日、内閣府から設備投資の先行指標となる機械受注統計が、また、財務省から経常収支などの国際収支が、さらに、内閣府から景気ウォッチャー調査結果が、それぞれ発表されています。景気ウォッチャーは11月、それ以外の機械受注と経常収支は10月の統計です。各統計のヘッドラインを簡単に振り返ると、機械受注は船舶と電力を除く民需が2か月連続で大幅に減少し、経常収支も貿易赤字の影響で大きく黒字幅を縮小させています。景気ウォッチャーも現状判断DIが2か月振りに悪化しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、10月6.9%減 欧州危機や円高で2カ月連続減に
内閣府が8日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は6874億円となり、前月に比べて6.9%減った。9月は8.2%減少しており、2010年1、2月以来の2カ月連続減少となった。欧州債務危機や円高などを背景に先行きへの不安が強まり、企業は投資に対して一段と慎重になっている。
機械受注統計は機械メーカーから、工場の生産設備などの受注額を聞き取り算出する。船舶・電力を除くベースの民間需要は、3カ月から半年ほど先の民間設備投資の先行指標とされる。
受注額が7000億円を下回るのは10カ月ぶり。内閣府は機械受注の判断を「一進一退で推移している」と据え置いたが、「足元で弱い動きになっている」との見方も示した。
業種別に見ると、製造業は5.5%増加。一般機械や自動車が工作機械などを発注し全体を押し上げた。一方、情報通信機械は3割減。国内外でのパソコンなどデジタル家電の販売不振を受け、9月の4割減に続く大幅なマイナスだった。
非製造業は7.3%減少した。運輸業・郵便業が3割減った。農林漁業も東日本大震災後の復旧投資が一巡し、2割弱落ち込んだ。通信業はスマートフォン(高機能携帯電話)用の基地局増設で4%増えた。
タイの大洪水は日本の生産にも一部影響を及ぼしているが、「機械受注への影響は今のところ見られない」(内閣府)という。10-12月期の機械受注見通しは前期比3.8%減。この見通しを達成するには、11、12月に前月比5.7%ずつ増加する必要がある。
10月の経常黒字62%減、8カ月連続縮小 輸出落ち込み
財務省が8日発表した10月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5624億円の黒字となった。前年同月に比べ62.4%減り、黒字幅は8カ月連続で縮小した。世界的な景気減速の影響で半導体・電子部品などの輸出が大きく落ち込み、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が2カ月ぶりの赤字に転落したことが響いた。
貿易収支は前年同月比で1兆1098億円減少し、2061億円の赤字となった。輸出は5兆2642億円で2.7%減った。10月の貿易統計によると、世界的に需要が低迷している半導体など電子部品が20.8%減と大きく落ち込んだ。船舶も32.4%減った。自動車は東日本大震災後の減産の反動で、6.1%増えた。
輸入は21.3%増の5兆4703億円。22カ月連続で増加した。石油価格の上昇などを受けて原粗油が33.4%増、液化天然ガス(LNG)は63.8%増と大きく伸びた。
旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は2754億円の赤字。福島第1原子力発電所の事故の風評被害などで、日本を訪れる外国人の数が大きく減った。
企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字額は20.3%増の1兆1215億円だった。証券投資で得た配当金が増え、黒字幅は7カ月連続で拡大した。
貿易収支の赤字傾向は11月も続いている。財務省が同日発表した11月上中旬(1-20日)の貿易統計速報によると、貿易収支は3666億円の赤字となった。
輸出は前年同期に比べて7.2%減の3兆3923億円。半導体や電子部品などの輸出減が重荷となった。輸入は3.9%増の3兆7589億円。火力発電所用のLNGの輸入が引き続き高水準だった。
11月の街角景気、2カ月ぶり悪化 基調判断据え置き
内閣府が8日発表した11月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比0.9ポイント低下の45.0と2カ月ぶりに悪化した。気候の影響による販売不振に加え、タイの洪水が悪影響を及ぼした。
現状判断は指数を構成する家計、企業、雇用の全てで悪化した。小売業では「月前半は高気温により冬物衣料が不調だった」(東海の百貨店)ことが響いた。製造業では「円高による業績悪化が続くなか、値引き要請がきたりしている」(中国の輸送業)という。
加えて、タイの洪水被害も実際に表れ始めている。北陸の自動車販売店からは「売上予定車の入荷が遅れ、売り上げが大幅に下がっている」との声が出たほか、製造業でも「タイの洪水の影響が出てきて部品が取り合いになり、調達できない」(北関東の電気機械器具)といったコメントが並んだ。
先行き判断指数は1.5ポイント低下の44.7と5カ月連続で悪化。「欧州の信用不安や過度な円高、タイの洪水による環境の悪化で、雇用情勢にも悪影響が出る」(近畿の職業安定所)など先行きの不透明感は根強い。
一方で、東日本大震災からの復興が本格化するのに伴って、被災地では「来客数と売り上げの好調が続いている」(東北の都市型ホテル)との声もある。タイの洪水についても「復旧メドは立っており、年明けには元の生産水準に回復する」(輸送用機械器具)と明るい声もある。
内閣府は月前半の気温上昇など一時的な要因の影響が大きかったとみて、景気の現状に対する基調判断を「円高の影響もあり、持ち直しのテンポが緩やかになっている」で据え置いた。
まず、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルはいわゆるコア機械受注といわれる船舶と電力を除く民需の系列とその後方6か月移動平均をプロットしています。下のパネルは需要者別の機械受注です。いずれも季節調整済みの月次系列であり、縦軸の単位は兆円です。影を付けた部分は景気後退期です。
機械受注は大きく減少しました。9月に続いて2か月連続での大幅減少です。市場の事前コンセンサスは9月の▲8.2%減の反動もあることから、10月は微増ないし横ばいという予想でしたので、やや意外な結果が出た印象です。業種別では9月に減少した製造業が10月はプラスに転じた一方で、逆に、9月プラスだった非製造業が10月は減少に転じました。しかし、業種単位のメゾスコピックな集計は最適化行動とは関係ないので、株価などを見る上では有益かもしれませんが、マクロ経済を見るエコノミストには重視されていない気がします。それはともかく、従来からの私の主張では、この10-12月期は復興需要のプラスと失速しつつある世界経済や円高の影響に伴う外需のマイナスのどちらがドミナントかによって景気動向が左右されると考えて来ましたが、内閣が交代しても遅々として進まない復興需要に対して、世界経済は着実に失速感を強めており、ほぼその通りの結果が機械受注やその先にある設備投資に出ていると私は受け止めています。このまま増税路線ばかりが強まれば、さらに停滞感や先行き不透明感が強まる可能性もなしとしませんが、今度こそ来年の年明けから復興需要が本格化すると思いますので、基本的には、10-12月期の弱い動きは一過性のものであろうと、私なりに期待を込めて楽観視しています。
次に、経常収支も貿易収支が赤字化した影響から、上のグラフの通り、黒字幅が大きく縮小しています。上のグラフは青い折れ線の経常収支に対して、棒グラフの各収支の寄与をプロットしています。色分けは凡例の通りです。もっとも、上のグラフは季節調整済みの系列でプロットしていますので、季節調整する前の原系列で論じている引用記事と少し印象が違う可能性があります。いずれにせよ、まだ少し残っているタイの洪水による供給面からの影響とともに、欧州発の債務危機に端を発する世界経済の大きな失速に起因する需要面からのマイナス効果、さらに円高に伴う価格面からのマイナス効果と、幾重にもネガティブな要因が重なっています。上に引用した記事にもある通り、11月の上中旬の貿易統計でも貿易収支は赤字を続けているようですし、日本の経常収支が黒字を維持するのは所得収支に頼る部分が大きくなっています。そして、経常収支の黒字幅、あるいは、経常収支の赤字転落が財政赤字のサステイナビリティの議論に直結しかねないことは周知の事実です。
景気ウォッチャーの結果は上のグラフの通りです。折れ線グラフで現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期です。3月の震災後のV字型の回復期を終えて、マインドは緩やかな下り坂と見えなくもありません。タイの洪水もあり、復興需要の出遅れと世界経済の急速な失速が強く表れ、データにも反映されているていると受け止めています。
最後に、昨日、内閣府から発表された景気動向指数を1日遅れでグラフを書きました。上の画像の通りです。一致指数が前月比1.3ポイント上昇して90.3に達しました。4か月振りの上昇でした。
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昨夜のエントリーで少しふれた通り、一昨日の5日に経済協力開発機構 (OECD) から格差に関するリポート Divided We Stand が発表されています。ウォール・ストリートの抗議デモを彷彿とさせるような表紙は上の画像の通りです。極めて適切にも、副題は Why Inequality Keeps Rising とされています。実は、OECD は2年ほど前に Growing Unequal? と題する同様のリポートを発表しているんですが、時期的に間が悪く、2008年9月のリーマン証券の破綻直後のタイミングの10月か11月の出版と記憶しており、私も取り上げませんでしたし、世間的にもあまり注目されなかったような気がします。要は、世の中それどころではなかったわけです。ひょとしたら、今回も米国から欧州に場を替えて、同じような事態が差し迫っている可能性は否定できません。冗談はさて置いて、章別の構成は以下の通り9章から成っています。
極めてありがちなんですが、私もさすがに400ページ近い英語の大部なリポートをちゃんと読むほどの語学力も時間もなく、上の章別構成のリポート本文に入る前の pp.21-80 の An Overview of Growing Income Inequalities in OECD Countries: Main Findings を中心に、取りあえず、今夜も帰宅が遅くなったことでもあり、大雑把な印象をかいつまんで述べたいと思います。まず、分析期間は大雑把に1980年代半ばから2000年代末までの25年近くを対象とし、上の章別構成にある通り、原因分析編では、グローバル化に伴う労働市場への影響から説き起こしていますが、グローバル化は格差拡大の原因ではなく、むしろ、雇用や賃金の格差の拡大は技術進歩に起因し、特に、情報通信技術の高度化は高度なスキルを持つ労働者に有利に作用したと結論しています。政策対応編では、格差縮小の最も効果的な対応策は人的資本に投資した上での雇用の促進であるとしています。また、規制改革と制度改正は雇用機会を増加させたが、賃金格差の拡大も招いたと、功罪の両面を指摘しています。最後に、OECD 加盟諸国の再分配政策、最後に租税政策の含意で締めくくっています。
リポートの結論は以上なんですが、いくつか図表の引用を含めて、格差の拡大と我が国の政策対応の必要性の定量的な裏付けを見てみたいと思います。まず、リポートの p.23 Table 1. Household incomes increased faster at the top が冒頭に上げられています。分析対象期間である1980年代半ばから2000年代末にかけて、日本では上位10%の実質所得は+0.3%増、下位10%は▲0.5%の減少となり、明らかに格差は拡大しています。日本以外でも多くの国で上位10%の集団の実質所得の伸びが下位10%を上回っています。なお、この期間に下位10%の実質所得が減少したのは日本とイスラエルだけだったりします。その結果、リポートの p.24 Figure 1. Income inequality increased in most, but not all OECD countries において、リポートの対象期間中に多くの国で不平等の指標のひとつであるジニ係数が上昇していることが示されています。ジニ係数が低下したのはトルコとギリシアだけ、ほぼ変化なしなのもフランス、ハンガリー、ベルギーの3か国だけとなっています。この p.24 Figure 1. Income inequality increased in most, but not all OECD countries とほぼ同じ趣旨のグラフを OECD のサイトから引用すると上の通りです。1985年と2008年を比べて、日本で格差が拡大したとはいえ、他国と比べて無闇に拡大したわけではないことが読み取れます。
人的資本への投資と雇用の促進は当然に必要なんですが、市場に不平等是正の内在的なメカニズムは備わっていませんから、最終的に、政府の所得再分配政策に行き着きます。上のグラフはリポートの p.228 Figure 6.1. Gini coefficients of inequality of market and disposable incomes, persons of working age, late 2000s を基に、OECD のサイトにある Excel データをダウンロードして書いてみました。上のパネルは再分配後の可処分所得のジニ係数の小さい順でソートしており、市場評価した所得のジニ係数も同時にプロットしています。下のパネルは市場評価された所得のジニ係数を政府の所得再分配政策で改善した割合、すなわち、改善率の大きな順にソートしてプロットしてあります。いずれも18歳から65歳までの勤労世代を対象とするジニ係数で、色分けは凡例の通りです。グラフを見れば明らかですが、日本はもともとラテン諸国や米国などのアングロ・サクソン諸国と並んで可処分所得のジニ係数が高いグループに属するんですが、この原因は部分的に社会保障制度に起因しています。このブログで何度も主張して来た通り、日本の社会保障制度の最大の弱点は引退世代に手厚く、勤労世代に行き渡らないのが一因です。市場評価した所得のジニ係数は日本の0.3916に対して、フランス0.4310、ドイツ0.4197、OECD平均でも0.4073と日本を上回る不平等なんですが、政府の再分配後の可処分所得のジニ係数は日本0.3235に対して、フランス0.2920、ドイツ0.3000、OECD平均0.3041と逆転現象が生じています。政府の再分配政策によるジニ係数の改善率が日本は17%にとどまるのに対して、フランスが32%、ドイツで29%、OECD平均でも25%に上るからです。日本の改善率17%は格差が激しいと見なされている米国の18%よりも低くなっており、ショッキングに感じる向きがあるかもしれません。再分配後の可処分所得のジニ係数がもっとも低いスロベニアでは、改善効果が38%と日本の2倍を超えており、格差是正のための政策効果が大きいことが読み取れ、先進国の中で我が国は勤労世代に対して極めて所得再分配効果や格差是正効果が薄いと言わざるを得ません。これに対して、すでに10月31日付けのエントリーで取り上げましたが、全国消費実態調査に見る年齢階級別の再分配効果のグラフは以下の通りです。統計のベースが異なるため、ジニ係数の絶対値が違っているのはご愛敬ですが、勤労世代における格差是正の効果が薄い一方で、引退世代の65歳以上に極めて手厚い格差是正がなされている日本の社会保障政策の現状を憂慮するエコノミストは私だけなんでしょうか。さまざまな政策リソースを引退世代から勤労世代に振り向けるべきと私は考えています。それを阻む壁となっているのはシルバー・デモクラシーです。
OECD の格差リポートを離れて、最後に、昨日、アジア開発銀行 (ADB) から Asia Economic Monitor が公表されています。9月の経済見通しよりもアジア新興国・途上国の成長率はやや下方修正されています。欧州発の債務危機がアジア経済に影を落としていることは明らかです。pdf の全文リポートの p.36 Regional Economic Update の見通し総括の表を引用すると以下の通りです。縮小したままの画像が見づらい向きは、クリックすると別タブで1ページだけの pdf ファイルが開くようリンクしています。
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昨日、私の帰宅が遅くなった機会をとらえて、OECD が Divided We Stand: Why Inequality Keeps Rising と題する格差に関するリポートを発表しています。国際機関のリポートに注目するのはこのブログの特徴のひとつですから、取り上げたいところなんですが、大部の英文リポートですので少しお時間をちょうだいして、今夜のところは今週の金曜日12月9日に発表される7-9月期GDP速報改定値、エコノミストの業界で2次QEと呼ばれる統計について、各シンクタンクや金融機関などから出されている2次QE予想に着目したいと思います。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で、足元の7-9月期以降の先行き見通しを拾いましたが、何せ2次QEですので法人企業統計とともにザッと見ただけのコメントが多かった記憶が強く残っています。先行き見通しについては特に長々とフォローしていますが、そうでなければアッサリとピックアップしてあります。もちろん、いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府 | +1.5% (+6.0%) | n.a. |
日本総研 | +1.2% (+5.0%) | 設備投資投資と公共投資がいずれも下方修正 |
みずほ総研 | +1.1% (+4.5%) | 10-12月期については、東日本大震災による落ち込みからの急回復局面が終了しつつある中、欧米経済の低調やタイ洪水の影響による輸出の伸び悩みが予想され、成長率が低下することは避けられない。それでも、復興需要による押し上げが見込まれることなどから、年率+1-+2%程度のプラス成長を確保すると予想している。 |
ニッセイ基礎研 | +1.3% (+5.3%) | 7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想 |
第一生命経済研 | +1.2% (+4.9%) | 下方修正されると予想する。法人企業統計の結果を受けて設備投資が下方修正されることが主因である。 |
三菱総研 | +1.3% (+5.2%) | 下方修正を予想 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +1.4% (+5.6%) | 小幅に下方修正されると予想する。 |
伊藤忠経済研 | +1.2% (+4.7%) | 輸出の減速は、大震災からのリバウンド一巡に加え、世界経済減速や円高、タイ大洪水などが影響したものだが、モメンタム鈍化は輸出に限った動きではない。復興消費や自動車の一巡や、地デジ移行や節電特需の一服により、個人消費も月次ベースでは既に増勢が大きく鈍化してきている。高成長は7-9月期の1四半期で終わり、輸出と個人消費の急減速により、10-12月期の日本経済は再びゼロ%程度まで成長率が低下する可能性が高いと考えられる。 |
ということで、2次QEは1次から下方修正されることはほぼコンセンサスがあり、その主因は設備投資であると考えられています。ただし、大きく留意すべき点があり、それは基準改定です。SNAの基準年が2000年から2005年に変更され、国勢調査結果や産業連関表の更新が反映されるとともに、93SNAに準拠したいくつかの大きな改定が織り込まれます。すなわち、金融仲介サービスにFISIMを導入したり、自社開発ソフトウェアを固定資本に繰り入れたり、ストック推計を整備するとともに固定資本減耗を時価評価したり、育成資産の仕掛品在庫の推計方法見直しを行ったり、より精緻な財政統計を導入したりと、過去にさかのぼって大幅な改定が実施され、そもそも、今年4-6月期までのGDP統計が大きく変更される可能性があります。ですから、単純な1次QEから2次QEへの改定ではなく、かなりの幅を持って受け止める必要があります。加えて、これは直観的な私の感触も含めて、先週発表された法人企業統計の設備投資には違和感があります。すなわち、生産側や供給側の資本財出荷などと照らし合わせても、設備投資がどうも小さいという疑いを払拭することが私には出来ません。金曜日のGDP統計発表の時点では、法人企業統計に従った2次QE推計にならざるを得ないんでしょうが、将来的に他の統計リソースが利用可能になれば改定される可能性もあり得ると覚悟しておくべきです。
2次QEを離れて、上の表はSMBCコンサルティングが昨日発表した2011年ヒット商品番付です。もちろん、上の画像はSMBCコンサルティングのサイトから引用しています。11月26日付けで取り上げた電通総研の「話題注目商品2011」よりも、商品に限定していないからなのか、私の実感にフィットします。自転車も入っていたりします。
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本日、内閣府から「幸福度に関する研究会報告 -幸福度指標試案-」が発表されています。GDPなどの経済指標だけでは測り切れない指標の作成を目指しているようです。先ごろ国王が来日になったブータンの国民総幸福量 (GNH) などが思い起こされます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
「幸福度」の指標、貧困率など132個 内閣府試案
内閣府は5日、国内総生産(GDP)など経済統計だけで測れない豊かさを示す「幸福度指標」の試案を発表した。幸福度を調べる材料として、貧困率や平均寿命、有給休暇取得率など132個の指標を挙げた。問題点を政策に反映しやすくするため、一つの数値では表さない方針だ。
幸福度は仕事への満足感など「経済社会状況」「心身の健康」、地域や家族との「関係性」の3本柱で、個人の幸福感を測る。環境の「持続可能性」も幸福度に含まれると定義した。
内閣府は特定の世帯を選び、それぞれの指標について数年間データをとり続ける計画。統計として政策運営に生かせるかを確かめる。
政府は昨年閣議決定した新成長戦略で、幸福度指標を作成する方針を掲げた。幸福度指標では、ブータンの国民総幸福量(GNH)が有名で、フランスなども指標の開発を進めている。
私の解釈に従えば、「幸福度」という言葉自体は主観的な「幸福感」を定量的に表現したものであると理解していて、おそらく正しいと受け止めています。この内閣府の研究会でも、幸福度の体系は以下のようにイメージされています。すなわち、所得や就業などの基本的ニーズを含む社会経済的状況に従う部分、心身両面における健康に従う部分、最後に、震災で注目された「絆」などを総合的に含む関係性に従う部分から成り立つ幸福度の体系です。下の画像はリポートの p.9 図表4 幸福度指標試案体系図を引用しています。
日本人の幸福度や幸福感についてはいろんな議論があるんでしょうが、今夜は少し遅くなったことでもあり、このブログの特徴のひとつの世代論を展開しておきたいと思います。すなわち、日本では高齢者の幸福感が低い、というか、70歳近くまで年齢を重ねるごとに幸福感が低下するという特徴があります。ホンの一例でしかないんですが、「サザエさん」と同じ長谷川町子さんの手になる4コマ漫画で「いじわるばあさん」というのがあり、青島幸雄さんが女性に扮する「意地悪ばあさん」というテレビ番組にもなったところで、私の亡くなった父親なんかも「年寄りはひがむ」というのを口癖にしていたりして、おそらく、年齢を重ねるごとに幸福感が低下するのが原因のひとつで、その結果として、ひがみっぽくなったり、あるいは、意地悪になったり、といったことが観察された、あるいは、観察された事実を超えてイメージされた部分もあったりするんだろうと私は想像しています。少なくとも、過去の分析結果では、ある程度まで、日本で年齢とともに幸福感が低下することは事実のようです。ひょっとしたら、最近時点では露骨なひがみや意地悪なんかではなく、幸福感が低下する代償として手厚い社会保障給付を要求する結果につながっている可能性があるのかもしれません。下のグラフは「平成20年度 国民生活白書」第1章第3節の図第1-3-1から引用していますが、このグラフはリポートの p.13 図表8 年齢毎の主観的幸福感にも引用されています。米国では30歳代後半をボトムにして年齢とともに幸福度が上昇するのに対して、日本では70歳近くまで低下を続けるのが特徴として読み取れます。
タイトルに掲げましたが、高齢者の幸福感が低い理由について、私はサッパリ思いつきません。もしも、幸福感が低いが故に手厚い社会保障を要求する因果関係が成り立っていると仮定すれば、あくまでこの仮定の下で、国家財政にも大きな影響を及ぼしかねない可能性は否定できませんが、申し訳ないながら、私には適切な解決法は思い浮かびません。
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宮部みゆき『おまえさん』上下 (講談社) を読みました。ぼんくら同心井筒平四郎と甥の弓之助シリーズの第3段最新刊です。前作から3年を要したということで、単行本と文庫の同時発売でした。私は早くから文庫本の方を買い求めてあったんですが、かなり分厚い本だということもあって飛行機の中で読もうと取り置いてありましたので、このタイミングになってしまいました。まず、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。上段は上巻、下段は下巻のそれぞれの内容紹介です。
内容紹介 (上巻)
大人気"ぼんくら"シリーズ第三弾
あの愉快な仲間たちを存分に使い、前代未聞の構成で著者が挑む新境地。
断ち切らない因縁が、さらなる悲劇を呼び寄せる。
出会えてよかった?
日本人の強さと優しさがぎゅっと詰まった贅沢な大長編
痒み止め薬「王疹膏」を売り出し中の瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の"ぼんくら"同心・井筒平四郎は、将来を期待される同心・間島信之輔(残念ながら醜男)と調べに乗り出す。その斬り口は、少し前にあがった身元不明の亡骸と同じだった。両者をつなぐ、隠され続けた二十年前の罪。さらなる亡骸……。瓶屋に遣された美しすぎる母娘は事件の鍵を握るのか。
内容紹介 (下巻)
事件の真相が語られた後に四つの短篇で明かされる、さらに深く切ない男女の真実。
知らなきゃよかった?
謎解きは終わっても、恋心は終わらない。
どうしてこんなふうに「こころ」が書けるんだろう
二十年前から続く因縁は、思わぬかたちで今に繋がり、人を誤らせていく。男は男の嘘をつき、女は女の道をゆく。こんがらがった人間関係を、"ぼんくら"同心・井筒平四郎の甥っ子、弓之助は解き明かせるのか。真犯人が判明した後、さらに深く切ない謎が読者を待つ。男は男で、女は女で、それでも男女で生きていく。
宮部みゆきにしか書けない奇跡の大長編。
一応、私はこのシリーズの前2作、すなわち、『ぼんくら』と『日暮し』を読んでいますが、どんどん、登場人物が増えて行って、分かる人にしか分からないのではないかと心配していたんですが、話の筋はていねいに解説してありますし、登場人物についても理解が進むように紹介があります。ですから、私のように前2作を読んでいなくても、かなりの程度に楽しめるんではないかと思います。
最新作の『おまえさん』では、推理小説としては物語の真ん中くらいで弓之助がすっかり謎解きをしてしまい、その意味で真相は明らかになります。しかし、謎解きを終えて犯人が捕まるまでがこの小説の真骨頂ともいえ、お江戸の昔の時代背景で、現代とは比べ物にならないような犯人探しの難しさは置くとしても、犯行を決意した人間、逃げる犯人、追う取り手と、それぞれの人間模様が鮮やかに描き出されて、いつもながら、見事な人情話に仕上がっています。ただし、謎解きはやや荒っぽい気がすることは確かです。純粋な推理小説としては少し点が低い可能性がありますが、ここのキャラをはじめとして、そのキャラの間を繋ぐ人間関係は見事に描き出されています。この結果、総合点としてはかなり高い点がたたき出されているような気がします。
シリーズ主人公の井筒平四郎と甥の弓之助、さらに岡っ引きの政五郎と手下のおでこ、もちろん、平四郎の細君や中間の小平次に加えて、同僚の若手同心である間島信之輔、信之輔の遠縁に当たるご隠居の本宮源右衛門、さらに、弓之助の兄の淳三郎という魅力的なキャラが加わりました。次回作が楽しみです。
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今週後半はパリに出張していました。ものすごいハードスケジュールでした。会議がビッチリ2日半に非公式な会食も組まれており、その上、大使館の方が気を使ってくれて、会議場の送迎に館用車を手配してくれたりして、パリの街中に出歩く機会がほとんどありませんでした。元来、私には新大陸、米国やオーストラリアなどの地域性があり、欧州方面は土地勘がなく、パリは十数年振りでユーロが導入されてから初めての欧州でした。会議は英語ですが、パリの街中はフランス語で、私はサッパリ理解しませんし、旧大陸ですから街路が碁盤目状にはほど遠く、歩いているうちにどちらに向かっているのか分からなくなることもあります。
一応、これだけはと思って、エッフェル塔と凱旋門の写真は撮りました。エッフェル塔の方は会議初日を終えた夜に行き、凱旋門は会議を終えた最終日の午後に行きました。とっても慌ただしい出張でした。欧州債務危機のあおりでユーロがかなり下げて円高だったので、パリ市内の物価をもっと割安に感じるかと予想していましたが、ブランド品のお店はともかく、少なくともスーパーで売られているような日常の買い物は決して安くはありませんでした。世界的に食料価格が高騰している影響もあるんだろうと思います。私はホテルの朝食を割高に感じたので、その辺の店で売っているバゲットにハムやチーズをはさんだサンドイッチを買って朝から食べていたりしましたが、30センチ足らずのバゲットのサンドイッチで軽く€5でした。独自の文化を大事にするお国柄ですが、マクドナルドやスターバックスなどの米国起源のお店もかなり見かけるようになった気がします。でも、相変わらず、日本で出店しているようなコンビニはほとんど見かけません。
スケジュールが極めてタイトで、もちろん、仕事で行った出張ですから当然なんですが、美術館やブランドショップにはまったく立ち寄る機会がありませんでした。次は余裕を持ってパリを訪れたいと希望しています。
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