金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」を聞く
金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」を聞きました。これだけで、金子三勇士というピアニストがリストの作品を集めたアルバムだということが明確に理解できると思います。まず、若きピアニスト金子三勇士のプロファイルをオフィシャルウェブサイトから抜粋すると以下の通りです。
Miyuji
1989年9月22日生まれ。
6歳でハンガリーのピアノ教育第一人者Cs.Nagy Tamasne教授に師事する事になり、単身ハンガリー留学。祖父母の家からバルトーク音楽小学校に通う。1997年と2000年に全国ピアノ連弾コンクールで優勝し、2001年には全国学生ピアノコンクールで優勝。
2001年(11歳)飛び級で国立リスト音楽院大学ピアノ科に入学し、Eckhardt Gabor教授、Kevehazi Gyongyi教授、Wagner Rita教授に師事。
2006年(16歳)、ピアノ科全課程修了とともに日本に帰国。東京音楽大学付属高等学校2年に編入し、現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンス4年在籍。三浦捷子氏、迫昭嘉氏、清水和音氏に師事。2009年シャネル・ピグマリオン・デイズ参加アーティスト。2010年よりジャパンアーツ所属アーティスト。同年10月にリリースされたデビューアルバム「Miyuji プレイズ・リスト」はレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。2011年第12回ホテルオークラ音楽賞受賞。スタインウェイ・アーティスト。
昨日は、ジャズ・ミュージシャンのエピソードを集めた『バット・ビューティフル』の読書感想文を取り上げましたが、今日はクラシック・ピアノの若き俊英にスポットを当てます。引用したプロファイルにある通り、16歳でリスト音楽院大学ピアノ科を卒業し、帰国した金子三勇士のデビュー・アルバムです。昨年10月の発売ですが、私はもっぱらジャズでしたので、少し前に知り図書館で予約しておいたのを聞きました。私が知る限り、都内では新宿区立図書館しかこのアルバムを所蔵していませんが、現時点では私が借りていますので貸出し中となっていると思います。
彗星のごとく現れた超大型新人ピアニストと私は認識しています。でも、「三勇士」と書いて Miyujiと読ませるんですから、音楽一家に生まれ育ったんだろうと想像されます。なお、公式プロファイルにはありませんが、ハンガリー人の母と日本人の父との間に生まれたとも聞きます。アルバムの曲の構成は以下の通りです。いうまでもありませんが、すべてリストの作曲になり、演奏はジャズでいえばソロ・ピアノです。
- Piano Sonata in B minor
- Hungarian Rhapsody No.2 in C-sharp minor
- Vallee d'Obermann
- La Campanella
- Liebestraum No.3 in A-flat major
最初のピアノ・ソナタ ロ短調が時間に換算して全体の半分を占めます。この曲が古今東西のピアノ曲の最高峰のひとつであることは衆目の一致するところです。今年2011年はリスト生誕200年でもあり、歯に衣を着せぬ物言いで有名な清水和音さんなども、本来はショパンの弾き手と思っていたんですが、今年発売のアルバムでロ短調ソナタを取り上げていると記憶しています。どうでもいいことですが、昨年2010年はショパン生誕200年だった気がします。
リストを弾く金子三勇士の演奏は、ある意味で、とても個性的です。ジャズ・ピアノの場合、当然ながら、アドリブのパートで個性が出ます。例えば、チック・コリアと上原ひろみによる「デュエット」では右に上原、左にコリアと、私のようなシロートでも聞き分けることが出来ます。しかし、楽譜の通りに弾くクラシックの世界では、特に、ヴァイオリンなどと違ってピアノは音で区別できませんから、個性を出すのは難しいと私は考えていましたが、この私の常識は覆されました。多くのクラシック・ピアノを聞いて来たと自慢できるわけではありませんが、少ない経験ながらも、独特のタッチやトーンを感じることが出来ます。何よりも、伸びやかでみずみずしく、若いピアニストの演奏であると実感できます。しかし、決して荒削りではなく繊細ですらあります。スタンウェイのひとつの特徴といってしまえばそれまでかもしれませんが、ハンガリアンの血のなせるワザとか、そういったものとは何の関係もなく、世界最高峰とは決していえないものの、非常にレベルの高い演奏に接することが出来ます。
ピアノの金子三勇士のほか、ヴァイオリンの三浦文彰も今年「プロコフィエフ ヴァイオリンソナタ第1番、第2番」でCDデビューしています。小林愛美は少し違う気がしないでもないんですが、金子・三浦の2人はいずれも注目すべき日本人若手演奏家であると私は受け止めています。将来が楽しみです。彼らのデビューCDを聞いたことを後の世代に自慢できるように、世界最高峰を目指して欲しいと思います。
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