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2011年12月21日 (水)

輸出が減少に転じ、貿易赤字が定着するのか?

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されました。貿易収支は▲6847億円の赤字となり、2か月連続の貿易赤字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

輸出2カ月連続の減少 11月貿易統計、自動車など需要減が直撃
財務省が21日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比4.5%減の5兆1977億円だった。マイナスは2カ月連続。アジア、欧州連合(EU)向け輸出の減速感が強まった。欧州債務危機に伴い半導体や自動車などの需要が世界的に減少した。タイ洪水による現地工場の生産停止で部品輸出が減った。
11月の輸出額は季節調整済みの前月比でも2.6%減となった。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6847億円の赤字。赤字は2カ月連続で、11月単月では過去最大の赤字額となった。輸出の落ち込みに加え、液化天然ガス(LNG)や原粗油などエネルギー製品価格の上昇で輸入が増加した。
今年は東日本大震災の影響もあり、通年で貿易赤字となる公算が大きくなった。財務省は輸出の減少について「輸出が減り輸入が増える傾向はしばらく続く。欧州債務問題、円高、タイ洪水に伴う世界経済、特にアジア経済の動向を注視していく」(関税局)とした。
輸出を地域別に見ると、米国向けは2.0%増と2カ月ぶりにプラスとなった。だがアジア向けは8.0%減、EU向けも4.6%減と大きく落ち込んだ。アジアではタイ洪水の影響が大きく、タイ向け輸出が24.0%減と低迷。半導体電子部品がおよそ8割減、自動車関連部品も2割減となった。中国向けも合成樹脂や鉄鋼が振るわず7.9%減だった。
品目別にみると、世界的なIT(情報技術)市況の低迷で大幅に需要が減少し、電気機器は10.7%減と苦戦。半導体の電子部品(15.1%減)やデジタルカメラなどの映像機器(48.5%減)の不振が際立つ。自動車は0.6%減。低価格の小型車が主力となった影響もあるが、欧州向けなどが振るわなかった。

まず、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしているんですが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は規制つ調整した系列となっています。季節調整済みの系列を見ると、震災のあった3月を境に今年4月からずっと基調として貿易赤字が続いていることが読み取れます。

貿易統計の推移

貿易赤字は季節調整していない原系列でも2か月連続で、季節調整した基調を見るとこの10-11月は特に大きな赤字を記録しています。今年2011年は第2次石油危機後の1980年以来の通年の貿易赤字に陥るのはほぼ確実と私は受け止めています。そして、この貿易赤字の原因は輸出の足踏みと輸入の増加の両面から生じています。もちろん、円高も大きな要因として作用していることは明らかです。

輸出の推移

まず、輸出についてもう少し詳しく見ると上のグラフの通りです。上のパネルから、すべて前年同月比で、金額ベースの輸出額の伸び率を数量と価格の寄与度で分解したグラフ、真ん中は輸出の前年同月比伸び率をアジア、北米、EU、その他の地域別の寄与度に分解したグラフ、一番下が輸出数量とOECD先行指数の前年同月比伸び率をプロットしています。ここ2か月の基調的な貿易赤字は輸出の減少、特に数量の減少に起因しており、地域としてはアジアと欧州の寄与が大きくなっています。また、グラフはありませんが、デジカメなどの映像機器の輸出が大きく減少しているのは、IT市況とともにタイの洪水に起因しているんではないかと私は想像しています。一番下のグラフから、我が国の輸出の減少は世界的な需要の減退に基づくことが読み取れます。特に、欧州発の債務危機に伴う需要の失速が大きいことはいうまでもありません。

Ifo企業景況感指数の推移

しかし、欧州の景気も持直しの兆しが見えます。上のグラフはIfo研究所の企業景況感指数、すなわち、我が国の日銀短観に当たる景況感をプロットしています。10月を底にゆっくりと回復の兆しが見え始めています。Ifo企業景況感指数は広く認められたドイツ経済の先行指標ですから期待が持てるかもしれません。もっとも、欧州で債務危機の問題を抱えているのはドイツではなく、南欧のいわゆるPIGSですから、欧州で重きを占めるというものの、ドイツの持直しがどこまでユーロ圏に広まるかは不透明です。また、グラフで取り上げることはしませんが、今シーズンの米国のクリスマス商戦はかなり好調です。まだ疑問を持っているエコノミストも少なくありませんが、米国については我が国の輸出も底堅く推移しており、先行きの世界需要をけん引する可能性があると期待されます。しかしながら、円高とともに日本経済の最大のリスクは欧州にあることは変わりありません。

鉱物性燃料輸入の推移

最後に、輸入の方は何といっても原発停止に伴う火力発電所の負荷増大に起因する燃料輸入の増加が輸入増の大きな要因となっています。数量の増加とともに、一時弱含んでいたWTIが再びバレル100ドルに近づくなど、価格面でも上昇の気配を見せています。鉱物性燃料の中でも液化天然ガス(LNG)の比重が高まっていて、月次ベースの既往最高額に達しつつあります。もっとも、細かな増減は気温をはじめとする天候要因に左右される場合もあります。我が国の場合、例えば、外貨準備の不足から輸入が途絶するケースなどは想定していませんから、基本的に、私は必要な財貨やサービスは輸入すれば足りると楽観視していますが、貿易赤字の額を膨らませる可能性は排除できません。

いずれにせよ、高齢化の進展を引合いに出すまでもなく、我が国が貿易黒字をこの先も長期に渡って維持することは期待できるかどうかは疑わしいと私は考えています。もちろん、投資収益がありますから、経常収支の赤字化はかなり先の長い話だと考えていますが、高齢化がさらに進めば貯蓄率が今以上に低下しますので、経常収支が永遠に黒字を続けることはできないのは明らかです。短期ないし中期の景気循環を超えた長期の日本経済を考える場合には、単に我が国の需要の漏出という実物面だけでなく、金融や財政収支に及ぼす影響まで視野に含める必要が出て来ます。

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