我が国の高齢者の幸福感が低いのはどうしてか?
本日、内閣府から「幸福度に関する研究会報告 -幸福度指標試案-」が発表されています。GDPなどの経済指標だけでは測り切れない指標の作成を目指しているようです。先ごろ国王が来日になったブータンの国民総幸福量 (GNH) などが思い起こされます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
「幸福度」の指標、貧困率など132個 内閣府試案
内閣府は5日、国内総生産(GDP)など経済統計だけで測れない豊かさを示す「幸福度指標」の試案を発表した。幸福度を調べる材料として、貧困率や平均寿命、有給休暇取得率など132個の指標を挙げた。問題点を政策に反映しやすくするため、一つの数値では表さない方針だ。
幸福度は仕事への満足感など「経済社会状況」「心身の健康」、地域や家族との「関係性」の3本柱で、個人の幸福感を測る。環境の「持続可能性」も幸福度に含まれると定義した。
内閣府は特定の世帯を選び、それぞれの指標について数年間データをとり続ける計画。統計として政策運営に生かせるかを確かめる。
政府は昨年閣議決定した新成長戦略で、幸福度指標を作成する方針を掲げた。幸福度指標では、ブータンの国民総幸福量(GNH)が有名で、フランスなども指標の開発を進めている。
私の解釈に従えば、「幸福度」という言葉自体は主観的な「幸福感」を定量的に表現したものであると理解していて、おそらく正しいと受け止めています。この内閣府の研究会でも、幸福度の体系は以下のようにイメージされています。すなわち、所得や就業などの基本的ニーズを含む社会経済的状況に従う部分、心身両面における健康に従う部分、最後に、震災で注目された「絆」などを総合的に含む関係性に従う部分から成り立つ幸福度の体系です。下の画像はリポートの p.9 図表4 幸福度指標試案体系図を引用しています。
日本人の幸福度や幸福感についてはいろんな議論があるんでしょうが、今夜は少し遅くなったことでもあり、このブログの特徴のひとつの世代論を展開しておきたいと思います。すなわち、日本では高齢者の幸福感が低い、というか、70歳近くまで年齢を重ねるごとに幸福感が低下するという特徴があります。ホンの一例でしかないんですが、「サザエさん」と同じ長谷川町子さんの手になる4コマ漫画で「いじわるばあさん」というのがあり、青島幸雄さんが女性に扮する「意地悪ばあさん」というテレビ番組にもなったところで、私の亡くなった父親なんかも「年寄りはひがむ」というのを口癖にしていたりして、おそらく、年齢を重ねるごとに幸福感が低下するのが原因のひとつで、その結果として、ひがみっぽくなったり、あるいは、意地悪になったり、といったことが観察された、あるいは、観察された事実を超えてイメージされた部分もあったりするんだろうと私は想像しています。少なくとも、過去の分析結果では、ある程度まで、日本で年齢とともに幸福感が低下することは事実のようです。ひょっとしたら、最近時点では露骨なひがみや意地悪なんかではなく、幸福感が低下する代償として手厚い社会保障給付を要求する結果につながっている可能性があるのかもしれません。下のグラフは「平成20年度 国民生活白書」第1章第3節の図第1-3-1から引用していますが、このグラフはリポートの p.13 図表8 年齢毎の主観的幸福感にも引用されています。米国では30歳代後半をボトムにして年齢とともに幸福度が上昇するのに対して、日本では70歳近くまで低下を続けるのが特徴として読み取れます。
タイトルに掲げましたが、高齢者の幸福感が低い理由について、私はサッパリ思いつきません。もしも、幸福感が低いが故に手厚い社会保障を要求する因果関係が成り立っていると仮定すれば、あくまでこの仮定の下で、国家財政にも大きな影響を及ぼしかねない可能性は否定できませんが、申し訳ないながら、私には適切な解決法は思い浮かびません。
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