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2012年2月 6日 (月)

来週13日に発表される10-12月期GDP速報1次QEはマイナス成長か?

来週2月13日に2011年10-12月期GDP速報が内閣府より発表されます。明後日の経常収支を除いて、推計に必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから2011年10-12月期の1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で、足元の10-12月期以降の先行き見通しを拾いました。先行き見通しについては特に長々とフォローしていますが、そうでなければアッサリと取り上げてあります。もちろん、いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.1%
(▲0.5%)
2012年1-3月期以降を展望すると、タイの洪水の影響が薄れるなか、復興需要の本格化により、高めの成長となる公算。もっとも、企業を取り巻く環境は依然、厳しい状況。海外経済の減速や円高が引き続き景気下押しに作用するほか、核開発疑惑を巡るイランと欧米の対立による原油価格への影響も懸念材料。
みずほ総研▲0.5%
(▲2.1%)
昨年10-12月期はマイナス成長となったが、タイの洪水による部品不足の影響を受けた輸出の減少という一時的な要因によるところが大きく、日本経済の回復基調自体は崩れていない。
ニッセイ基礎研▲0.3%
(▲1.4%)
2012年1-3月期は補正予算の執行に伴い公的固定資本形成が増加に転じること、雇用・所得環境の持ち直しを背景に民間消費が伸びを高めることなどから、プラス成長に復帰する可能性が高い。
第一生命経済研▲0.4%
(▲1.6%)
高成長から一転してマイナス成長に陥る見込みであり、日本経済が踊り場局面入りしていることを改めて印象付けることになる可能性が高い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券▲0.2%
(▲0.8%)
景気の足踏みも、地デジ化完全移行前の特需の反動やタイの洪水など、一時的押し下げ要因の影響によるところが大きい。こうした影響はすでに一巡しており、11年12月には輸出や個人消費の関連指標が持ち直している。
三菱総研▲0.4%
(▲1.6%)
震災からの復旧が夏場で一服し、海外経済の減速などを背景に景気が踊り場局面に入ったことを裏付ける結果となろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.5%
(▲1.8%)
世界経済の減速などの影響で、景気のけん引役である輸出が減少に転じたことが主因である。
みずほ証券リサーチ&コンサルティング▲0.5%
(▲1.8%)
サプライチェーンの復旧など、震災による大幅な経済活動の落ち込みからの持ち直しの動きが一巡するなか、海外経済の減速や円高の進行、さらにはタイの洪水の影響などを受けて、足元にかけて日本経済の回復に向けた動きが足踏みしていることを示す結果になるとみられる。
伊藤忠経済研▲0.5%
(▲2.2%)
内需の拡大が外需による押し下げを上回り、マイナス成長は10-12月期の1四半期で終わり、1-3月期以降は小幅のプラス成長へ復帰するというのがメインシナリオである。日本経済は2011年の1%程度のマイナス成長から、復興投資などを梃子に2012年は1%台半ばのプラス成長へ転じると見込まれる。

当然のことながら、見通しに幅はありますが、最大で年率2%を少し上回るくらいのマイナス成長が見込まれています。クローズな形で届くニューズレターも含めて、私が目にした範囲で、プラス成長を予想する意見は見られませんでした。
昨年12月の7-9月期2次QEが公表された時点では、私自身の関心はFISIMの導入をはじめとする基準改定に向いていたんですが、大雑把に、エコノミストの間で私のような楽観的な見方をする場合は、10-12月期はゼロ近傍なるもプラス成長という意見もありました。もっとも、プラス成長がコンセンサスだったわけではありません。2か月足らずで10-12月期はマイナス成長がコンセンサスになってしまいました。大きな変化は外需の見通しです。11月のタイ洪水のが我が国の輸出に及ぼした影響に多くのエコノミストは少しびっくりし、今回の予想でも外需が大きくマイナスに寄与するという見方がほとんどです。加えて、公的資本形成、すなわち、公共投資もマイナスに転じることが予想されています。12月9日付けのエントリーで7-9月期の2次QEを取り上げた際、「復興需要をはじめとする公的需要は成長にサッパリ貢献していない」と書きましたが、10-12月期には貢献どころか足を引っ張る結果になると見込まれています。復興需要の遅れは単に経済成長面からだけでなく、より深刻な内容を含んでいることは言うまでもありません。
先行きについては、1-3月期がプラス成長に復帰するという見方はほぼコンセンサスがある一方で、その先については見方が分かれました。基本的に、私はみずほ総研や三菱UFJモルガン・スタンレー証券、伊藤忠経済研などと同じで、基本は日本経済が回復過程にあると考えていて、一時的な足踏み状態をそろそろ脱するんではないかと見込んでいます。他方、第一生命経済研のように、この足踏み状態はタイの洪水などに起因する一時的なものではなく、踊り場局面と考えるべきであるという意見もあります。いずれにせよ、先行きリスクは下振れ要因の方が大きくて多いことは確かです。

下振れリスクの中で、最大限避けたいイベントは欧州の財政破綻です。いつの時点で、どこの国が、によりますが、リーマン証券の破綻と同じか上回るくらいの大きなインパクトを世界経済に及ぼす可能性を否定できません。

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