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2012年2月20日 (月)

貿易赤字は定着するか?

本日、財務省から1月の貿易統計が発表されました。季節調整していない原系列で見て、統計のヘッドラインとなる輸出は4兆5102億円、輸入は5兆9852億円となり、差引き貿易収支は1兆4750億円の赤字を記録しました。単月では過去最大の赤字となります。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易赤字、過去最大の1兆4750億円
赤字は4カ月連続

財務省が20日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4750億円の赤字となった。赤字は4カ月連続で、単月では過去最大。円高に加え欧州債務危機などによる世界経済の減速で輸出が前年同月比9.3%減った。一方で原油価格の高止まりや火力発電用の液化天然ガス(LNG)の需要増で輸入は9.8%増えた。
輸出額は4兆5102億円となり、4カ月連続で減少した。アジア向けは13.7%減。欧州市場向けの生産が減った影響が大きく、鉄鋼や半導体、プラスチックなどの減少が目立った。このうち中国は1月下旬の春節(旧正月)で現地工場が休暇に入った影響も重なって20.1%減。2009年8月(27.6%)以来の大幅な落ち込みとなった。台湾は28.3%減。洪水で生産設備に打撃を受けたタイは8.5%減だった。
債務危機がなお続く欧州への輸出も振るわず、欧州連合(EU)向けは7.7%減と4カ月連続で縮小した。一方、米国は自動車を中心に底堅く、0.6%増と3カ月連続で増えた。
1月の輸出は数量ベースでも9.7%減。価格を押し下げる円高よりも、海外需要そのものが落ち込んだ影響が大きい。
輸入は9.8%増の5兆9852億円となり、2年1カ月連続で増えた。原油輸入は数量ベースでは2.1%減ったものの、価格の上昇で金額では12.7%増の1兆376億円となり、16カ月連続で増加した。火力発電用のLNGは28.2%増えた。
これまでの最大の貿易赤字は、世界金融不況後の海外需要の低迷で輸出が急減した09年1月(9679億円)だった。財務省は「1月は正月など季節要因で輸出が落ち込みやすいが、輸入はしばらく増加傾向が続く。アジアや欧州向け輸出の動向を注視していく」(関税局)としている。

続いて、まず、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも毎月の輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列、下は季節調整済みの統計を取っています。となっています。

貿易統計の推移

1月単月の統計では、輸出が春節効果により減少した上に、次々と止まる原発のために火力発電向けの燃料輸入が増加し、上に引用した記事の通り、過去最大の貿易赤字を記録しています。季節調整していない原系列では4か月連続の赤字ですが、季節調整済みの系列で見ると震災直後の昨年4月から10か月連続の赤字となりました。季節調整済みの系列をプロットしたグラフを見る限り、貿易赤字が定着した感すらあります。春節による輸出の伸び悩みは一時的な特殊要因と見なせるものの、これほど大幅な貿易赤字ですから投資収益収支の黒字があるものの、1月の経常収支は赤字に転落する可能性が十分あります。

輸出の推移

上のグラフは金額ベースの輸出について2種類の要因分解をした結果を示しています。いずれも季節調整していない原系列の輸出の前年同月比を取っていて、上のパネルは価格と数量のそれぞれの貿易指数で寄与度分解し、下のパネルは地域別に要因分解しています。上のパネルを見れば明らかですが、価格の影響はほとんどなく、数量の減少が輸出を減らしていることが読み取れます。さらに、下のパネルでは地域別で圧倒的にアジア向けの輸出が減少しています。引用した記事にもある通り、1月の輸出金額は前年同月比で▲9.3%減少していますが、アジアの寄与は▲7.5%に上ります。

地域別貿易収支の推移

輸出入の結果としてGDP成長率に影響する経常収支のコンポーネントたる貿易収支について、地域別の推移を年単位で見たのが上のグラフです。青い折れ線グラフが世界全体に対する貿易収支であり、その地域別の内訳が棒グラフで示されています。色分けは凡例の通りです。2011年の貿易収支の赤字化は3つの要因があり、すなわち、中東との貿易赤字の拡大、アジアとの貿易黒字の縮小、中国との貿易赤字の拡大、の3点です。最初の中東との貿易赤字拡大は原発停止に伴う火力発電向けの燃料輸入の増加に起因しています。アジアとの貿易黒字縮小と中国との貿易赤字拡大は、いずれも、私は円高の影響だと受け止めています。逆にいえば、雇用統計を引合いに出すまでもなく米国経済はそこそこ堅調ですし、欧州諸国も債務危機は一息ついていますから、欧米との貿易収支はまずまずの結果を残しており、足元の円安傾向が続けば新興国との貿易収支は改善する可能性が高いと考えるべきです。すなわち、中国やアジア各国をはじめとして、ドルペッグしている新興国向けの輸出に関しては、特に為替の影響を無視できないと私は受け止めています。さらに、円安に伴って輸入燃料価格が引き上げられて、価格メカニズムが働くと仮定すれば燃料消費に歯止めがかかることが期待されます。炭素税と同じ効果を持ちますから、地球温暖化の防止などにも役立ちます。

1月の貿易統計は一時的な特殊要因を強調すれば楽観的に見ることができ、逆に、経常収支まで赤字化させるほどの大きな赤字幅に着目すれば悲観的な見方となります。英語的に言うと、Half Empty, Half Full. だという気がしますが、いずれにせよ、円相場とともに貿易の今後の動向が注目されます。

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