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2012年2月28日 (火)

ほぼ震災前の水準に戻った消費からインセンティブ政策を考える

本日、経済産業省から1月の商業販売統計が発表されました。販売側から見た統計ながら、消費に直結する指標として注目していますが、卸売りは少し置いておいて小売販売で見て、季節調整していない原系列の前年同月比が+1.9%増、季節調整した販売額指数の前月比が+4.1%増といずれも順調な伸びを示しています。昨年暮れから再開されたエコカー補助金が自動車の売上げに貢献しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

小売業販売額1.9%増 1月、エコカー補助金復活など効果
経済産業省が28日発表した1月の商業販売統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.9%増の11兆3410億円となり、2カ月連続で増加した。業種別では自動車小売業が同24.3%の大幅増。昨年末からのエコカー補助金の復活に加え、2010年9月の自動車の買い替え補助制度終了に伴う反動減が一巡した。
大型小売店の販売額は同0.1%増の1兆7426億円と2カ月連続の増加。百貨店は春物衣料の不振などから同0.8%減、スーパーは鍋物関連の食料品の販売が増え、同0.6%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は同7.1%増の7382億円。たばこ値上げの影響などで4カ月連続で増えた。

次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない卸売と小売の販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整済みの販売額指数そのものを、それぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。

商業販売統計の推移

小売については、昨年12月から今年1月にかけては順調に推移していると私は認識しています。特に、1月の初売りは好調だったと報道されています。しかし、1月中旬以降は寒波の到来で大雪が降った地方もあり、天候不順から必ずしも消費が伸びたという実感はありません。消費者マインドとしては、供給側の景気ウォッチャーが1月は低下した一方で、需要側の消費者態度指数は上昇しています。天候不順などで出歩けなかった事情もあり、消費者側からの購買意欲は衰えていない一方で、販売側から見れば客足が鈍った印象があるような気がします。雇用が緩やかながら改善を示す中で、雇用の改善に従って所得が増加すると仮定すれば、これはかなり強い仮定ですが、所得が増加する限り天候の安定とともに客足も戻り、消費は順調な経路に復する可能性が十分あると私は受け止めています。

自動車小売業の推移

1月の小売販売統計が増加した要因はいくつかありますが、最大ではないとしても大きく貢献したひとつの要因は復活したエコカー補助金です。環境性能のいい乗用車への買換えを促進するという目的が明らかにされているものの、実は、このエコカー補助金は特定の財に対する需要振興策の面があることは多くの国民が認識していると思います。もちろん、みずほ総研のリポート「エコカー補助金復活の効果を考える視点」のように、抑制された需要の顕在化を促進し、生産波及効果も大きいと評価することも出来ますが、市場の歪みを大きくし需要の先食いによる反動減を招くとの批判もあることは事実です。私自身も批判的な考えを持っており、こういった特定の財に対する補助金が、第1に中長期的かつネットのマクロの消費喚起につながるかどうかは疑問ですし、第2にインセンティブを付与されていない競合財をクラウドアウトするリスクがあり、第3に耐久財の買換え時期を集中させることによる消費サイクルの不安定化をもたらすリスクも考える必要があることから、控え目に言っても乱発することは好ましくありません。特に、第3の点は家電エコポイントと地デジ移行を終えたテレビの売上げがどうなっているかを見れば明らかだと思います。自動車小売業の販売額の推移は上のグラフの通りですが、同様に、エコカー補助金のあるなしによって売行きがスウィングしているのが見て取れます。いずれにせよ、内需の拡大や消費の振興のためには、インセンティブ政策よりも雇用の改善という地道な政策を中心に据えるべきだと私は考えています。非正規の求人などが多くて、ホントに decent な職が提供されているかどうか大いに疑わしい現状では、なおさら雇用政策にも一定の目配りが必要です。

家電エコポイント終了後のテレビ・メーカー各社の決算といい、昨日のエルピーダ・メモリの倒産といい、ホントに日本がものづくりに比較優位があるかどうかは、私はもう一度検証すべきだと考えています。やたらと補助金で支えられている「ものづくり大国」を国民が望むかどうかはやや疑問です。

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