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2012年2月21日 (火)

労働力調査詳細集計に見る雇用の非正規化と失業の長期化

本日、総務省統計局から2011年の労働力調査詳細集計が発表されています。毎月の失業率などの統計だけでなく、四半期単位で雇用の構造面が明らかにされています。この統計でいつも私が着目しているのは雇用の非正規化と失業の長期化なんですが、ともに、着実に進んでしまっているようです。それ以外も含めていくつかの論点で簡単に振り返りたいと思います。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

非正社員最高の35% 11年、失業1年以上109万人
総務省が20日に発表した2011年の労働力調査(詳細集計、平均)によると、雇用者のうちアルバイトや派遣などの非正規が占める割合は35.2%となり、前年に比べ0.8ポイント上昇した。非正規の比率は2年連続で過去最高を更新した。失業期間が1年以上の完全失業者も109万人と依然として高水準で、厳しい雇用環境を反映している。
調査は東日本大震災の被災3県を除いた全国ベース。10年の数値も3県を除いて算出した。企業から雇われた雇用者(役員除く)は前年比23万人増の4918万人。非正規が1733万人で48万人増えた一方で、正規は3185万人と25万人減った。
非正規を雇用形態別でみると、パート・アルバイトが33万人増の1181万人、派遣社員も27万人増の340万人となった。企業が人件費を減らすために、正社員の採用を抑え、パートなどに切り替える傾向が続いている。
完全失業者の総数は284万人となり、33万人減った。ただ、失業期間別にみると、1年以上失業状態にある長期失業者は、1年未満の失業者に比べて改善は限られた。「長期失業者は08年のリーマン・ショック以降に急増し、その後も高水準で推移している」(総務省)といい、労働市場での失業者の長期滞留が深刻化している。

まず、雇用者の正規・非正規比率なんですが、引用した記事にもある通り、雇用者全体は増加したものの、正規雇用が減少した一方で非正規雇用が増加し、相変わらず非正規比率は上昇しています。下のグラフの通りです。2002年には30%を下回っていた非正規比率は2011年には35.2%に達しました。雇用は量的には拡大しているんですが、質的に ILO の提唱する decent work が増加しているかどうかは極めて疑わしいと考えるべきです。ただし、2011年の統計は被災3県を除いていますので、厳密な比較は困難であることに注意が必要です。

正規・非正規比率の推移

また、失業は減少しているものの、失業者の中では1年以上失業者の比率が高まっています。下のグラフの通りです。ただし、2011年の統計は被災3県を除いていますので、実線は2010年までの47都道府県ベース、破線が2010-11年の間だけ被災3県を除く44県ベースの統計となっています。赤い折れ線グラフの失業者総数は2011年に減少し、青い折れ線の1年以上失業者数も減少しているんですが、減少の度合いを表す傾きが違いますので、緑色の折れ線の1年以上失業者比率は上昇しています。こちらも2002年には1年以上失業者比率は30%を下回っていましたが、2011年には被災3県を除いたベースで40%近くになり、長期失業者の割合が高まっています。なお、緑色の折れ線グラフの1年以上失業者比率のみ右軸に対応し、それ以外は左軸に対応しています。

1年以上失業の推移

最後に、私が注目したのは下のグラフの教育・年齢階級別の失業率です。中学・高校等卒と短大・高専卒と大学・大学院卒の教育別年齢計級別の失業率です。大学・大学院卒で15歳というのはおかしいので、この教育区分で15-24歳の年齢階級は統計的にあてにならないように見受けられますので、これを別にすれば大雑把に、ほとんどの年齢階級で高学歴な方が失業率が低くなっています。同様に、失業率は年齢が高くなるほど低くなっており、年齢を重ねてスキルがアップすると仮定すれば、教育と年齢のどちらもスキルが高いほど失業率が低いという仮説が成り立ちそうな気がします。ただし、大学・大学院卒の55歳以上だけは35-44歳や45-54歳よりも失業率が高くなっています。学歴からも年齢からもスキルが高そうに見えるんですが、失業率も高くなっており、どのように考えるべきか悩ましいところです。

教育・年齢階級別完全失業率

私は官庁エコノミストですから雇用を重視します。働きたい国民が decent な職に就ければ、対外収支や株価などは今ほど注目される必要もないと考えています。しかし、景気は回復過程にあるとはいえ、まだまだ日本には decent な職が不足しているのかもしれないと思わざるを得ません。

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