経常収支と景気ウォッチャーの結果をどう見るか?
今日は欧米キリスト教諸国ではイースター・マンデーなんですが、日本では何の関係もなく、財務省から経常収支などの国際収支が、内閣府から景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。国際収支は2月、景気ウォッチャーは3月の統計です。経常収支は季節調整していない原系列で見て、1月の赤字から2月は1兆1778億円の黒字に転換しました。1兆円を超える黒字は5か月振りです。また、景気ウォッチャーは現状判断DIが8か月振りに50を超える水準に達しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
経常黒字、1兆1778億円 2月、2カ月ぶりの黒字
財務省は9日、2月の国際収支速報を発表した。モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1778億円の黒字となった。経常黒字は2カ月ぶり。米国向けの自動車輸出などが伸び、貿易収支が5カ月ぶりに黒字に転換したほか、企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字も増えた。
経常黒字が1兆円台に達したのは昨年9月以来、5カ月ぶり。ただ2月の黒字額は前年同月比では30.7%減っており、財務省は「先行きの下振れリスクを注視する必要がある」(国際局)としている。
2月の貿易収支は1021億円の黒字だったが、前年同月比では6182億円減少。輸出額は同2.0%減の5兆2477億円。欧州債務危機の影響で欧州向けとアジア向けが減少したが、米国向けの自動車輸出が伸び、減少幅を縮めた。
輸入額は同11.1%増の5兆1456億円。原子力発電所の停止の影響で液化天然ガス(LNG)など燃料輸入の増加が続いている。
旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は、海外旅行に出かける人が増えたため1304億円の赤字。所得収支の黒字は同3.9%増の1兆2430億円だった。
3月の街角景気、8カ月ぶり50超に改善 内閣府、判断上方修正
内閣府が9日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は51.8と前月から5.9ポイント上昇した。改善は2カ月連続で、好不況の分かれ目である「50」を8カ月ぶりに上回った。内閣府は景気の現状に対する基調判断を「持ち直している」へと8カ月ぶりに引き上げた。
現状判断は指数を構成する家計、企業、雇用の全分野で改善。「円安による価格競争力の回復、及び復興需要の顕在化により好調」(四国の一般機械器具製造業)や「輸出企業に製品を収めている中小の下請け企業では稼働率が上がっている」(北陸の税理士)といったコメントが並び、円高一服の好影響が「浸透してきている」(内閣府)ようだ。
また復興需要も引き続き、景気をけん引している。雇用部門では「建設業者から現場作業員を主とした求人申し込みが順調」(北関東の職業安定所)という。さらに株価上昇も消費者心理の改善につながるとの声があった。
本格的な復興や円安進行が、先行きに対する街角の期待を下支えする一方で、原油高などが重荷となってきている。先行き判断指数は同0.4ポイント低下の49.7と3カ月ぶりに悪化。「原油高による材料の値上げや電気料金引き上げによるコスト増が心配」(南関東のプラスチック製造業)とエネルギー価格の上昇を懸念するコメントが並んだ。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は3月25日から月末まで。
次に、経常収支のいつものグラフは下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支を示しており、貿易収支や投資収益収支などの内訳を積上げ棒グラフでプロットしています。右軸の単位は兆円です。

まず、いつものお断りですが、上のグラフは季節調整値を取っている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいた記述となっていますので、やや印象が異なる可能性があります。例えば、記事では貿易収支が黒字とされていますが、グラフではまだ赤字のままだったりします。すなわち、季節変動を除いた基調としては貿易収支はまだ赤字のままです。もちろん、その赤字幅はゼロ近傍まで大幅に縮小したことはグラフから読み取れる通りです。貿易収支の先行きを見通す上で、ここ数年の我が国の貿易収支が赤字化した要因を考えると、以下の5点が上げられます。すなわち、第1に円高、第2にリーマン・ショックに伴う世界需要の大幅な落ち込み、第3に震災やタイ洪水による供給制約、第4に原発の稼働率低下に伴う火力発電向け燃料輸入の増加、第5に原油をはじめとする商品価格の高騰、です。現時点では5番目の原油などの商品市況の動向がもっとも大きなリスク要因と受け止めていますが、日銀の金融政策動向によって左右される為替動向も引き続き潜在的なリスク要因と考えるべきです。

景気ウォッチャー調査結果は上のグラフの通りです。上のパネルは全国の現状判断DIと先行き判断DIの推移を、下は昨年と今年のいずれも3月時点の地域別の現状判断DIを、それぞれプロットしています。引用した記事にもある通り、現状判断DIは8か月振りに50を超えた一方で、先行き判断DIは2月から低下しました。現状判断DIでは家計や企業動向もさることながら、ここ数か月に渡って雇用関連DIが高い水準を続けています。地域別では、グラフに見られる通り、沖縄を例外として東北地方がもっとも高い現状判断DIを示しています。もちろん、震災当月である昨年3月からの変化幅も最大ということになります。記事にもある通り、復興需要にも支えられ、基調判断は、「円高の影響が残るものの、緩やかに持ち直している」から「持ち直している」に上方修正されています。経常収支や貿易収支と同じように、ここでも、先行きリスクは原油などの商品市況と考えられます。
先週金曜日の景気動向指数を見ても、我が国景気は回復局面にあると私は考えていますが、外需に支えられ、国内のマインドも決して悪くありません。消費税増税が目先の期待にどのような影響を及ぼすかは不明ですが、息の長い景気拡大につながるかどうかに注目しています。
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