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2012年5月 8日 (火)

来週発表される1-3月期GDP統計はびっくりするような高成長か?

そろそろゴールデンウィークの雰囲気を振り払って、このブログも本来の経済にテーマを戻したいと思います。ということで、まず、来週発表の1-3月期GDP統計を考えます。すなわち、来週5月17日に2012年1-3月期期GDP速報が内閣府より発表されます。必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。日本総研、みずほ総研、伊藤忠経済研の各機関では先行きについて言及した部分がありますので、それらを中心に取っていますが、それ以外は簡潔に短めの引用となっています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが閲覧、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.8%
(+3.0%)
4-6月期以降を展望すると、①震災からの復旧・復興のピッチ加速に伴う官公需の増加、②政府のエコカー購入支援策や底堅い所得環境による個人消費の堅調な推移、などにより前期比年率+1%台後半の成長となる公算。
みずほ総研+0.7%
(+3.0%)
4-6月期についても、プラス成長を維持する可能性が高い。債務問題への不安が強い欧州向けは低迷が続くが、米国・中国向けを中心に輸出は緩やかな増加が続くであろう。また、復興需要の進捗とともに、公共投資の増勢は今後強まると予想される。エコカー補助金については予算切れによる終了が意識されていることもあり、4-6月期も高水準の自動車販売が続くとみられる。個人消費は高い伸びとなった1-3月期に比べて減速することは避けられそうもないが、前期比プラスは維持するであろう。生産や企業収益の緩やかな回復を背景に、設備投資も増加に転じ、国内需要は全体として拡大を維持する見通しである。
ニッセイ基礎研+0.9%
(+3.5%)
国内需要の伸びが加速したことに加え、10-12月期に大きく落ち込んだ輸出が持ち直し、外需が成長率を押し上げたため、潜在成長率を大きく上回る高成長となった。
第一生命経済研+1.1%
(+4.6%)
輸出の悪化により停滞した2011年10-12月期から一転して高成長が実現する可能性が高い。うるう年要因による押し上げも寄与しているが、それを考慮してもかなりの高成長だ。
伊藤忠経済研+1.2%
(+5.0%)
1-3月期は、タイ特需も寄与した輸出の持ち直しと政策効果による個人消費と公共投資の拡大により、出来過ぎとも言える前期比1.2%、年率5%の高成長に。しかし、4-6月期には減速の可能性が高いほか、1-3月期の成長率が2次速報で下方修正されるリスクもあり、過信は禁物。
三菱総研+0.7%
(+2.8%)
復興需要の顕現化により、内需中心の高めの成長となろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.9%
(+3.5%)
2四半期ぶりにプラスとなり、増加率も比較的大きくなったと見込まれる。復興関連の支出増などを受けて、個人消費や公共投資などの内需が好調に推移したことが背景にある。

ごく簡単に言うと、1-3月期は一時的な需要拡大要因によりかなりの高成長、4-6月期も鈍化するもののプラス成長、ということになります。まず、1-3月期の高成長については、いくつか特殊要因が上げられます。第1に、タイ洪水に起因する供給制約からのリバウンドで輸出が増加します。第2に、エコカー補助金の復活により消費が増加します。第3に、ようやく復興需要が顕在化し公共投資が増加します。そして、4-6月期に目を転じると、この3つの一時的な需要拡大要因はサステイナブルではないため早い時期に剥落しますので、成長率は一気に鈍化します。特に、政策要因の復興需要の経済化とエコカー補助金は、政策目的が明確ですから、基本的にポジティブに評価すべきですが、持続性に欠けるわけですから反動減を生じる可能性も見落とすべきではありません。もしも、政策効果による需要増が一時的と見切られれば、雇用や設備投資の要素需要には結びつかない可能性も否定できません。家電エコポイントや地デジ切換えによる大規模な需要の先食いを生じたテレビの売行きを見れば明らかです。政策の制度設計に失敗しているとは思いませんが、特定の財に対して特定の時期だけ補助金を出す政策の限界と考えるべきです。

来週の1次QEまでに、明後日には3月の国際収支統計が発表されますので、場合によっては1次QE予想を見直すシンクタンクもあるかもしれません。基本的に景気は回復局面にありますが、夏場に向けて減速する可能性も否定できません。

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