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2012年7月31日 (火)

5回の長打攻勢を見ると打線の爆発はホンモノか?

  HE
ヤクルト200000000 281
阪  神00014200x 7140

相変わらず、単に順番を入れ替えただけのスタメンで、しかも初回から先制点を東京ヤクルトにプレゼントする苦しい展開だったので、私は余り熱心には観戦しなかったんですが、5回の長打攻勢は打線がホンモノになったんではないかと期待させるに十分でした。まだまだ一時的な外れ値のような気もしますが、期待は膨らみます。何度も騙された単純な阪神ファンの性です。

明日も、
がんばれタイガース!

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量的な改善を示す雇用統計から何を読み取るか?

今日は月末の閣議日だったため、総務省統計局の失業率、また、厚生労働省の有効求人倍率毎月勤労統計などの雇用統計が発表されました。すべて6月の統計です。失業率は前月から0.1%ポイント改善し、有効求人倍率も0.1ポイント上昇しており、量的に見て雇用は着実に改善を示しています。ただし、先行指標の新規求人数は減少し、所定外労働時間や賃金は低下しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

厚労相「雇用、依然厳しい」 6月の完全失業率4.3%
総務省が31日発表した6月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下し2カ月連続で改善、9カ月ぶり低水準の4.3%となった。厚生労働省が同日発表した6月の有効求人倍率(同)は0.82倍で前月を0.01ポイント上回り、2008年9月以来の高水準となった。景気の持ち直しを背景に雇用情勢が改善している。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合を示す。男性が横ばいの4.5%、女性が0.3ポイント改善し4.0%で6カ月ぶり低水準だった。
完全失業者数は281万人で、前月に比べ8万人減った。新たに仕事探しを始めた人を含む「その他の者」が10万人減った。職探しをしていた人が徐々に就業しており、「就業者が増加して失業者が減る良い形の失業率改善」(総務省)は2月以来4カ月ぶりだ。就業者数は6272万人で27万人増えた。非労働力人口は4538万人で18万人減った。
ただ、労働市場の先行きを映す新規求人倍率は1.32倍で前月を0.03ポイント下回った。円高の影響で製造業の新規求人数(原数値)が2年6カ月ぶりに前年同月比1.1%減少したため。小宮山洋子厚労相は閣議後の記者会見で「雇用は持ち直しているが依然厳しい」と指摘、被災地の雇用情勢や円高の影響を注視していく考えを示した。
6月の所定内給与0.2%減 2カ月ぶり減少
厚生労働省が31日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給や家族手当を含む労働者1人当たりの所定内給与は前年同月比0.2%減の24万4629円となった。減少は2カ月ぶり。一般労働者より賃金水準の低いパートタイム労働者が増えたことが影響した。
所定内給与に残業代などを加えた現金給与総額は43万2756円で0.6%減少だった。「特別に支払われた給与」が東日本大震災後に落ち込んだ前年度の業績を反映し、今夏のボーナスが減ったことが影響した。
残業代を含む所定外給与は4.1%増の1万8332円となり、9カ月連続で増えた。景気との連動性が高い製造業の所定外労働時間は13カ月連続で増えたものの、2カ月続けて10%を超えていた伸び率は5.3%に鈍化した。総労働時間は平日が1日少なかったため0.5%減の151.5時間だった。

次に、いつもの雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をそれぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

雇用統計の推移

先行指標の新規求人数は悪化したものの、失業率、有効求人倍率が改善し、雇用統計は全体として改善を示していると私は受け止めています。失業率の低下も雇用者数の増加にサポートされていて、いわゆる就職を諦めた層の労働市場からの退出ではありませんから、いい姿ということが出来ます。しかし、季節調整していない原系列の統計を用いて主な産業別就業者を前年同月と比べると、卸売業・小売業、運輸業・郵便業などが減少した一方で医療・福祉などが増加しており、正規雇用が増加しているようには見えません。医療や介護の現場の低賃金労働の需要が雇用をリードしているのではないかと私は想像しています。

毎月勤労統計の推移

毎月勤労統計の所定外労働時間と現金給与総額をプロットした上のグラフを見ると賃金は減少しており、引用した報道にもある通り、賃金水準の低いパートタイム労働者が増えたことが影響していることは明らかです。私が雇用を重視するのは2点の理由があり、第1は消費の原資となる収入です。賃金単価かける就業者数になりますから、雇用が増加しても賃金が低下すれば、その効果は相殺されます。第2は幸福度です。失業状態になれば幸福度が大きく減じることは既存の研究などから明らかです。何らかの収入のある職についており社会に貢献しているという自負は幸福感を高めること間違いありません。単なる収入であれば年金でも生活保護でも何でもいいのかもしれませんが、社会貢献や仲間とのつながりを考えに入れると、decent な雇用を増加させることは政府の重要な役割と考えるべきです。パートタイムなどの非正規雇用は賃金が低くて収入として不足する可能性がある上に、社会貢献などを通じた幸福感の観点からも不十分なことから、両方の観点から質が高くて decent な雇用の増加が望まれます。

繰返しになりますが、量的には雇用は着実に増加して改善を示しています。質的に decent な雇用の増加が進むような、同時に、若年層の雇用促進につながるような積極的、すなわち、affirmative な労働政策が必要です。

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2012年7月30日 (月)

鉱工業生産の動きは一時的な要因か、基調として景気転換点に近づいているのか?

本日、経済産業省から6月の鉱工業生産指数が発表されました。ヘッドラインとなる生産の季節調整値は前月比で▲0.1%の減産を示す92.1となりました。3か月連続の前月比マイナスを記録し、統計作成官庁である経済産業省は基調判断を下方修正しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを伝える記事を引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産、3カ月連続マイナス 基調判断を下方修正
経済産業省が30日発表した6月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)速報値は、前月比0.1%低下の92.1だった。マイナスは3カ月連続。世界景気の減速傾向などを背景に海外向け普通乗用車や国内向け自動車部品の生産が落ち込み、輸送機械工業が4.3%減ったことが影響した。電子部品・デバイス工業が5.6%増えたが、マイナス分を補いきれなかった。
経産省は「東日本大震災後の昨年6月(92.8)を下回っており、海外向けの生産が伸び悩んでいる」と指摘。基調判断を「持ち直しの動きで推移している」から「横ばい傾向にある」に下方修正した。下方修正は昨年9月以来。QUICKが27日時点で集計した民間の予測中央値は1.6%上昇だった。
業種別では16業種のうち10業種がマイナスだった。電気機械工業は輸出向けの太陽電池モジュールが落ち込み、3.6%減少。鉄鋼業は海外向けのパイプライン用鋼材や自動車用鋼帯が減り、3.3%減だった。
出荷指数は1.5%低下の93.7で2カ月連続のマイナス。乗用車や鋼材に加えて、一般機械工業で半導体製造装置の海外向け出荷が減った。在庫指数は1.4%低下の107.3、在庫率指数は4.0%上昇の123.4だった。
製造工業生産予測調査では、7月が4.5%上昇。電子部品・デバイス工業での年末商戦に向けた作り込みや、情報通信工業での新製品の投入効果を見込む。一方で8月は0.6%低下。電気料金の引き上げに伴い非鉄金属工業で操業を控える動きがみられそうだ。
併せて発表した4-6月期の鉱工業生産指数は前期比2.2%低下の93.2で、4四半期ぶりのマイナスだった。

次に、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100の指数そのもの、下のパネルは輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷指数です。

鉱工業生産指数の推移

鉱工業生産指数は、昨年3月の震災から年央にかけてV字回復を示した後、ほぼ横ばいで推移して来たんですが、ここ3か月連続で減産が続き、4-6月の四半期でも当然ながら減産となり、引用した記事にもある通り、基調判断が下方修正されています。市場の事前コンセンサスがそれなりのプラスだったこともあり、相当程度のネガティブ・サプライズと受け止められています。輸出向けの生産が落ちているのが目につきます。ただし、これも引用した記事にある通り、製造工業生産予測指数では7月は+4.5%の増産と大きなリバウンドを示しています。従って、海外要因や6月の天候要因などに起因する一時的な下振れなのか、基調的に景気転換点に向かう動きなのか、判断が難しいところです。統計作成官庁である経済産業省は基調判断を下方修正しましたが、私としてはもう少し今後の推移を見たいところです。

在庫循環図

ということで、4-6月期の四半期データが公表されたこともあり、上のグラフの通り、久し振りに在庫循環図を書いてみました。緑色の矢印で示した1999年1-3月期は第3象限の45度線上方から書き始めた在庫循環図は、この2012年4-6月期には黄色の矢印まで達しました。今年1-3月期は一度第1象限45度線の下方に達したのですが、4-6月期には45度線の上方に復帰しました。内閣府のメモ「鉱工業の在庫循環図と概念図」にある通り、景気の山では在庫循環図が第1象限45度線を上から下に超えますので、現在の日本の景気は景気転換点近傍にあると考えることも出来ます。もちろん4-6月期のように45度線から上にシフトする可能性も否定できません。しかし、少なくとも、現在の景気は循環の局面としては、いわゆる「若い局面」ではないと考えるべきです。
鉱工業生産指数は典型的かつ極めてウェイトの大きい景気の一致指数です。業種別や財別で細かくマイクロな要因を分析することも重要ですが、経済動向の方向性との関係でマクロの景気局面を探る上でも重要な段階に差しかかりつつあるのかもしれません。私自身としては景気の腰折れを懸念する段階ではないと受け止めていますが、手放しで楽観できる情勢でないことも確かです。

最後に、鉱工業生産指数を離れて、本日、国家戦略会議が開催され、「日本再生戦略案」が決定されています。明日の閣議にかかって案が取れ「日本再生戦略」となる予定となんだろうと思います。医療・介護、環境・エネルギー、農林水産業を重点分野と位置付け、2020年までの詳細な工程表を含んでいます。ただし、TPPに関しては明確な方向性に欠けると私は受け止めています。果たして、この「日本再生戦略」は decent な雇用の増加をもたらすんでしょうか。

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2012年7月29日 (日)

4ホーマーでDeNAに打ち勝ちようやく連敗ストップ!

  HE
D e N A100001000 250
阪  神00050121x 9101

今夜のスタメンを見て、私は試合を見る気を失いました。よって、今まで長々と入浴していました。単に順番を入れ替えただけで若手は絶対に使わないと決意したスタメンだと感じてしまいました。それでも、何とか4ホーマーで大勝して連敗ストップはめでたい限りです。
今シーズンの残り試合はこんな感じで、決して若手は使わずに現有戦力でダラダラ行くんでしょうね。私は阪神の試合に対する興味を失うかもしれません。虎ブロのアップは少なくなりそうです。

もはやどうでもいいけど、
がんばれタイガース!

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下の子と夏休みの課題図書を買いに出かける

今日はおにいちゃんが朝早くからクラブの仲間と幕張メッセで開催されているワンダーフェスティバルに行ってしまいました。取り残された私と下の子は、昼食後、本を買いに山手線のターミナル駅まで出かけて、そのあたりでもっとも大きい書店を訪れました。夏休みの課題図書を買うためです。高校生のおにいちゃんとは2人で軽く話し合って、「三浦しをんの『舟を編む』がいいだろう」ということで即決しましたが、下の子が通う中学校は少し趣向が違って、「岩波文庫の緑帯の中から選ぶ」と指定されているらしいです。岩波文庫の緑帯ということですから、近現代の日本人作家の作品ということになります。明治時代の夏目漱石や森鴎外あたりから始まって、昭和の芥川龍之介くらいでしょうか。戦後の三島由紀夫は岩波文庫に収録されていないのは有名です。「左翼の岩波書店が右翼の三島を嫌っている」とまことしやかな噂を聞いたこともありますが、真偽は不明です。
「コレ」という作者や作品がピンポイントであれば、図書館で借りるなりブックオフなどの中古品を探すのも手でしたが、下の子の意識として「いっぱい並んでいる中から選びたい」という、極めて私と同じような傾向がありましたので、大きな書店を選んで出かけました。私もズラッといっぱい並んでいる中から選びたい方です。ですから、地方大学に勤務して大きな書店が限られ、ピンポイントで生協に学術書を注文するのは苦手でした。東京に戻って図書館をよく利用しているのは、収納場所に窮して止むに止まれずというのもありますが、経済書については「エコノミスト」、「東洋経済」、「ダイヤモンド」などの経済週刊誌の書評欄を参考に、文芸書については新聞の毎週日曜日の書評欄を参考に、それぞれチョイスしています。従って、出遅れると大きく待たされることになります。

三遊亭円朝作『怪談 牡丹燈籠』(岩波文庫)

結局、季節がらも考えて私が強くオススメしたのは上の画像の三遊亭円朝作『怪談 牡丹燈籠』です。文学作品と呼べるかどうか怪しいと感じたんですが、心優しくスポンサーの意向に忠実な下の子は、この『怪談 牡丹燈籠』と定番文学作品2冊と合わせて3冊を買い求めて帰宅しました。

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2012年7月28日 (土)

今夜もDeNAに完敗して7連敗となり借金14で最下位まで4ゲーム差!

  HE
D e N A201000000 340
阪  神000001000 181

昨夜は伊藤隼外野手をスタメンに使い2安打と期待に応えましたが、左投手が先発と聞いただけで今夜はスタメン落ちでした。1安打でも延々とスタメンに名を連ねる既得権を持つベテラン利権と2安打でもスタメン落ちさせられる哀しいドラ1の差が垣間見えました。引き続き、和田監督は本格的に若手の生え抜きを起用するつもりはないようです。それなら和田監督に休養してもらって、若手を起用して来シーズンを見据えた戦いをお願いしたいものです。

明日こそ、負けてもいいので、
若手を使いましょう!

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この夏休みのオススメ経済書は何か?

来週からいよいよ8月に入り、本格的に夏休みを取るサラリーマンも増えそうです。テーマパークやリゾートなどもいいんですが、我が家では子供達も大きくなり一家で出かけることもなく、のんびりと過ごす夏休みになりそうです。ということで、ご同様に、のんびり過ごす夏休みに向けて、今年上半期くらいのオススメ経済書を紹介したいと思います。前々からやってみたかったんですが、ややエラそうな気がしないでもなかったですし、そもそも読書量にさほど自信があるわけでもなく、加えて、大学の教員だったころは私が勧める本は大学生が読むには少し難しい気もして、ついつい、いままで経済書の読書案内は取り上げたことがありませんでした。でも、思い切って、5冊ほど紹介したいと思います。なお、ズボラなことながら買ってあってもまだ読んでいない本もあったりします。悪しからず。まず、一覧は以下の通りです。

深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞)

深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞) はすでに7月12日付けのエントリーで軽く触れましたが、我が国経済の長期低迷に関して、生産性分析の大家が取り組んでいます。リアル・ビジネス・サイクル(RBC)的な議論のひとつであり、金融はまったく議論の外に置かれており、生産性停滞や資本収益率低迷の下で、大幅な金融緩和による投資促進策を取れば、無駄な投資を生み出して「バブル経済」を再来させる危険が高く、持続性に欠ける、といった旨を繰り返し主張しています。

祝迫得夫『家計・企業の金融行動と日本経済』(日本経済新聞)

祝迫得夫『家計・企業の金融行動と日本経済』(日本経済新聞) は深尾教授の分析に対して、同じマイクロな経済主体の家計と企業の金融行動から日本経済を分析しています。なお、この本の前書きによれば、深尾教授と祝迫教授は同じ建物の同じフロアに研究室があるらしいです。この本のテーマは家計の貯蓄率低下と企業の貯蓄率上昇、特に、p.111 にある通り、バブル崩壊後の「失われた20年」における一つの特徴は、企業が負債返済を含めて貯蓄率を上昇させた際、労働分配率を大きく引き下げたことにより、非正規雇用がとてつもなく広がり格差が拡大した点であり、この雇用面への影響が無視されるべきではありません。深尾教授の本も、祝迫教授の本も、フォーマルな定量分析を基調としており、参考文献も豊富です。私が大学教員をしていれば大学院のテキストにしたかもしれないと感じました。

サックス『世界を救う処方箋』(早川書房)

サックス『世界を救う処方箋』(早川書房) もすでに7月5日付けのエントリーで取り上げています。詳細はソチラで取り上げましたので、ごく簡単に済ませると、リバタリアン的な市場原理主義を排して、市場における適切な政府の役割を認め、効率性、公平性、持続性の3点を経済の基本に据えて論を進めています。特に、長期的な生産性や所得の向上の観点から教育に力点を置いているのはひとつの見識であると受け止めています。

クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房)

クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房) はまだ読中で読み終わっていないんですが、有名なケインズ卿の言葉「長期には我々はみんな死んでいる」"In the long run we are all dead," を引いて短期に議論を集中し、金融政策が流動性の罠にあって無効となった際には財政出動が経済政策の主体になるとし、失業などの遊休資源を生じるムダを排除することに経済政策の主眼を置いています。少し前までの私と同じで財政赤字には極めて楽観的であり、市場金利が上昇していない限り財政のサステイナビリティに心配はないとの態度を取っています。まだすべて読み終えたわけではありませんが、私の従来からの主張にかなり近いと受け止めています。ただし、英語の原書は見ていませんが、少なくとも日本語訳には参考文献がありません。webサイトで探しましたが、私の探し方が悪いのか見つかりませんでした。画竜点睛を欠いていると感じざるを得ません。

スティグリッツ『世界の99%を貧困にする経済』(徳間書店)

最後のスティグリッツ『世界の99%を貧困にする経済』(徳間書店) はオススメ経済書に取り上げておきながら、実はまだ読んでいません。さすがに、一応、買ってあります。上の本の画像に見られる通り、英語の原題は The Price of Inequality であり、ウォールストリート占拠のデモなどで示された不平等の問題を取り上げているものと認識しています。意図したわけではありませんが、ここで取り上げた経済書のうち、我が国のエコノミストの本はやや保守的な傾向がある一方で、米国のエコノミストの本は3冊とも非常にリベラルな観点を提供しています。日米の世論動向を反映しているのかもしれません。

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2012年7月27日 (金)

甲子園で最下位DeNAにも完敗して6連敗!

  HE
D e N A000003101 591
阪  神001000000 1101

ようやく伊藤隼外野手をスタメンに使いましたが、too little too late としかいいようがありません。いつもの通り、ヒットは出るものの決定力なく、新井良内野手も打棒は真っ逆さまな下り坂な上に、守備の綻びも大きく毎日エラーを記録し、もはや戦力とは見なせません。投手も野手も総取換えで、若手を起用して来シーズンを見据えた戦いをお願いしたいものです。

明日こそ、負けてもいいので、
若手を使いましょう!

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マイナスの続く消費者物価と減少に転じた商業販売統計

本日、総務省統計局から消費者物価指数が、また、経済産業省から商業販売統計が、それぞれ発表されました。いずれも6月の統計です。消費者物価上昇率は先月に続いてマイナスを記録し、商業販売統計は前年同月比で見て大きく減速し、季節調整済みの前月比で減少に転じました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月全国消費者物価、2カ月連続マイナス ガソリン下落が響く
総務省が27日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2010=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比0.2%下落の99.6だった。マイナスは2カ月連続。デフレ基調が根強いなか、足元のガソリン価格の下落が響き、下落幅は前月から0.1ポイント拡大した。
総務省は足元の物価動向に関して「ガソリンなどエネルギー関連以外は大きな変化がない」と指摘、「全体としては横ばいの動き」との見方を据え置いた。
項目別にみると、国際商品市況の悪化を背景にガソリンは3.2%下落と09年11月以来2年7カ月ぶりにマイナスへ転じた。テレビは6.1%下落と2カ月連続でマイナスだったほか、電気冷蔵庫が29.1%下落するなど家電製品の価格低下も影響した。
生鮮食品を含む総合は0.2%下落の99.6と6カ月ぶりのマイナスだった。ガソリン安に加えて、きゅうりなど生鮮食品も値下がりしたことが物価下落に拍車をかけた。食料とエネルギーを除くベース(欧米型コア)は0.6%下落の98.6だった。
先行指標とされる東京都区部の7月のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が98.9と0.6%下落。ガソリンのほか、テレビやルームエアコン、家賃の下落を反映した。
6月の小売販売額、0.2%増 大型既存店は2.6%減
経済産業省が27日朝発表した6月の商業販売統計速報によると、小売業販売額は前年同月比0.2%増の11兆1630億円で、7カ月連続の増加だった。自動車などの販売が堅調だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で2.2%減の1兆5683億円。既存店ベースの販売額は2.6%減だった。うち百貨店は1.2%減、スーパーは3.3%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は1.5%増の7818億円。既存店ベースは2.7%減だった。

次に消費者物価上昇率のいつものグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが戦線食品を除く全国総合のコアCPI、赤が食料とエネルギーを除く全国総合のコアコアCPI、グレーの折れ線が東京都区部のこコアPIの、それぞれの前年同月比上昇率をプロットし、積上げ棒グラフは青い折れ線の全国コアCPI上昇率に対する寄与度となっています。なお、いつものお断りですが、CPI上昇率や寄与度は統計局では端数を持った指数で計算されていますが、一般には公表されていませんので、下のグラフでは端数を持たない指数から計算しております。従って、微妙に統計局発表の計数に基づくグラフと異なる可能性があります。

消費者物価上昇率の推移

全国のコアCPI上昇率は3月の+0.3%を直近のピークにして、そのごジワジワと下がり続けて、6月には▲0.2%まで来ました。上のグラフの青い折れ線グラフは示す通りです。そして、青い折れ線グラフと黄色い棒グラフが今年上半期でほぼシンクロしているのが見て取れます。要するに、ここ半年くらいは、エネルギー価格により消費者物価が決まっているといっても差し支えありません。その意味で、上に引用した記事にある統計局のコメントはまったく正しいという気がします。なお、プロットしていませんが、為替の円レートとともある程度の相関は見られるかもしれません。長期には購買力平価説のように物価が為替レートを決めるとしても、短期には為替レートの動向が輸入物価を通じて消費者物価に反映されると考えるべきです。

商業販売統計の推移

商業販売統計も大きく減速しました。小売販売はGDPベースの個人消費につながる統計ですが、季節調整していない原系列の前年同月比上昇率では3月の+10.3%増をピークに、6月は+0.2%までプラス幅が縮小しました。季節調整済みの指数系列では2月の104.3をピークに6月の102.1まで傾向的に下げています。ただし、まだ消費水準が高くて底堅い印象を私は持っていますが、6月の統計については、6月20日の台風4号の上陸をはじめとする天候不順による一時的な落ち込みか、前年比でマイナスが確実な夏季ボーナスなどの所得や景気全般の動向を反映した基調的な落ち込みか、ここまでの統計だけでは判断しかねています。先月も消費は "Half Full, Half Empty" と評価しましたが、やや後者に傾いた気はするものの、まだまだ水準が高くて底堅いとの前者の見方も捨てがたく、いずれにせよ統計的に確たる裏付けが取れる段階ではありません。

来週は生産統計や雇用統計などが発表され、来月には6月までの統計を基に4-6月期のGDP1次速報、いわゆる1次QEが発表されます。消費も含めて、我が国経済が一時的な足踏みを示しているのか、それとも、基調的な転換点に差しかかりつつあるのか、エコノミストが見極めるべきポイントに達しつつある気がします。

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2012年7月26日 (木)

いつもの選手がいつもの采配で中日に負けてまだまだ連敗が続く!

  HE
阪  神000010000 161
中  日00001102x 4100

後半戦に入っても、相変わらず、代打・代走でチョロチョロ使う以外は、絶対に若手を登用しない和田采配が続いています。既得権を持つ選手の間で単に打順を入れ換えるだけでなく、1軍と2軍で選手を入替えないと競争は生まれませんし、チームに活気も出ません。成績以外の部分で試合に出られるかどうかが決まるんではチームの士気に影響します。私の頭の中では、今年の和田=昨年の真弓の図式が完全に出来上がってしまいました。

明日は、
どうせ負けるのなら若手を使いましょう!

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田中直毅『政権交代はなぜダメだったのか』(東洋経済) を読む

田中直毅『政権交代はなぜダメだったのか』(東洋経済)

田中直毅『政権交代はなぜダメだったのか』(東洋経済) を読みました。なお、著者は正確には田中直毅・国際公共政策研究センターとなっています。まず、目次は以下の通りです。

第1章
「3.11」で浮かび上がった行政の機能不全
第2章
民営化後に翻弄される日本郵政
第3章
日本の三農問題を考える
第4章
一人ひとりと向き合うためのマイナンバー
第5章
政府の再設計と政府赤字の封じ込め

2年ほど前の小峰隆夫『政権交代の経済学』(日経BP) では、ホテリングのアイスクリーム・ベンダー問題を援用して、政権交代後の政策に類似性が生まれると指摘されましたが、この『政権交代はなぜダメだったのか』では、タイトルから明らかな通り、政権交代は明確に「ダメ」と位置付けられています。当然です。著者は小泉内閣の竹中大臣が推し進めた構造改革路線のブレーンだった田中直毅さんですし、その田中さんが理事長を務める国際公共政策研究センターの顧問は元総理大臣の小泉純一郎さんだったりします。ですから、目次にあるような諸政策について、バッサリと政権交代後の民主党政権の政策を切って捨てています。逆に、この本で取り上げられていない政策、例えば、子ども手当などは評価されている可能性もあるのかもしれない、などと、ナナメ読みしたりしています。この本で取り上げられた現政権の政策に対する批判については、かなりていねいに批判されており、多くの国民の賛同を得られるのではないかと私は考えています。特に、最終章の政府赤字をガバナンスの観点から解き明かすのは分かりやすいと受け止めています。
ある一定の意図を持たせたプロパガンダの要素を含んではいますが、明快な論旨の展開や豊富な事例の紹介は大いに私も評価します。しかし、副題にあるように、現政権の政策の対極にあるのが構造改革かどうかは、もう少し検討が必要ではないかと疑問が残らないでもありません。もちろん、他の条件が一定ではないものの、官庁エコノミストとして、構造改革を進めていたころの日本経済がもっとも活気があったことを否定するつもりは毛頭ありません。

かなり多くの図書館に所蔵されていますし、手軽に読める本です。政権交代に肯定的な見方をする人も、否定的な人も、あるいは、まるっきり無関心な人も、何かのチャンスがあれば読んでみて損はないと思います。

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2012年7月25日 (水)

いつもの選手がいつもの采配で中日にボロ負けしてまだまだ連敗が続く!

  HE
阪  神000000000 042
中  日00013002x 6120

相変わらず何の進歩もない和田采配が続き、タイガースはドラゴンズにボロ負けして連敗街道を驀進しています。和田監督は何が何でも、絶対に若手は使わないと固く心に決めていて、野手陣も投手陣も既得権益を持った利権集団だけが試合に出場できるようです。FAやトレードで集めた選手は成績がどうであれスタメンに名を連ねるんですが、生え抜きの若手は和田マジックにかかると試合にすら出してもらえないようです。何だか、タイガースの試合を観戦するのも時間のムダのような気がして来ました。競争がなくて向上心のない選手を見ていて楽しくも何ともありません。

明日は、
がんばれタイガース!

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本日発表された貿易統計から何を読み取るか?

本日、財務省から6月の貿易統計が発表されました。輸出も輸入もともに前年同月比で減少し、差引き貿易収支は季節調整していない原系列で見て616億円の黒字を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用するんですが、私は1-6月の半期は興味がありませんので、最後の3パラだけ引用すると以下の通りです。

1-6月の貿易赤字、過去最大 6月は黒字に
財務省が同日発表した6月の貿易収支は616億円の黒字に転じた。原油価格の下落が主因で、円建ての通関単価は前年同月比で19カ月ぶりにマイナスになった。全体の輸入額は2.2%減の5兆5821億円と30カ月ぶりに減少した。
輸出も海外経済の減速感が強まり、2.3%減の5兆6438億円と4カ月ぶりに減った。鉱物性燃料や半導体などの電子部品の輸出が減った。自動車は8.6%増えたが、伸び率は前月に比べて鈍化した。
先行きについては「海外経済の減速による輸出の鈍化と輸入水準の高止まりで、明確な黒字基調に戻るまでにはまだ時間がかかる」(大和総研の熊谷亮丸氏)との見方が多い。

次に、いつもの貿易統計の推移のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支をプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列を、下は季節調整済みの系列をそれぞれ取っています。

貿易統計の推移

上の原系列のグラフでは、6月の貿易統計では、輸出が増加して輸入が減少し、結果として貿易黒字となったように見えますが、下の季節調整済みの系列では輸出入ともに減少し、貿易赤字が継続している形となっています。震災の2011年3月以降ずっと貿易赤字が続いています。6月の貿易赤字は5月から縮小したものの、赤字であることに変わりありません。私を含めて、多くのエコノミストは貿易統計の傾向として後者の印象を強く持っていると言って差し支えありません。

輸出の推移

今日のデータを見て、季節調整していない原系列ながら、前年同月比の伸び率を見るだけでなく、水準を確かめる必要を感じて、上のグラフを作成してみました。本邦初公開かもしれません。上のパネルは輸出数量指数の推移、下は主要な地域別輸出額の推移です。輸出数量は2008年のリーマン・ショックを経て、2010年からほぼ100近傍で横ばいの状態と見受けられます。毎月の変動は当然にあるものの、ならしてみれば輸出数量はここ2年ほどで増えていないわけです。数量ベースと金額ベースの違いは頭に入れておくべきですが、リーマン・ショックから回復した後の2010年以降くらいで地域別輸出金額を見ると、アジア向けがほぼ横ばい、EU向けがやや減少傾向、強引ながらも上向きに見えるのは北米向けの輸出だけという状態です。
ですから、我が国の輸出が伸びているわけではなく、6月のように貿易赤字が縮小したとすれば、輸出以上に輸入が落ちているわけです。すなわち、原油などの資源や商品価格が低下しているために輸入金額が減少した、と私は受け止めています。資源価格の低下は中国をはじめとする新興国経済の減速を反映している可能性が高く、我が国の輸出もすでにやや減少傾向にある欧州向けに続いてアジア向けも横ばいから減少に転じる可能性を否定できません。いずれにせよ、6月貿易統計の貿易収支の黒字化や赤字幅縮小は、世界経済の視点からは必ずしも好ましくない縮小均衡に向かう可能性を見落とすべきではありません。少なくとも、輸出がリーマン・ショック前の増加基調を失った点については認識すべきであり、輸出が低調な理由は円高である可能性が高いと私は受け止めています。

中央銀行の金融政策は為替を通じて貿易に影響を及ぼし、ラグはそれなりに長いものの、実物経済への何らかの効果は無視できるはずもありません。日銀政策委員に民間エコノミストから金融緩和の議論を展開していた2人が加わりました。私は大いに期待しています。

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2012年7月24日 (火)

厚生労働省の雇用政策研究会の報告書案から若年雇用を考える

昨日、厚生労働省の雇用政策研究会が開催され、報告書案が審議されています。メディアの論調では労働力受給推計が注目されているようですが、ほかにもいろいろと盛りだくさんな内容を含んでいますので、1日遅れながら、今夜のエントリーで図表を中心に簡単に取り上げておきたいと思います。といいつつ、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

雇用「つくる」に軸を 厚労省政策研究会が報告書を公表
厚生労働省の雇用政策研究会(座長・樋口美雄慶大教授)は23日、日本がゼロ成長で労働市場改革が進まない場合、2030年の就業者数が10年に比べて約850万人減るとの推計を正式に示した。同日とりまとめた報告書では、日本の成長を実現するための雇用政策として(1)成長を担う産業の育成と一体となった政策の推進(2)地域雇用の創出(3)若年層の就労支援が重要だと指摘した。
報告書では、雇用を「まもる」から「つくる」「そだてる」「つなぐ」に軸足を移すことが重要だと指摘した。地域雇用の創出には、製造業への過度な依存を改め、観光や医療・介護など不況期にも雇用機会が確保されるような産業構造の多様化が必要だとした。そのうえで、地域の大学とも連携して、企業の求めに応じた人材を育てる訓練制度や育成支援が必要だとまとめた。
厚労省は報告をもとに、今後の具体的な政策を検討する。

まずは、何はともあれ、もっとも注目度の高い就業者数のシミュレーション結果は以下のグラフの通りです。「報告書案概要」から引用しています。

2030年までの就業者数のシミュレーション

見れば明らかですが、一番左の棒グラフで示された2010年の実績の就業者数6298万人に比較して、一番右の2つの棒グラフにある2030年のケースは経済成長と労働参加が適切に進まなければ5453万人と▲845万人の減少と試算される一方で、経済成長と労働参加が適切であれば6085万人と▲213万にの減少で済み、その差は632万人となります。シミュレーションの詳細は「労働力需給推計の概要」で明らかにされていますが、需要サイドのポイントは成長率と物価上昇率です。すなわち、内閣府の「経済財政の中長期試算」に基づいており、成長戦略シナリオでは平均成長率は名目3%程度、実質2%程度、消費者物価上昇率は中長期的に2%近傍と前提しているのに対して、慎重シナリオでは平均成長率はで名目1%台半ば、実質1%強、消費者物価上昇率は中長期的に1%近傍と設定しているほか、2016年以降の成長率も物価上昇率もゼロと置いたゼロ成長シナリオも含んでいます。

初職における正規比率

他方、供給サイドのポイントは若年対策とワーク・ライフ・バランス関連施策だと私は考えています。もちろん、女性のM字カーブ対策、高齢対策なども重要なのでしょうが、特に私が注目したのは、若年には非正規雇用しか生み出さない現在の高齢者超優遇雇用システムをいかに変えて行くかです。例えば、上のグラフは同じく「報告書案概要」から引用していますが、大卒男性の場合、ここ20年で初職の正規比率が一貫して低下し20%ポイントも下がりました。上のグラフの他に高卒男女のグラフもあるんですが、高卒男性の場合は20年間で26%ポイントの著しい低下を示しています。そうでなくても、年金などの社会保障で大きな世代間格差を生じている現行の経済社会システムでは、affirmative で逆差別的な若年対策を採用することが必要だと私は考えています。それも、シルバー・デモクラシーに阻まれて、政治の目は一向に若年に向こうとはしません。ジョブサポーターやジョブカフェはどこまで効果的なんでしょうか。まさか、天下り役人の受入れ先になっているだけ、なんてことはないと思いますが、ジョブサポーターの支援により大卒内定率が3.9%ポイントの押上げ効果があった、との試算は疑わしいと私は受け止めています。なお、供給サイドで私が重要と考えるワーク・ライフ・バランスに関する記述は「報告書案」にほとんど見当たりません。どうなっているんでしょうか。私が見落としているだけなんでしょうか。

最後に、広く報じられている通り、ムーディーズのアナウンスメントによれば、ドイツのソブリン・レートの見通しをネガティブに引き下げました。世界経済は若年雇用に厳しい方向に向かっているのかもしれません。

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2012年7月23日 (月)

今週末に始まるロンドン・オリンピックに期待する!

いよいよ今週金曜日の7月27日にロンドン・オリンピックが開幕します。もっともロンドン時間で金曜日の午後9時だか、9時半だかに開会式が始まりますから、日本時間では土曜日未明という計算になります。ということで、かなり古い話題ですが、電通総研が3月から4月にかけてオリンピックに関する調査リポートを2本出しています。今夜はオリンピックの開幕を祝って簡単に取り上げたいと思います。引用元は以下の2本の電通総研のリポートです。

表1 ロンドンオリンピックによる消費押し上げ効果

まず、エコノミストとして気にかかる経済波及効果については、直接的な消費押上げ効果は3,687億円ですが、波及効果を含めればその約2.18倍の計8,037億円と試算されています。上の表は「ロンドンオリンピックによる経済波及効果」の表1 ロンドンオリンピックによる消費押し上げ効果を引用しています。この経済効果は4年前の北京オリンピックと比較して約3割少なく、時差が大きいことやテレビの地デジへの切換えがほぼ終了していることなどが影響しているようです。もちろん、日本代表選手・チームの予想外の健闘があって盛り上がった場合、さらなる消費押上げ効果の拡大が期待できるのは言うまでもありません。

(表3) 見ていて盛り上がるオリンピック競技

次に、「ロンドンオリンピックへの期待や観戦スタイル」のリポートから、メダルを期待していたり、応援するのは、ともにトップがなでしこジャパンの女子サッカーなんですが、上のグラフは (表3) 見ていて盛り上がるオリンピック競技を引用しています。なでしこジャパンのサッカーや平泳ぎの北島選手が出場している水泳などが上位に入っています。ちなみに、私は錦織選手が出場するテニスを注目していたりします。

(表6) オリンピック中、試合を観戦しながらのソーシャル・メディア利用

最後に、同じ「ロンドンオリンピックへの期待や観戦スタイル」のリポートでは、北京オリンピックから4年を経て大きく普及が進んだソーシャル・メディアについて質問しています。上のグラフは (表6) オリンピック中、試合を観戦しながらのソーシャル・メディア利用を引用しています。Facebook、mixi、twitterなどのソーシャル・メディアへの書込みは4年前と比べてかなり増加すると予想されています。年代別には20代が多いのは当然ですが、意外と50代よりも60代の方が多かったりします。

もちろん、オリンピック観戦は自宅でテレビがトップの87.5%を占め、2位のインターネット利用の25.9%を抑えています。これは7月10日に発表されたNTTアドのインターネット調査結果も同様の傾向を示しています。スポーツバーはわずかに3.7%なんですが、時差がありますので、私はどこかに出かけようかと考えないでもありません。また、日本リサーチセンターが7月10日に「オリンピック・パラリンピックの東京招致についての全国世論調査」を発表していますが、賛成とやや賛成を合わせて58.8%にとどまっている一方で、反対とやや反対が12.2%、わからないが30.8%に上っています。2020年のオリンピック東京招致への国内の支持は高まるんでしょうか。

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2012年7月22日 (日)

映画「海猿 Brave Hearts」を見に行く

映画「海猿 Brave Hearts」ポスター

今日は映画「海猿 Brave Hearts」を見に行きました。この「海猿」シリーズは前作が The Last Message の副題でしたので、打止め感が大きかったんですが、最終作のさらに続編、というカンジなのかもしれません。このところ、「テルマエ・ロマエ」、「ホタルノヒカリ」と軟派な路線の映画を続けて見ましたので、男っぽい硬派の映画を志向した次第です。一応、というか、私は国家公務員なんですが、おそらく、私とはまったく違った公務員像を見ることを期待しました。
このシリーズの特徴で、軟派なラブロマンスと硬派な海難救助を実にうまく組み合わせています。ストーリーは予告編などにある通り、エンジンをふっ飛ばしたジャンボが東京湾羽田沖合に着水し、ジャンボが海底に沈むわずか15分間に乗客乗員約350名を海上保安庁の特殊救難隊が救助します。機長の救助やラストの海上保安官の救助などは、いかにも映画的な出来過ぎの終わり方ですが、映画やドラマだけに許されるんだろうと思います。ジャンボの着水や救助シーンなどは、さすがに映画ならではのド迫力です。映像とともに効果音も含めて感情移入が大いにはかどります。あくまで映画の作り物だと分かっていても、ついつい手に汗握ってしまいます。ハッピーエンドで終わるハズで、全員無事に救助されるに決まっていると頭では理解していても、ハラハラドキドキする気持ちは抑えようがありません。私のような頭の回路が単純な人向けの映画なのかもしれません。

どうでもいいことながら、時任三郎演じる海上保安庁の救援課長は、私と同じ国家公務員の課長級なんだろうかとついつい考えてしまいました。自己中心的バイアスを持ちながら、私のオフィスのほうがフツーの国家公務員の勤務する役所だと自覚しつつ、いろんな部署で働く国家公務員がいることを改めて実感しました。

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2012年7月21日 (土)

土用の丑の日に価格高騰のうなぎを食べるか、どうするか?

来週7月27日は土用の丑の日でうなぎを食べる習慣があります。江戸末期に平賀源内の提唱によるとも言われています。ということで、ネットリサーチ大手のマクロミルから「土用の丑の日に関する調査」が先週7月11日に発表されています。まず、マクロミルのサイトから調査の概要を引用すると以下の通りです。

土用の丑の日に関する調査
■ 今年の土用の丑の日に「うなぎを食べる予定」半数超、平均予算は1,321円
■ うなぎは「高くても国産がよい」68%
■ 'アフリカ産うなぎ'食べたい34%
■ 'うなぎ代替商品'ランキング
     1位「穴子のかば焼き」2位「さんまのかば焼き」3位「豚バラのかば焼き」

まず、マクロミルのリポート p.2/5 【図1】 土用の丑の日にうなぎを食べるかを引用すると以下の通りです。上の要約にある通り、過半数の53.6%が「うなぎを食べる」と回答しています。でも、時系列比較がないので確たることは分かりませんが、年々「食べる」割合が減少しているような気がしないでもありませんし、さらに、今年はうなぎの価格が高騰していると報じられていますから、一段と減るような雰囲気が漂っています。なお、上の要約にある通り、平均予算は1,321円のようです。昨年あたりから上がっていたりするんでしょうか。

土用の丑の日にうなぎを食べるか

さらに、マクロミルのリポート p.2/5【図3】うなぎの価格と産地についての回答は以下の通りです。「安いなら輸入うなぎでもよい」との回答は 1/3 にとどまり、大多数は国産うなぎを志向しているようです。また、上の要約にある通り、「アフリカうなぎ」を食べたいと回答したのは34.2%だけで、多くの回答者が拒否感を持っていることが伺われます。

うなぎの価格と産地について

最初の要約にもありますが、価格高騰のうなぎの代替品は、第1に穴子、第2にさんま、第3に豚バラ、第4に牛肉、第5にとうふの、それぞれかば焼きという回答となっています。さて、来週の我が家の土用の丑の日やいかに?

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2012年7月20日 (金)

塩澤幸登『死闘昭和三十七年阪神タイガース』(河出書房新社) を読む

塩澤幸登『死闘昭和三十七年阪神タイガース』(河出書房新社)

塩澤幸登『死闘昭和三十七年阪神タイガース』(河出書房新社) を読みました。ドキュメンタリーで、昭和37年すなわち1962年の阪神タイガースのセリーグ初優勝を後付けています。上の画像の帯にもある通り、藤本定義監督と青田コーチの下、投手陣は小山投手と村山投手の2人エース、打撃陣は遠井一塁手、鎌田二塁手、三宅三塁手に、牛若丸・吉田遊撃手の黄金の内野陣、外野は藤本選手や並木選手の時代です。この後、昭和39年1974年にも阪神はリーグ優勝していますから、黄金時代の幕開けの年ともいえます。もっとも、レギュラーシーズンを終えた後の日本シリーズの記述は極めて少なく、リーグ優勝までが圧倒的な迫力で取り上げられています。
私は昭和37年には生まれていたハズなんですが、さすがに記憶にありません。かろうじて、この本の2年後の昭和39年東京オリンピックの年の日本シリーズの、それも最後の6戦7戦だけがかすかに記憶に残っています。第5戦まで阪神が南海を3勝2敗でリードしていたんですが、最後の2戦に続けざまにスタンカ投手が連続で先発して、連続で阪神打線を完封してしまいました。もっと大きくなってからの後知恵かもしれませんが、私本人はテレビを見ていたかラジオを聞いていたつもりになって、この日本シリーズの最終戦が記憶の片隅にあるような気がしています。

スコアや勝ち投手・負け投手などの記録の記述がどうしても多いんですが、小山投手と村山投手の確執、ジャイアンツとの名勝負など、今でも語り草にされる内容を含んでいます。阪神ファンであれば必読かもしれません。

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2012年7月19日 (木)

消費税率引上げの個人消費への影響やいかに?

広く報じられている通り、社会保障と税制に関する一体改革法案が衆議院で可決され、現在、参議院の特別委員会で審議されています。このまま参議院でも可決されて成立すれば、現行5%の消費税率は2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へ引き上げられる予定となります。いくつかのシンクタンクでは、この消費税率引上げと消費やGDPなどへの影響をリポートで取りまとめています。今夜は簡単にこれらを取り上げたいと思います。私の注目度に応じて、4本のリポートを取り上げますが、発表順に以下の通りです。

消費税引き上げが個人消費に及ぼす影響

まず、消費税率の引上げが一般的に消費やGDPのパスにどのように影響を及ぼすかは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートが明快な図解で示しています。上の通り、リポートの p.10/15 から「図表11.消費税引き上げが個人消費に及ぼす影響」を引用しています。見れば分かると思うんですが、消費税率に変更ない場合の青い点線のパスが赤の実線にシフトします。消費税率引上げの直前に駆込み需要が発生し、その後に反動減が生じ、その反動減の時期を終えても物価上昇と実質可処分所得の減少により、消費やGDPの水準は元のパスには戻りません。もっとも、金額ベースの水準ではなく成長率ベースで考えると、税率引上げが消費に対する歪みを生じなければ、ほぼ元の成長率に戻ると考えられます。

消費税率引き上げによる実質GDPへの影響

みずほ総研とニッセイ基礎研のリポートでは、この影響をマクロ経済モデルを用いて試算しています。いずれもそれなりに似通った試算結果なんですが、ニッセイ基礎研のリポート p.6 「消費税率引き上げによる実質GDPへの影響」を引用すると上のグラフの通りです。みずほ総研のリポートでは p.3 「図表3 消費増税の個人消費への影響」の表がこれに相当します。2014年4月の税率引上げの直前の2013年度が駆込み需要により+0.7-0.8%くらいベースラインの消費やGDPから上振れし、その後、2015年10月の再引上げも含めれば、GDPに対しては▲1.5-2.0%、消費に対しては▲1.8-2.4%くらいの下振れとなります。もっとも、この数字はベースラインからの乖離ですから、成長率に引き直すと2014年度は別にして2015-16年度の成長率への影響は大きくありません。

消費税率引き上げによる実質可処分所得試算

最後に、大和総研のリポートでは、マクロ経済の消費やGDPへの影響ではなく、2011年と比較した2016年の実質可処分所得を試算しています。リポートの p.7/14 の「図表1 試算結果」を引用すると以下の通りです。引用した表は40歳以上片働き4人世帯のケースですが、リポートには共働きなどの別のケースも試算されています。これだけ実質可処分所得を引き下げるんですから、消費が下振れするのは当然です。また、消費税の逆進性のひとつの現われとして、300万円の低所得層の負担が▲8.87%ともっとも重くなっているのが見て取れます。

法案が衆議院で可決された後ではなく、出来れば、政策選択の前の段階で明らかにして欲しかった気はしますが、何も情報がないよりはマシかもしれません。いずれのリポートもとても興味深い試算結果です。

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2012年7月18日 (水)

最近読んだ新書版の経済書から

最近読んだ新書版の経済書

今夜は宴会があって帰りが遅くなりましたので、最近読んだ新書版から何冊か経済書を軽く取り上げたいと思います。上の画像に見える通りなんですが、改めて箇条書きにすると以下の通りです。勝手ながら、私が読んだ順です。

最初の『震災復興欺瞞の構図』はどう考えても過大な震災復興費を取り上げています。この本によれば、日本人1人当りの実物資産は966万円なのに、復興予算では被災地1人当り4600万円が計上されており、地元自治体の積算から見ても、宮城県はかなり過大に要求しているとしても、岩手県や福島県の見積りに比較して震災復興費は余りに過大であり、帯にあるように何らかの「役人の悪だくみ」を読み取っています。精緻なデータ分析を元に、「復興」の美名の陰で進む欺瞞の構図を明らかにしています。主張はよく分かりますし、私もその通りだと思いますが、いかんせん、記述がくどくて20ページほどで終わりそうな内容をクドクドとムダな紙幅を費やしているような気がしてなりません。
2番めの『商店街はなぜ滅びるのか』は歴史的に商店街を説き起こし、縦に伸びる百貨店と横に広がる商店街の比較など、色々と面白い視点を提供しています。しかし、コンビニの出現あたりから、論調が乱れます。スーパーは商店街の外から現れたにしても、コンビニは商店街の中の個人商店がフランチャイズに乗ることにより生じます。おそらく、経営能力の視点が欠けているんだろうと私は受け止めています。すなわち、商圏、商品、仕入先や販売先が大きく広がる中で、旧来の個人商店の経営資源では立ち行かなくなり、フランチャイズの本部に経営指導を仰ぐ形でコンビニが広がった事実を見落としています。ですから、結論や方策も誤っています。ついでながら、私は零細農家の衰退も同じく経営資源の不足が何らかの意味で関与していると考えています。要するに、個人商店と零細農業の衰退の根源的な理由は「経営能力」という点で一部に共通しています。
最後の『円のゆくえを問いなおす』は為替政策を国際金融論から説き起こし、日銀の誤った金融政策により円高が進んだ結果、日本経済に大きなダメージを与えたと論じています。私がこのブログで論じているような為替に対する政策割当てもまっとうですし、理論的・実証的にも妥当な論説だと理解しています。私はリフレ派に対する誤解のように、「すべては金融政策が決める」と考えているわけではありませんが、少なくとも、為替に割り当てられるべき政策は市場介入ではなく金融政策である、と理解していますし、「為替は金融政策によって決まる」と考えています。中央銀行からの通貨供給が過小であることが、国内にあってはデフレの、国際的には自国通貨高の根源的な原因です。我が国のデフレと円高はコインの表裏であり、その原因は日銀の通貨供給が少な過ぎることが原因です。要するに、財に対してと外貨に対して円が希少になってしまっているわけです。このことを正しく論じています。ついでながら、為替についての余談ですが、私は日本が「ものづくり」に比較優位を持っていたのは円安に支えられていた面があると考えています。

「経済評論の日記」と「読書感想文の日記」で分類に迷いましたが、一応、経済を論じていると判断しました。

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2012年7月17日 (火)

先発岩田投手が試合をブチ壊して連敗街道爆進中!

  HE
読  売202000000 472
阪  神000120000 380

相変わらず負け頭の岩田投手が試合をブチ壊し、ジャイアンツに連敗しました。中継ぎ陣がよく抑えて、打撃陣もそこそこ追い上げただけに、先発投手の出来が試合を左右しました。濃厚に連続で3タテされそうな雰囲気なんですが、投手も野手も若手を大胆に使っての敗戦であればファンも納得するハズです。ヤクルトどころか、もう広島の背中は遥か彼方になってしまいましたから、伊藤外野手に続いて、投手もいっぱいファームから引き上げたらどうでしょうか。

明日は3タテされないよう、
がんばれタイガース!

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アジア開発銀行 (ADB) と国際通貨基金 (IMF) の改定経済見通し

やや旧聞に属する話題も含め、海の日を含む3連休前の7月12日にアジア開発銀行(ADB)から「経済見通し補完」 Asian Development Outlook 2012 Supplement が公表され、また、国際通貨基金(IMF)からも昨日7月16日に「経済見通し改訂」 World Economic Outlook Update が公表されています。ADBの「経済見通し補完」の副題は Sluggish Global Economy Weighs on Asia's Growth とされ、欧州のソブリン危機に起因してアジア新興国・途上国の成長率見通しが下方修正されており、IMFの「経済見通し改訂」の副題は New Setbacks, Further Policy Action Needed となっていて、やっぱり、米国と欧州の経済停滞から見通しが下方修正されています。国際機関のリポートを取り上げるのは私のこのブログのひとつの特徴でもありますので、発表されたADB、IMFの順で図表を中心に簡単に見ておきたいと思います。それぞれの図表の引用元は、特に明記されている以外は、主としてADBのリポートIMFのリポートです。いずれもpdfでアップロードされています。

Table 1. Baseline GDP growth (%)

まず、ADBのリポート p.1 Table 1. Baseline GDP growth (%) は上の通りです。いわゆる見通しではなく、アジア新興国・途上国の経済を見通す上での作業前提の位置づけです。欧米、特に欧州ユーロ圏諸国の成長率が下方修正されているのが見て取れます。日本の2012年成長率は上方修正されているんですが、アジア新興国・途上国にとっては日本の上方修正よりも欧米の下方修正の方の影響が大きいという事実を改めて認識すべきなのかもしれません。

Table 2. GDP growth, developing Asia (%)

次に、ADBのリポート p.2 Table 2. GDP growth, developing Asia (%) は上の通りです。見通しのメインとなる表といえます。ASEAN5カ国などの東南アジア諸国への影響は極めて軽微なんですが、中国とインドへはややマイナスの影響があると分析されています。特に、歴史的に欧州との経済関係が相対的に深いインドへの下押し圧力が強く出る結果となっています。

Table 3. Inflation, developing Asia (%)

ADB見通しの最後、ADBのリポート p.4 Table 3. Inflation, developing Asia (%) は上の通りです。世界経済の全般的な減速に伴い、エネルギーをはじめとする食料の商品価格が低下することから、特に東南アジア諸国でのインフレ圧力が弱まると見込まれています。インドは修正されていませんが、中国は今年2012年のインフレ率が下方修正されています。

Latest IMF projections

まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。いつもの通り、クリックするとIMFのリポートの p.2 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections の1ページだけのpdfファイルが別タブで開くようになっています。米国よ欧州ユーロ圏諸国がわずかに下方改定され、日本は今年2012年は上方に来年2013年は下方に改定されていますが、特に下方改定の幅が大きいのが英国となっています。このため、アジア新興国・途上国への影響が他地域の国々と比べても大きく、特にインドへの下押し圧力が大きくなっていると理解できます。アジア以外の新興国ではブラジルの下方修正幅が大きくなっています。
IMFのリポートについては、見通し結果の詳細でなく、政策対応についてもう少し見ておくと、世界経済の回復にはまだリスクが残るとして、日本の場合はリポートの p.6 において、米国とともに信頼に足る中期的な財政再建計画の進捗が不十分であるリスクが指摘されています。すなわち、"Another risk arises from insufficient progress in developing credible plans for medium-term fiscal consolidation in the United States and Japan" というわけです。また、エネルギーや食料をはじめとする商品価格の低下が予想され、インフレ圧力が目に見えて減じる状況下で、日本に限らず先進諸国に関して、非伝統的な手段を含めて金融政策には効率的な対応の余地が残されている、とリポートの p.7 において結論しています。すなわち、"monetary policy also needs to respond effectively, including with further unconventional measures, to a much weaker near-term environment that will dampen price pressures" というわけです。

私自身も少しずつ景況感を下方に変更させて来ていますが、アジア開発銀行や国際通貨基金といった国際機関でも経済の先行き見通しを下方修正させ始めています。下方修正の原因は明らかで、対応策もそんなに選択肢が豊富にあるわけではない中で、各国の政府や中央銀行といった政策当局の力量が問われる場面になりつつあります。日本経済が「失われた30年」に陥らないことを願っています。ルーズな財政政策とタイトな金融政策のポリシーミックスはいつまで続くんでしょうか?

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2012年7月16日 (月)

スタンリッジ投手が一発に沈む!

  HE
読  売020000000 280
阪  神000000000 040

ジャイアンツに首位の貫禄を見せつけられて完敗でした。スタンリッジ投手は2回のエドガー選手に打たれた一発に沈みました。攻撃陣はいいところなくジャイアンツ先発の内海投手に抑えられ、結局、4安打に終わって完封リレーされてしまいました。あれだけボールを振っていては打てそうな気もしません。チャンスらしいチャンスもなく、見どころの少ない凡戦で負けでした。昨夜といい、今日といい、こんな試合が夏休みの休日に続くんだったら、我々タイガース・ファンも愛想が尽きそうな気がしないでもありません。

明日は、
がんばれタイガース!

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3連休に学術論文を整理する

この3連休で私自身が書き溜めた学術論文を整理しました。もっとも、印刷された別刷り冊子というわけではなく、いわゆる電子媒体のpdfファイルです。私の最近10-15年くらいの学術論文の主たる成果は、ジャカルタに3年間駐在していたころにmimeo扱いのディスカッションペーパーが10本ほど、地方大学に2年間単身赴任していたころに主として紀要などの公刊論文が20本ほど、その他がパラパラと合わせて40本ほどになります。そのうち査読に通ったのが、誠に力及ばず、わずかに1本だけです。それなりにチャレンジはしたんですが、1本の例外を除いてことごとくレフェリー審査で落とされていたりします。
ただし、ただしなんですが、査読付きの論文ほどではありませんが、アカデミックな世界で評価される引用については、査読に通った論文のディスカッションペーパーのバージョンを含めて4本あります。このあたりを整理していたわけです。なお、私は常々自称している通り、国際派エコノミストですので海外の公刊論文でも私のペーパーが引用されていたりします。中国とオーストラリアです。ということで、誠に自慢たらしいことながら、私のペーパーを引用している公刊論文は以下の通りです。

Figure 7 Capital-Output Ratios in Indonesia, 1950-2008, Selected Studies

1番上の論文は、経済発展の際の二重経済を描写したルイス・モデルについて、数学的にかなりエレガントに展開した私の論文を引用しています。英語で書いたペーパーですが、予算がなくてネイティブ・チェックはしてもらっていないので、読みこなしていただいて有り難い限りです。私は中国語をまったく理解しませんので、どのように引用・評価されているのか不明だったりします。その次の論文はインドネシア経済の計量モデルをかなり長期に渡ってシミュレーションした結果を取りまとめた私の論文を引用しています。これもネイティブ・チェックしていない英文論文だったりします。そのグラフのひとつを引用したのが上の画像です。ただし、本文では私のペーパーのシミュレーション結果は他の人のと合わせて、"seem unrealistic" と表現されていたりします。誠に残念ですが、明確な評価かもしれません。3番目は長崎経済のストック・ワトソン型の景気指標を状態空間モデルで表現してカルマン・フィルターで推計した私の論文を、また、4番目は世代間格差の観点から子ども手当を評価した私の論文を、それぞれの大学の紀要で引用していただいています。いずれも日本語論文です。

「官庁エコノミスト」を自称しつつも何せ本来がサラリーマンですから、私の研究成果はレフェリー審査論文はわずかに1本だけと少ないんですが、少しは国際的に引用されていることが確認できて、有意義なペーパーの整理作業であったと評価しています。

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2012年7月15日 (日)

投手陣がヤクルトに15安打5失点とメッタ打ちされてボロ負け!

  HE
ヤクルト111001100 5152
阪  神200000000 270

どうも先発能見投手の調子が悪いため、早めの投手リレーはよかったんですが、2番手の鶴投手を別にすれば、リリーフ投手がことごとくヤクルト打線につかまり、15安打5失点でボロ負けでした。打線も村中投手に完投を許してしまいました。
甲子園に戻って中日に勝ち越し、昨夜のヤクルト戦を見ても薄日が差すような気がしないでもなかったんですが、今夜の試合は投手陣も攻撃陣も弱いタイガースに逆戻りです。

明日からのジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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DVD「バイオハザード II」を下の子といっしょに鑑賞する

バイオハザード

昨日は「鴨川ホルモー」だったんですが、今日は「バイオハザード II アポカリプス」のDVDを下の子といっしょに鑑賞しました。実は、先週のうちに午後から早退して、これまた、期末試験を終えた下の子といっしょに「バイオハザード」のDVDを鑑賞していて、旬日を置かずして「バイオハザード II」も下の子といっしょに鑑賞していしまいました。よく知られた通り、カプコムのゲームソフトを原案としたサバイバルアクションホラー映画です。ミラ・ジョヴォヴィッチが主演のアリス役ですが、「バイオハザード II」ではジル・ヴァレンタイン役のシエンナ・ギロリーもカッコよかったです。今のところ、「バイオハザード III」を鑑賞する予定はありません。

完全なカウチ・ポテト状態で、DVDを見てはオヤツを食べまくっていますので、この3連休は太リそうな気がします。

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佐伯泰英『秋思ノ人』(双葉文庫) を読む

佐伯泰英『秋思ノ人』(双葉文庫)

佐伯泰英『秋思ノ人』(双葉文庫) を読みました。居眠り磐音江戸双紙のシリーズ第39巻です。まず、出版社のサイトから「本の紹介」を引用すると以下の通りです。

本の紹介
甲府勤番支配の任を解かれた速水左近の江戸帰着を目前にひかえ、急遽速水一行の出立が3日早まったとの知らせが小梅村の磐音にもたらされた。速水左近の身を案じた磐音は、速水杢之助、右近兄弟と霧子を同道し、甲州道中をひた走るが……。超人気書き下ろし時代小説第39弾。

引用にある通り、速水右近が江戸に帰着し、御三家の支持により城中で重きを占めるようになります。坂崎道場では尾張徳川家から入門者を迎えます。三味線に絡むお話も進展します。なかなか面白くなって来ました。田沼が失脚するのは家基が暗殺されるのと同じで歴史的事実ですから、架空の人物である坂崎磐音をどのように活躍させるかが作者の力量です。読者の納得が得られるよう、不自然でも無理やりでもいいので磐音の活躍が見たいものです。作者がうそぶくように、50巻まで続くのかもしれません。

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2012年7月14日 (土)

榎田投手が痛恨の被弾も鳥谷遊撃手のレフト線ツーベースでヤクルトにサヨナラ勝ち!

  HE
ヤクルト0000000200 2102
阪  神0000200001x 371

8回に榎田投手が東京ヤクルト4番の畠山選手に痛恨の同点弾を打たれ延長戦にもつれ込みましたが、10回ウラ鳥谷遊撃手のレフト線ツーベースでサヨナラ勝ちでした。榎田投手はこのところ不安定なピッチングが続いていたものの、何とかゼロに抑えていたんですが、今夜は最悪の結果となっていしまいました。登板過多で疲れが溜まっているのであれば、そろそろ休ませることも考慮すべきなのかもしれません。それにしても、先発した久保投手の復活は心強い限りです。オールスター後の後半戦に計算できる先発投手です。

明日も、
がんばれタイガース!

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DVDで「鴨川ホルモー」を鑑賞する

鴨川ホルモー

今日の夕方は時間が空いて、DVDを借りて「鴨川ホルモー」を鑑賞しました。原作は万城目学、主演は山田孝之です。原作をかなり端折った内容で、ホルモーの場面は少なかった気がしますが、やっぱり、この原作者の小説はビジュアル系だという気がします。

何といっても、我が母校の京都大学やその周辺の鴨川などの映像が懐かしかったです。有意義なヒマ潰しでした。

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日本は経済の見方が悲観的で市場経済に否定的な国か?

米国時間一昨日の7月12日に Pew Research Center から世界経済に関する世論調査結果 Pervasive Gloom About the World Economy が発表されています。日米欧をはじめとして、中国・インドや中南米や中東のアラブ諸国なども対象になっています。我が日本が従来から悲観的な経済情勢判断と市場経済に対する不信感を持っている国民が多そうな気がしなくもありませんので、簡単に見ておきたいと思います。

Economic Situation

まず、上のグラフは先行き12か月先の経済と5年前の経済と、それぞれ現在を比較したらどうなのかを聞いています。日本はとても現状維持バイアスが強くて、5年前からも12か月先も「現在と同じ」という回答が半数近くを占めますが、「悪化」と「改善」を比較すると圧倒的に前者が多くなっています。特に、先行きで日本よりも「悪化」の回答比率が高いのはギリシアくらいのものだったりします。

Economic Perceptions Match Reality

ただ、経済の見方が暗いのは、当然ながら、実際に成長率が低いからであって、2011年の成長率を横軸に、経済を「よい」と回答した比率を縦軸に取ると、正の相関が見られます。エコノミストがこういったグラフを書く場合、関数型 y=f(x) と同じで、横軸の変数が縦軸を決めると暗黙のうちに前提しているような気がします。上のグラフもそうかもしれません。

Hard Work and Free Market Economy

最後に、経済システムに関する信頼感や市場経済の評価について、日本は極めて低くなっています。上のグラフは上のパネルが努力と成功の関係、下が市場経済の評価を尋ねています。我が日本では努力が報われないと悲観的に受け止め、市場経済が生活水準の向上に役立っていないと不信感を持つ比率が世界の中でもかなり高くなっていることが見て取れます。

基本的には、subjective な opinion poll なんですが、真ん中のグラフに示した通り、国内経済の客観的な実情が国民の意識に反映されている面もあります。いつもながら、Pew Research の調査結果はとても興味深いと私は受け止めています。一応、「経済評論の日記」に分類しておきます。

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2012年7月13日 (金)

バナジー/デュフロ『貧乏人の経済学』(みすず書房) を読む

バナジー/デュフロ『貧乏人の経済学』(みすず書房)

バナジー/デュフロ『貧乏人の経済学』(みすず書房) を読みました。原題は Poor Economics: A Radical Rethinking of the Way to Fight Global Poverty ですから、この本のタイトルの「貧乏人」とは先進国内の低所得者ではなく、低開発国の国民であり、ジャンルは開発経済学の本です。先月6月9日に同じ出版社のポール・コリアー教授の『収奪の星』を取り上げましたが、開発経済学という点では同じです。本書の著者はインド人とフランス人で、いずれもマサチューセッツ工科大学 (MIT) の教授を務めるエコノミストです。ということで、まず、出版社の特設サイトから本の紹介を引用すると以下の通りです。

バナジー/デュフロ『貧乏人の経済学』
  • 食うにも困るモロッコの男性がテレビを持っているのはなぜ
  • 貧困地域の子供たちが学校に行けるのになかなか勉強できるようにならないのはなぜ
  • 最貧困にある人たちが食費の7%を砂糖にあてるのはなぜ
  • 子供が多いとほんとうに貧しくなるの

「外国援助は役に立つのか、立たないのか」「自由市場に任せるべきか否か」といったJ. サックスやW. イースタリーらの論点を越えて、本書はこう言います。「世界の問題について何を言おうと、手の届く解決策を論じなければ、進歩よりは麻痺に陥ってしまうのです。だからこそ、外国援助全般についてあれこれ考えるよりも、具体的な問題とその個別の答えを考えるほうがずっと役に立ちます」
食糧、医療、教育、子作り、お金のやり繰り、マイクロファイナンス、貯蓄、仕事、保険……。開発経済学の今を代表する研究者が、ランダム化対照試行 (RCT) という手法を用いて、これらを丹念に実証しながら解決策を示しているのが本書です。

本書は、引用にもある通り、サックス教授のような大幅な援助の増加による「ビッグ・プッシュ」で途上国の成長を加速するといった援助重視の立場も、イースタリー教授のような援助を排して市場を重視した開発に傾く立場も、ともに取らず、ランダム化対照試行 (RCT) という手法を用いて、フィールドワークに基づいて援助のあり方を再考するよう求めています。ものすごく大雑把にいえば、ランダム化対照試行 (RCT) とは市場参加者の合理性に疑問を呈した実験経済学的な手法と考えて差し支えありません。
開発経済学のさまざまな分野、食料、医療、教育などで、援助重視と市場重視は、p.106 で導入される本書独特の表現を用いれば、ほぼ「供給ワラー」と「需要ワラー」に相当します。以下、私の理解ですが、前者の考え方は、援助によって食料・医療・教育の供給が適切に管理されれば、人的資本の蓄積などに伴って生産性が上昇して開発が進む、というものです。後者は、市場参加者が合理的でそれなりに長期的な視野を有していれば、市場において食料・医療・教育などが需要超過であるサインが出されるハズであり、市場での需要のないこれらの援助を途上国に注ぎ込むのはムダを超えて有害ですらある、というものです。そして、開発経済学にもそれなりの関心を寄せるエコノミストとして、圧倒的に私は前者の援助重視の供給ワラーであると自覚しています。サックス教授の『貧困の終焉』とイースタリー教授の『傲慢な援助』では、これまた圧倒的に前者に賛同します。精緻な数量分析に基づく考察結果ではありませんが、3年間ジャカルタに住んで援助行政に携わったエコノミストの直感でそう思っています。
しかし、もちろん、援助の受け手である途上国市民が、必ずしも合理的に行動していない、と感じることも大いにあります。これも引用の箇条書きにある通り、食料や衣料よりもテレビに支出する消費者、学校に行きたがらない子供や行かせたがらない親、近代的な病院における医療よりも原始的な宗教や呪術的な行為に頼る病人、などの私なんかから見た広い意味での非合理な消費行動を本書ではランダム化対照試行 (RCT) により分析しようと試みています。当然ながら、すべてに回答が用意されているわけではありません。私自身はこれらの非合理性について、医療事情も含めて短い平均寿命などに起因して現在割引率が極めて高いこと、さらに、宗教も含めた前近代的な思考の残滓の影響、の2点で理解できるんではないかと自分自身を納得させていたんですが、本書における分析はこれらの非合理性の完璧な解明にはほど遠いものの、少し考えるヒントを与えてくれたように私は受け止めています。

国内の不平等でも、国境を超える国の間の不平等でも、決して科学的ではないかもしれませんが、直感的に、100倍を超える現実の不平等があるのは、現在の経済システムの何かがおかしいんだろうと私は受け止めています。それを個人の努力やその結果としての生産性に理由を見出そうとするのは合理的ではありません。一般名詞としての「貧乏人の経済学」を傾聴すべき時代が来ているような気がします。

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2012年7月12日 (木)

先発メッセンジャー投手7回3安打の見事なピッチングで中日に快勝!

  HE
中  日000000100 160
阪  神100120000 481

今夜は雨天中止を希望したんですが、雨が降らすに、やってみれば中日に完勝でした。先発のメッセンジャー投手が力投で7回を3安打に抑え、リリーフ陣は8回に1点失ったものの、何とか最後は藤川投手がピシャリと抑えて逃げ切りました。打つ方では序盤から山本投手を攻略し、初回の先制打を含めて鳥谷遊撃手の2打点が光りました。オールスター前9連戦の最初のカードを勝ち越したのは、5割とAクラス復帰に向けて少しだけ前進です。

明日からのヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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政府のデフレ対策における政策割当てを考える

やや旧聞に属する話題ですが、一昨日7月10日に内閣府から「デフレ脱却等経済状況検討会議 第1次報告」が公表されています。私が各メディアのネット上の電子版などを見た限り、いつもの日経新聞はまったく無視したようでしたので、時事通信のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

住宅市場、インフラ投資を活性化=デフレ脱却策報告書 - 政府
政府は10日、経済閣僚らで構成する「デフレ脱却等経済状況検討会議」を開き、2013年度までに取り組むデフレ脱却策を報告書にまとめた。耐震化推進などによる住宅市場の活性化や、民間資金を活用したインフラ投資の促進、医療・福祉分野の需要創出などが柱。これらの施策を政府が月内に策定する「日本再生戦略」に盛り込み、来年度予算に反映させるほか、必要な規制改革や税制改正を行う。
報告書には「日銀にはデフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を継続するよう期待する」と明記。日銀が当面の物価目標とする消費者物価上昇率1%の早期達成を求めた。

ネットでは発見できなかったんですが、私の手元に時事通信が流したファックスがあり、これには以下の6点が「第1次報告」のデフレ脱却策骨子として明記されていました。そのまま引用します。

  • 住宅の耐震化率を9割に引き上げ
  • 民間資金を活用したインフラ投資の促進
  • 医療・福祉分野の需要創出、薬事法改正による医療機器審査の迅速化
  • サービス業の海外展開促進、進出企業の支援体制構築
  • 非正規雇用と正規雇用の均等・均衡処遇
  • 雇用調整助成金の支給要件見直し

リポートでは冒頭に「我が国経済は、過去10年以上にわたり、デフレから脱却できない状況が続いている」と、いわゆる「失われた20年」の歴史的な展開を認識した上で、「需給ギャッ プの縮小等に伴い、物価の下落テンポが抑えられてきている今こそ、デフレという長年の問題と決別するチャンスであり、全力で取り組むべき時である。」と高らかに宣言しており、このあたりの現状認識は私も正しいと受け止めています。問題はデフレ脱却のための政策割当てです。もちろん、政府から独立した中央銀行を除いた政府として、需給ギャップ縮小などのデフレ脱却のための施策を取りまとめたパッケージであり、日銀については、別途の金融政策があるのかもしれませんが、政府がバッターボックスに立つ一方で、日銀はスタンドから応援するだけ、といった誤解を招きかねません。「インフレはいつでもどこでも貨幣的現象」"Inflation is always and everywhere a monetary phenomenon." と喝破したのはマネタリストのフリードマン教授でしたが、この「第1次報告」ではデフレ脱却のための施策で中央銀行がいかにも後景に退いているという印象を持つエコノミストは私だけでしょうか。特に、民主党政権に政権交代してから、為替は金融政策ではなく市場介入という原始的かつ暴力的な政策を割り当てられている現状を私は憂慮しています。

深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞社)

同じことで、深尾京司『「失われた20年」と日本経済』(日本経済新聞社) を最近読んだんですが、生産性に関する極めて精緻な数量分析が展開されているものの、金融政策はまったく分析の対象とされていません。リアル・ビジネス・サイクル(RBC)的な議論のひとつのカギカッコ付きの「宗教的信仰」として、金融政策は実物経済に影響を及ぼさない、というのがありますが、ある程度は影響を受けているのかもしれません。著者の深尾教授は金融政策を取り上げない理由として、例えば、この本の p.276 などで、生産性停滞や資本収益率低迷の下で、大幅な金融緩和による投資促進策を取れば、無駄な投資を生み出して「バブル経済」を再来させる危険が高く、持続性に欠ける、といった旨を繰り返し主張しています。リフレ派の論調に対する誤解として「金融政策がすべてを決める」と解釈する向きがあって、これはこれで間違いなんですが、逆に、デフレや「失われた20年」を分析するに当って金融政策を最初からまったく考慮の埒外に置く分析姿勢にも疑問が残ります。「金融政策がすべてを決める」といったリフレ派に対する決めつけの「宗教的信仰」も、逆に、「金融政策は実物経済に影響を及ぼさない」という「宗教的信仰」も、いずれも排して、科学的でよりバランスの取れた分析が必要だと私は考えています。

最近の経済学では、一般均衡的なモデルを組んで乱数を発生した上でシミュレーションを何千回も実行するという手法が取られています。経済学などの科学はモデルを分析する学問ですが、そもそもモデルが何らかの「宗教的信仰」に基づいて組み立てられていれば、何回シミュレーションしても科学的な結果が得られるかどうかは怪しくなります。モデルの組立て方に大きな分析者の裁量が働くとすれば、科学としての未熟さのひとつの現われなのかもしれません。

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2012年7月11日 (水)

またも始まったゼロ行進のスミ1で中日に敗戦!

  HE
中  日200000000 280
阪  神100000000 180

相変わらず打てずに、スミ1のゼロ行進でした。先発の岩田投手もいきなりの先頭打者ホームランで2失点では勝ち星がつかないハズです。昨日の試合を見ていないんでしょうか。大野投手に初勝利をプレゼントの試合でした。盗塁死で試合終了というのも、オツなものでした。作戦としてはどうなのか理解に苦しみます。

明日は、
雨天中止を希望!

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『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』を読んで米国経済の景気指標を振り返る

『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』

『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』(かんき出版) を読みました。著者のサイモン・コンスタブル氏の方はジャーナリスト、ロバート E. ライト氏はエコノミストなんだろうと思います。申し訳ありませんが、私には馴染みのない名前です。監訳者はみずほ証券のエコノミストの上野泰也さんです。このかたはエコノミストのランキングなどでもお目にかかっています。まず、出版社のサイトから本の内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
世界No.1経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」の記者と経済学者が、本当に役立つ50の経済指標を厳選。
経済の動向を示すデータの動きが読み解けるスキルが身につき、経済の変化をいち早く察知できるようになるので、景気の変動に左右されることなく大切な資産を守り、着実に増やすことができる。
基本的な経済指標を押さえつつ、知る人ぞ知る指標も多数紹介。

タイトル通り、米国の主要な経済指標についての解説なんですが、何のための解説かというと株や債券やコモディティなどの資産運用のための経済指標解説だったりします。もちろん、ウォールストリート・ジャーナルもちゃっかり宣伝されています。私のこのブログも資産運用の観点から読んでいる人がいるのかもしれないと、今さらながら感慨を持ちました。なお、日本を代表して日銀短観が取り上げられています。名誉なことなのかもしれません。50指標をすべて並べようかとも考えたんですが、出版社のサイトに並んでいますので、このブログでは割愛したいと思います。50指標の中には何らかの有料の契約をしないと提供されない指標もあります。資産運用のコストなのかもしれません。

ADS Business Conditions Index and CFNAI-MA3

ということで、上のグラフは米国景気を包括的に観察できる指標をプロットしたグラフです。上のパネルがフィラデルフィア連銀が作成・公表しているADS指数 (Aruoba-Diebold-Scotti Business Conditions Index)、下がシカゴ連銀のCFNAI指数 (Chicago Fed National Activity Index) です。CFNAI-MA3 とはCFNAIの後方3か月移動平均です。この『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』には前者のADS指数しか収録されていませんが、私はむしろCFNAI指数の方がエコノミストの間で広範に利用されているんではないかと受け止めています。私のこのブログでも4年前の2008年3月25日付けのエントリー「CFNAI から見て米国経済の景気後退局面入りはほぼ確実」で取り上げています。もっとも、ADS指数は日次データであることに特徴があり、月次データであるCFNAI指数よりも日々の金融資産市場の動きをよくフォローしているのかもしれません。それぞれのグラフの引用元のサイトは以下の通りです。いずれも連銀が作成・公表しているデータですから、登録やお支払いはまったく必要ありません。誰でも自由に無料でダウンロードすることが出来ます。

これら2指標で足元の米国の景気を見ると、確かにマイナスに突っ込んでいるんですが、現時点で利用可能な情報に基づく限り、景気後退のサインである臨界点 critical value には達していないように見受けられます。

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2012年7月10日 (火)

甲子園に戻って中日相手に完封リレーで連敗脱出!

  HE
中  日000000000 0110
阪  神00100000x 170

あいも変わらず打線は打てないんですが、今夜は投手陣が踏ん張って完封リレーで連敗脱出でした。ヒット数は中日が阪神を上回りましたが、終盤は毎回ピンチの連続ながら、復活なった藤川投手が最後は力でねじ伏せて、虎の子の1点を守り切りました。現時点のチーム状態で勝てる確率がもっとも高い試合展開のひとつだった気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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消費者態度指数は先行き消費に黄信号をともす!

本日、内閣府から消費者態度指数を含む消費動向調査の結果が発表されました。6月の統計です。季節調整済みの系列で前月から▲0.3ポイント低下して40.4となり、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「持ち直し傾向にある」から「ほぼ横ばいとなっている」へと7か月振りに下方修正しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月消費者態度指数、2カ月ぶり悪化 内閣府、判断を下方修正
内閣府が10日発表した6月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は40.4と前月から0.3ポイント低下した。悪化は2カ月ぶり。雇用への不安感が消費者マインドを押し下げた。内閣府は、消費者心理の基調判断を「持ち直し傾向にある」から「ほぼ横ばいとなっている」へと7カ月ぶりに下方修正した。
指数を構成する「暮らし向き」など4項目のうち、2項目で悪化。大企業の人員削減報道が相次いでおり「雇用環境」は2カ月ぶりに低下。「収入の増え方」も、夏のボーナスが前年を下回ったことや現金給与総額が減少したことが影響し、4カ月ぶりに前月を下回った。
エコカー補助金の効果もあって「耐久財の買い時判断」は2カ月連続で改善。消費者マインドを下支えしたが、エコカー補助金は月内にも予算枠を使い切るとみられているため、内閣府は「その後の状況を見ていかなければならない」と警戒している。
1年後の物価見通しについて、足元のガソリン価格の下落などを受けて、「上昇する」と答えた割合は61.3%と2カ月連続で減少。「変わらない」や「低下する」と答えた割合はともに増えた。
4-6月中に海外旅行をした世帯の割合は前期比0.6ポイント低下の3.9%と4四半期ぶりに減少し、7-9月中に計画している世帯も減った。一方で、国内旅行は4-6月中に実施した世帯や7-9月中に計画している世帯の割合がともに増えた。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は6月15日で、有効回答数は5030世帯(回答率74.9%)だった。

いつもの消費者態度指数のグラフは以下の通りです。季節調整済みの系列であり、影をつけた期間は景気後退期です。

消費者態度指数の推移

引用した報道にもある通り、消費者態度指数を構成する4項目のうち、「耐久消費財の買い時判断」は上昇したものの、「暮らし向き」が横ばい、「雇用環境」と「収入の増え方」が低下しています。低下した2項目は雇用に関する項目であり、国民生活の基礎をなす部分です。また、上昇を記録した「耐久消費財の買い時判断」もエコカー補助金の財源が底をつけば反転する可能性も排除できません。GDPの重要項目のうち過半を占める消費の先行きは、収入とマインドに左右されると私は考えているんですが、マインドがボーナスなどの収入の悪化に起因して低下を示していますので、いわば「ダブルパンチ」で消費の先行きに黄信号がともった気がします。ここ2-3か月で大きく風向きが変わったのかもしれません。
今月は消費者態度指数だけでなく、消費動向調査の他の四半期係数も同時に発表されています。すなわち、物価の見通し、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定などです。デフレ期待が高まっているのは引用した報道の通りなんですが、記事にないところで、サービス等の支出予定のうち、遊園地等娯楽費DIとレストラン等外食費DIがこのところ下げ続けているのが少し気がかりです。サービス支出の中でも選択的消費の色彩が特に強いだけに、家計の苦しさが表れているのかもしれません。

欧州のソブリン危機の進行や米国の雇用回復の足踏みなどとともに、我が国の消費もここ2か月ほどで急速に不透明さを増した気がします。これに、極めて透明性の高いエコカー補助金終了が加わると、消費動向にある程度のショックが走る可能性を否定できません。

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2012年7月 9日 (月)

本日発表の機械受注統計と景気ウォッチャーと経常収支から何を読み取るか?

本日、内閣府から5月の機械受注統計が、また、6月の景気ウォッチャー調査が、さらに、財務省から経常収支などの5月の国際収支が、それぞれ発表されました。機械受注は船舶と電力を除く民需のコア機械受注が前月の反動から前月比▲14.8%減の6719億円と大きく減少し、景気ウォッチャーの現状判断DIは43.8となり、前月比3.4ポイント悪化して、基調判断が下方修正されています。また、経常収支は黒字幅を大きく縮小させています。まず、とても長くなってしまうんですが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の機械受注、14.8%減 05年4月以降で最大のマイナス幅
内閣府が9日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比14.8%減の6719億円だった。マイナスは2カ月ぶりで、減少幅は比較可能な2005年4月以降で最大だった。
内閣府は機械受注の基調判断を「緩やかな増加傾向がみられる」で据え置いたうえで「5月の実績は、前月の反動もあり大きく減少した」との表現を加えた。大型案件が乏しかったことに加え「例年より稼働日数が多かったことが季節調整値を押し下げる要因になった」(内閣府)という。
業種別にみると製造業が8.0%減。航空機、化学機械などその他輸送機械の受注が前月伸びた反動で減少。前月にプラントの大型案件があった化学工業も大きく落ち込んだ。一方、自動車や同付属品は2カ月ぶりに大幅増だった。
非製造業は6.4%減。前月に仕分け用機械の受注が増えた卸売り・小売りが大きく落ち込み、金融・保険のマイナスも目立った。製造業・非製造業ともに減少は2カ月ぶり。
機械メーカーの4-6月期の受注額見通しは前期比2.5%増。5月の大幅減によってこの見通しを達成するには、6月が前月比で27.6%の伸びが必要となり、達成は事実上難しくなった。
船舶・電力や官公需などを含む5月の受注総額は1兆8137億円で前月比14.5%減った。マイナスは2カ月連続。官公需が21.8%減ったことも響いた。
6月の街角景気、3カ月連続悪化 判断を下方修正
内閣府が9日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は43.8と前月比3.4ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月連続。自動車の受注一服に加え、悪天候による消費意欲の減退が響いた。
内閣府は景気の現状に対する基調判断を「このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」へと2カ月連続で下方修正した。
現状判断は指数を構成する家計、企業、雇用の全部門で悪化。足元の消費を支えているエコカー補助金について「効果も薄らいで問い合わせも減少している」(北関東・乗用車販売店)と、自動車販売の増勢には一服感が出てきた。梅雨入りや台風直撃に伴う天候不順も消費者の足を鈍らせた。
「主要取引先が円高の影響によって、海外発注に切り替えた」(四国・鉄鋼業)、「得意先は海外に仕事をとられ、当社への発注も激減している」(南関東・金属製品製造業)といったコメントが並び、1ドル=80円を超えて高止まりする円相場も企業マインドの重荷となった。また、製造業からの求人も減少しているとの指摘が増えた。
先行き判断指数は2.4ポイント低下の45.7と2カ月連続で悪化した。エコカー補助金終了による自動車販売の急減を心配する声が多かったほか、消費増税関連法案の衆院採決が、先行きへの不安を呼び起こした。
先行きに関して、消費税に絡むコメントは245件と5月の91件から急増。「少なからず消費マインドに影響が出る」(北関東・百貨店)など悪影響を懸念する声が約半数を占めた。また家計、企業ともに電力不足を指摘するコメントが並び、先行き判断指数でも家計、企業、雇用の全部門で悪化した。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は6月25日から月末まで。
5月の経常黒字、62.6%減 貿易赤字拡大が影響
財務省が9日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2151億円の黒字だった。4カ月連続の黒字を確保したが、黒字額は前年同月比で62.6%減少した。液化天然ガス(LNG)や原粗油の輸入増を背景とした貿易赤字の拡大が影響した。所得収支の黒字幅縮小も重荷となった。
貿易・サービス収支は9410億円の赤字。赤字は2カ月連続。うち貿易収支は、輸送の際の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで8482億円の赤字だった。LNGや原粗油は火力発電向けを中心に輸入が引き続き増加。米国向けを中心に好調な自動車や自動車部品などの輸出の伸びで補いきれず、赤字幅は前年同月から770億円拡大した。
旅行や輸送などの動向を示すサービス収支は928億円の赤字。通信や建設などの分野が落ち込み、赤字額が734億円増えた。
所得収支は1兆2737億円の黒字だった。ただ、海外企業1社が日本の支店をグループ会社に格上げし、利益を本国に送金したため、黒字額は11.7%減った。
財務省は今後について「欧州経済の低迷が輸出の本格回復の足かせになる点などが混在しており、先行きを見通すのは難しい」としている。

次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需のコア機械受注とその後方6か月移動平均、下のパネルは外需と製造魚油と船舶を除く非製造業の需要者別の機械受注です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた期間は景気後退期です。

機械受注統計の推移

統計作成官庁である内閣府は基調判断を据え置きましたが、ギリギリの判断ではないかと受け止めています。機械受注は先行きの設備投資に連動する部分があるわけで、弱気の材料は尽きませんが、基本的には欧州だけでなく米国や中国も含めた外需の先行きが不透明であるために設備投資に踏み切れないケースが典型的ではないかと考えています。逆に、強気の材料としては先に発表された日銀短観の設備投資計画が大きく上方修正されたことが上げられます。5月統計が大きく落ち込んでも、年度の計画に沿って今後は設備投資が盛り上がる可能性もあります。どちらの目が出るかは現時点では私にも分かりません。

景気ウォッチャーの推移

上のグラフに見る景気ウォッチャーは基調判断が2か月続けて下方修正されました。特に家計部門の悪化が大きいと私は受け止めています。エコカー補助金によって水膨れした自動車販売は1-3月期がピークであり、4月に入って以降はやや下り坂だったのは明らかですが、引用した記事にもある通り、円高と消費税率引上げが国内景気に影を落としています。加えて、家計関連では梅雨入りや台風に伴う天候不順等により季節商材等の売上が低調であった影響も見られます。ただ、やや疑問に感じるのは、消費税の短期的な効果は駆込み需要ではないかと考えられるんですが、1年半ほど先の駆込み需要に備えて消費を落としているのかもしれませんし、消費税増税に伴う景気の落ち込みに身構えている可能性もあります。一般的なマインド悪化と考えるのが無難かもしれません。

経常収支の推移

最後のグラフは上の経常収支です。引用した記事は季節調整していない原系列の経常収支について記述している一方で、上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、少し印象が異なるかもしれませんが、季節調整済みの系列で傾向を見ると、貿易収支が震災後ほぼ一貫して赤字を記録しています。昨年3月の震災の後、2011年4月から今年2012年5月までの14か月で貿易黒字は赤字を記録し、足元でも昨年10月から8か月連続で貿易赤字となっています。この週末の米国雇用の低調さを見ても海外経済は極めて不透明ですので、我が国の貿易収支や経常収支の先行きは楽観できません。

このブログでは、ここ2か月ほど消費動向については "Half Full, Half Empty." と分水嶺に差しかかる可能性を示唆して来たつもりですが、ひょっとしたら、設備投資も曲がり角に達しつつあるのかもしれません。欧州経済が緩やかながら景気後退に入ることが確実視されている中、堅調と見なされて来た米国や中国などもスローダウンを示し指標が増加し、我が国経済も減速に向かう可能性が高まっているのかもしれません。

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2012年7月 8日 (日)

首位と5位の実力の差を見せつけられて3タテされる!

  HE
阪  神001000001 260
読  売00111000x 390

安藤投手をはじめ、投手陣はジャイアンツの強力打線をそこそこ抑えているんですが、あいも変わらず打線が打てずに泥沼の6連敗、3タテされました。最終回は意地を見せたものの、連勝を続ける上り調子の首位と連敗を続ける落ち目の5位との実力の差は歴然でした。もう何をかいわんやの心境で、これだけ負けが続くと応援する方も力が入りません

今週は甲子園に戻って、
がんばれタイガース!

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フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』とアーナルデュル・インドリダソン『湿地』(東京創元社) を読む

フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』とアーナルデュル・インドリダソン『湿地』(東京創元社)

フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』アーナルデュル・インドリダソン『湿地』(ともに東京創元社) を読みました。いずれも大いに注目されている海外ミステリです。まず、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。

フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の息子。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした心やさしき銀行強盗。魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描く連作短篇集。文学賞三冠獲得、四十五万部刊行の欧米読書界を驚嘆せしめた傑作!
アーナルデュル・インドリダソン『湿地』
北の湿地にある建物の半地下の部屋で、老人の死体が発見された。金品が盗まれた形跡はなく、突発的な犯行であるかに見えた。だが、現場に残された三つの言葉のメッセージが事件の様相を変えた。次第に明らかになる被害者の隠された過去。衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相。シリーズは世界四十カ国で紹介され七百万部突破。グラスキー賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー受賞。いま最も注目される北欧の巨人、ついに日本上陸。

まず、『犯罪』については、同じ作者の続編である『罪悪』を5月30日のエントリーで先に取り上げていますが、図書館の予約の都合により、出版順と逆に読むハメになってしまいました。しかし、基本的に犯罪にまつわる短編を収録するという意味で同じ趣向の書籍であって、続柄があるわけではありませんから、読書の順番は気にする必要はなさそうです。以下の11篇の短編を収録しています。

  • フェーナー氏
  • タナタ氏の茶碗
  • チェロ
  • ハリネズミ
  • 幸運
  • サマータイム
  • 正当防衛
  • 愛情
  • エチオピアの男

自らが犯罪を犯すというのも含めて、何らかの意味で犯罪に巻き込まれた個人の悲哀や異常な体験を鋭く描写しています。短い文章でミニマリストのような表現力です。構成については、かなりの部分で事実に基づく犯罪例が多いのではないかと見受けますが、いわゆる純粋のドイツ人もさることながら、移民や日本人も含めた外国人が何らかの意味で関わっている「犯罪」の比率の高さが垣間見えるのは私だけの印象でしょうか。

次に、『湿地』については、引用した出版社の内容紹介にある通り、日本初上陸であり私も読むのは初めてです。ミステリの謎解きの場合、何らかの意味で警察関係者、あるいは、一般に刑事と呼ばれる職業人は物語に不可欠であり、刑事抜きにミステリはほとんど成り立ちません。もちろん、シャーロック・ホームズのようにいわゆる私立探偵というプロがミステリの主人公になる場合も少なくありませんが、この『湿地』は刑事が主人公です。家庭が破たんし、薬物中毒の娘がこの物語の途中で帰宅したりします。舞台はアイスランドです。ミステリですから、ネタバレは避けるべきなのかもしれませんが、ひとつだけ明かすと、映画化の決まった東野圭吾『プラチナデータ』や何よりもマイクル・クライトンの作品と同じ趣向で、遺伝子情報が事件解明のカギとなります。

『犯罪』の各短編は狭い意味での謎解きばかりではありませんが、『湿地』は主人公の刑事が謎解きに挑む古典的なミステリといえます。2人とも最近まで日本では馴染みのなかった作者だけに、今後の翻訳の出版が楽しみです。

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2012年7月 7日 (土)

乱打戦でジャイアンツに打ち負けて泥沼の5連敗!

  HE
阪  神032000000 5121
読  売12003010x 7110

乱打戦でジャイアンツに打ち負け、さらに、守りのミスも出て、泥沼の5連敗です。8回のチャンスに代打桧山選手が併殺に倒れて、私は諦めてお風呂に入ってしまいました。
苦手の杉内投手を攻略して打ち込んだのはよかったんですが、相変わらず能見投手が背信で首位ジャイアンツに力負けしました。いつもながら、チャンスは作りヒット数はタイガースの方が多いんですが、決定打に欠けました。

明日は何とか3タテは回避すべく、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計のグラフィックス

日本時間の昨夜、米国労働省から米国雇用統計が発表されました。ヘッドラインとなる民間部門雇用者数の前月差増減はわずかに+80千人増にとどまり、失業率は前月と同じ8.2%と下げ渋っています。まず、New York Times のサイトから最初の6パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

Job Weakness Starts to Shape Election Tone
It is increasingly apparent what the economy will look like when President Obama faces voters in November: pretty much what it looks like today.
And that picture, a report from the Labor Department made clear on Friday, is far from the booming job growth that prevailed only a few months ago. In June, the economy added a meager 80,000 jobs, and the unemployment rate remained at 8.2 percent.
Early this year, optimists buzzed that the jobless rate might touch below 8 percent by the election, a milestone that would be a major symbolic victory for the incumbent. Then employment growth slowed in March and took a turn toward the paltry in April and May.
With Friday's report, what looked like a blip has now become a streak. And with a gridlocked Congress unlikely to pass any additional stimulus measures before the election, the president is stuck again with an economy in stall mode.
June's job growth, after a revised increase of 77,000 in May, was just about enough to keep up with population growth, but not nearly enough to reduce the backlog of 13 million workers.
Economists have scaled back their expectations for the rest of the year and are now forecasting continued sluggishness.

週末ですので、いつもの通り、簡単にグラフィックスだけ取りまとめておくと、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減とそのうちの民間部門、下は失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

米国雇用統計の推移

非農業部門雇用者は市場の事前コンセンサスでは約100千人の増加と見込まれていましたが、さらに下回って3か月連続で100千人に達しませんでした。昨年のこの時期も5月から8月まで4か月連続で100千人以下を記録し景況感を悪化させた記憶がありますが、今年の場合は、明らかに欧州が緩やかながら景気後退期に入っており、新興国経済も中国をはじめとして大きくスローダウンしているだけに、米国経済を取り巻く情勢はさらに厳しさを増しています。我が国の景気回復も自動車のエコカー補助金と米国への輸出を両輪としているだけに、夏以降、この両方が倒れるようなことになれば、再び日米欧の先進国経済が同時に景気後退期に突入する可能性も排除できません。

時間当たり賃金上昇率の推移

上のグラフはデフレとの関係で私が注目している時間当たり賃金上昇率を前年同月比でプロットしていますが、印象としては底ばっていると見受けられます。水準としても2%をはさんだ動きになっており、サブプライム・バブルが崩壊する前の3%水準にはなかなか達しそうにありません。

Jobless Recovery

最後に、これまたいつもの Jobless Recovery のグラフは上の通りです。景気後退前のピークから数えて6月が54か月目なんですが、50か月を過ぎたころからさらにグラフの傾きが緩やかになった気がします。この先3-4か月ほどの景気、特に雇用は11月の米国大統領選挙に大きな影響を及ぼすことは明らかですから、オバマ政権も何らかの政策を打つことが考えられるものの、繰返しになりますが、世界経済が先進国を中心に同時に緩やかな景気後退に入る可能性も否定できません。

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2012年7月 6日 (金)

ジャイアンツにボロ負けして4連敗!

  HE
阪  神000100101 3120
読  売42000000x 681

先発メッセンジャー投手が早々に打ち込まれて、序盤1-2回で6点取られれば、まったくのお手上げでなすすべなく、とうとう4連敗です。7回のチャンスも押出しの1点に抑えられ、私は諦めてお風呂に入ってしまいました。
先発投手も打撃陣も首位ジャイアンツにまったく歯が立やずに力負けでした。かなり力量に差があると感じざるを得ませんでした。

明日はせめて接戦に持ち込むべく、
がんばれタイガース!

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景気動向指数に見る我が国の景気の現状やいかに?

本日、内閣府から5月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなる一致指数は95.8と前月から▲1.2ポイント低下した一方で、先行指数は+0.3ポイント上昇の95.9を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数、2カ月連続低下 自動車伸び一服
内閣府が6日発表した5月の景気動向指数(CI、2005年=100)速報値によると、景気の現状を示す一致指数は95.8と前月から1.2ポイント低下した。低下は2カ月連続。エコカー補助金などきっかけにした自動車の増勢が一服した。
自動車については生産、出荷の両面で前月よりも悪化。欧州向けが停滞したことに加え、政策効果を手掛かりにした大幅な伸びには一服感が漂いはじめた。生産活動の弱まりを受けて、大口電力使用量も減少した。
一方で、自動車の生産や出荷に関して「基本的には堅調に推移している」(内閣府)といい、悪化は一時的とみている。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善」で据え置いた。
数カ月後の先行きを示す先行指数は0.3ポイント上昇の95.9と2カ月ぶりに上昇に転じた。欧州債務問題を理由に株価などの市況悪化が指数を押し下げたものの、実体経済が回復を支えた。復興需要が後押しする建設関連の最終財のほか、半導体など電子部品・デバイスも出荷が増えて、在庫率が低下した。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.2ポイント上昇の86.1と、2カ月ぶりに改善。完全失業率の低下など雇用指標の改善が景気を下支えした。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が50.0%、先行指数が22.2%だった。

次に、いつもの景気動向指数のグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。いずれも影をつけた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

一致指数は低下したものの、先行指数は上昇しています。判断は難しい気がしますが、景気動向指数については、「CIによる景気の基調判断」の基準として、3か月後方移動平均と7か月後方移動平均の前月差を中心に、機械的に基調を判断するとのルールがあり、「改善」に据え置かれています。報道にもある通り、私も景気は基本的に堅調に推移していると受け止めています。一致指数への寄与の大きさを見ると、有効求人倍率や輸送機械を除く資本財出荷がプラスに寄与し、大口電力使用量、鉱工業生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数などがマイナスの寄与を示しています。

夏休みの旅行動向 (JTB)

景気動向指数を離れて、この先の消費を占うひとつの指標として、JTBが「夏休みの旅行動向」を発表しています。2000年からの夏休みの旅行動向は上のグラフの通りなんですが、今年の夏休みは2000年以降で過去最高の人出となり、東京スカイツリーなどの人気スポットが出来た東京が国内旅行の中心になるとの見込みです。

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2012年7月 5日 (木)

サックス『世界を救う処方箋』(早川書房) を読む

サックス『世界を救う処方箋』(早川書房)

ジェフリー・サックス『世界を救う処方箋』(早川書房) を読みました。中岡教授による週刊「東洋経済」の書評によれば、リベラル派の経済学者が最近になって出版した興味深い書籍が3冊上げられており、スティグリッツ教授の The Priuce of Inequality とクルーグマン教授の End This Depression Now! とサックス教授の The Price of Civilization、すなわち、本書です。まず、出版社のサイトから本書の内容紹介を引用すると以下の通りです。

世界を救う処方箋
「共感の経済学」が未来を創る

〈ハヤカワ・ノンフィクション〉混迷を深めるアメリカと世界経済を救うため、我々に何ができるか? 共同体の崩壊、エネルギー枯渇などの諸課題にも対処できるポジティブな解決策とは? アメリカを代表する経済学者による大胆提言
社会の分断、エネルギーの枯渇、環境破壊……。
アメリカの危機の淵源に、
地球全体の課題を解くカギがある!


世界各地で貧困と戦ってきた経済学者ジェフリー・サックスが、今回、危機に瀕する祖国アメリカに目を向けた。

増大する一方の貧富の格差、社会の分断、教育の劣化、巨額の財政赤字と政治腐敗、グローバリゼーションへの対応の遅れ、環境危機の深刻化……。悪化しつつある母国の病状を、途上国支援の現場で鍛えられた「臨床経済学」を応用して根本から診断、諸課題に対する抜本的な処方箋を提示する。

サックスは説く。いまこそ、私たちは行き過ぎた富の追求を見直し、とくに富裕層はその社会的責任を自覚して、「文明の対価」、すなわち税金を応分に負担すべきだ。目指すべきは、政府と民間が協調し、効率性、公平性、持続性が保証された他者への共感にみちた社会である。それがひいては、人類全体への共感へと至り、世界を救うことにつながるのだから。

アメリカの危機を救う方策を語るなかに、地球の未来を担うすべての人へのメッセージをこめた必読の書。

著者のサックス教授はハーバード大学を経て現在はコロンビア大学の地球研究所所長を務め、本集で明記しているようにマクロ経済を専門とするエコノミストながら、どちらかといえば開発経済学の造詣が深いと私は受け止めています。例えば、旧著の『貧困の終焉』や『地球全体を幸福にする経済』では開発援助の重要性を強調し、イースタリー教授の『傲慢な援助』と鋭く対立したりしています。著者が「臨床経済学」と呼ぶ開発経済学的な見地ながら、米国経済においても成長や貧困削減のために教育を重視する立場は特に注目されます。第10章などが典型的といえます。米国でも日本でも教育の質の低下は、意図的なものであれそうでないものであれ、明らかに政府による政策に起因しており、一部の論調ながら、教育の荒廃を教員組合の責任に転嫁する謬見が見られるのも共通しています。また、テレビの反教育的な役割を正しく指摘している第8章にも共感する日本人は少なくないと私は受け止めています。最終章で描写される米国のミレニアム世代は民族的に多様性に富み、高学歴を志向し、テレビよりもインターネットを情報源として活用している、というのは、部分的には日本の若い世代にも当てはまりそうです。
話が逆になりましたが、そもそもの混合経済から論を説き起こし、リバタリアン的な市場原理主義を切って捨てて、市場における適切な政府の役割を認め、効率性、公平性、持続性の3点を経済の基本に据えて論を進めます。本書全体の基礎となる第3章はかなり読みごたえがあります。医療に関する論調やロビー活動に左右される政治的な決定など、制度的な要因がありますから、必ずしも日本に同じ米国的な症状が当てはまるとは思いませんが、ここ30年くらいは日米が政治的には同じような軌跡をたどっていることも事実です。例えば、私が国家公務員になったのは中曽根内閣のころだったんですが、1980年代前半は米国でレーガン政権が、日本では中曽根内閣が成立し、本書ではレーガン政権が米国における保守反動政権の始まりとして指摘されていたりします。もちろん、もうひとつの新保守主義的な政権は米国では2001年から2期続いたブッシュ政権なんですが、日本では小泉内閣のころに重なる部分があります。本書は私が読んだ限りではもっぱらに米国経済を対象としており、日本経済に応用できる部分は限定的な気もしますが、市場や格差を考える上で、保守とリベラルの経済学の違いがうまく対比されています。

私がこのブログで取り上げるんですから、決して「トンデモ経済学」の書ではなく、正統的な経済書であることは太鼓判です。その上で、日々の金融資産の値動きに左右される超短期のマクロ経済学ではなく、私のように政府に勤務する官庁エコノミストの視点に似て、超長期のタイムスパンを見据えた将来経済への処方箋です。多くの方にオススメします。

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2012年7月 4日 (水)

投手が抑えられず打線が打てずで広島に連敗して5位転落!

  HE
広  島001100001 350
阪  神000100000 132

まったく冴えない試合で、広島に勝てそうな気配すらなく連敗で5位転落です。完全に力負けで、最大の敗因は打てなかった打線にあることはその通りなんですが、岩田投手の踏ん張りも足りなかったと言わざるを得ません。昨日の今日のこの試合ですから、ゼロに抑える気迫が欲しかった気がします。流れが分からないのか、分かっていて抑える力量に欠けるのか、漫然といつものように何も考えずに投げていただけという印象があります。

東京ドームでは、
がんばれタイガース!

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上田淳二『動学的コントロール下の財政政策』(岩波書店) の結論やいかに?

上田淳二『動学的コントロール下の財政政策』(岩波書店)

上田淳二『動学的コントロール下の財政政策』(岩波書店) を読みました。動学的一般均衡モデルを用いて、財政の将来推計を試みています。明記はしてなかったと記憶していますが、おそらく、乱数を発生させて確率的 stochastic に解かれているのであろうと想像しています。私は週刊「東洋経済」のサイトで見ましたが、いくつかの経済週刊誌などで書評が取り上げられているようです。副題は「社会保障の将来展望」とされており、著者は現役の財務省官僚です。まず、短いものですが、出版社のサイトから簡単な内容紹介を引用すると以下の通りです。

動学的コントロール下の財政政策
単年度予算をいかに編成するかに縛られた日本の財政活動に,欧米や国際機関では一般的な「動学的財政コントロール」(Dynamic Fiscal Control)の考え方を導入することで何が見えてくるのか.現実の政策と具体的データを踏まえた分析で,現行の社会保障制度とそれを支える税制の問題点を定量的に明らかにし,その将来像を提示する.

まず、政府の活動については、本書に記してあるように、古典派経済学的な夜警国家における公共財の提供やマクロ経済の安定化のほか、今日的には、広い意味の公共財と捉えるエコノミストもいますが、社会保障の所得移転が大きな部分を占めているのは誰もが認めるところでしょう。そして、少子高齢化に伴って膨れ上がる社会保障費が我が国の財政のサステイナビリティを圧迫していることも多くの国民に認識されており、社会保障と税制の一体改革を巡る議論が国会で交わされていることも周知の事実です。こういったイシューについて定量的に把握することは極めて重要であり、その結論は、本書の第5章 p.208 に示されています。すなわち、さまざまな仮定とともに、2010年を起点とし50年後の2060年に欧州的なGDP比60%の財政赤字残高を目標とすれば、動学的財政不均衡はGDP比で13.9%と試算されています。消費税率に換算すれば35%に達すると同じページに明記されています。
問題とすべきは、この財政不均衡に対する政策対応です。例えば、「東洋経済」の書評では「増税の前に成長率を高めることが先決、と主張する人は、過去20年間の実績を正しく認識しているのだろうか。」との書出しで始まり、財政不均衡是正のための政策のプライオリティは成長より増税と考えているように見受けられます。しかし、消費税率に換算して35%の増税が現実的かどうかは大きな疑問が残ります。すなわち、政策の選択肢は成長と増税と歳出削減の可能性があると私は考えています。さらに言えば、増税の選択肢は消費税率引上げだけでなく、他の税の増税も視野に入れる必要がありそうな気がします。いずれにせよ、増税よりも歳出削減を重視したアレジーナ教授とペロッティ教授の一連の研究成果が思い出されます。
我が国でも、消費税率引上げの議論が広がるとともに整備新幹線の大盤振舞いが始まったりしています。税収を増加させることにより、歳出増加圧力が加わるのは明らかであり、歳入増が歳出増を招きやすいというのは、政策変更によりパラメータがシフトするわけですから、典型的なルーカス批判の視点です。現政権の消費税率10%への引上げは、財政再建には不足するという意味で中途半端である上に、歳出増加圧力をどのように処理するかによっては、まったく期待されるのと反対の結末で終わりかねない危険を有しているような気がしてなりません。もちろん、歳出の削減だけでこの大幅な財政不均衡を埋め合わせることも不可能だと私は考えており、ましてや、昨日の朝日新聞夕刊の4コマ漫画にある通り、いわゆる「ムダの排除」で財政収支を均衡させるのは幻想以外の何物でもありませんが、指摘すべきは消費税増税だけで財政収支均衡を図るのは現実的ではないという事実であり、従って、第1に、歳出の削減をアジェンダに加えるべきで、第2に、歳入の増加に消費税増税以外のメニューを加えるべきです。現政権の「一体改革」が消費税増税に偏っていることは多くのエコノミストが実感している通りであり、私は決して一部の財政タカ派の議論に与することはしませんが、従来からのこのブログの主張の通り、世代間格差の是正の立場からも、現在の高齢者への圧倒的な優遇策を見直すべきであると考えています。その意味で、消費税増税とともに社会保障給付の削減と資産課税の強化が財政再建のためのホントの「一体改革」の政策として検討されるべきであると考えています。

この本を読んで素直に書評を書くとすれば、我が国の現状の財政不均衡を消費税増税だけで埋めようとするのはムリなので社会保障給付を中心とする歳出削減や資産課税強化などの増税も必要、という結論になるハズです。「東洋経済」の書評のようにそうならないのは、無理やりに党派的な主張を潜り込ませているか、それとも、キチンと読めていないかのどちらかだという気がしないでもありません。いずれにせよ、日銀政策委員には不向きだったかもしれません。

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2012年7月 3日 (火)

お風呂から上がると阪神は負けていた!

  HE
広  島000000103 492
阪  神101100000 3100

8回ウラの阪神の攻撃が終わって、榎田投手の登板が予想されたタイミングで、誠に不覚にも安心し切って風呂に入ってしまいました。風呂から上がると阪神は負けていました。こんな形で逆転負けを喫するとは、ホントに今年は弱いと実感しました。昔からの阪神ファンなので仕方ないんですが、応援するのがバカバカしくなってしまいます

明日こそ、
がんばれタイガース!

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毎月勤労統計に見られる我が国の雇用情勢やいかに?

本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で見て▲0.8%減となりましたが、所定内給与は+0.4%増でした。景気に敏感な所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で見て前月からリバウンドしました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の現金給与総額、0.8%減 4カ月ぶりマイナス
厚生労働省が3日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比0.8%減の26万8301円で、4カ月ぶりのマイナスとなった。ボーナスなどの「特別に支払われた給与」が大幅に減ったことが響いた。
特別に支払われた給与は39.9%減の6606円。昨年5月に60.6%増と建設業、金融業や保険業を中心に急増した反動が出た。一方、基本給や家族手当などの所定内給与は0.4%増の24万3290円と2カ月ぶりのプラスだった。残業代などの所定外給与は6.4%増の1万8405円。東日本大震災後の生産の持ち直しなどを背景に製造業の所定外給与は14.8%増えた。
総労働時間は3.3%増の144.1時間と4カ月連続で増加。製造業の所定外労働時間は12.8%増の13.9時間と、12カ月連続のプラスだった。

次に、いつもの毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の現金給与総額指数の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの所定外労働時間指数を、それぞれプロットしています。いずれも5人以上事業所の統計であり、下のパネルの影をつけた部分は景気後退期です。

毎月勤労統計の推移

引用した報道にある通り、賃金が3か月振りに前年同月比で減少したのは特殊要因に起因し、昨年5月に急増した建設業などの反動ですから、それほど懸念すべき結果ではないと私も受け止めています。所定内給与は着実に増加しており、恒常所得仮説的な見地からは消費への影響は大きくない可能性が高いと考えるべきです。しかし、問題は夏季ボーナスです。4月20日付けのエントリーで取り上げたように、多くのエコノミストは今夏のボーナスは減少すると見込んでいます。特に公務員は大幅減少が確実です。ボーナスは一般のサラリーマン生活の支払い計画に深く組み込まれている場合も少なくありませんから、ボーナスが減少するのであれば、何らかの消費にマイナスのインパクトが出る可能性は否定できません。なお、所定外労働時間はジグザグした動きながら、景気回復を反映して着実に増加基調にあります。徐々にタイムラグを伴いつつ給与に反映されることが期待されます。

毎月勤労統計では公務員給与は対象から外されており、この統計を見る上で大きな留保は必要ですが、特定の財に補助金を支給する政策ではなく、賃金が消費をサポートするようになれば景気回復はホンモノです。何度か書きましたが、賃金上昇はデフレ脱却の十分条件と私は考えています。

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2012年7月 2日 (月)

予想外の改善を見せた6月調査の日銀短観から何を読み取るか?

本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは▲1と3月調査の▲4より3ポイント改善しました。輸出増を背景に3四半期ぶりの改善です。大企業の設備投資計画は製造業・非製造業ともプラスを見込んでいます。まず、いつもの日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業、3期ぶりに景況感改善 輸出の改善傾向を背景に
日銀が2日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス1と、3月の前回調査(マイナス4)から3ポイント改善した。改善は3期ぶり。欧州債務問題などで世界経済の減速懸念はあるものの、輸出の改善傾向を背景に景況感が上向いている。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。回答の基準日は6月12日で、基準日までに7割弱が回答した。同日の日経平均株価が8500円前後、円相場は1ドル=79円台半ばだった。
業種別の業況判断DIをみると、大企業製造業では自動車やはん用機械、電気機械など16業種中7業種が改善した。自動車は前回から4ポイント改善してプラス32だった。紙・パルプや化学、非鉄金属も改善幅が大きかった。
エコカー補助金による政策効果に加え、中国、タイなどアジア向けの輸出も持ち直しの動きがみられ、景況感が悪いと感じる企業の数が減った。
大企業非製造業の業況判断DIは3ポイント改善してプラス8。4期連続の改善となった。東日本大震災後の復興需要を背景に建設、不動産がともに改善したほか、対個人サービス、宿泊・飲食サービスがともに2ケタの改善幅となった。高齢者を中心としたサービス消費が活発になっており、足元の内需の底堅さが裏づけられた。
ただ、業況判断DIの3カ月先の見通しをみると、製造業と非製造業で明暗が分かれる。大企業製造業が足元から2ポイント改善し4期ぶりにプラスに転じる一方で、大企業非製造業では2ポイント悪化のプラス6となる見通しだ。個人消費などの内需の持続力にはやや不安を残した。
2012年度の設備投資計画は大企業の製造業が前年度比12.4%増、非製造業が3.0%増だった。背景には企業収益の回復がある。経常利益は加工業種を中心に伸びそうで、大企業製造業全体で前年度比10.1%増を見込む。先行きの設備過剰感は和らぐ見通しだ。
雇用の過剰感も薄れつつある。足元では「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断DIが大企業製造業で前回比で横ばいのプラス8となったが、先行きは過剰感が2ポイント低下する見通し。新卒採用計画も12年度、13年度ともプラスとなっており、雇用環境は緩やかに改善しているようだ。
大企業製造業の12年度の想定為替レートは78円95銭と前回調査時より81銭円安になった。ただ、過去の実績と比べると依然として調査開始以来最高の円高水準となっており、円高への警戒感はなお根強い。

いつもの産業別・規模別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

足元の業況判断DIは大企業では製造業・非製造業とも3ポイント改善しました。それだけでなく、先行きの業況判断DIも大企業製造業ではさらに2ポイント改善すると見込まれています。ただ、大企業非製造業は逆に▲2ポイントの悪化となっています。もっとも、製造業の中でも当然に濃淡はあり、大企業自動車の先行きは▲17ポイント悪化すると見ていますから、エコカー補助金・減税の終了による影響が織り込まれていると考えるべきです。なお、製造業を中心に予想外の改善を見た要因は資源価格にありそうです。すなわち、大企業の石油・石炭製品の業況判断DIは3月調査の0から6月調査では▲33と大きく悪化しています。逆に、大企業の非鉄金属の業況判断DIは3月の▲11から+11と大きくジャンプしています。また、製造業と非製造業の差を生じている要因は堅調に回復している米国経済に起因する輸出に見出せると私は受け止めています。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

業況判断が堅調に推移する中で、設備や雇用に対する要素需要もそれなりの盛り上がりを見せています。上のグラフは上のパネルが設備判断DI、下が雇用判断DIを、それぞれ企業規模別にプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。設備の過剰感はやや改善テンポが緩やかになっているのが読み取れますが、雇用判断は引き続き順調に改善を続け、中堅・中小企業ではとうとう6月調査からマイナスに入りました。雇用は過剰感よりも不足感を持つ企業の方が多くなったということです。先週発表されたハードデータの雇用統計とも整合的であると受け止めています。

日銀短観設備投資計画の推移

上のグラフは2007年度以降の大企業全産業の設備投資計画をプロットしています。業況マインドの改善に伴って、設備投資計画も6月としては伸び率が高くなっています。昨年度や一昨年度と似たグラフに見えますが、やや上回っているかもしれません。このブログではお示ししませんが、利益水準がかなり高い業務計画になっており、大企業の利益計画は2年振りの黒字転換が示唆され、特に製造業の上方修正が目立っていることから、利益計画にけん引される形で設備も堅調に推移する可能性が高いと私は予想しています。

日銀短観新卒採用計画の推移

最後のグラフは6月調査と12月調査だけの質問項目である新卒採用計画です。リーマン証券の破綻のショックで大きく落ち込んだ新卒採用も徐々に回復しつつあり、中小企業がリードしていた昨年までの新卒採用計画も大企業や中堅企業に波及しつつあるようです。私は一昨年まで2年間の大学教員生活を送っていましたが、こういうのを見ると大学生の就職も運の要素がかなり含まれる、と感じてしまいました。

総じて見れば、今回の日銀短観6月調査の結果は驚くほど日銀の景気判断をサポートする内容になっています。日銀の金融政策はしばらくの間、様子見の現状維持を続けることでしょう。

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2012年7月 1日 (日)

投手リレーに失敗してヤクルトに逆転負け!

  HE
阪  神000050000 5120
ヤクルト100114200 9151

5回には連打で5点を入れて逆転したまではよかったんですが、得点はそれだけで、「スミ1」というのは聞いたことがありますが、「中5」は初めて目にしました。さらに、序盤から不安定な安藤投手を引っ張り過ぎた上に、安藤投手をつないだ加藤投手と久保田投手がことごとく打ち込まれ、終わってみれば大差をつけられての逆転負けでした。打つ方はそこそこ得点できるようになった気がしますが、藤川投手に続いて福原投手も戦線離脱し、投手陣は火の車です。先発の安藤投手に少しでも長いイニングを投げさせたい意図は分かるんですが、要するに、キャンプ以降に投手陣の整備を怠ったツケが今になって回って来ているということでしょう。一昨日の逆転負けといい、当面の敵である3位チーム相手にこんな負け方を繰り返すようでは、今年は本当に弱いチームに成り下がった気がします。

松山の広島戦では、
がんばれタイガース!

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で、結局、マウリッツハイス美術館展はいつごろ見に行けばいいのか?

マウリッツハイス美術館展ポスター

話題のマウリッツハイス美術館展が昨日から上野の東京都美術館で始まっています。上の画像はフェルメール作「真珠の耳飾りの少女」に扮する武井咲です。
私はすでにチケットは入手しているんですが、いつ行けばいいのかタイミングを熟慮しています。始まったばかりのこの週末は当然パスです。今年に入って、1月21日に同じ上野の国立博物館に北京故宮博物院200選展を見に行ったものの、長大な行列に臆してしまい、結局、お目当ての「清明上河図」を見逃したトラウマがあり、タイミングをはかっているところです。常識的には、8月に入ってから夏休み期間の平日に出かけるというのが考えられます。しかし、8月は読売書法展の季節だということもあり、さらにひとひねりして、マウリッツハイス美術館展は東京では9月17日までの開催ですから、9月に入ってから平日に年休を取れば、さらに行列が短くなる可能性が高まるような気もします。

もっとも、そこまでするかという疑問も残ります。とっても悩ましいところです。無理やりに、「お出かけの日記」に分類しておきます。

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