『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』を読んで米国経済の景気指標を振り返る
『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』(かんき出版) を読みました。著者のサイモン・コンスタブル氏の方はジャーナリスト、ロバート E. ライト氏はエコノミストなんだろうと思います。申し訳ありませんが、私には馴染みのない名前です。監訳者はみずほ証券のエコノミストの上野泰也さんです。このかたはエコノミストのランキングなどでもお目にかかっています。まず、出版社のサイトから本の内容紹介を引用すると以下の通りです。
内容紹介
世界No.1経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」の記者と経済学者が、本当に役立つ50の経済指標を厳選。
経済の動向を示すデータの動きが読み解けるスキルが身につき、経済の変化をいち早く察知できるようになるので、景気の変動に左右されることなく大切な資産を守り、着実に増やすことができる。
基本的な経済指標を押さえつつ、知る人ぞ知る指標も多数紹介。
タイトル通り、米国の主要な経済指標についての解説なんですが、何のための解説かというと株や債券やコモディティなどの資産運用のための経済指標解説だったりします。もちろん、ウォールストリート・ジャーナルもちゃっかり宣伝されています。私のこのブログも資産運用の観点から読んでいる人がいるのかもしれないと、今さらながら感慨を持ちました。なお、日本を代表して日銀短観が取り上げられています。名誉なことなのかもしれません。50指標をすべて並べようかとも考えたんですが、出版社のサイトに並んでいますので、このブログでは割愛したいと思います。50指標の中には何らかの有料の契約をしないと提供されない指標もあります。資産運用のコストなのかもしれません。

ということで、上のグラフは米国景気を包括的に観察できる指標をプロットしたグラフです。上のパネルがフィラデルフィア連銀が作成・公表しているADS指数 (Aruoba-Diebold-Scotti Business Conditions Index)、下がシカゴ連銀のCFNAI指数 (Chicago Fed National Activity Index) です。CFNAI-MA3 とはCFNAIの後方3か月移動平均です。この『ウォールストリート・ジャーナル式 経済指標 読み方のルール』には前者のADS指数しか収録されていませんが、私はむしろCFNAI指数の方がエコノミストの間で広範に利用されているんではないかと受け止めています。私のこのブログでも4年前の2008年3月25日付けのエントリー「CFNAI から見て米国経済の景気後退局面入りはほぼ確実」で取り上げています。もっとも、ADS指数は日次データであることに特徴があり、月次データであるCFNAI指数よりも日々の金融資産市場の動きをよくフォローしているのかもしれません。それぞれのグラフの引用元のサイトは以下の通りです。いずれも連銀が作成・公表しているデータですから、登録やお支払いはまったく必要ありません。誰でも自由に無料でダウンロードすることが出来ます。
これら2指標で足元の米国の景気を見ると、確かにマイナスに突っ込んでいるんですが、現時点で利用可能な情報に基づく限り、景気後退のサインである臨界点 critical value には達していないように見受けられます。
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