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2012年8月31日 (金)

能見投手が復活を思わせるピッチングで1か月振りの甲子園で広島に完封勝ち!

  HE
広  島000000000 043
阪  神10000101x 3111

投手陣は、能見投手が復活を思わせるナイス・ピッチングでした。最終回は藤川投手のリリーフを仰いだものの、8回まで広島打線をゼロに抑え込みました。攻撃陣は、1回に相手ミスもあって先制し、中盤6回に私にはよく分からないプレーで追加点を奪い、8回には狩野選手のホームランでダメを押しました。8回で11安打ですから、もう少し得点が欲しいところですが、現状の阪神打線の状態からすればまずまずの攻撃といえます。何よりも、長期ロードを終えて1か月振りに戻った甲子園で勝ったことに意義があるような気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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集中発表された政府統計から我が国の景気をどう見るか?

本日、政府統計が集中的に発表されました。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率、厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。まず、日経新聞のサイトからそれぞれの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。

7月の鉱工業生産、1.2%低下 市場予想は1.7%のプラス
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は91.5と、前月比1.2%低下した。マイナスは2カ月ぶり。中国などアジアで生産される携帯電話向けの電子部品などが落ち込んだ。8-9月の予測もエコカー補助金の終了を控えて自動車の生産が減る見通し。経産省は基調判断を「横ばい傾向」と前月から据え置いた。
エコノミストの予想は1.7%のプラスだった。6月の生産指数が確報段階で上方改定された影響もあるが、「海外経済の減速に伴う輸出向け出荷の鈍化や在庫の積み上がりなど下振れリスクが高まっている」(大和総研)との声が出ている。
生産指数は全16業種のうち12業種で低下した。電子部品・デバイスは6.5%低下。半導体集積回路などアジア向けの携帯電話部品が減った。7月は先月時点で生産増を計画していたが、「予想外の減少」(経産省)で在庫も積み上がっている。一般機械も6月に発電設備用の蒸気タービン部品が増えた反動が出て3.6%低下した。
鉱工業全体の出荷指数は3.6%低下と3カ月連続のマイナス。7月は輸送機械が北米向けの自動車輸出の減少などで8.3%減った。在庫を出荷で割った在庫率も7月は初めて東日本大震災の直後を上回り、09年6月以来の水準となった。
同日発表された製造工業生産予測調査は8月の生産が前月比0.1%プラス、9月が3.3%マイナス。自動車など輸送機械は9月に13%減と大幅に落ち込む見通しだ。エコカー補助金が9月中にも終了して自動車の販売が減ることを警戒し、生産を調整する。
完全失業率、7月4.3% 有効求人倍率は0.01ポイント上昇0.83倍
総務省が31日発表した7月の完全失業率(季節調整値)は前月と同じ4.3%だった。厚生労働省が同日発表した7月の有効求人倍率(同)は0.83倍で前月を0.01ポイント上回り、14カ月連続で改善した。人材を求める企業がある一方、職を探す人の希望する職種との条件が合わない雇用のミスマッチがあり、失業率改善の動きは足踏みを続けている。
仕事がなく、働く意欲もない「非労働力人口」は団塊世代の退職の影響を受け、前月より5万人増えて4543万人となった。一方、女性の非労働力人口は2月以来の減少に転じた。
医療・福祉分野に加えて宿泊・飲食のサービス分野など、女性が働きやすい職場で採用の動きが広がっている。職探しをする女性が増えたことで、女性の失業率は前月比0.1ポイント上昇し4.1%となった。男性は横ばいの4.5%だった。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合を示す。完全失業者数は282万人で前月より1万人増えた。内訳を見ると、新たに仕事探しを始めた人を含む「その他の者」が12万人増えた。就業者数は6269万人で3万人減った。
労働市場の先行きを映す新規求人倍率は1.31倍となり、2カ月連続で低下した。雇用の裾野が広い製造業で新規求人数が減っており「今後の動きを注意深くみる必要がある」と総務省は指摘している。
消費者物価、3カ月連続下落 7月0.3%下げ
総務省が31日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除いたベースで99.5となり、前年同月比0.3%下落した。下落は3カ月連続。ガソリン価格が下がったほか、薄型テレビなどの落ち込みが続いた。
ガソリンは前年同月比6%下落し、6月より下落幅が拡大した。テレビは4%下落。昨年7月は地上デジタル放送への移行に伴う需要増でテレビ価格が上がっていたため、その反動が出た。電気冷蔵庫など家庭用耐久財は9%下がった。
ただ、先行指標となる東京都区部の8月のCPI(中間速報値)には足元の原油価格上昇の影響が出ている。生鮮食品を除く物価指数は前年同月比0.5%下落の99.1だったが、マイナス幅は前月より0.1ポイント縮んだ。ガソリン価格の落ち込みが鈍化したためだ。
全国のCPIはガソリン価格の影響がより強く表れるため、8月以降は押し上げ要因になる可能性がある。総務省は「東京都区部では原油値上がりの影響が出ており、今後は注意が必要」としている。

次に、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財です。いずれも季節調整済の系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産指数の推移

市場の事前コンセンサスでは前月比で1.5-2.0%くらいの増産でしたので、7月の生産が季節調整済みの前月比で▲1.2%減と減産に転じたのは少しびっくりしました。製造工業生産予測指数で見ると、8月は前月比+0.1%増とかすかにリバウンドするものの、9月は▲3.0%減と再び減産に入ると見込まれており、足元も先行きも生産はかなり弱い動きを示しています。予測指数を基にすると、7-9月期の減産は前期比で▲3%程度に達し、4-6月期の減産幅が拡大する見通しです。7月については季節調整済みの前月比で見て、生産が▲1.2%減となったほか、出荷が減少して、在庫と在庫率が増加する形になっており、意図せざる在庫増に起因する在庫調整が始まる可能性を否定し切れません。この生産の弱い動きは国内のエコカー補助金などの政策効果の剥落や反動とともに、欧州や中国などの世界経済の動向が輸出を通じて生産に影響を及ぼしていると受け止めています。

雇用統計の推移

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。遅行指標の失業率、一致指標の有効求人倍率、先行指標の新規求人数をプロットしています。すべて季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。生産に比べて相対的に底堅い動きとなっていますが、先行指標の新規求人数が低下しているのが気がかりです。また、有効求人倍率が改善している一方で失業率が改善しないのは、一致指標と遅行指標のラグも考えられるものの、引用した記事にもある通り、求人と求職のミスマッチが生じている可能性があります。ミスマッチには地域、給与、職種、産業などが考えられますが、正規・非正規のミスマッチの可能性もあると私は受け止めています。雇用の受け皿となっている医療・福祉に就職するに際して、何らかのミスマッチがあるのかもしれません。もちろん、ミスマッチとともに、生産が減産を続けることから、雇用にも何らかの影響が出る可能性が高いと覚悟すべきです。

消費者物価上昇率の推移

政府統計の最後に、消費者物価上昇率の推移は上のグラフの通りです。いつものお断りですが、CPI上昇率や寄与度は統計局では端数を持った指数で計算されていますが、一般には公表されていませんので、下のグラフでは端数を持たない指数から計算しております。従って、微妙に統計局発表の計数に基づくグラフと異なる可能性があります。デフレが続いていることに変わりはないんですが、エネルギーのプラス寄与度の幅が小さくなった分、7月はマイナスが大きくなりました。しかし、原油価格はすでに反転上昇を始めていると私は受け止めていますので、我が国の消費者物価も先行きはゼロからプラスを目指すんではないかと見込んでいます。

国・地方の基礎的財政収支

統計を離れて、広く報じられている通り、本日の閣議において来年2013年度から2015年度を対象とする「中期財政フレーム」が閣議決定されています。上のグラフは内閣府の試算になる「経済財政の中長期試算」から引用しています。見れば分かると思いますが、2023年度まで試算されています。消費税率を引き上げても、青い折れ線の慎重シナリオでは基礎的財政収支は黒字にならず、公債残高のGDP比は上昇を続け、2020年度までに軽く▲200%を超えるようです。何度も、このブログで主張している通り、高齢者向けの社会保障支出の削減が必要です。

最後に、雇用統計は別にして、弱い生産とマイナス幅を拡大させた消費者物価を見る限り、金融政策に対して追加緩和を要求する意見が強まることが予想されます。国内的にはエコカー補助金による効果の失速、世界的には欧州や中国をはじめとする新興国の景気の減速などが明らかになる一方で、原油をはじめとする商品価格は今後上昇する可能性を残しています。金融政策の運営が注目される局面といえます。

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2012年8月30日 (木)

3戦とも競った3連戦を負け越して最下位が近づく!

  HE
阪  神000001110 350
D e N A02010001x 492

一昨夜の試合と同じように、苦労して苦労して7回に追いついたにもかかわらず、8回にリリーフの福原投手が失点しDeNAに競り負けました。なかなか白熱した最下位争いの3連戦でしたが、現状の実力は伯仲しているものの、クローザーにつなぐセットアッパーだけを取っても、DeNAの方が上なのかもしれません。

何とか最下位だけは免れるべく、
がんばれタイガース!

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商業販売統計に見る消費はピークを打ち減少に転じるか?

本日、経済産業省から7月の商業販売統計が発表されました。私がいつも注目している小売販売は季節調整していない原系列で前年同月比▲0.8%の減少、季節調整済みの系列でも前月比▲1.5%の減少となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の小売販売額、8カ月ぶりマイナス 地デジ需要の反動響く
経済産業省が30日発表した7月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆7000億円と前年同月比0.8%減だった。マイナスは8カ月ぶり。昨年7月の地上デジタル放送への移行を前にしたテレビや録画再生機の駆け込み需要の反動で、機械器具小売業が26.6%減と大きく落ち込んだことが響いた。
燃料小売業もガソリン価格の下落で7.0%減だった。一方、自動車小売業はエコカー補助金効果などにより32.5%増えたが、全体の減少分を補いきれなかった。
百貨店やスーパーを含む大型小売店は4.0%減の1兆7121億円で、3カ月連続のマイナスだった。衣料品は昨年に夏物の売れ行きが好調だった反動で、5.2%減。飲食料品は野菜価格の下落に伴い2.5%減だった。既存店ベースでは4.4%減と4カ月連続で減少した。昨年より土曜日が1日少なかったことも影響した。
コンビニエンスストアは1.0%増の8604億円だったが、既存店ベースでは3.4%減と2カ月連続のマイナスだった。梅雨明けが遅く上旬に気温が上がらなかったため、清涼飲料水やアイスクリームなどの販売が振るわなかった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。いずれも卸売販売と小売販売の推移なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列の前年同月比を、下は2005年=100となる季節調整指数を、それぞれプロットしています。

商業販売統計の推移

引用した記事にもある通り、商業販売統計に見る小売販売は季節調整していない原系列の前年同月比で8か月振りにマイナスとなり、季節調整済みの系列でも2か月連続のマイナスを記録しました。先月のこの統計の発表時には7月27日付けのエントリーで「台風4号の上陸をはじめとする天候不順による一時的な落ち込みか、前年比でマイナスが確実な夏季ボーナスなどの所得や景気全般の動向を反映した基調的な落ち込みか、ここまでの統計だけでは判断しかねています」と結論したんですが、引き続き、販売額の水準はかなり高いものの、やや基調的な落ち込みの印象が強くなったのは確実です。ただし、私自身は消費に関してはそれほど悲観していません。繰返しになりますが、まだまだ消費の水準が高いからです。夏のボーナスはやや減少するとはいえ、この先の年末ボーナスを含めて、雇用が堅調に推移すれば消費は大崩れしないと楽観しています。
6-7月の足元の小売販売の前月比の動きを大きく左右したのは自動車販売です。昨年12月に再開されたエコカー補助金は完全に息切れし、予算の財源は来月までもちそうな報道を見かけましたが、需要は従来ほど喚起された気配がありません。昨年7月時点でエコカー補助金はありませんでしたから、自動車販売は前年同月比では小売販売の押上げ要因となっていますが、足元の前月比では低下要因となっています。そして、前年との比較に目を転じると、自動車販売の前年同月比押上げ分を相殺している最大のマイナス要因はテレビやビデオなどの機械器具の販売です。昨年7月は被災3県を除いた地デジ完全移行でしたから、これに伴う最後のテレビの駆込み需要があり、その反動であることは明らかです。もっとも、前年比で見ると自動車販売を除いて全般的に冴えない統計となっています。統計の何をどう見るかの視点次第ですが、前年同月比ではテレビが、前月比では自動車が、それぞれ小売販売を押し下げる要因となっています。

不動産価格指数の推移

最後に、商業販売統計を離れて、昨日、かねてよりアナウンスされていた「不動産価格指数」が国土交通省から発表されました。上のグラフは、その昔1993年から試験算出されている東証の住宅価格指数(首都圏総合)と併せてプロットしています。当然ながら、よく似た動きを示しています。私自身はすぐには思いつかないんですが、今後、どのように活用されるのか注目したいと思います。

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2012年8月29日 (水)

新井良太選手の決勝ホームランの最小得点差を藤川投手で逃げ切る!

  HE
阪  神000011000 280
D e N A000100000 170

上本二塁手の同点タイムリー、新井良太内野手の逆転ホームランと、シーズン当初のスタメンどころか、ベンチにもいなかった若手2選手の活躍でもぎ取った2点をリリーフ陣の福原投手と藤川投手で逃げ切りました。打つ方は相変わらずですが、最終回、サードに走者が進んでからの藤川投手の投球は鬼気迫るものを感じました。

がんばれタイガース!

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ピュー・リサーチ・センターの世論調査に見る米国民の格差感やいかに?

私が夏休みで休養していた8月22日にピュー・リサーチ・センター Pew Research Center から「中流層の失われた10年」 The Lost Decade of the Middle Class と題するリポートが発表されたのに続いて、今週8月27日に「確かに、富裕層は違う」 Yes, the Rich Are Different という調査結果が発表されています。どちらも、いわゆる Opinion Poll の結果を取りまとめたソフトデータに基づくリポートで、ハードデータのエビデンスに基づいているわけではありませんが、非常に興味ある内容です。まず、リポートの最初のパラグラフがとても的確な要約となっていますので引用すると以下の通りです。

Yes, the Rich Are Different
As Republicans gather for their national convention in Tampa to nominate a presidential candidate known, in part, as a wealthy businessman, a new nationwide Pew Research Center survey finds that many Americans believe the rich are different than other people. They are viewed as more intelligent and more hardworking but also greedier and less honest.

要するに、富裕層は「知的」で「よく働き」、「強欲」であるが、「正直」ではない、と見なされているようです。季節がら、支持政党別の見方も示されていて、共和党支持者は富裕層をより「よく働く」と受け止め、民主党支持者はより「強欲」と考えているようです。分かる気がします。なお、「富裕層」 The Rich という表現と微妙に異なりますが、「豊か」 Wealthy と見なされる年収に対する質問に対して、中位回答は15万ドル、日本円で1200万円くらいと弾き出されています。いいセンだという気がしますが、ニューヨークやワシントンDCを含む米国北東部では20万ドルとなっていたりします。

The Growing Gap Between Rich and Poor

過去10年で所得格差が拡大したか縮小したか、について問うた設問に対する回答が上のグラフの通りです。格差「拡大」が65%と圧倒的で、「縮小」は7%に過ぎません。「拡大」の回答者に「いいこと」か「悪いこと」かを聞いたところ、当然ながら、「悪い」が過半数の57%を占めています。しかし、この57%という数字は少し小さい気がしないでもありません。日本では格差拡大が「悪いこと」とする回答はもっと大きくなると考えるのは私だけでしょうか。

Social Classes Differentiated by Education, Marriage, Age

上流・中流・下流の社会階層は何により違いが生じるか、について問うた設問の回答が上のグラフの通りです。まず、大学を卒業しいているかどうかという意味での教育、そして、中流と上流については結婚や持ち家からも違いが生じるとの結果となっています。また、グラフは引用しませんが、所得に起因する健康格差 Health Gap もかなりの大きさと認識されているようです。

How Would the Candidates' Policies Affect the Rich, Poor?

最後に、今年は米国では大統領選挙のある政治の年ですから、大統領候補の政策と社会階層についても設問があります。すなわち、共和党のロムニー候補と民主党のオバマ大統領の政策が富裕層・中流・貧困層のどの社会階層に裨益する help か、という設問に対する回答が上のグラフの通りです。見れば分かる通りの一目瞭然です。特に解説は必要ないと思います。

格差が先進国の中でも特に大きいと見なされていて、さらに、それを自覚しているハズの米国民自身の世論調査結果です。アメリカン・ドリームのような立身出世伝がさほど実感されない日本では格差や不平等に対する反感や嫌悪はもっと強いんではないかと私は想像しています。

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下の子の誕生日を祝う

下の子の誕生日

今日は我が家の下の子の誕生日です。中学2年生で14歳になりました。誠にめでたい限りです。
我が家の恒例により、ジャンボくす玉を置いておきます。

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2012年8月28日 (火)

苦労して8回に追いつくも榎田投手が2ランを浴びてDeNAに負ける!

  HE
阪  神000000110 260
D e N A01010002x 460

相変わらず、打線は貧打が続いているものの、終盤7回と8回に何とか得点して追いつ来ましたが、DeNA4番のラミレス選手にリリーフの榎田投手が2ランを浴びて突き放され、そのまま押し切られました。久保投手は7回を2失点ですから先発投手として合格点と言えます。榎田投手の調子が戻らないのが今夜の敗因のひとつで、言うまでもなく、もうひとつの敗因は打てない打線です。今シーズンはもう打線は復活しないかもしれません。打線が復活しないのを織り込んで作戦を立てるのか、それとも、打線の復活を信じて采配を振るうのか、難しいところかもしれませんが、私は前者だと思います。

がんばれタイガース!

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文部科学省「学校基本調査速報」に見る大学卒業者の就職の現状やいかに?

昨日、文部科学省から2012年の「学校基本調査速報」が発表されています。大学教員だったころから注目している大学卒業生の就職ですが、正規職員への就職率はわずか60%にとどまっているとの結果が明らかにされています。少し長くなりますが、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

新卒「ニート」3万人 働き手減少に拍車
教育・就職 橋渡し欠く

大学を今春卒業した約56万人のうち6%にあたる約3万3千人が、進学も就職の準備もしていないことが27日、文部科学省の調査で分かった。大半が「ニート」とみられ、学校から職場へのスムーズな移行が難しいという若年層の課題が浮き彫りになった。ニートへの対応が遅れれば質と量の両面で日本の労働力の劣化を招き、生活保護受給者の増大なども懸念される。抜本的な対策が急務だ。
文科省の学校基本調査速報によると、今春の大卒者は昨年比1.2%増の55万9千人で、このうち35万7千人が就職した。就職率は63.9%で2.3ポイント増え、2年連続で改善した。同省は大企業志向が強かった学生が中小企業に目を向けた影響が大きいと見ている。
ただ就職も進学もしなかった約8万6千人の現状を初めて調べたところ、就職や進学の準備をしている人は約5万3千人にとどまった。残り約3万3千人はどちらの活動もしていない。男性が約1万8千人、女性が約1万5千人で、家事手伝いやボランティア従事者なども含まれるが、いわゆるニートが大半を占めるとみられる。
全国に約60万人といわれるニートは高卒者や学校中退者が多いとみられていた。大学の新卒者でも数万人規模に上ることが分かり、問題の深刻さが鮮明になった。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの横山重宏主任研究員は「就業しないまま年を重ねると、職探しがより難しくなる」と指摘する。都内の30歳男性は大学卒業後に勤めた会社をやめて7-8年がたつ。収入はなく親と同居。「働きたい気持ちはあるが、仕事を長く離れ、他人との会話が不安」と打ち明ける。
企業などで職業訓練を受けないニートが増えると、日本の労働力全体の質が下がる懸念がある。就職した同世代との経済格差が拡大し、いずれ生活保護受給者になりかねない。結婚や子育てが困難な人が増え、少子化が一段と深刻になる可能性も指摘されている。
政府は専門の相談員がニートなどの若者の自立を支援する「地域若者サポートステーション」の拡充を急いでいる。2011年度は全国110拠点に約37万6千人が来所したものの、就職などの進路が決まった人は約9700人にとどまった。
横山氏は「研修の場の提供など民間企業を巻き込んだ支援を進めるべきだ。成長産業の育成などで雇用を生み出すことも重要」と言う。
調査では約2万2千人が契約社員や派遣などの非正規雇用になっていることも分かった。正社員を希望したものの内定を得られず、契約社員などを選んだ人も多い。アルバイトなど一時的な仕事に就いた人も含めると、新卒者のほぼ4人に1人の12万8千人が安定した仕事に就けていない。
新卒者の進路を学部系統別にみると、文系で無職やアルバイトの割合が多かった。人文科学は25.2%、社会科学は21.8%だった。理学と工学は4割前後が大学院に進学しており、無職や非正規雇用の割合は10%台で比較的低かった。

ということで、今夜のエントリーでは「学校基本調査速報」の報道発表資料から、いくつかグラフを紹介して大学(学部)卒業生の就職について考えるとともに、根本的に、大学生などの若年層に政府のリソースが回らない原因についても、併せて、最近の調査から高齢層の反対が強いことを示したいと思います。

大学(学部)卒業者の就職率の推移

まず、上のグラフは「学校基本調査速報」の報道発表資料の p.7 から引用しています。大学(学部)卒業者の就職率の推移をプロットしています。赤い折れ線の就職率はリーマン・ショック後のボトムである一昨年から着実に上昇していますが、今年から始まった調査に従えば、63.9%の就職率のうち3.9%が正規の職員ではないとされていますので。逆算すれば、下のグラフの通り、正規職員に就職したのは60%ちょうどということになります。

大学(学部)卒業生の状況

次に、上のグラフは同じ「学校基本調査速報」の報道発表資料の p.8 から引用しています。今年の大学(学部)卒業生の就職状況です。大学院等への進学の13.8%も就職難で止むなくという面がありそうな気もしますが、それを別にしても、「① 正規の職員等でない者」と「② 一時的な仕事」、「③ 進学も就職もしていない者」を合算すると128千人、卒業者に占める安定的な雇用についていない割合はほぼ4人に1人の22.9%に上ります。グラフは引用しませんが、性別で見て、この不安定雇用の割合は男性22.0%、女性24.1%に上ります。

分野別の大学(学部)卒業生の状況

続いて、上のグラフも同じ「学校基本調査速報」の報道発表資料の p.8 から引用しています。学部別の卒業者の状況を示しています。理系の理学、工学、農学系で大学院等への進学割合が高いのは実感通りで、その分だけ就職率は低くなっています。逆に、文系の人文科学と社会科学は進学率が低くて正規の職員比率は高いんですが、他方、「一時的な仕事に就いた者」及び「進学も就職もしていない者」の割合も高くなっています。特に、人文科学系では「正規の職員ではない」を加えると30%超の卒業生が不安定な非正規雇用についていると考えられます。
マクロ経済的な成長の促進の必要を別にしても、この大学生の就職を見る上でのインプリケーションは2つあります。第1に、大学、すなわち、教育現場の対応です。私は大学が就職だけを準備する機関ではないと考えている一方で、同様に、多くの大学で教養教育的な面ばかりが重視され、実学的な面が軽視されて来たとも考えていませんが、企業の職業訓練負担が行き届かないのであれば、大学において専門学校のように実践的な要素をより多く取り入れる可能性も残されています。しかし、大学教育の現場を経験した者として、少なくとも非正規雇用に対応した大学教育はあり得ません。第2に、引用した日経新聞の記事にも見える通り、我が国の労働市場の質の劣化を招きかねないという危惧です。もはや、新卒一括採用や長期雇用はドミナントではないとはいうものの、大学卒業生の2-3割がOJTの不十分な職場で働くことを余儀なくされている点は軽視できません。自然単位で若年人口が減少する上に、質が劣化すれば効率単位ではさらに大きな労働力の減少に帰結しかねません。これまた、OJTといった企業内の職業訓練が不十分であるなら、大学ととともに政府も何らかの対策を考える必要がありますが、高齢層の反対が強いためにシルバー・デモクラシーのパワーで実現が難しい面があります。下のグラフは「高齢者への社会保障支出を減らし、若い世代に回す」ことに対する賛否を問うた世論調査結果です。年代別の比率になっています。朝日新聞の世論調査結果を引用しています。40代ではトントンですが、50代から先の高齢層では反対が賛成を上回っているのが見て取れます。

社会保障 「高齢者削り若者へ」賛否半々

8月19日付けの朝日新聞の社説「社会保障改革 - 孫の顔を思い描けば」では、かなり大きな勘違いもあるんでしょうが、制度的ではなくもっぱら高齢者の情に訴える方法で高齢者向けの社会保障の削減を主張しています。圧倒的なシルバー・デモクラシーの下で、もはやそれしか方法がないのかもしれません。

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2012年8月27日 (月)

QE3がささやかれる米国景気指標を振り返る

今週金曜日からジャクソンホールにおいて開催されるカンザスシティー連銀のシンポジウムで、米国準備制度理事会 (FED) のバーナンキ議長がどのような発言をするかが注目されています。いうまでもなく、焦点は量的緩和第3弾 (QE3) について、さらに踏み込んだ発言があるのかどうかであり、9月12-13日に開催される連邦公開市場委員会 (FOMC) において QE3 が発動されれば、例えば我が国への直接的な影響としては、為替の一層の円高への振れなどが考えられます。

CFNAI-MA3

ということで、7月11日付けのエントリーでも紹介しましたが、米国のいくつかの地区連銀が公表している景気指標をごく簡単に振り返っておきたいと思います。まず、上のグラフはシカゴ連銀が公表している CFNAI-MA3 です。シカゴ連銀のリポートによれば、"July's CFNAI-MA3 suggests that growth in national economic activity was below its historical trend." ということになります。

ADS Business Conditions Index

次に、上のグラフはフィラデルフィア連銀が公表している Aruoba-Diebold-Scotti (ADS) Business Conditions Index です。8月のデータを一部に織り込んだ結果では少し下向きになっています。このままマイナスに落ち込んで景気後退に陥るという見通しではありませんが、景気回復に力強さを欠いていることも読み取れます。

今週はジャクソンホール・コンファレンスの前にも、29日水曜日にはベージュブックが公表されますし、FOMC の前に FED がせっせ市場との対話に励むことと思います。我が国経済への影響についてもさらに考えたいと思います。

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2012年8月26日 (日)

4安打ながらブラゼル選手のスリーラン一発で逃げ切る!

  HE
阪  神000300000 340
広  島000001010 270

相変わらずタイガース打線がサッパリ打てませんが、今夜はブラゼル内野手のラッキーパンチのスリーラン一発で逃げ切りました。8回ウラの広島の追上げには厳しいものがあり、一昨日のメッセンジャー投手続投の二の舞かとヒヤヒヤさせられましたが、復活なった榎田投手がピンチを抑え、最後は藤川投手で逃げ切りました。投手陣はまだまだリリーフ陣を含めて健在です。今夜は関係ありませんでしたが、1番のリードオフマンに上本二塁手を起用してから少し勝率がよくなった気がします。でも、まだ金本外野手を使い続ける気なんでしょうか?

がんばれタイガース!

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池田新介『自滅する選択』(東洋経済) を読む

池田新介『自滅する選択』(東洋経済)

誠に遅まきながら、ようやく池田新介『自滅する選択』(東洋経済) を読みました。図書館の予約の順番が回って来た次第です。ということで、まず、出版社のサイトからサマリーを引用すると以下の通りです。

Summary
「ダイエットは明日から」「大事な仕事なのに後回し」……。なぜ私たちは先延ばしグセから抜け出せないのか。最新の行動経済学・心理学から選択の背景にあるメカニズムを解き明かす。

話題の双極割引を含めて、サマリーにあるように新古典派経済学が前提した合理的人間ホモ・エコノミックスというようなものではない人間の選択行動について解き明かした書籍です。正しくも、副題は「先延ばしで後悔しないための新しい経済学」となっています。アチコチで書評が取り上げられていて絶賛発売中なもので、私から特に内容紹介付け加えることはありません。消費税論議と関連して取り上げた書評やシンクタンクのリポートなども拝見しました。
内容紹介では付け加えることはないんですが、この本のアカデミックでない面について一言だけ触れると、先送りしがちな人間の不合理な選択行動については、経済学と言うよりもマーケティングなどの経営学でかなり応用されているのではないか、というのが私の疑問です。消費者金融などは典型的ですし、ほかにもありそうです。すなわち、多くの事業者が新製品などの売込みを行う際に経験的に採用している販売戦略がすでにアカデミックでない分野でかなり蓄積されており、それらのバックグラウンドにある人間心理を行動経済学的に、あるいは、解析的に解き明かした本なのではないか、という気がしています。適切な例かどうか自信がありませんが、「夕焼けになると翌日はお天気に恵まれる」という経験則を地球物理学的に解明する、といった作業を記述した本のような気がします。

だからどうだというわけではないんですが、もう一歩進めて、合理的でない、あるいは限定合理的な人間行動を基本とする経済学の体系がそのうちに出来上がるんだろうと期待しています。

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2012年8月24日 (金)

マクドナルドで期間限定メニューのホットゴールドマサラを食べる

マクドナルドのゴールドマサラ

昨日に続いて食べ物について、週末前の金曜日らしくリラックスした話題を取り上げます。
今日ではないんですが、今週になって夏休みが明けて、早稲田大学に午前中から出かける要件があり、早大南門から地下鉄の早稲田駅に歩いて行く途中の早稲田通りにあるマクドナルドで昼食をとる機会がありました。「世界のマック」と称するキャンペーンの第1弾ル・グランは食べ損ねましたが、続く第2弾のゴールドマサラをいただきました。もうすぐ、オージーデリが始まるらしいです。なお、上の写真はいずれもゴールドマサラなんですが、左がホッと、右がマイルドです。私はよく知らなかったので左のホットを頼みました。「世界のマック」第2弾はインドですから、当然、カレー風味です。ややピリ辛ですが、辛いのが苦手な私でも抵抗なく食べられます。

Fit's MAGIQ スライム味

さらに、昨日取り上げたオフィスおやつでは私はガムをかんでいることが多いんですが、ドラクエXとのコラボ商品のガムがロッテから発売されています。その名もFit's MAGIQ スライム味といいます。早速、役所の1階の売店で買って試しています。いつもはボトル入りのガムなんですが、コチラのスライム味ガムはかなりボリュームを感じます。シュガーレスです。なお、毎度のお断りですが、私は公務員であり、特定の商品をこのブログでオススメする気はありませんので、お間違えのないようお願いします。

最後に、このところ、私は阪神タイガースの試合をほとんどフォローしていなかったんですが、我が家ではおにいちゃんがいまだに熱心に毎日テレビ観戦しています。どうも、巨人にマジックが出てペナントレースの行方の大勢は決した気がしますし、また、和田監督もようやく若手を使い始めたようですので、もう一度タイガースの試合をフォローしようかと考えている今日このごろです。

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2012年8月23日 (木)

オフィスおやつの実態調査結果やいかに?

私の夏休みが明けた月曜日には話題のチョコ菓子ブラックサンダーを課員に配ったんですが、やや旧聞に属する話題ながら、ネオマーケティングから「オフィスおやつの実態調査」が8月8日に発表されています。まず、リポートから調査結果概要の3点を引用すると以下の通りです。

【調査結果概要】
  1. 半数近くの人が、週に4日以上おやつを食べている
  2. 8割近くの人が「おやつは仕事に良い影響を与える」と回答
  3. 約4割の人が、オフィスおやつに「マイルール」を持っており、業務にも積極活用している

この調査は、広く一般のサラリーマンを対象にした調査ではなく、Web・広告系ビジネスパーソンに聞いた結果らしいです。Web・広告形の業種に従事している20-39歳の男女が調査対象ですから、対象年齢を超える公務員という私などは調査対象外もいいところです。サンプルに偏りがあるのを承知の上で、いくつかのグラフを引用したいと思います。

おやつを食べる頻度

おやつを食べる頻度のグラフは上の通りです。ほぼ4人に1人が「毎日」と回答しており、「週に3回」以上で過半数を占めます。グラフを見る限り、「おやつは食べない」という回答はなかったように見受けられます。オフィスおやつはかなり浸透していると受け止めてよさそうです。ただし、おやつを禁止されている職場も4.2%あるとの結果が明らかにされています。通勤途上などで食べているのかもしれません。

おやつの種類

おやつを食べる時間帯は「3時のおやつ」とはよく言ったもので、通常の勤務時間内である14-16時の間がもっとも多く、場所は圧倒的に自分のデスクです。で、何を食べるかと言えば、上のグラフの通りです。チョコレートがもっとも多くなっています。そういえば、私が月曜日に配ったブラックサンダーもチョコレートに分類されそうな気がします。また、私の場合ではガムをかむことが多いんですが、40%を超えて3位に入っています。

おやつの効果

どんな時におやつを食べたくなるかという設問の回答のトップ3は、「小腹が空いた時」78.5%、「気分転換したい時」48.0%、「眠い時」37.0%となっていて、そのおやつを食べた効果の回答は上のグラフの通りです。「小腹が空いた時」に対応する「おなかがふくれる」という回答が見当たらないのは調査票の手落ちのような気がしますが、やっぱり、「リフレッシュ」の回答がもっとも多くなっています。なお、「眠い時」に対応する「眠気がさめる」は「リフレッシュ」に含まれるんだろうと解釈しています。

調査対象のサンプルは偏っているものの、かなり普遍的な真実を含んだおり、とても興味深い調査結果だと受け止めています。大部屋でみんなで顔を突き合わせて仕事する日本のオフィスの実態をよく表している気がします。なお、私自身がおやつに関するマイルールを持っていませんので、その部分は割愛します。

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2012年8月22日 (水)

輸出が減少した貿易統計から何を読み取るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる輸出は季節調整していない原系列の統計で5兆3133億円、同じく輸入は5兆8307億円、差引き貿易収支は5174億円の赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の貿易収支、2カ月ぶり赤字 海外経済減速で輸出落ち込む
財務省が22日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5174億円の赤字だった。貿易赤字は2カ月ぶりで、7月としての赤字額は比較可能な1979年以降で最大だった。特に対欧州連合(EU)が単月ベースで最大の953億円の赤字になるなど、海外経済の減速で輸出が減少したことが響いた。
輸出額は前年同月比8.1%減の5兆3133億円で、2カ月連続のマイナスだった。主に半導体などの電子部品や軽油、タンカーなどの船舶が減った。自動車は好調を維持したが、補いきれなかった。地域別ではEU向けが10カ月連続マイナスの25.1%減と、2009年10月(29.0%減)以来の減少幅だった。アジア向けも9.0%減で、中国向けは11.9%減と落ち込んだ。
輸入額は2.1%増の5兆8307億円で、2カ月ぶりに増加した。火力発電向け液化天然ガス(LNG)が引き続き高水準だったうえ、アジア各国からの携帯電話なども伸びた。ただ資源価格の下落の影響で原粗油が8.8%減と22カ月ぶりにマイナスに転じたほか、鉄鉱石も減少した。
財務省関税局は「EUやアジア向けの輸出減少が続くかどうか、海外経済の下振れリスクに留意する必要がある。輸入面でも、全体への影響が大きい燃料価格の動向を注視している」という。

次に、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフでプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。

貿易統計の推移

季節調整していない原系列の統計でも、季節調整済みの系列でも、金額でも数量でも、いかなる指標を見ても、7月については輸出の減少が貿易赤字拡大の原因です。輸出は金額ベースで見て、季節調整していない原系列の前年同月比で▲8.1%減、季節調整済みの系列で前月比▲1.1%減でした。金額ベースの前年同月比▲8.1%減への寄与は数量が▲10.3%減、価格が+2.5%増でした。詳しくは下のグラフの通りです。逆から見て、貿易赤字のもう一方の原因である輸入の増加、特に鉱物性燃料の輸入については、先月6月から輸入増が一服し、価格面からも数量面からも水準は高いものの、方向として増加基調にはストップがかかりつつあります。もっとも、輸入金額は商品価格に大きく左右されることは覚悟しておかねばなりません。

輸出の推移

輸出の推移は上のグラフの通りです。いずれも季節調整する前の原系列の統計ですが、上のパネルは金額ベースの輸出を数量と価格で要因分解してあり、下のパネルは地域別の輸出金額の水準をプロットしています。欧州向けの輸出が減少を続けるとともに、アジア向けも7月は減少テンポが拡大しました。引用した記事にもある通り、欧州向けは特に自動車が弱い動きを続けており、アジア向け輸出金額の前年同月比▲9.0%減、中でも中国は▲11.9%減と落ち込みました。アジア向けでは投資に関連した原動機や建設用機械、ポンプなどが減少しています。季節調整していない輸出の前年同月比で見た減少▲8.1%減に対する寄与度は上のグラフの下のパネルにプロットしてありますが、アジアの寄与度が▲5.1%、EUが▲2.9%となっており、この2地域でほんどすべての輸出の減少が説明できます。北米のプラス寄与の度合いも小さくなって来ています。今後は欧州のみならず世界経済全域に及ぶ下振れリスクが我が国の輸出に及ぼす影響を注視する必要があります。

ということで、7月の貿易統計を見ると、輸入の拡大に歯止めがかかりつつある一方で、輸出に急ブレーキがかかった形になっています。輸出停滞の直接かつ最大の波及先は生産です。すなわち、輸出の低迷が生産に波及し、最終的に雇用に悪影響が出る可能性を私は憂慮しています。

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2012年8月21日 (火)

どこにも行かなかった夏休みの読書やいかに?

池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社)

夏休みで読んだ本は何冊かあるんですが、私の好きな作者の最新刊から選べば、池井戸潤『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社) ということになります。このシリーズの前2作である『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』も私は読んでいて、このシリーズとしては3冊目だと思います。前2作ではメガバンクの支店長というのはエゲツナイ融資をするもので、それを白日の下に晒す半沢の活躍はあるにしても、エゲツナさが主人公の活躍を上回って私の中で優勢勝ちを収めていたんですが、この最新作は前2作ほどのエゲツナイ融資は出て来ません。証券会社に出向した主人公がM&A案件を親元の銀行と渡り合って堂々の買収防衛策を成功に導きます。この作者の場合、私は銀行を舞台にしない『鉄の骨』、『空飛ぶタイヤ』、そして何よりも直木賞を受賞した『下町ロケット』などを評価するんですが、メガバンクを舞台にしたこのシリーズの中では一番まっとうな作品だと思います。
最新作という点では上の通りなんですが、先週読んだ本ではハインラインの『夏への扉』と『月は無慈悲な夜の女王』を読み返しました。前者が1950年代半ば、後者が1960年代半ばのSFの古典とも言える作品であり、作者もアシモフやクラークと並んで大御所と言いうる作者です。高校生や大学生のころに読んだ記憶はあるんですが、改めて読んで今でも十分通用する作品だと感じました。ただし、やや冷戦の影響が強過ぎるのが今となっては微妙な雰囲気をもたらしています。ハインラインの作品としてはやや右翼的な表現のある『宇宙の戦士』やヒッピーの経典と崇められた『異星の客』などに比較して、私が読んだ2作品は癖が相対的に小さく、また、『夏への扉』は日本で人気が高く、『月は無慈悲な夜の女王』の方は米国で人気が高いという特徴があります。日本人はロマンス小説を好んで、独立戦争には興味がないのかもしれません。

明日は貿易統計の発表がありますので、少しずつブログの方も夏休み前のように経済を取り上げる記事を書くべくリハビリに励みたいと思います。

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2012年8月20日 (月)

どこにも行かない夏休みの職場向けお土産はブラックサンダー

ブラックサンダー

先週は夏休みでベッタリ休みましたが、どこに行くわけでもなく家でゴロゴロしていましたので、特にお土産がありません。取りあえず、オリンピックの体操で金メダルを取った内村航平選手で有名になった有楽製菓のブラックサンダーを買っておきました。お土産がないくらいのことで課長に対する部下の信任が大きく揺らぐこともないような気がしますが、私は京都の人間ですので、お返しなしに課員から夏休みのお土産をもらう一方なのは気が引けます。そのあたりはエッセイストの酒井順子さんの『都と京』に詳しかったりします。それはともかく、大したものではありませんが、気は心ですから話題のお菓子を課員全員に配りました。
マクロの消費が伸びた減ったといった方面もエコノミストには重要ですが、ミクロの消費は何といっても流行の占める割合が決して無視できません。ですから、課員には従来から流行には敏感であれと言い続けています。一応、この夏休みはオリンピックとも関連して、ブラックサンダーの売上げが伸びたような報道も見かけました。例えば、読売新聞の記事はコチラです。もっとも、私は公務員ですし、特定の商品をブログでオススメする気はありませんので申し添えます。

夏休みを終えて仕事はバッチリなんですが、ブログの方は本格的に復帰するには時間がかかりそうな気がします。ボチボチ行きたいと考えています。

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2012年8月14日 (火)

今週は夏休みです

昨夜は4-6月期のGDP統計1次QEが発表されましたので、やややる気がないながらも記事をアップしましたが、今週は夏休みで記事のアップの予定はありません。何事かあれば緊急に書くかもしれませんが、のんびり過ごしております。

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2012年8月13日 (月)

4-6月期1次QEはやや低めの成長に終わる

本日、内閣府から4-6月期のGDP統計1次QEが発表されました。季節調整済みの前期比で+0.3%成長、年率でも+1.4%の低い成長率にとどまりましたが、まずはプラス成長でした。長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP4-6月、年率1.4%増 内需が下支え
内閣府が13日発表した2012年4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.4%増となった。プラス成長は4四半期連続。成長率は1-3月期(5.5%)から鈍化したものの、復興需要や個人消費が景気を下支えする構図は変わらず、内需主導の成長が続いた。
4-6月期は個人消費などの内需が成長率を1.7ポイント押し上げ、海外経済の減速を背景にした外需のマイナス(0.3ポイント)を補った。全体の成長率は専門家による予想(年率2.5%)を下回ったが、「今後も堅調な内需を支えに景気は緩やかな回復軌道をたどる」(大和総研の熊谷亮丸氏)との見方が多い。生活実感に近い名目成長率はマイナス0.1%、年率ではマイナス0.6%だった。
実質成長率の主要項目をみると、個人消費は0.1%増と、1-3月期の1.2%増から大幅に鈍化した。内閣府は「昨年末に復活したエコカー補助金の効果が1-3月期に強く出た影響が大きい」と分析している。自動車販売は4-6月期も高い水準を維持したが、前期と比べた伸びは鈍化した。
消費は衣類などの半耐久財や非耐久財がマイナスになった。天候不順で夏物衣服が売れなかったことや燃料消費が伸びなかったことが影響した。1-3月期はうるう年で2月が1日多く、例年より強い数字になっているとの指摘もある。
東日本大震災からの復興需要は着実に出ている。公共投資は高い伸びだった1-3月期(3.6%)からさらに1.7%増えた。主に被災した東北でのインフラ復旧が全体を押し上げている。企業の設備投資も1.5%増と2四半期ぶりのプラス。建設用クレーンなどが伸びており、これも復興需要の影響とみられている。
外需は輸出が1.2%増と1-3月期の3.4%増から鈍化した。特に欧州の債務危機が世界経済に波及し始めた5-6月にかけて輸出が弱くなっている。一方、輸入も1.6%増えた。原子力発電所が停止して火力発電が増えた影響で、液化天然ガス(LNG)などの燃料輸入は高い水準が続いている。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比1.1%のマイナス。緩やかなデフレ基調が続いているが、マイナス幅は徐々に縮まっている。前期比でみると1-3月期は13四半期ぶりにプラスに転じたが、食品価格の下落と4月から公務員給与が引き下げられた影響で4-6月期は再び0.5%のマイナスに転じた。

次に、いつものGDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移は以下の通りです。青い折れ線グラフは季節調整済みのGDP前期比成長率をプロットしており、積上げ棒グラフはその寄与度となっています。色分けは凡例の通りです。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

先週8月7日付けのエントリーでシンクタンクなどの1次QE予想を取り上げましたが、年率2%台半ばだった市場の事前コンセンサスよりもかなり低く出ています。この先も緩やかながらプラス成長が見込まれていますが、一段と成長率は鈍化する可能性が高いと私は予想しています。

諸事情あって今夜はここまでとし、詳しくは来月の2次QEで取り上げたいと思います。

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2012年8月12日 (日)

村田選手、ミドル級で金メダルおめでとう!

ナマで見るのをすっかり忘れていましたが、ボクシングのミドル級決勝で村田諒太選手が判定勝ちして金メダルです。相手の反則もあってファルカン選手に僅差で競り勝ちました。準決勝でもそうだったんですが、終了のゴングとともに勝利を確信したガッツポーズでした。誠におめでとうございます。

がんばれニッポン!

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2012年8月11日 (土)

バレーボール女子、銅メダルおめでとう!

バレーボール女子が銅メダルです。ロスアンゼルス・オリンピック以来28年振りだそうです。3位決定戦でセットカウント3-0で韓国に完勝しました。誠におめでとうございます。

がんばれニッポン!

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湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』(集英社) を読む

湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』(集英社)

湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』(集英社) を読みました。石けん会社の美人OLがメッタ刺しの上に灯油で焼かれるという凄惨な殺人事件を、この作者独特のモノローグで解き明かします。まず、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。

内容紹介
疑惑の女性の周囲をとりまく、「噂話」の嵐
「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ…」美女OLが惨殺された不可解な事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。噂が噂を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも──。

本作品の新しい趣向は、Twitterをモデルにした「マンマロー」なるSNSサイトの書込みを延々と関連資料として添付したり、モノローグの聞き役になっている硬派の週刊誌記者の取材を基にした週刊誌記事や新聞記事、あるいは、事件関係者のブログを関連資料として80ページに渡って収録していることです。一応、犯人探しのミステリですから、往々にして逆から読む人もいるんでしょうが、この関連資料を見ればすぐに犯人が分かってしまいます。そういう意味も含めて、この新しい趣向が成功だったのかどうかは評価の分かれるところだという気がします。
犯人探しのミステリとしては、怪しそうな人物にフェイントをかけておいて、実は別に真犯人がいるという典型的などんでん返しの謎解きなので、ハッキリと平凡といえます。ですから、この作品を評価するかどうかは、SNSのつぶやきやブログなどの関連資料を作品の本筋とからめて、どのように評価するかによります。私自身は本編のボリュームに比較して関連資料が多過ぎることもあって標準以下としか評価しませんが、デジタル世代の画期的な新機軸であると高く評価する人もいそうな気がします。
別の観点としては、メディアによる度を越した取材合戦や風評被害、オカルト的な呪いなどのトピック、音楽の話題なども豊富ですが、何よりも、この作家の作品の何点かを含めたいくつかのミステリに共通して、被害者があたかも殺されて仕方のない極悪非道な人間に描かれている点に疑問を感じます。実は、マンガの「名探偵コナン」にもいくつかこういった被害者像を提供する作品があると感じたように記憶しているんですが、いかなる理由があれ殺人とは被害者の人間としての存在を根本から否定する卑劣な犯罪であることを忘れるべきではありません。

この作者がデビュー作の『告白』を発表した後、5年後に目指す姿として、「まず、作家であり続ける。そして『告白』が代表作でないようにしたい」と答えたと記憶しています。『夜間観覧車』、『往復書簡』、『花の鎖』の3作はかなりイイセンいっていると思うんですが、この作品は『告白』を超える代表作ではないように私は受け止めています。

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2012年8月10日 (金)

昨夜の1点が取れずに今夜は零封負け!

  HE
広  島102000000 3100
阪  神000000000 081

昨夜のスタメンは1-2番に上本二塁手と藤川俊介外野手を起用し、この1-2番コンビがとてもよく機能していました。1点が取れました。今夜も同じ1-2番で、昨夜と違うのは7番打者だけだったんですが、1-2番の若手がイマイチ機能せず、ゼロ行進で完封負けでした。その意味では連続性があり、予測可能な結果だった気がします。阪神が点を取れるかどうかは、昨夜と今夜に限っていえば、1-2番の若手にかかっているといえます。打線はせいぜい3番の鳥谷遊撃手までで、4番以降はほとんど結果を出せず、ゲームに貢献していないともいえます。それでも、動かない監督にはそれだけの信念があるのでしょう。それを信じ続けられるファンと、そうでないファンに別れるのはやむを得ないのかもしれません。でも、どちらのファンもここまで負け試合が続くと面白くないと感じているのではないでしょうか。

がんばれタイガース!

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明治安田生命の「夏に関するアンケート調査」から

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週火曜日8月7日に明治安田生命から「夏に関するアンケート調査」が発表されています。14ページもあるリポートで、帰省や節電など、いろいろと夏に関して調査されているんですが、私の役所でも来週は局長が1週間夏休みを取る旨のお知らせが回っていたりしましたし、週末前でもありますので、今夜のエントリーでは特に夏休みに焦点を絞ってこのアンケート調査を取り上げたいと思います。

夏休みの日数

まず、土日も含めた夏休みの日数は年々増加の方向にあり、昨年から今年は連続で9.5日間という結果になっています。3日間の階級に基づくヒストグラムでは、まだまだ、「4-7日」がもっとも多いんですが、昨年に比較すれば、「4-7日」が減少して「8-10日」が増加しているのが見て取れます。夏休が長期化の方向にあるということはいえそうです。週休2日制の職場において、例えば、我が上司のように1週間月曜日から金曜日まで休めば、土日を入れて9日連続になりますから、そういった休みの取り方をする人も少なくないんだろうという気がします。

今年の夏休みの過ごし方

夏休みの過ごし方の回答は上の通りです。「自宅でゆっくり」がもっとも多く、次いで、「帰省」、「国内旅行」、「プール・遊園地・テーマパーク」、「アウトドア」がトップ5となっています。昨年から今年にかけての動きとしては、「アウトドア」は減少しましたが、「自宅でゆっくり」と「プール・遊園地・テーマパーク」といった近場での過ごし方が増加しています。なお、自宅で過ごす理由のトップ3は、疲れを取る、出費を抑える、混雑を回避したい、となっています。分かるような気がします。

夏休みに使うお金

エコノミストとして気にかかる夏休にかけるご予算なんですが、上の表の通りです。去年も今年もジワジワと減少しています。ただし、家族の属性別に詳しく見ると、去年から今年にかけて減少を続けているのは未婚者であって、既婚者家族はそこそこ堅調な推移を続けています。特に、昨年まで子持ちの既婚者の方が夫婦のみの既婚者よりも予算額が大きかったんですが、今年については夫婦のみの既婚者が逆転しており、昨年から倍増した海外旅行が寄与しているとリポートでは分析されています。

私が単身赴任する前の我が家の夏休みは、子供達が小学生だったこともあり、海水浴に行ったり、山にキャンプに行ったりと、必ず東京を離れて遠出するとともに、近郊のプールやテーマパークにも行っていましたが、今では家族で集団行動を取ることもほとんどなくなって「自宅でゆっくり」派になっています。この4月から国家公務員給与が大きくカットされたこともあって、ご予算も僅少になっています。

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2012年8月 9日 (木)

筒井投手が被弾して逆転負け!

  HE
阪  神100000000 170
読  売00000004x 462

今夜のスタメンは1-2番に上本二塁手と藤川俊介外野手を起用し、この1-2番コンビがとてもよく機能していました。しかし、4番と6番に並んだ兄弟選手に1本が出ず、特に5回と7回ですが、結局、終盤にリリーフに失敗して逆転負けでした。今夜の1-2番と3番の鳥谷遊撃手まではOKだと思いますから、4番以下にも若手を使うのはどうなんですかね。

ということで、今夜は若手を使いたがらない和田采配について考えたいと思います。まず、クライマックス・シリーズの可能性があるので若手を使わずベテランの布陣で臨む、という説については、実は、私も一理あると思っています。すなわち、若手中心の布陣よりもベテランを使った方が勝つ確率は高いように見えなくもありません。でも、問題はこのベテラン中心の布陣で成績がよくない点です。長らく国家公務員を勤め上げている身として、役所の悪い点である無謬性の呪縛を阪神監督には持って欲しくありません。成績が悪い時に若手中心に切り替えれば、さらに、それでもしもうまくいったりすれば、今までのやり方が全否定されるわけですから、大きな躊躇が生まれます。そこに現状維持バイアスが加われば、結局、どんなに成績が悪くても従来のやり方を踏襲し維持するという方針になってしまいます。ニッポンのお役所そのものです。もっとも、お役所では上司に媚びへつらうイエスマンが多くて、この傾向を増幅していたりします。
ですから、何か現状を大きく変更する選手起用や作戦が必要そうな気がするんですが、余りにトンデモなオーダー変更はやめておいた方がいいというのは当然です。ブラゼル選手をクローザーに起用したり、ザラテ投手を4番に据えたりするのはムチャです。そこで、若手起用という方向が自然発生的に生じるのは考えられるラインではないでしょうか。単にベテラン選手の打順を入れ替えるだけで打線が復活するような生易しい状態ではないという悲観的な判断が基本にあります。それに対して、バカボンのパパみたいに、あくまで「これでいいのだ」と言い張るのもひとつの見識ですが、ここまで結果が伴わなければ、少しは冒険してみたくなるのも人情として理解できます。今夜の試合でもいいところまで行って勝てそうで勝てなかったのは、若手の起用が不足していると見ることもできます。もちろん、我田引水です。他方で、ひとつの論調として、若手登用に際して、「結果を出す」とか、「勝利に貢献する」とかのハードルを設けて若手起用に消極的な意見を表明する向きもあります。しかし、現在のベテラン選手が結果を出せず、勝利に貢献していないからこそ若手起用の声が上がっていることを忘れるべきではありません。フリーパスのベテランに対して若手にのみ何らかのハードルを設けて、両者に差別的な待遇を示唆するのは好ましくないと考えるのは私だけでしょうか。
ともかく、若手を出しても勝てないんではないかというバーチャルな怖れに対して、ベテランを出して負け続けているというリアルな結果をもう一度直視する必要があるというのが第1のポイントであり、第2のポイントとして、現状の打線がベテラン選手のオーダー変更だけで対処できる軽度の症状なのか、より大きな外科的な手術とをした方がいいのか、よくよく考える必要があることは確かです。繰返しになりますが、ニッポンのお役所のように、無謬性の呪縛と現状維持バイアスにどっぷり浸かった選手起用を考え直すのも一案かもしれません。あるいは、他に手があるのかもしれません。

もちろん、ペナントレースの最中にご同好の阪神ファンの間でいさかいが起こるのは好ましくありませんし、いうまでもなく、最後は現場の監督の判断であって、逆にいえば、何の責任も負えない勝手な意見表明ではありますが、何らかの意見表明をするためにブログを開設しているという面もあるわけですから、阪神タイガースをあたたかく見守り応援しながら、他のファンの方々と意見交換はしても、「ゴドウィンの法則」を心にとめて、決してケンカすることなく細々と意見表明を続けたいと思います。

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基調判断が下方修正された機械受注と消費者態度指数を振り返る

本日、内閣府から6月の機械受注統計と7月の消費者態度指数が発表されました。機械受注統計のヘッドラインとなる電力と船舶を除く民需は季節調整済みの前月比で+5.6%増の7097億円となり、消費者態度指数は季節調整済みの系列で39.7と前月から▲0.7ポイント低下し、ともに基調判断が下方修正されました。まず、これらの統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の機械受注、5.6%増 内閣府、判断「一進一退」に下方修正
内閣府が9日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比5.6%増の7097億円だった。プラスは2カ月ぶり。前月に14.8%減と大きく落ち込んだことを考慮すると、低い伸びにとどまった。QUICKが8日時点で集計した民間の予測中央値は11.0%だった。
内閣府は機械受注の基調判断を「一進一退で推移している」とし、前月までの「緩やかな増加傾向がみられる」から下方修正した。下方修正は2011年9月以来、9カ月ぶり。内閣府は修正理由を「5月からの戻りが鈍く、7-9月期の見通しも慎重なため」としている。
6月の受注を業種別にみると非製造業は2.6%増だった。リースで電子計算機や建設機械などの受注が大幅に増えた。運輸・郵便や農林漁業なども貢献した。一方、通信、卸売り・小売りなどの落ち込みが目立った。
製造業は2.9%減少した。航空機関係やエンジンの受注が減った造船のほか、化学、食品製造が足を引っ張った。一方、半導体製造装置でまとまった受注があった情報通信機械や石油製品などは伸びた。
4-6月期の受注額は前期比4.1%減の2兆1701億円にとどまった。5月時点の機械メーカーの見通し(2.5%増)を下回った。今回発表の7-9月期の見通しは1.2%減だった。
船舶・電力や官公需などを含む6月の受注総額は1兆9477億円で前月比7.4%増えた。増加は3カ月ぶり。官公需が19.2%増えたことも全体を押し上げた。
消費者態度指数、2カ月連続で悪化 判断「弱含み」に下方修正
内閣府が9日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.7と前月から0.7ポイント低下した。悪化が2カ月続いたことを受けて、内閣府は消費者心理の基調判断を「ほぼ横ばいとなっている」から「弱含みとなっている」に2カ月連続で下方修正した。
指数を構成する「暮らし向き」など全4項目で悪化した。大手電機メーカーなどの大規模な人員削減報道が相次ぎ、「雇用環境」22カ月連続で前月を下回った。「収入の増え方」も2カ月連続で悪化。夏のボーナスが前年割れとなったほか、現金給与総額も減ったことが影響した。
雇用環境の悪化に加え、電力供給に対する懸念などを背景に「暮らし向き」は3カ月ぶりのマイナス。エコカー補助金の終了が近いとの見方が広がり、「耐久消費財の買い時判断」は3カ月ぶりに悪化した。
内閣府は先行きの「懸念要因がある」と指摘し、電力供給不安やエコカー補助金の終了、消費増税を巡って混迷する政治情勢などを挙げた。
1年後の物価見通しについて、ガソリン価格の下落などを背景に「上昇する」と答えた割合は60.6%と3カ月連続で減った。一方、「低下する」と答えた割合は7.4%と減少し、「変わらない」と答えた割合が増えた。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は7月15日で、有効回答数は5032世帯(回答率74.9%)だった。

次に、機械受注のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整済みのコア機械受注、すなわち、電力と船舶を除く民需とその後方移動6か月平均をプロットしており、下のパネルは需要者別の機械受注です。色分けは凡例の通りです。いずれも影をつけた部分は景気後退期です。

機械受注の推移

コア機械受注は季節調整済みの前月比で+5.6%増を記録しましたが、市場の事前コンセンサスは先月の▲14.8%減の反動もあって軽く2ケタ増を予想していたんですが、その割には物足りない結果と見なされています。上のグラフを見れば明らかです。6か月後方移動平均でも下がり続けています。基調判断でも「緩やかな増加傾向」から「一進一退」に下方修正されました。需要者別では非製造業が堅調な一方で、製造業と外需は明らかに減少に転じています。外需は機械受注の先行指標と見なされています。加えて、7-9月期見通しも季節調整済みの前期比が▲1.2%減で、1-3月期の▲4.1%減に続いて2四半期連続して減少する予想ですから、現時点では確たることは言えませんが、輸出企業を中心に製造業で設備投資の先送りが生じつつある可能性が懸念されます。エコカー補助金の財源が終了する自動車についてもまったく同じです。従って、2四半期から3四半期遅れて、すなわち、年後半から来年年初くらいまでにかけて設備投資が低調に推移する可能性は否定できません。

機械受注達成率の推移

6月の統計が出ましたので、4-6月期の達成率が利用可能になりました。上のグラフの通りで、4-6月期の機械受注達成率は季節調整済みの系列で大きく低下して88.2%となりました。このブログで何度か取り上げていますが、経験則により90%の達成率が景気の山と谷になる場合があります。現時点の景気局面は回復初期のいわゆる「若い段階」ではないと、何度かこのブログでも主張してきましたが、これまた何度も繰返しになるものの、景気の腰折れを懸念する段階ではない一方で、マクロ経済政策が無策のままにやり過ごすべき段階かどうかも疑問が残ります。

消費者態度指数の推移

機械受注に続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。影をつけた部分は景気後退期です。2か月連続の低下を記録し、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「横ばい」から「弱含み」に下方修正しました。先々月まで「持ち直し傾向」でしたから、2か月連続での下方修正ということになります。需要サイドの消費者マインドは急速に悪化している可能性があります。暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断の4項目ですべて低下を記録していますが、起点は雇用や賃金をはじめとする収入だと私は受け止めています。なお、どうでもいいことながら、私は記者会見には出席していないので、報道を見る限りなんですが、引用にもある通り、先行きの懸念要因として「消費増税を巡って混迷する政治情勢」が上げられています。マインド調査ながら、先行き懸念要因に政治情勢を堂々と発表する役所があったとは驚きです。

景気ウォッチャーと消費者態度指数は反対の目が出ました。景気判断の難しい局面に差しかかりつつあるという気がします。

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2012年8月 8日 (水)

本日発表された国際収支と景気ウォッチャーを振り返る

本日、財務省から経常収支を含む国際収支が、また、内閣府から景気ウォッチャー調査の結果が、それぞれ発表されました。経常収支は6月、景気ウォッチャーは7月の統計です。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

経常黒字、1-6月で最少 貿易赤字が影響
財務省が8日発表した2012年1-6月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は3兆366億円の黒字となった。黒字額は前年同期比で45%減り、上半期としては比較可能な1985年以来で最も少ない。燃料輸入の増加で貿易赤字が半期で最大になったことが影響した。
貿易収支は2兆4957億円の赤字で、赤字幅は前年同期(4957億円)を上回った。原子力発電所の相次ぐ停止に伴い、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)、原油など燃料の輸入が増えた。燃料価格の上昇も響いた。輸出は、東日本大震災でサプライチェーン(供給網)が寸断した昨年からは回復しているが、欧州債務危機の影響で欧州向け輸出が依然低調だった。
企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字は、金利低下の影響で1.8%減の7兆1467億円。歴史的な円高を背景に拡大する海外企業のM&A(合併・買収)が、国内への利益環流をもたらす構図は続いている。旅行や運送などのサービス収支は9271億円の赤字で、赤字幅は前年同期から拡大した。
同時に発表した6月の国際収支速報は、経常収支が前年同月比19.6%減の4333億円の黒字だった。IT(情報技術)関連の部品輸出が減少したことで、貿易収支の黒字幅が縮小したことが影響した。
7月の街角景気、4カ月ぶり改善 夏物商品の売れ行き好調で内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は44.2と前月から0.4ポイント上昇した。改善は4カ月ぶり。気温上昇に伴う夏物商品の売れ行きが良く、消費者心理の改善につながった。
現状は指数を構成する家計、企業の2部門で改善。エアコンや扇風機、飲料など「夏物の動きは例年以上に活発となっている」(近畿・スーパー)とのコメントが並び、7月に入ってからの気温上昇が消費意欲をかき立てた。また、企業部門では引き続き、復興に向けた動きが消費マインドを支えている。
一方で、近く終了が見込まれているエコカー補助金に関して「希望する車種が補助金申請に間に合わないため、購買意欲は低下している」(東海・乗用車販売店)など駆け込み需要の弱さを指摘する声が増えた。「受注残が積み上がっている影響で販売は伸びているが、足元での受注は少なくなってきている」(内閣府)とみられ、政策効果による一段の消費押し上げは期待しにくくなっている。
内閣府は景気の現状に対する基調判断に関して「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、弱い動きがみられる」に表現を変更し、判断は維持した。
先行き判断指数は0.8ポイント低下の44.9と3カ月連続で悪化した。エコカー補助金の期限切れに伴う自動車販売の急速な反動減を懸念する声が相次いだほか、「業界から秋以降は生産調整を行うとの声が聞こえてくる」(近畿・金属製品製造業)と生産面での悪影響を指摘する声があった。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は7月25日から月末まで。

次に、いつもの経常収支のグラフは以下の通りです。経常収支を青い折れ線グラフでプロットしており、その内訳を積上げ棒グラフで示しています。色分けは凡例の通りです。季節調整済みの月次系列を取っていますので、先に引用した記事で主に取り上げられている半期の計数と少し印象が異なるかもしれません。

経常収支の推移

経常収支はここ数か月でほとんど傾向は変わらず、投資収益収支の黒字が貿易収支・サービス収支・移転収支の赤字を補って、経常収支全体としては黒字をキープしています。貿易収支への影響としては輸出もさることながら、輸入、特に燃料輸入がウェイト大きく、燃料輸入でも数量というよりも価格の影響が大きくなっている印象を私は持っています。6月の貿易赤字が縮小したのは最近の原油価格低下を反映している可能性が高いと受け止めています。投資収益収支は引用した報道の通り、金利低下に伴って黒字幅を縮小させていることは事実ですが、原油価格の変動ほど経常収支への影響は大きくないと考えるべきです。

景気ウォッチャー推移

景気ウォッチャー調査は微妙に、現状判断DIが4か月ぶりに上げた一方で、先行き判断DIは下げ続けています。現状判断DIの3つのコンポーネントのうち、家計動向と企業動向は上昇しましたが、雇用動向は大きく下げています。家計動向のうちでも小売関連は下げましたが、気温の上昇に伴って飲食関連が伸びています。企業動向では製造業は下げましたが、非製造業は上げました。なお、基調判断は「これまで緩やかに持ち直してきたが、このところ弱い動きがみられる」から「これまで緩やかに持ち直してきたが、弱い動きがみられる」に修正され「このところ」が取れていますが、基調判断は維持しつつ、単に期間の表現の変更ということらしいです。なお、注意すべきポイントとして、雇用関連が悪いのは量ではなく雇用の質であり、典型的にはリポートの p.17 南関東の職業安定所の判断理由「求人数は前年を上回ってはいるものの、正社員の求人は求人全体の半数に満たない。パート、アルバイト、契約社員等、非正規の求人が相変わらず多い」に典型的に表れているような気がします。先週7月31日付けの雇用統計を取り上げたエントリーで指摘した通りです。

経常収支や景気ウォッチャーと直接の関係はありませんが、米国連邦準備制度理事会のバーナンキ議長が8月6日の会合でビデオ発言した際に、幸福度指標を政策の最終目標 the ultimate objective of our policy decisions とする選択肢について示唆しています。以下のリンクの通りですが、雇用については消費の原資となる収入をもたらすだけでなく、幸福度にも大きな影響を及ぼします。私は雇用を最重要視するエコノミストのひとりであると自負しています。

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サッカー男子はメキシコに完敗し決勝進出ならず!

サッカー男子は準決勝でメキシコに3-1と完敗し、決勝進出はなりませんでした。銅メダルをかけて3位決定戦に臨むことになります。

がんばれニッポン!

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卓球団体女子、堂々の銀メダル!

卓球団体女子が決勝で惜しくも世界チャンピオンの中国に敗れましたが、堂々の銀メダルでした。誠におめでとうございます。

すでに試合が始まっているサッカー男子も、
がんばれニッポン!

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2012年8月 7日 (火)

バレーボール女子、中国を破って準決勝進出おめでとう!

バレーボール女子がオリンピックで初めて中国を破って、24年振りのベスト4、準決勝進出です。見ていて、ハラハラドキドキでとっても面白かったです。

この後の卓球団体女子とサッカー男子も、
がんばれニッポン!

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伝統の一戦はもはやオリンピック待ちの時間潰しか?

  HE
阪  神0000000100 160
読  売0000010000 160

相変わらず、昨年と同じ戦力で戦い続け、若手育成は放棄しまくった和田采配に愛想を尽かして、ほとんどテレビは見ていませんが、逆から言って、チラチラとは試合経過をフォローしていたりします。でも、結局10回引分けですから、壮大なる時間潰しという気がします。オリンピックは佳境に入り、昨夜のなでしこジャパンの準決勝対フランス戦に続いて、今夜はサッカー男子の対メキシコ戦の準決勝、その前に、卓球女子の団体決勝が楽しみです。

卓球団体女子とサッカー男子、どちらも、
がんばれニッポン!

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来週月曜日8月13日に発表される4-6月期GDP速報1次QEの予想やいかに?

来週月曜日8月13日に2012年4-6月期期GDP速報1次QEが内閣府より発表されます。必要な経済指標がほぼ出尽くし、各シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。可能な範囲で先行きに見通しついて言及した部分を中心に取っているつもりですが、表の最後の2機関、すなわち、三菱UFJリサーチ&コンサルティングと三菱総研だけは先行きに関する言及がありませんでした。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.5%
(+2.2%)
7-9月期以降を展望すると、復興需要による官公需の増加が引き続き景気押し上げに作用する見込み。もっとも、エコカー補助金については予算払底が迫るなか、補助金終了後は自動車販売の反動減が不可避な情勢。以上を踏まえると、成長率は4-6月期から鈍化する可能性。加えて、企業の景況感や消費者マインドなど一部指標で弱い動きが看取されるほか、欧州債務問題の深刻化、新興国経済の一段の減速も引き続き懸念されており、内外双方において景気下振れリスクを抱える状況。
みずほ総研+0.7%
(+2.7%)
7-9月期の成長率は年率1%前後まで低下する可能性が高い。輸出については夏場以降も大幅な持ち直しは期待できそうもない。欧米の経済指標は力強さを欠いたままであるほか、中国経済が景気対策効果で回復に向かったとしても、素材分野を中心に在庫過剰感がある中で日本からの輸出はすぐには回復しないとみられる。国内需要については、復興需要の執行に伴う公共投資の拡大、緩やかなペースでの設備投資回復は続く見通しである。しかし、エコカー補助金が8月には予算額に達し、終了する可能性が高まっている。補助金終了後の自動車販売は反動で大きく落ち込み、7-9月期の個人消費は前期比横ばいか、あるいは小幅のマイナスに転じる懸念もある。外需の伸び悩みが続く中で、個人消費を中心に国内需要の伸びが鈍化することにより、7-9月期の成長率は減速が避けられないであろう。
ニッセイ基礎研+0.8%
(+3.1%)
欧州債務危機の影響などから海外経済が減速基調を強める中、2012年前半の日本経済は国内需要を中心として堅調な動きを続けた。ただし、輸出の本格回復が当面期待できない中、好調を維持してきた個人消費はエコカー補助金終了に伴う自動車販売の反動減を主因として、夏場以降弱めの動きとなる可能性が高く、復興需要による押し上げ効果も徐々に減衰していくことが見込まれる。2012年後半の成長率は大きく低下する可能性が高い。
第一生命経済研+0.6%
(+2.5%)
4-6月期のGDP成長率は内需主導で高成長が予想されるが、先行きについては懸念材料が増えていることに注意が必要である。まず、12年前半の景気を押し上げたエコカー補助金については、8-9月に終了が予想され、その後は反動減が避けられない。また、足元の月次指標において、企業マインドや消費者心理に陰りが見え始めている点も懸念される。回復が期待される輸出についても、海外経済の持ち直しが後ずれするなか、多くは望めないだろう。唯一、公共投資については予想以上に受注が好調であり、7-9月期も増加が続くと見込まれるが、前述のマイナス要因を打ち消すほどの効果は期待し難い。年後半の景気については慎重に見ておく必要がある。
伊藤忠経済研+0.7%
(+2.8%)
個人消費の拡大に貢献しているエコカー補助金は8月にも予算が尽き、新車販売は7-9月期に伸びが大きく低下、10-12月期には大きな反動減が避けられない。自動車購入以外の消費は拡大こそしているものの、雇用所得環境が回復しない下で力強さを欠くため、エコカー補助金の反動により、個人消費は7-9月期に失速、10-12月期は減少へ転じる可能性が高い。また、復興投資は、当初の想定よりも緩やかに顕現化している模様であり、7-9月期も公共投資の増勢は維持される見込みである。しかし、下期には徐々に伸びが鈍化し、押し上げ寄与は縮小へ向かう。個人消費と公共投資以外の需要項目にも、夏以降は多くを期待できない。輸出に明るい兆しは見られるものの、景気ウォッチャー調査などの景況感データが示すように企業が先行きに対する慎重姿勢を強める下では、輸出拡大が設備投資や新規雇用の拡大には繋がり難く、国内経済への好影響は限られてしまう。4-6月期の高めの成長を喜ぶよりも、夏以降の日本経済失速のシグナルにこそ目を光らせる必要があるだろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.7%
(+2.9%)
先行きについては、復興需要の本格化が続くほか、12年度補正予算の編成も見込まれる。さらに、欧州の債務問題への対策が進展するほか、世界的な金融の緩和的状況も継続し、世界経済は底堅さをみせ、こうした中、日本経済の堅調な推移が続くとの見方は変えていない。実質成長率見通しについては、足元の成長率が想定よりも上振れているとみられることを受け、12年度の見通しをプラス2.6%からプラス2.7%へ上方修正した。13年度の見通しは、プラス2.4%で変更ない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.9%
(+3.7%)
8 月13日に公表予定の2012年4-6 月期の実質GDP成長率は、前期比+0.9%(年率換算+3.7%)と4四半期連続でプラスとなり、増加率も前期に続いて大きくなったと見込まれる。復興関連の支出増などを受けて、個人消費や公共投資などの内需が好調に推移したことが背景にある。
三菱総研+0.5%
(+2.0%)
2012年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+2.0%)と予想する。復興需要による押し上げ効果などから、内需中心に高めの成長を達成したとみられる。

1次QEですから、ややバラつきはありますが、季節調整済みの前期比で+0.5%から+1%弱、前期比年率で+2%から+4%弱の範囲であることが見て取れます。我が国の潜在成長率は今や+1%をやや超える水準と見なされていますので、潜在成長率水準と比較して高めの成長を見なすことが出来ます。その高めの成長の主役は内需であり、特に、エコカー補助金に支えられた消費と復興需要だったりします。意地の悪い見方をすれば、サステイナビリティに欠ける政策効果ともいえますが、これらの政策により需要が押し上げられて、本格的な景気軌道に回帰するのであれば、私は十分に意味があると受け止めています。しかしながら、先行き見通しに言及している各機関の見方はとても厳しく、例えば、伊藤忠経済研は「4-6月期の高めの成長を喜ぶよりも、夏以降の日本経済失速のシグナルにこそ目を光らせる必要がある」と結論しています。その通りだという気がします。

明日の法案採決に向けて、政治的な混乱は回避されるのかどうか。エコノミストの単なるわがままなんですが、ここに来て、経済外要因によって景気がかく乱されるのは好ましくないような気がします。

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2012年8月 6日 (月)

景気動向指数に見る景気の現状やいかに?

本日、内閣府から6月の景気動向指数が発表されました。CI一致指数が前月から▲2.0ポイント低下して93.8、先行指数も▲2.6ポイント低下して92.6と、いずれも大きく低下しました。統計作成官庁の内閣府は基調判断を「足踏みを示している」としています。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の景気一致指数、3カ月連続低下
自動車生産の減少で

内閣府が6日発表した6月の景気動向指数(CI、2005年=100)速報値によると、景気の現状を示す一致指数は前月比2.0ポイント低下の93.8だった。低下は3カ月連続。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善」から「足踏み」へ東日本大震災が発生した昨年3月以来、1年3カ月ぶりに下方修正した。
景気の回復傾向に水を差したのは自動車だった。エコカー補助金で支えられてきたが、世界経済の減速懸念を背景に海外向けを中心に出荷が停滞。国内生産の一服につながった。
生産活動が鈍ったことを受けて、大口電気使用量や所定外労働時間が減るなど自動車生産の減少は日本経済に波及しつつある。内閣府はエコカー補助金の早期終了が見込まれるなかで自動車の生産減の影響について「かなり注視してみなければいけない」と警戒感を強調した。
数カ月後の先行きを示す先行指数は2.6ポイント低下の92.6と3カ月連続で低下した。化学工業や鉄鋼など生産財は、出荷の減少を受けて在庫が積み上がった。新設住宅着工床面積が減少に転じたほか、原油価格など商品相場の下落も影響した。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.4ポイント上昇の86.9と2カ月連続で上昇。完全失業率の低下や法人税収の増加が支えた。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDIは一致指数が20.0%、先行指数が33.3%だった。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

景気動向指数の推移

CI一致指数に対する寄与度を見ると、有効求人倍率がプラスを示したものの、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、卸売と小売の商業販売額、大口電力使用量などが軒並みマイナスとなり、3か月後方移動平均の符号がプラスからマイナスに変化しましたので、基調判断は自動的に「改善」から「足踏み」に変更されました。このまま7か月後方移動平均がマイナスに転じると「局面変化」へさらに下方修正される可能性があります。
すでに、このブログの先週月曜日7月30日付けのエントリー「鉱工業生産の動きは一時的な要因か、基調として景気転換点に近づいているのか?」において、在庫循環図を示して「一時的な下振れなのか、基調的に景気転換点に向かう動きなのか、判断が難しい」と指摘したところであり、同じことの繰返しになりますが、景気の腰折れを懸念する段階ではないと考えている一方で、もちろん、景気の現状を手放しで楽観できる情勢でないことも確かであり、景気の現局面は決して回復初期の「若い局面」ではあり得ません。

景気動向指数はオートマチックに基調判断が決められますが、私としてはもう少し経済指標の推移を見守りたいところです。年末くらいまで景気を注意深くウォッチする必要があると感じています。

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2012年8月 5日 (日)

長期ロード最初のカードで広島に3タテを食らって4位すら遠くになりにけり!

  HE
阪  神000000000 052
広  島10020130x 790

相変わらず、昨年と同じ戦力で戦い続け、上本内野手も伊藤隼外野手もスタメンに名を連ねないどころか、若手野手は打席にすら立たせてもらえない和田采配が続いています。私にとって唯一の収穫はザラテ投手が見られたことでした。荒れた投球で3点を失いましたが、最後に堂林選手から三振を奪った153キロの速球は見事でした。野手の方も若虎を打席に立たせてやってほしいものです。
当然のように今夜も負け、長期ロードのしょっぱなのカードで広島に3タテされて、Aクラスや5割なんてもんではなく、4位の東京ヤクルトすら遥か彼方に霞んで見えなくなりました。この長期ロードで負けが込めば、最下位DeNAに迫られる可能性すら否定できません。

がんばれタイガース!

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区立図書館はどうして登録に制限を設けるのか?

この春休みに引っ越してから我が家が一段と狭くなり、本は厳選して買っていて図書館の利用が以前に比較してグンと増えています。週末には自転車に乗って1日で50キロくらいを往復して図書館に行くこともめずらしくありません。DVDなどは、特に旧作でレンタル料金が安い場合は、近くのTSUTAYAで借りてしまうことも少なくないんですが、何といっても無料で2-3週間も本を貸してくれるんですから、私のような薄給の公務員には公立の図書館という存在は有り難い限りです。しかし、区立の図書館もすべてがすべて私に本を貸してくれるわけではありません。すなわち、当該区や隣接区の住民しか登録させてくれない場合があります。登録者の要件は以下の表の通りです。なお、出典は東京都立図書館のサイトからリンクを張られている各区立図書館のサイトです。

区名対象者
足立区利用者カードの登録資格は原則として、区内在住・在勤・在学の方(緑色の利用者カード)、その他当区が認めている近隣地区(23区、草加市、八潮市、川口市)に居住されている方(黄色の利用者カード)です。
荒川区利用申込書に記入し、住所を確認できるもの(健康保険証・免許証など)と一緒にカウンターに提出してください。
板橋区板橋区にお住まいのかた・通勤または通学されているかた、板橋区に隣接する区市(豊島区・北区・練馬区・和光市・戸田市)にお住まいのかたなら、どなたでも図書館資料を借りることができます。
江戸川区登録できるのは、江戸川区に在住、在勤、在学されている方です。
隣接自治体(葛飾区・江東区・墨田区・市川市・浦安市)および足立区に住んでいる方も登録時に住所の確認ができれば登録できます。
大田区大田区に住んでいる方または大田区に通勤・通学先のある方なら、どなたでも利用できます。
葛飾区葛飾区にお住まいの方
葛飾区に在勤・在学している方
江東5区にお住まいの方(足立・江戸川・墨田・江東区)
葛飾区に隣接している市(三郷・八潮・松戸・市川)にお住まいの方
北区利用カードを発行しますので、健康保険証、運転免許証、学生証など、住所を確認できるものをお持ちいただき、図書館カウンターで利用登録申請をお願いします。利用カードはどなたでもお作りいただけます。
江東区利用登録できるのは、江東区在住・在勤または中央・港・墨田・葛飾・足立・江戸川の各区に在住の方です。
品川区品川区立図書館では、区内在住・在勤(在学)に関係なく、どなたでもカードを作る事ができます。
渋谷区(登録要件) 東京都内に在住・在勤・在学の方
新宿区登録できるのは、次のいずれかの方です。
現住所が東京都内の方
東京都外の方で新宿区内に在勤・在学している方
杉並区本人(氏名・生年月日・現住所)が確認できる証明書(写真付きの住民基本台帳カード・杉並区民証・運転免許証・健康保険証・学生証・パスポート等)が必要です。
墨田区登録できる方
墨田区に在住・在勤・在学の方
墨田区に隣接する自治体(足立区・荒川区・江戸川区・葛飾区・江東区・台東区・中央区)にお住まいの方
世田谷区共通利用カードの登録の際は、氏名・住所が確認できるものが必要になります。
台東区利用登録にあたっては、現住所等により、制限がございますので、電話やカウンターでご確認下さい。
中央区中央区以外にお住いの方も登録できます
千代田区千代田区内在住・在勤を問わず、どなたでも利用できます。
豊島区利用登録は区外にお住まいの方も可能です。ただし、旅行・出張等短期滞在の方、貸出期間内に再来館できない方は除きます。
中野区登録できる方
中野区または隣接区(新宿区・渋谷区・杉並区・豊島区・練馬区)にお住まいの方
中野区に在勤・在学されている方
練馬区登録できる方
練馬区に在住・在勤・在学の方
練馬区の隣接区、市(板橋区、豊島区、中野区、杉並区、武蔵野市、西東京市、和光市、新座市、朝霞市)に在住の方
文京区どなたでも登録できます。
港区東京23区内に在住の方、または通勤・通学されている方は利用者登録ができます。
目黒区目黒区以外にお住いの方も登録できます。

左側のカラムの区名は各区立図書館にリンクを張ってあります。また、調べたのが今年初めの引っ越し前で、まだ港区民のころでしたので、港区民が図書カードの登録が出来ない図書館は影をつけてあります。23区のうち9区の図書館で港区民は登録できません。もっとも最近時点で私が登録した図書館のひとつである豊島区立図書館で、「関東近県などの在住で返却に来られると判断すれば登録できます」と、実にもっともな回答を得ましたが、単純に当該区のみや隣接区の住民までとの制限を設けている区立図書館も少なくありません。もちろん、それぞれの地方自治の裁量の範囲内の運用なんでしょうが、負担している地方税との関係でいえば、区民に限定している大田区以外の隣接区住民というのは、買い物などに来ている可能性が高いということなんだろうという気がするものの、恣意性の残る判断のようにも見えます。もちろん、無制限の登録は考えられませんし、紛失や盗難などの事故があればもっとも大きな損害をこうむるのは区民なんでしょうから、豊島区立図書館のような広い心を望むのはムリなのかもしれませんが、こういった公立の組織ですから、性善説に立つのか、性悪説を援用するのか、難しいところだと思います。

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2012年8月 4日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

日本時間の昨夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が発表されました。統計のヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から163千人増加した一方で、失業率は0.1%ポイント上昇して8.3%となりました。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事の最初の5パラを引用すると以下の通りです。

Hiring Picks Up in July, but Data Gives No Clear Signal
America added more jobs than expected last month, offering a pleasant surprise after many months of disappointing economic news. Even so, hiring was not strong enough to shrink the army of the unemployed in the slightest.
Employers added 163,000 jobs in July, the Labor Department reported on Friday. That was more than twice the job growth in the previous month, and substantially more than Wall Street analysts had forecast. The underlying details of the report, however, ranged from unimpressive to outright discouraging and provided plenty of fodder for Republican attacks on President Obama's economic legacy.
The Obama administration, for its part, argued that Republican obstructionism to its economic policies was holding back the recovery.
July's jobless rate ticked up slightly to 8.3 percent, about the same as it has been all year. A broader measure of unemployment - including part-time workers who want full-time jobs, and people who have given up looking for work - rose to 15 percent.
United States markets closed substantially higher on the news. But the mixed report gave investors, workers, presidential campaigns and Federal Reserve officials anything but a clear signal on the strength of the economy. Job growth seems to be heading sideways.

次に、いつもの米国雇用統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減とそのうちの民間部門です。下のパネルは失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

米国雇用統計の推移

非農業部門雇用者数の163千人増は市場の事前コンセンサスを大きく超え、堅調な増加と私は受け止めています。なお、この163千人増のうち、民間部門が172千人となっています。少し前の8月1日までの連邦公開市場委員会 (FOMC) を受け、米国連邦準備制度理事会 (FED) は9月にも追加緩和に踏み切るとの予想が市場に流れており、特に、7-8月に非農業部門の雇用者数増が2か月連続で100千人割れになれば量的緩和の第3弾(QE3)は避けられないとの声が多かったのですが、この7月の雇用統計を受けてどうなりますことやら。今日は土曜日ですので、私も情報収集を少しサボっていたりします。

米国雇用・人口比率の推移

続いて、上のグラフは米国の雇用人口比率をプロットしています。見れば明らかですが、かなり長期のデータを取っています。米国の民主党と共和党を代表するエコノミスト、すなわち、クルーグマン教授が『さっさと不況を終わらせろ!』の邦訳書の p.271 に示し、また、マンキュー教授の7月7日付けのブログ "Monitoring the So-Called Recovery" で取り上げられていたグラフと同じものです。要するに、マネをしているわけです。サブプライム危機後の今回の景気回復局面では、この雇用・人口比率がまったく上向いていないのが見て取れます。

米国時間当たり賃金上昇率の推移

最後に、デフレとの関係で私が気にしている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。底ばいから少し低下の方向に向かっているような気がしなくもありませんが、日本のようにゼロやマイナスをつけることはなさそうです。

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2012年8月 3日 (金)

孔枝泳『トガニ』(新潮社) を読む

孔枝泳『トガニ』(新潮社)

孔枝泳『トガニ』(新潮社) を読みました。翻訳は北朝鮮に拉致されていた蓮池薫さんで、副題は『幼き瞳の告発』とされています。「トガニ」とはるつぼの意味だそうです。幅広い劇場でのロードショーではありませんが、明日からこの本を原作にした同名の映画が公開されます。ということで、まず、出版社のサイトから本のあらすじを引用すると以下の通りです。

この小説が、韓国社会を震わせた。現実の性虐待事件を描く戦慄のベストセラー!
その学園は、偽善と倒錯のるつぼ(トガニ)だった――障害児学校に赴任した若き教師カン・インホが見たのは、想像を絶する光景だった。無垢な生徒を次々に襲う残虐な魔手。告発に立ち上がったインホたちを阻む権力の壁。子どもたちに救いの日は来るのか? 韓国の警察、政治をも動かした衝撃のサスペンス。

切ない小説です。引用にある通り、聴覚障害者の学校における性的暴行・虐待事件を赴任したばかりの30代半ばの新任教師の目から描いています。基本的にノンフィクションの小説ですが、実際の事件を取材したドキュメンタリーに近い内容を含んでいると受け止められているようです。性的暴行・虐待事件の告発から始まって、裁判の終了まで、息もつかせぬ緊迫感あふれる展開です。そして、容易に想像される通り、決してハッピーエンドで終わるわけではありません。虐げられし者たちの正義は富裕層に鉄槌を下すことが出来ません。その意味で読後感はよくないと感じる読者がいるかもしれません。しかし、韓国社会の現実はこんなものなのであろうという気もします。それにしても、「前官礼遇」という慣例にはびっくりしました。明らかに「法の下の平等」に反していると私は考えます。純粋な宗教という意味ではなく、エスタブリッシュメントが集まる場所という意味で、キリスト教の教会が韓国で果たす役割も微妙なものがあると感じざるを得ませんでした。

経済社会の不公平や不平等を感じるエコノミストの観点からは、先週のエントリーで紹介したスティグリッツ教授の『世界の99%を不幸にする経済学』に重なって読み切ってしまいました。世の中は決して公平でも公正でも平等でもないというニヒリズムに落ちようとは思いませんが、New York Yimes"Strong Yen Is Dividing Generations in Japan" という記事を掲載するのも理由のあることかもしれません。

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2012年8月 2日 (木)

内村航平選手、金メダルおめでとう!

体操個人総合において、我が国期待の内村航平選手がブッチギリで優勝しました。今までのところ、もっとも印象的なメダルではなかったでしょうか?

誠に遅ればせながら、
内村選手、金メダルおめでとう!

お生まれは福岡県らしいですが、体操を始めたのは長崎県諫早市とか。私もいささか土地勘のあるところですが、自分が金メダルをとったような気分になって郷土愛に打ち震える人々が目に浮かびます。

がんばれニッポン!

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和田監督の若手選手起用に大きな疑問ありでヤクルトにボロ負け!

  HE
ヤクルト200100002 5100
阪  神000000000 041

今日のスタメンを見て愕然としました。昨日の試合で先制のホームを踏んだ上本内野手の名前がありません。8回ウラの代走しか出番がなく、とうとう打席に立ちませんでした。次打者の平野選手が初球を打ち上げて見せ場もなくチェンジでした。先日も、伊藤隼外野手がスタメン入りして2安打しながら、その翌日はスタメンから外されるという残念な若手選手起用を見ました。これでは、若手選手のモチベーションは上がりそうにありません。というか、和田監督の下では若手を育てようという意図もなく、タイガースを強くしようという能力はないのかもしれません。ベテラン選手の方もほとんど無条件で使ってもらえるんですから、若手選手と競争して向上心を育む必要がありません。まさか、オリンピックの女子バドミントンみたいに、何らかの意図があって、故意に負けに行っているわけでもないでしょうし、和田監督は何を目指してチームを指揮しているんでしょうか。

和田監督の指揮下では今年はもちろん来年もダメでしょう。昨年までの真弓監督よりも酷い気がします。私は完全に諦めました。阪神を応援する甲斐がありません。

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5年振りの増加に転じた日本政策投資銀行調査による設備投資計画をどう見るか?

昨日は帰りが遅くなって、取り上げるのが今日になりましたが、日本政策投資銀行から「全国設備投資計画調査」の結果が発表されています。資本金10億円以上と定義される大企業の2012年度国内設備投資額は、製造業が+19.1%増、非製造業が+8.6%増と、とも増加し全産業で+12.2%増と5年振りの増加となっています。まず、日経新聞のサイトから調査結果のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

12年度の設備投資計画、12.2%増 海外は31.5%増、政投銀調べ
日本政策投資銀行が1日発表した設備投資計画調査によると、2012年度の大企業・全産業の設備投資額は前年度実績と比べて12.2%増の15兆9853億円となった。前年度まで投資を抑制した反動に加え、老朽化した設備の維持・補修などが増え、5年ぶりの増加を見込む。この時期としては3年連続の増加計画で、増加率は2006年度以来の高水準となった。
製造業は19.1%増加。投資動機に占める比率は「維持・補修」が24.9%と過去最高となり、「新製品・製品高度化」「合理化・省力化」も上昇した。一方、「能力増強」は25.1%と02年度以来の水準にとどまった。業種別では自動車、化学、建設機械が増加し、電気機械が減少した。非製造業は8.6%増で、卸売・小売り、運輸、電力の増加が目立った。
海外設備投資額は31.5%増だった。製造業では自動車がけん引役となり、関連する産業も増えた。非製造業は資源関連の投資が増加した。
調査は6月20日まで資本金が10億円以上の企業3277社を対象に実施。有効回答社数は2214社(67.6%)だった。

続いて、リポートの p.2 図表2 国内設備投資増減率推移を引用すると以下の通りです。赤い折れ線の大企業全産業の設備投資計画が前年度比プラスとなるのは2007年度以来5年振りとなっており、特に青い折れ線の製造業が高い伸びとなっていることが読み取れます。伸び率ではなく実額で見ると、2214社ベースで国内設備投資計画は15兆9853億円に上ります。

国内設備投資増減率推移

2012年度の設備投資の特徴として、リポート p.3 で3点ほど指摘していますが、特に注目すべき点は、国内設備投資は能力増強のウェイトが縮小する一方で、維持・補修のウェイトが上昇していることが上げられます。特に製造業ではその傾向が強くなり、2012年度の製造業における投資動機を見ると、能力増強と維持・補修がいずれも約25%で肩を並べています。業種別ではエコカー補助金に支えられた自動車に関係する産業が増加する一方で、サッパリ売れなくなったテレビや電機の関連産業が落ち込んでいます。当然です。

国内設備投資と海外設備投資の関係

上のグラフはリポート p.13 の図表12 国内設備投資と海外設備投資との関係及び図表13 海外/国内設備投資比率を引用しています。製造業全体では昨年度2011年度も今年度2012年度も国内よりも海外設備投資の方が伸び率が高くなっており、海外/国内設備投資比率を見ても、製造業全体で海外投資は国内の半分を超え、自動車などは国内投資と海外投資がほぼ拮抗する規模に増加していることが読み取れます。非製造業を含めた全産業ベースでも2012年度の計画では海外/国内設備投資比率は37.2%に達します。
伸び率だけを見ても実感がわかないかもしれませんので、伸び率と実額を合わせて把握すると、2012年度における国内設備投資の伸び率+12.2%増、15兆9853億円に対して、海外設備投資は+31.5%増、3兆8997億円に上ります。国内設備投資の調査対象が2214社に対して海外は1127社ですから、調査対象のベースが異なりますが、大雑把に国内16兆円、海外4兆円の投資規模ということになります。当然、海外設備投資の伸びの方が大きくなっており、リポートだけからでは判然としませんが、ひょっとしたら、業種によっては国内投資を超える海外投資を実行している業種もあるのかもしれません。基本的には、日本国内よりも新興国や途上国の方が相対的に資本が希少ですから資本のレンタル・プライスが高いことは明らかですが、我が国産業の生産性が低いことと換算率である為替レートの円高が進行していることの2つの要因により海外投資が進んでいると考えるべきです。

同じ生産要素でも、資本と労働では国境を越えたモビリティが格段に異なります。この差を埋めることが出来るのは自由貿易です。TPPもそのひとつかもしれません。しかし、自由貿易の下では、生産関数が同じという強烈な前提は必要ですが、ヘクシャー・オリーン定理により要素価格が均等化しますので、資本のレンタル・プライスが上昇して賃金が低下する方向に進む可能性があります。これは国内の不平等が拡大する可能性を示唆しています。

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2012年8月 1日 (水)

話題のビッグデータに関する本を読む

『ビッグデータの衝撃』と『ビッグデータ革命』と『ビッグデータ戦略』

昨年から今年にかけて話題となっているビッグデータに関する本を3冊ほど読みました。上の通りです。私が読んだ順に左から並んでいます。発売順とは異なります。すべて図書館で借りましたので、予約の順番が回って来た順だったりします。リンクを含むリスト項目は以下の通りです。

Google の MapReduce あたりから始まったビッグデータの活用なんですが、現時点では Hadoop により広範な応用分野で実用化されています。主としてビジネスのマーケティングなどと私は理解していますが、今日取り上げた本では「ビッグデータとは何か」といった基礎的な常識論から始まって、Google をはじめ、Amazon、Facebook、Twitter、Zyngaなどなど、ビッグデータをビジネスに実際に活用している企業も紹介されていたりしています。日本では野村総研がこの方面に詳しいと見なされているようで、上の画像の左2冊は野村総研により書かれています。しかし、いわゆるシステム部門を持つ「総研」と呼ばれるシンクタンク、すなわち、野村総研をはじめ、大和総研、三菱総研、みずほ総研などはビッグデータに取り組んでいますし、ベンダーのNECや富士通なども積極的な姿勢を見せていると報じられていたりします。ノホホンと構えているのはお役所だけかもしれません。
もちろん、ビジネスシーンでビッグデータが活用されるのは理由のあることなんですが、私としては今年2月27日付けのエントリーで取り上げたワッツ教授の『偶然の科学』で書いたように、ビッグデータを活用すれば、観測値を増やすことにより、モデルを複雑にしてもなお正確なパラメータが得られるのであれば、未来の予測に役立つ可能性がある、と考えています。繰返しになりますが、私が考えるように、何らかの初期値があって確率的に微分方程式に沿って時間が流れているとすれば、それを「アカシック・レコード」を呼ぶかどうかは別にして、また、初期値の微小な変更によるバタフライ効果を無視できると仮定すれば、未来の予測は可能です。ただ、実際問題として、バタフライ効果は無視しえないと思いますし、未来の予測にしてもピンポイントの予測ではなく、未来に起こりえる何らかの事象の確率分布だろうという気はしますので、ホントに微分方程式がバックグラウンドに存在すると考える必要があるかどうかは少し疑問が残らないでもありません。

いずれにせよ、現状ではビジネスユース中心で進むビッグデータの活用なんですが、行政や学術の分野での取組みもいずれは始まるでしょうし、未来の予測に関して画期的な技術革新が生まれることを期待しています。

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