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2012年8月 3日 (金)

孔枝泳『トガニ』(新潮社) を読む

孔枝泳『トガニ』(新潮社)

孔枝泳『トガニ』(新潮社) を読みました。翻訳は北朝鮮に拉致されていた蓮池薫さんで、副題は『幼き瞳の告発』とされています。「トガニ」とはるつぼの意味だそうです。幅広い劇場でのロードショーではありませんが、明日からこの本を原作にした同名の映画が公開されます。ということで、まず、出版社のサイトから本のあらすじを引用すると以下の通りです。

この小説が、韓国社会を震わせた。現実の性虐待事件を描く戦慄のベストセラー!
その学園は、偽善と倒錯のるつぼ(トガニ)だった――障害児学校に赴任した若き教師カン・インホが見たのは、想像を絶する光景だった。無垢な生徒を次々に襲う残虐な魔手。告発に立ち上がったインホたちを阻む権力の壁。子どもたちに救いの日は来るのか? 韓国の警察、政治をも動かした衝撃のサスペンス。

切ない小説です。引用にある通り、聴覚障害者の学校における性的暴行・虐待事件を赴任したばかりの30代半ばの新任教師の目から描いています。基本的にノンフィクションの小説ですが、実際の事件を取材したドキュメンタリーに近い内容を含んでいると受け止められているようです。性的暴行・虐待事件の告発から始まって、裁判の終了まで、息もつかせぬ緊迫感あふれる展開です。そして、容易に想像される通り、決してハッピーエンドで終わるわけではありません。虐げられし者たちの正義は富裕層に鉄槌を下すことが出来ません。その意味で読後感はよくないと感じる読者がいるかもしれません。しかし、韓国社会の現実はこんなものなのであろうという気もします。それにしても、「前官礼遇」という慣例にはびっくりしました。明らかに「法の下の平等」に反していると私は考えます。純粋な宗教という意味ではなく、エスタブリッシュメントが集まる場所という意味で、キリスト教の教会が韓国で果たす役割も微妙なものがあると感じざるを得ませんでした。

経済社会の不公平や不平等を感じるエコノミストの観点からは、先週のエントリーで紹介したスティグリッツ教授の『世界の99%を不幸にする経済学』に重なって読み切ってしまいました。世の中は決して公平でも公正でも平等でもないというニヒリズムに落ちようとは思いませんが、New York Yimes"Strong Yen Is Dividing Generations in Japan" という記事を掲載するのも理由のあることかもしれません。

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