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2012年9月14日 (金)

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第1部 事件』(新潮社) を読む

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第1部 事件』(新潮社)

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第1部 事件』(新潮社) を読みました。我が国読書界の最大の売れっ子作家のひとりの最新長編です。5年振りの現代ミステリだそうです。8月下旬に『第1部 事件』が、9月に『第2部 決意』が、10月に『第3部 法廷』がそれぞれ刊行されます。まず、出版社の特設サイトから作品紹介を引用すると以下の通りです。

その法廷は十四歳の死で始まり偽証で完結した。五年ぶりの現代ミステリー巨編!
クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した十四歳。その死は校舎に眠っていた悪意を揺り醒ました。目撃者を名乗る匿名の告発状が、やがて主役に躍り出る。新たな殺人計画、マスコミの過剰報道、そして犠牲者が一人、また一人。気づけば中学校は死を賭けたゲームの盤上にあった。死体は何を仕掛けたのか。真意を知っているのは誰!?

次に、同じく出版社の特設サイトから、『第1部 事件』発生直後の人物相関図を引用すると以下の通りです。よく知られた通り、宮部作品は登場人物が多くて人間関係が入り組んでいるため、私も読み始めたころはこの人物相関図を頼りにしていたりしました。もっとも、小説の一番最初に登場する商店街のおじいさんはこの図には含まれていません。

『ソロモンの偽証』人物相関図

さすがの宮部作品で、読み始めた途端にグイグイと小説の世界に引き込まれます。ものすごい迫力です。700ページ余りのぶ厚い本ですから、さすがに一気読みは難しい気もしますが、ものすごく短期間に読み切ってしまう読書子が多そうです。私もこれだけ一気に読んだのはハリー・ポッターの最終巻『死の秘宝』以来だという気がします。しかし、宮部作品はスティーヴン・キングの作品などとともに、世界の文学作品の中でも極めて精緻な構成となっていますので、コア部分だけでなく周辺情報も頭に入れておかねば読書の楽しみが半減してしまいます。
中学生が校舎から転落して死亡するというショッキングな事故/事件を中心に物語が進みます。いわゆる「いじめ」の問題も含んでおり、『英雄の書』と一部に通ずるところもあります。北朝鮮並みに閉鎖的かつ隠蔽体質で平気で嘘をつき事なかれ主義の教育現場、死亡した生徒の両親の自殺との見立てで捜査が及び腰になる警察、匿名の告発状を入手して正義感を振りかざして取材するメディアの記者、そして、何よりも城東三中の生徒とその保護者の揺れ動く心、これらを余すところなく描き切っています。ある意味で、フィクションなんですからリアリティを求めるのは筋違いですが、昨今のいじめによる中学生の自殺などの報道を目にして、あり得る話だとも考えられます。もちろん、全3部まで読まないと全貌は明らかになりませんが、期待を裏切らないものと予想しています。
作品紹介の出版社の特設サイトから推測する限り、この『第1部 事件』は1990年12月のクリスマスのころから、明けて1991年6月ころまで、『第2部 決意』が承前の1991年6月から8月まで、最後の『第3部 法廷』が1991年8月15日からの5日間、という構成になっているようで、単位時間当たりのページ数で測ると物語のスピードは落ちることになりますが、おそらく、実際に読み進むとスピード感は上がって行くんだろうと思います。『第3部 法廷』の内容紹介の最後は「驚天動地の完結編!」となっています。

『第1部』を読み終えた時点で疑問が残るのが、第1に、タイトルの「ソロモン」な何なのか、第2に、どうして1990-91年のバブル経済最末期を舞台にしているのか、の2点です。宮部みゆきやよしもとばなななどは確かにバブル期にデビューした女性作家ではありますが、物語の中で時代背景が何らかの必然性を発揮するんだろうと思います。それから、「ソロモン」と来れば私のような想像力貧困な人間は「指輪」なんですが、ユダヤの王であるソロモンに何の意味があるのか、全3分を読み通せば明らかになるんだろうと思います。

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