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2012年9月28日 (金)

政府統計の集中発表日に景気動向を考える!

今日は月末最後の営業日で閣議日でしたので、多数の政府統計が発表されています。すべて8月の統計で、このブログで取り上げる順に、経済産業省から鉱工業生産指数、総務省統計局から失業率、厚生労働省から有効求人倍率などの雇用統計、経済産業省から商業販売統計、総務省統計局から消費者物価などです。まず、とても長くなってしまうんですが、日経新聞のサイトから各統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

企業生産、中国減速で鈍る 景気回復遅れ懸念も 鉱工業生産指数8月1.3%低下
経済産業省が28日発表した8月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は90.5と前月比1.3%低下した。中国経済の減速を背景に部品や素材などの生産が鈍った。日中関係の悪化も重荷で、主要業界は9月以降も低調で推移すると見込む。経産省は基調判断を「弱含み傾向」と下方修正した。景気が回復基調に戻る時期が遅れるとの懸念が出ている。
経産省が基調判断を引き下げるのは2カ月ぶりで「弱含み」の表現は2010年11月以来。前月は「横ばい」だった。生産指数の悪化は2カ月連続。下げ幅はエコノミスト予想(0.4%)を上回った。下げをけん引したのは電子部品・デバイスだ。8月は改善を見込んでいたが、中国で生産する携帯電話向けの液晶素子や集積回路を中心に5.2%減と2カ月連続で悪化した。
日本の輸出に占める中国向けの割合は2割で、米国を上回って最大の輸出先だ。中国の工場に部品や素材を送り、そこで組み立てた製品を世界に輸出している。だが中国は欧州向け輸出の減少を受けて生産が減速しており、日本製部品に対する需要が低下している。
情報通信機械(6.4%減)や化学工業(2.2%減)のほか、輸送機械工業も輸出の減少とエコカー補助金の終了をにらんだ減産が響いて0.4%減となった。生産指数は16業種のうち11業種で低下した。
鉱工業全体の出荷指数は0.4%上昇と4カ月ぶりのプラス。電子部品・デバイスも出荷は5.0%増と2カ月ぶりに増えた。だが先月までに在庫が積み上がっており、生産増にはつながっていない。全体の在庫指数は1.6%低下した。
経産省は主要業界の生産計画をまとめた製造工業生産予測調査も発表した。9月の生産は2.9%減と8月より落ち込み、10月も9月から横ばいのまま回復しない。輸送機械工業が9月も引き続き減産し、中国を含むアジア向け輸出が落ち込んでいる鉄鋼も減産を余儀なくされる。
中国で広がった反日デモの影響が長期化すれば、生産活動に大きな影響を与えるのは必至だ。トヨタ自動車など自動車各社は一斉に現地工場の減産に踏み切った。これが長引けば、日本からの部品供給をさらに押し下げる。中国では日本製品の不買運動もくすぶり、影響が自動車以外に広がる可能性もある。
失業率4.2%に改善 8月、雇用情勢なお厳しく
総務省が28日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント改善し、4.2%となった。2カ月ぶりの改善だが、職探しをあきらめた失業者の増加が主因とみられ、雇用環境が回復したとは言い難い。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は0.83倍で前月と同水準だった。
完全失業者(季節調整値)は272万人で、前月に比べ10万人減少した。一方で職探しをしていない非労働力人口は4563万人と20万人増えた。総務省は「労働市場から退出する動きがあったようだ」と分析する。
製造業の就業者数(実数)は1012万人で29万人減り、減少幅は前月よりも拡大した。大手電機メーカーが人員削減計画を発表しており、厚労省は「雇用情勢は持ち直しているが、依然厳しい」との判断を維持した。
厚労省の職業紹介状況によると、雇用の先行指標となる新規求人数は前月比0.1%減の74万人だった。電子部品メーカーなどの生産抑制を背景に製造業で減少傾向が続いている。新たに仕事を探し始める新規求職者数が減った影響で、新規求人倍率は0.02ポイント上昇し、1.33倍となった。
8月の小売販売額、2カ月ぶりプラス 自動車販売が押し上げ
経済産業省が28日発表した8月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆1410億円と前年同月に比べて1.8%増えた。プラスは2カ月ぶり。エコカー補助金の効果で自動車小売業が19.6%増え、全体を押し上げた。加えて、猛暑で衣料やビール類、清涼飲料水など夏物商材の販売も好調で、下支え要因に働いた。
百貨店やスーパーを含む大型小売店は0.1%減の1兆5565億円だった。既存店ベースは0.9%減と5カ月連続のマイナスになった。このうち百貨店は0.8%減。夏物衣料は伸びた一方、時計など高額商品の販売が減った。スーパーは0.9%減。野菜価格の下落やサンマやウナギの不漁などが影響した。
コンビニエンスストアは3.1%増の8672億円だったが、既存店ベースは1.4%減と3カ月連続のマイナスだった。イベントチケット販売などのサービス売上高が減った。
消費者物価、4カ月連続下落 テレビ・冷蔵庫下がる
総務省が28日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除いたベースで99.6となり、前年同月比0.3%下落した。下落は4カ月連続。薄型テレビや冷蔵庫などの落ち込みが続いた。
テレビが7.1%下落したほか、冷蔵庫も29.6%下がった。ガソリン価格は前月比でみると1.4%上昇したが、前年同月比では6.0%下落した。航空料金にかかる燃油サーチャージの引き下げで外国パック旅行価格が8.5%下がった。宿泊料は昨年夏が震災の影響で下落していた反動で7.7%上昇した。
先行指標となる東京都区部の9月のCPI(中間速報値)は、生鮮食品を除く総合指数が99.3と前年同月比0.4%下がった。下落は41カ月連続。東京電力の電気料金引き上げで電気代が14.7%上昇したが、民営家賃やエアコン、テレビなどが下落した。

次に、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財です。いずれも季節調整済の系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産の推移

前月比で▲0.4-0.5%との市場の事前コンセンサスを超えて、生産は▲1.3%減と▲1.0%減を記録した7月に続いて、8月もかなり大きな減産となりました。引用した記事では、日中関係の悪化に伴う中国向けの輸出の鈍化が減産の主因として上げられています。部品や素材を中心に減産が続いていますので、中国に起因することはかなり確度が高いと私も受け止めています。さらに、製造工業生産予測指数では、前月比で見て9月▲2.9%減、10月0.0%と、引き続き、生産は弱い動きが続くと予想されています。国内要因ではエコカー補助金の終了、海外要因では欧州のソブリン危機と中国の停滞に加えて米国の「財政の崖」がマイナスに作用し、プラスに働くのは復興需要だけです。しかし、我が国でも赤字国債法案成立の見通しが立たず、米国と同様の「財政の崖」に直面する可能性もあります。このまま景気後退局面に入るとは私は想定していませんが、先行きは必ずしも明るくなく、日本経済は踊り場に入ると覚悟すべきです。

雇用統計の推移

次に、雇用統計は上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数が上から3パネルで、一番下のパネルはかなり長期で見た就業率、すなわち、就業者数が労働力人口と非労働力人口の合計に占める比率です。いずれも季節調整済の系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。8月の統計を見ると、遅行指標の失業率は改善したものの、就労を諦めたことによる労働市場からの退出が主因であり、決して前向きの失業率低下とはいえません。さらに、一致指標の有効求人倍率は横ばいとなり、先行指標の新規求人数はグラフを見る限りではすでに反転している可能性すらうかがえます。雇用統計も生産と同じで景気動向の改善を示しているとはとても考えられません。加えて、雇用については量が改善しても、非正規雇用が増加するという意味で、質の改善が伴っていない可能性が指摘されています。量とともに質も改善しないと所得を通じて消費の拡大につながらない可能性が残ります。

商業販売統計の推移

消費についても、決してサステイナブルではないエコカー補助金による政策効果と猛暑効果で増加を示しているに過ぎません。季節調整していない原系列の小売販売額は8月の統計で前年同月比+1.8%増を示しましたが、うち、自動車販売が+1.96%の寄与を示しており、エコカー補助金が9月21日に終了したことから、生産の方でも自動車は減産を見込んでおり、消費でも今後はエコカー補助金によって増加した反動が出て、自動車販売はマイナスに寄与し始めることが予想されます。従って、8月統計の小売販売の増加はあくまで一時的な現象と評価すべきです。

消費者物価上昇率の推移

最後に、消費者物価は相変わらずデフレが続いています。ここ数か月の間、エネルギー価格からのインフレ圧力がかなり和らいでいたんですが、8月は少しエネルギーの寄与度が大きくなりました。しかし、中国経済の減速などを反映して、国際商品市況は早くも下がり気味となっており、物価を押し上げる圧力はかなり弱まっています。国内需要がインフレ圧力を増すことは考えられないことから、デフレ基調で、かつ、商品価格に左右される物価が続くものと私は考えています。

目先、年内から場合によっては来年1-3月期くらいまで、日本経済は明るい展望をひらけず、踊り場が続く可能性が高いと私は考えています。そのまま景気後退局面に入るとは想定していませんが、海外要因、特に中国と米国の景気動向次第で可能性はゼロではありません。日本の「財政の崖」も懸念されるところです。

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