深尾光洋『財政破綻は回避できるか』(日本経済新聞社) を読む
深尾光洋『財政破綻は回避できるか』(日本経済新聞社) を読みました。当然ながら、表題の問いに対して財政破たんは回避できるとも、回避できないとも結論していませんが、何となく興味ひかれるタイトルです。まず、出版社のサイトから本書の紹介を引用すると以下の通りです。
財政破綻は回避できるか
財政危機に陥ったギリシャより、はるかに高い水準にある日本の借金。どのくらい厳しい状態なのか、破綻すると何が起こるのか、回避できるのかといった論点から、日本経済が直面している現実と課題を浮き彫りにする。
次に本書の章別構成は以下の通りです。
- はじめに
- 第1章
- 財政破綻は回避できるか
- 第2章
- 欧州財政危機の教訓
- 第3章
- 財政再建と経済成長を両立できるか
- 補論
- ゼロ金利下における金融政策の有効性
実は、日本経済研究センターのセミナーが9月19日に開催され、この本の著者を講師に招いて、タイトルと同じテーマを取り上げています。セミナーバックナンバーがあるんですが、日本経済研究センターの会員でないと配布資料がダウンロードできません。誠に残念。
最初に、我が国財政の概況を定量的に示すとともに、欧州PIIGS諸国のソブリン危機の解明を試み、最終的には日本の財政破綻の可能性を考えたり、実際にあり得る財政破綻のシナリオを示しています。私自身は財政破綻の可能性は低いと楽観しているんですが、この本では日本とPIIGS諸国の違いについて、財政のグロスの債務水準は日本の方が大きいものの、対外純資産は日本の方が圧倒的に大きく、インフレ率を反映した金利水準が低いなど、いくつか考慮すべき差を列挙しています。その上で、あり得る財政破綻のシナリオを示しています。すなわち、引き金は国債から外貨資産を含む他の資産への資金シフトと指摘し、貯蓄投資バランスに起因して経常収支が赤字化することに伴う円安と株高からバブル的な景気が出現し、インフレ上昇が生じるとすればタイミングよく増税することにより財政破綻が避けられる可能性があるものの、インフレ上昇に伴う金利水準の上昇から国債価格の暴落と国債を保有する銀行破綻に至る、と指摘しています。私が従来から疑問に感じているサドンデスか真綿で首を絞めるような緩慢な進行かは明記されていません。この財政破綻を防止するため、炭素税の導入とその財源を利用した法人税減税による成長促進、ハイレベルの知的移民の受入れなどが取り上げられています。なお、いくつか財政の先行き試算が示されていますが、かなりナイーブな仮定計算のレベルを超えるものではなく、「シミュレーション」と呼ぶには少しためらいが残るような気がします。
日本経済新聞社からこの本とともに、鈴木亘『年金問題は解決できる!』などがソフトカバーでシリーズのような形で出版されています。他は読んでいないのでよく分かりませんが、この『財政破綻は回避できるか』については内容的にも分量的にも新書相当の印象があり、お値段が少し高いと受け止めています。だからというわけでもないですが、私は図書館で借りました。
| 固定リンク
コメント