法人企業統計に見る我が国企業の業績はやや鈍化の兆しか?
本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が発表されました。季節調整済みの系列で足元を見ると、売上高、経常利益、設備投資などの企業業績はやや鈍化しつつあります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
4-6月期設備投資7.7%増 法人企業統計 金属製品など伸び
財務省が3日発表した4-6月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比7.7%増の8兆3092億円となり、3四半期連続で増えた。東日本大震災後に落ち込んだ前年の反動があり、自動車用の金属製品などの投資が伸びた。全産業の経常利益は2四半期連続で増加。エコカー補助金の効果があった自動車がけん引した。
資本金1000万円以上の企業の状況をまとめた。財務省は企業部門の動向について「欧州の政府債務危機を巡る不確実性が依然高いなか、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動が、日本の景気を下押しするリスクとなっていることには留意する必要がある」としている。
産業別の投資動向では、製造業のうち、金属製品が自動車向け金型などへの投資を増やした。製薬工場の新設があった化学も伸びた。一方、鉄鋼は新興国経済の減速に伴い、先行きの需要が不透明とみて投資を減らした。非製造業ではスマートフォン関連の投資が拡大している情報通信の増加が目立った。
ソフトウエアを除く全産業の設備投資額の季節調整値は前期比0.5%減だった。結果は内閣府が10日に発表する4-6月期の国内総生産(GDP)改定値に反映する。
全産業の売上高は313兆3008億円で前年同期比1.0%減。資源価格の下落を背景に商社が全体を押し下げた。経常利益は12兆6461億円で11.5%増。自動車の増益が目立った。生産力の回復にエコカー補助金の効果が重なったほか、北米向けが好調だった。
財務省が併せて発表した2011年度の法人企業統計によると、企業の設備投資は金融業と保険業を除く全産業で前年度比0.7%増の33兆3165億円だった。設備投資の増加は2年ぶり。売上高は全産業で0.3%減と2年ぶりの減収だった一方、経常利益は3.5%増で2年連続の増益だった。
年度ベースは280万社が対象で、四半期ベース(107万社対象)よりもカバー範囲が広い。
次に、法人企業統計のヘッドラインとなる売上高と経常利益、設備投資のグラフは以下の通りです。季節調整済みの系列をプロットしており、影をつけた部分は景気後退期です。上に引用した日経新聞の記事は季節調整していない原系列の統計に基づいていますので、少し印象が異なるかもしれません。

法人企業統計のヘッドラインを季節調整していない系列の前年同期比と季節調整済みの系列の前期比で並べると、売上高が前年同期比▲1.0%減、前期比▲2.5%減、経常利益が前年同期比+11.5%増に対して前期比▲2.5%減、さらに、ソフトウェアを除く設備投資は前年同期比+6.6%増に対して前期比で▲0.5%減と、震災の影響の残る昨年4-6月期と比較すれば伸びているように見えるものの、足元の前期比では軒並みマイナスを記録し、減収減益となっています。足元で明らかに企業業績は鈍化しつつあると考えるべきです。特に、設備投資は水準から見ても低い状態が続いており、統計的に確認できるわけではありませんが、国内投資よりも海外投資が進んでいる可能性を否定できません。もちろん、国内投資が振るわない大きな原因は為替の円高が進んでいることです。また、海外経済動向を見る限り、企業業績の減速は今後も続くと覚悟すべきです。

さらに、上のグラフは季節調整していない原系列の統計から擬似的に労働分配率と損益分岐点比率を算出しています。労働分配率は後方4四半期移動平均で傾向を見ると、昨年2011年1-3月期を底に年内いっぱいは上昇しましたが、今年2012年の1-3月期から4-6月期にかけて低下を示しており、この労働分配率の低下は雇用環境改善の下地が出来つつあることを示唆していると私は受け止めています。企業業績はかなり減速しつつあるものの、雇用が改善して消費に結びつけば、さらに息の長い景気拡大につながる可能性が高まります。
最後に、この法人企業統計などを受けて、来週月曜日の9月10日に4-6月期の2次QEが公表されます。法人企業統計だけを見る限り、やや下方修正されると私は予想しています。
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