ロムニー候補とオバマ大統領のテレビ討論の結果やいかに?
去る10月3日に米国大統領選挙の候補者である現職の民主党オバマ大統領と共和党ロムニー候補の間で第1回の米国大統領選挙テレビ討論会がコロラド州のデンバーで開催されました。広く報じられている通り、オバマ大統領自身が負けを認め、ロムニー候補の印象がオバマ大統領を上回ったと受け止められています。いくつかのメディアも簡単な世論調査を実施し、例えば、CNN のサイトでは「67%がロムニー氏の勝利」と報じられ、また、ロイターのサイトでも「ロムニー氏の好感度上昇」と結論されています。メディアの簡略な調査結果ではなく、もっと詳細な分析を待っていたところ、米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから10月8日に "Romney's Strong Debate Performance Erases Obama's Lead" と題する調査結果が発表されました。長くなりますが、まず、リポートの最初の4パラが概要になっていますので引用すると以下の通りです。
Romney's Strong Debate Performance Erases Obama's Lead
Mitt Romney no longer trails Barack Obama in the Pew Research Center's presidential election polling. By about three-to-one, voters say Romney did a better job than Obama in the Oct. 3 debate, and the Republican is now better regarded on most personal dimensions and on most issues than he was in September. Romney is seen as the candidate who has new ideas and is viewed as better able than Obama to improve the jobs situation and reduce the budget deficit.
Fully 66% of registered voters say Romney did the better job in last Wednesday's debate, compared with just 20% who say Obama did better. A majority (64%) of voters who watched the debate describe it as mostly informative; just 26% say it was mostly confusing.
In turn, Romney has drawn even with Obama in the presidential race among registered voters (46% to 46%) after trailing by nine points (42% to 51%) in September. Among likely voters, Romney holds a slight 49% to 45% edge over Obama. He trailed by eight points among likely voters last month.
The latest national survey by the Pew Research Center for the People & the Press, conducted Oct. 4-7 among 1,511 adults, including 1,201 registered voters (1,112 likely voters), finds that 67% of Romney's backers support him strongly, up from 56% last month. For the first time in the campaign, Romney draws as much strong support as does Obama.
ということで、次に、ここ1年ほどの支持率の推移のグラフをリポートの p.7 Romney's Favorability Improves, Matches Obama's から引用すると以下の通りです。
隠し撮りされたロムニー候補の「47%発言」のビデオが先月9月半ばに明らかにされ、失言により支持率を下げていたんではないかと我が国では考えられていたところ、米国内での受止めはまた違っていて、ピュー・リサーチ・センターでは Romney's '47%' Comments Criticized, But Many Also Say Overcovered との世論調査結果を明らかにしていたりしました。上のグラフからも明らかな通り、今年3月時点に今までで最大の差をつけて以来、ここ何か月かは10%ポイントくらいの差でオバマ大統領がリードしていたものの、今回の世論調査ではわずかながらロムニー候補が逆転しました。もちろん、テレビ討論会の結果だけが逆転の要因ではないでしょうし、調査時点が引用にもあるように10月4-7日で、失業率が大幅に低下した雇用統計発表の10月5日をはさんでいますので、わずかな差でもありますから、にわかにロムニー候補が有利になったとは断定できませんが、リポートのタイトル通り、今までの差がテレビ討論会で吹っ飛んだ可能性はあります。
両候補の支持層が直近の9月から10月にどのように変化したかをリポートの p.10 Patterns of Voter Support, September - October から引用すると上の表の通りです。極めて大雑把にいって、もともと、オバマ大統領は女性、若年層、黒人、低所得者を支持層としていたんですが、10月になって一部に変化が見られます。すなわち、黒人と低所得層のオバマ大統領に対する支持は揺るがないものの、ロムニー候補は女性からの支持でオバマ大統領に並び、男性の支持をさらに積み上げる一方、50歳未満の若年ないし中年層でロムニー候補がオバマ大統領を逆転し、年収30,000ドル以上の中ないし高所得層でも同じくロムニー候補がオバマ大統領を逆転しました。コアなオバマ支持層を除いてロムニー支持に動いていると評価すべきか、反対から見て、コアなオバマ支持層は動かないと見るべきか、私は専門外なのでよく分かりませんが、全体としてロムニー支持が広がっているのは確かなようです。
結論として、第1回テレビ討論会の評価をリポートの p.11 Assessing the First Debate から引用すると上の表の通りです。政党支持別に見ても、ほぼ40-50%がテレビ討論会をすべて視聴し、一部を含めると60%超の国民が見たとの結果が示されています。おおむね「有益だった」と評価され、そして何よりも、70%を超える圧倒的な多数がロムニー候補の「勝利」と結論しています。共和党支持者はいうに及ばず、わずかな差ながら民主党支持者ですらオバマ大統領よりもロムニー候補の方が「勝利」したと受け止めています。これが支持率の逆転につながったのはいうまでもありません。
最後に、米国時間の昨夜、ケンタッキー州のダンビルで副大統領候補によるテレビ討論会が行われました。メディアではほぼ互角と報じられています。ただし、これもピュー・リサーチ・センターの Biden Viewed Unfavorably, Divided Opinions about Ryan と題するテレビ討論前の事前の世論調査によれば、民主党のライアン副大統領候補の方が好意的に受け止められているようです。
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