毎月勤労統計に見る景気局面やいかに?
本日、厚生労働省から9月の毎月勤労統計が発表されました。景気に敏感な所定外労働時間は減少を続けていますが、賃金の低下はストップしました。また、夏季ボーナスについての統計も同時に発表されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
製造業の残業時間4.2%減 9月、2カ月連続マイナス
厚生労働省が31日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報)によると、製造業の残業時間などの所定外労働時間(事業所規模5人以上)は前年同月比4.2%減った。減少は2カ月連続。製造業の所定外労働時間は足元の景気動向を示す。最大の輸出先である中国の景気減速などを背景に、生産活動が縮小していることが響いた。
製造業の所定外労働時間は前月比でも2.4%減った。前月比でマイナスとなるのは3カ月連続だ。中国の景気減速で日本の輸出、生産は弱含んでいる。製造業は新規求人も減少しており、雇用・所得環境の悪化が個人消費の下押し要因となる恐れがある。
残業時間の減少は給与にも表れ始めた。所定外給与は前年同月比0.8%減の1万7764円となった。前年同月の水準を下回るのは、2011年8月以来13カ月ぶり。基本給や家族手当を含む労働者1人あたりの「所定内給与」は24万3502円で、前年同月比で横ばいだった。
同時に発表した12年の夏季賞与(ボーナス)は前年比1.4%減の35万8368円だった(従業員5人以上の事業所)。夏としては2年連続で前年を下回った。冬も含めると、10年の冬季賞与以降4回連続で前年実績を下回った。最も減少幅が大きかったのが建設業で、12.5%減の33万9109円だった。
次に、いつもの所定外労働時間と賃金のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる所定外労働時間指数の季節調整値をプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。下は季節調整していない原系列の現金給与総額指数とそのうちの所定内賃金指数のそれぞれの前年同月比上昇率をプロットしています。
上のグラフの所定外労働時間を見ている限り、昨夜のエントリーの続きですが、所定外労働時間の下降線が1年ほど続けば景気後退期と見なすべきだという気がします。2008-09年のサブプライム・バブル崩壊の際の期間ほどではなくても、2001年ITバブル崩壊のころくらいの期間の下降線が続けば、景気後退期と考えるべきでしょう。2004-05年の踊り場とはハッキリ違います。そのひとつの分かれ目は来年1-3月期だろうと私は考えています。来年1-3月期に景気が盛り返せば、今年2012年の停滞は「踊り場」でいいような気もします。下降期が12か月に達するかどうかがひとつの目安と私は考えています。来年9月までに総選挙があるハズなんですが、政治的な観点から恣意的な判断が下されるべきではありません。
本日の毎月勤労統計では今年の夏季ボーナスの結果も公表されています。産業別の統計は上のグラフの通りです。調査産業計でわずかに前年比マイナスとなりました。注目すべきは電気・ガス業です。電気代の値上げが取りざたされていて、メディアの報道にも見受けられるところ、電気・ガス業の夏季ボーナスは前年比で増加しており、水準的にも調査産業の中でもっとも高く70万円を超えています。この統計は値上げを目論んでいる電力会社の他にも含まれている業種があるんでしょうが、電力会社におけるコスト引下げの余地がまだまだ大きいと受け止める向きも少なくないと私は想像しています。
雇用や賃金については、ライシュ教授の『暴走する資本主義』にもある通り、民主主義を支える市民としては正規雇用を増やして賃金を上げる方向が望ましいんですが、資本主義の中で生き残りを図る投資家や消費者としては非正規雇用を余儀なくし低賃金を求めがちになってしまいます。悩ましいところです。
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