楡周平『修羅の宴』(講談社) を読む
楡周平『修羅の宴』(講談社) を読みました。バブルの期間の大阪の銀行や商社を舞台にした経済小説です。最後のページの参考文献にはイトマンの本が何冊か上げてあります。まず、出版社のサイトから本書の内容紹介を引用すると以下の通りです。
内容紹介
「この城は俺の物。絶対に渡さない」
時代が人を狂わせるのか、人が時代を狂わせるのか。
高卒銀行マンは禁断の“錬金術”に手を出した――。
バブル期に大銀行から出向し、専門商社社長になった高卒の男。その城に居座るには結果を出し続けるしかなかった。未踏のビジネスを開拓し、頭取からの汚れ仕事を引き受け伸し上がる。地価も株価も天井知らずな狂乱の時代に蠢く、金だけを追い求める修羅たち。その宴は次第に、決して招いてはいけない男たちに巣くわれていく。
楡周平ならでは筆致で迫る、剥き出しの人間ドラマ。
面白かったです。第1に、バブル経済について実にリアルに描写しています。バブル経済を知らない若い学生諸君に、私はこれまで2007年公開の映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」をオススメしていたんですが、この本がいいです。地上げや狂乱状態となった不動産価格、NTT株の公開などの経済現象のほか、ディスコで踊り狂うようなワンレン、ボディコンの女性、タクシーがつかまらないなどの社会現象まで、幅広くムリなく取り込んでいます。第2に、高卒と大卒の軋轢が見事に描かれています。私が属している政府ではキャリアとノンキャリアというように試験区分で分類される一方で、民間会社では学歴で区分する場合が多く、キャリアの公務員である私が言うのもナンですが、高卒と大卒の役割分担と高卒から見た不公平感は永遠のテーマかもしれません。それが物語にムリなく取り込まれています。
経済小説のジャンルでは、最近は、『下町ロケット』で直木賞を受賞した池井戸潤さんの作品をかなり読んで、楡周平さんの作品は初めて読みました。他の作品も初期のピカレスク小説『Cの福音』くらいしかタイトルを知りません。たしかにこの作品は面白かったですが、この先もこの作者の作品を読むかどうかは微妙なところです。
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