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2012年10月11日 (木)

機械受注と消費者態度指数から先行き経済を占う!

本日、内閣府から8月の機械受注と9月の消費者態度指数が発表されました。いずれも先行指標であり、機械受注は設備投資の、消費者態度指数は消費の、それぞれの先行きを占う上で重視されています。いずれも季節調整済みの系列で見て、電力と船舶を除くコア機械受注は前月比▲3.3%減の7173億円、消費者態度指数も前月から▲0.4ポイント低下して40.1となりました。これまた、いずれも先行きに不透明感が漂っている気がします。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、3カ月ぶりマイナス 8月は3.3%減
内閣府が11日発表した8月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比3.3%減の7173億円となり、3カ月ぶりに減った。前月まで続いた大型案件がなくなり、製造業でマイナスとなった。海外経済の減速で不透明感が強まり、企業が設備投資に慎重になっている。
内閣府は機械受注の基調判断を「一進一退で推移している」として、3カ月連続で据え置いた。市場予想は2.3%減だった。
製造業は15.1%減と2009年11月以来の下げ幅になった。8月は100億円以上の大型受注がなく、内閣府は「けん引役が見あたらない」と指摘している。前月に大型の受注が入った鉄鋼業や石油製品・石炭製品が落ち込んだ。非製造業は船舶と電力を除くベースで3.6%増。金融業・保険業や運輸業・郵便業から電子計算機などの受注が増えた。
民需以外では外需が14.7%減と大幅なマイナス。6月末時点の7-9月は予測を大きく下回る可能性が高い。官公需も防衛省からの受注が減っており、8月の受注総額は12.6%減の1兆6573億円と、09年8月以来の低水準だった。
メリルリンチ日本証券の吉川雅幸氏は「中国経済を中心に外部環境が不透明になっており、企業は設備投資を手控えている」と分析。投資額がさらに減少する可能性は低いが、強い伸びも期待しにくいと予想している。
9月の消費者態度指数、2カ月ぶり悪化 企業の人員削減報道で
内閣府が11日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は40.1と前月から0.4ポイント低下した。悪化は2カ月ぶり。調査期間中にあった大企業の業績不振や人員削減などを含む経営再建に関する報道が消費者心理に悪影響を及ぼした。
業績悪化を背景にした人員削減の動きが、大手電機メーカーに加えて大手小売りでも広がったとの報道を手掛かりに「雇用環境」は前月から1.0ポイント低下した。エコカー補助金が終了を迎えたことなどから「耐久消費財の買い時判断」も0.6ポイント低下した。
9月は残暑が続いたことで秋物商品の売れ行きは鈍く、「暮らし向き」は0.1ポイント低下と小幅に下がった。一方で、8月の現金給与総額が4カ月連続で増えるなど「収入の増え方」については0.1ポイント上昇した。
内閣府は消費者心理の基調判断を「弱含みとなっている」で維持した。しかし、活発な消費が一部にとどまるなど「消費者は生活防衛的になっている」といい、先行きに対しては慎重にみている。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合は62.3%と2カ月連続で増える一方、「低下する」と答えた割合も6.4%に増加した。ガソリン価格がにわかに上昇しているなか、豊作で生鮮食品価格の下落を反映したとみられる。
調査は全国6720世帯が対象。調査基準日は9月15日で、有効回答数は5032世帯(回答率は74.9%)だった。

次に、いつもの機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは電力と船舶を除く民需のコア機械受注とその後方6か月移動平均を、下のパネルは需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

機械受注の推移

8月のコア機械受注は6-7月の前月比プラスの後のリバウンドという要素もあり、特に悲観する必要はないと思いますが、上のグラフを見ても、ほぼ横ばい圏内の動きを示しており、統計作成官庁である内閣府の基調判断「一進一退で推移」もうなずけます。大型案件が途切れたことと、すでに下降局面に入ったように見える製造業の引合いが大きく減少したことが直接の減少要因です。コア機械受注には入りませんが、先行指標である外需も世界経済の停滞のために今年に入ってから大きく減少して来ています。決して悲観する必要はないものの、グラフを見る限り、今年年央にコア機械受注はピークアウトした可能性すらあり、先行きが増加に転じる要素はほとんどないと考えるべきです。

機械受注(官公需)の推移

コア機械受注の外ながら機械受注のうち官公需の動きをプロットしています。上のグラフの通りです。引用した記事の「防衛省からの受注」に関して、私は疑問を感じており、詳細にな情報は入手していませんが、今年2012年3月から官公需の機械受注が急激に増加を示したのは復興需要であろうと私は考えています。そして、早くも復興需要に基づく官公需の機械受注がピークアウトした可能性が高いと受け止めています。最近のメディアの報道でも、復興予算が震災復興とは関係の薄い事業にも手当てされており、批判が高まっていることは周知の通りです。このブログでは、すでに、7月18日付けのエントリーで原田泰『震災復興欺瞞の構図』(新潮新書) を取り上げた際に、過大な震災復興予算について何らかの「役人の悪だくみ」と示唆していたりします。復興需要に基づく機械受注の官公需も先行き増加する可能性は低いと考えるべきです。

消費者態度指数の推移

消費者態度指数のコンポーネントである暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断の4項目のうち、特に雇用環境が前月から▲1.0ポイントと大きく低下しています。引用した記事にもある通り、シャープの業績不振や人員整理の報道が雇用のマインドに影響した可能性があります。消費は所得とマインドで決まる部分が大きいと私は考えていますが、消費者態度指数で見たマインドについてはほぼ横ばい圏内の動きといえます。統計作成官庁である内閣府も基調判断は「弱含み」で据え置いています。この先の消費が力強く増加する気配は感じられません。

私は今でも日本経済がこのまま景気後退局面に入るとは考えていませんが、先行きが明るいハズもなく極めて不透明な中、景気後退局面入りする可能性は高まっているのかもしれません。

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