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2012年10月 1日 (月)

日銀短観に見る企業マインド悪化は景気後退局面入りの前触れか?

本日、9月調査の日銀短観の結果が発表されました。統計のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査の▲1から▲3に悪化しました。3期振りの悪化です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

景況感3期ぶり悪化 日銀9月短観、外需関連冷え込む
日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は3四半期ぶりに悪化した。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス3になり、6月の前回調査から2ポイント悪化した。一方、大企業非製造業の業況判断DIはプラス8で、前回調査から横ばい。海外経済の減速で自動車など輸出企業の悪化が目立った一方、内需関連企業は底堅さを保った。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。企業からの回答の基準日は9月11日で、同日までに7割弱が答えている。尖閣諸島の国有化を巡って9月中旬から激化した中国の反日デモの影響はあまり反映されていない公算が大きい。
大企業の業種別の業況判断DIをみると、全28業種中、12業種の景況感が悪化した。製造業では自動車が前回よりも13ポイント低いプラス19と大幅に悪化した。エコカー補助金による政策効果の息切れや輸出減速を反映したとみられる。生産用機械、鉄鋼も2ケタの悪化幅になるなど、輸出企業の悪化が目立った。
一方、非製造業は東日本大震災の復興需要を背景に、建設が7四半期連続で改善したほか、不動産や宿泊・飲食サービスも改善。足元の内需の底堅さを裏付けた。
業況判断DIの3カ月先の見通しは、大企業製造業が今回調査から横ばいのマイナス3を予想。大企業非製造業は3ポイント低いプラス5と、6四半期ぶりの悪化を見込んでおり、個人消費など内需の持続力にやや不安を残す内容になった。
2012年度の設備投資計画の前年度比増減率は、製造業、非製造業ともに前回調査からほぼ横ばい。大企業製造業は前回調査から0.1ポイント下方修正されて12.3%増と、9月調査時点で6年ぶりの高い伸びを維持した。非製造業は0.3ポイント上方修正の3.3%増だった。

続いて、いつもの産業別・規模別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

日銀短観業況判断DIの推移

日経QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが▲4でしたので、ほぼジャストミートしました。また、先行きは予想が▲5だったところ、実績では▲3と出ました。実績がやや強めに出たわけですが、ひとつには中国要因が十分に織り込まれていなかった可能性があります。すなわち、調査基準日が9月11日の尖閣諸島の国有化当日でしたので、その後の大規模なデモなどが明らかになる前に回答した企業が多い可能性が高いんではないかと考えられます。いずれにせよ、想定の範囲内の景況感の悪化、ないし、心配していたほど悪くはないが、決して楽観できる内容ではない、との評価になろうかと私は考えています。復興需要による下支えはあるものの、世界経済の減速から輸出が低迷し、国内でもエコカー補助金の終了により政策効果が剥落しますから、当然ながら、製造業をはじめとして、足元から目先の企業マインドは緩やかに悪化する方向にあることが統計的に確認されたと私は受け止めています。日本経済が踊り場入りすることは確実な一方で、このまま景気後退局面に入るかどうかはそれほど確率は大きくない、と見込まれます。

日銀短観設備・雇用判断DIの推移

上のグラフは生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIをプロットしています。設備判断はほぼ改善がストップしました。他方、雇用判断は大企業では過剰感の払拭にブレーキがかかりましたが、中堅・中小企業では相変わらず雇用不足感が出始めており、大企業も含めて、雇用意欲は決して低くないと私は受け止めています。ただし、雇用の質については明らかではありません。パートや派遣などの非正規雇用に不足感が出ているのかもしれません。

日銀短観設備投資計画の推移

上のグラフは2007年度以降の設備投資計画について調査時点でソートした推移です。9月調査では6月調査の+6.2%とほぼ同水準の+6.4%と集計されました。設備判断DIがまだ10を少し超えるくらいの水準で推移しているにもかかわらず、わずかとはいえ設備投資計画が上方修正されたのは利益計画に起因すると私は受け止めています。すなわち、大企業全産業で見て経常利益は昨年度の▲9.1%の減益から今年度はゼロに戻し、当期純利益では+43.2%の大幅な増益が見込まれています。

もうすぐ東京で開催される IMF・世銀総会を前に、国際通貨基金 (IMF) から「世界経済見通し」 World Economic Outlook の 分析編 Analytical Chapters の第3章と第4章が公表されています。第3章では財政赤字に、第4章では新興国経済に、それぞれ焦点を当てています。国際機関のリポートに着目するのは、私のこのブログの特徴のひとつなんですが、今日は帰りが遅くなったこともあり、日を改めて取り上げたいと思います。

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