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2012年10月30日 (火)

生産統計と雇用統計から現下の景気局面を考える

本日、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ発表されました。いずれも9月の統計です。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産4.1%低下 9月、3カ月連続マイナス
経済産業省が30日発表した9月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整値)は86.5と、前月比4.1%低下した。3カ月連続で低下した。欧州や米国向けの自動車が減少したほか、反日デモが広がった中国向けの自動車部品が落ちこんだ。経産省は基調判断を「低下傾向にある」と前月から引き下げた。
判断の下方修正は2カ月連続となる。前月は「弱含み」としていた。
生産指数は全16業種のうち15業種で悪化した。輸送機械は12.6%減と5カ月連続でマイナス。中国では9月中旬から拡大した反日デモで日系企業の自動車生産が止まり、中国向けの部品供給が落ちこんだ影響が出ている。国内でもエコカー補助金の終了による生産調整も響いた。
鉄鋼は5.3%減った。米国と中国向けの自動車用鋼材が減少した。一方、電子部品・デバイスは2.4%増と3カ月ぶりにプラス。中国向けのスマートフォン(高機能携帯電話)用の集積回路が増えたためだ。鉱工業生産全体の出荷は4.4%低下した。
同日発表された製造工業生産予測調査は10月の生産が前月比1.5%マイナス、11月が1.6%のプラスだった。前月時点での10月の予測は横ばいだったが、下方修正された。鉄鋼が自動車向けの需要悪化を受けて計画を引き下げている。輸送機械は10月に1.7%増を見込んでいる。
有効求人倍率3年2カ月ぶり低下 9月0.81倍、失業率は横ばい
厚生労働省が30日発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は0.81倍で前月から0.02ポイント悪化した。前月を下回ったのは2009年7月以来、3年2カ月ぶり。製造業の新規求人数が大きく減った。総務省が同日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は4.2%で前月比横ばいだったが、完全失業者は1万人増えた。景気の減速が雇用にも波及し始めた。
雇用の先行きを映すとされる新規求人倍率は、1.24倍で前月比0.09ポイント低下した。産業別に新規求人数をみると、医療・福祉や情報通信業は前年同月比で2ケタ増で堅調だったが、製造業は11.3%の大幅減だった。
自動車や電子機器などの製造業は就業者数でも前年同月と比べ32万人減り、1005万人だった。中国の景気減速を背景に、自動車を中心に国内製造業の生産活動が低下していることが背景にあるとみられる。厚労省は「雇用情勢は持ち直しているが、依然として厳しい」との基調判断を維持した。
失業率は景気動向が遅れて反映されることもあり、9月は前月比横ばいだった。ただ9月の完全失業者(季節調整値)は273万人で、前月に比べ1万人増えた。先行指標の有効求人倍率や新規求人倍率が悪化したため、総務省は「来月以降の動きを注意深く見る必要がある」と指摘した。
職探しをしていない「非労働力人口」は前月に比べ9万人減の4554万人。一方で就業者数は6269万人と前月比6万人増えており、非労働力人口からの流入がみられた。ただ就業者数は男性が14万人増えた一方、女性は8万人減り、男女差が広がった。男性は東日本大震災からの復興需要などで堅調な建設業に就いたとみられる。

続いて、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済の系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産指数の推移

鉱工業生産指数は季節調整済みの前月比で▲4.1%減と3か月連続の減産となりました。▲3%程度の減産との市場の事前コンセンサスを下回り、生産の停滞はかなり大きいと考えるべきです。9月の生産統計では16業種のうち15業種で減産となり、特に、押下げ寄与が大きかったのは輸送機械、一般機械、鉄鋼となっています。輸送機械とはいわずと知れた自動車なんですが、国内的にはエコカー補助金の終了、国際的には中国に起因する部分が大きいと考えています。すなわち、そもそも中国経済の減速に加え、尖閣諸島の領土問題に伴うデモや不売運動なども影響していると受け止めています。加えて、引用した記事にもある通り、10-11月の生産も決して強いとはいえず、引き続き、中国をはじめとする海外経済の停滞に伴って生産は弱い動きを示すと見込まれます。

雇用統計の推移

生産で減産が続くことから雇用も弱い動きとなっています。遅行指標である失業率こそ先月から横ばいでしたが、先行指標の新規求人数と一致指標の有効求人倍率は悪化しました。上のグラフの通りです。9月調査の日銀短観でも、大企業では過剰感の払拭にブレーキがかかりましたし、生産の低下に伴って徐々に労働市場でも需給バランスが悪化に転じ始めている可能性があります。

在庫循環図

ということで、本日発表の鉱工業生産統計から在庫循環図を書くと上の通りです。2012年7-9月期は黄色の左向きの矢印にまで下がって来ており、45度線を越えて、x軸も突き破って大きく進んでしまいました。内閣府のサイトにある「鉱工業の在庫循環図と概念図」に従えば、この景気局面はすでに山を越えて在庫調整・在庫減らし局面に入っていることになります。この点については、本日発表の雇用統計でも裏付けられているといえます。すでに、このブログの10月17日付けのエントリーで取り上げていますが、以下のように、シンクタンクや金融機関のリポートでも、すでに景気後退局面に入ったとする見方が広がっていることも確かです。私自身は現時点で景気後退局面にすでに入っているとの確信はありませんが、その逆の材料もなく、何とも判断に窮するところです。ただ、年明けくらいから景気が上向くとすれば「踊り場」で済ませていいと思うんですが、年が明けても景気が下降ないし停滞したままだと今年3-4月くらいを谷に「景気後退局面」に入っていた、と後付けで判断することになろうかと思います。どうしても景気判断は遅れがちになります。

日銀政策委員の大勢見通し

最後に、本日の日銀金融政策決定会合にて資産買入等基金の規模を11兆円増やし91兆円とするなど、追加の金融緩和が決定されるとともに、「展望リポート」の基本的見解部分が公表されています。リポート p.18 にある日銀政策委員の大勢見通しは上の表の通りです。成長率見通しも物価見通しも軒並み下方修正されています。特に、2014年度のコア消費者物価上昇率が、消費税率引上げの影響を除いて、1%に届かない点は注目すべきと受け止めています。また、日銀総裁と経済財政大臣・財務大臣との連名による「デフレ脱却に向けた取組について」との連名文書を明らかにしています。日銀白川総裁の記者会見要旨を読んでも、この文書の趣旨が私には判然としません。そのうちに情報収集したいと思います。

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