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2012年11月13日 (火)

OECDの超長期経済見通し Looking to 2060 を読む

やや旧聞に属する話題ですが、先週金曜日の11月9日に経済開発協力機構 (OECD) から「2060年の経済予想」 Looking to 2060 が発表されました。副題は Long-term growth prospects for the world となっています。まず、リポートの Abstract/Résumé を引用すると以下の通りです。

Abstract/Résumé
This report presents the results from a new model for projecting growth of OECD and major non-OECD economies over the next 50 years as well as imbalances that arise. A baseline scenario assuming gradual structural reform and fiscal consolidation to stabilise government-debt-to GDP ratios is compared with variant scenarios assuming deeper policy reforms. One main finding is that growth of the non-OECD G20 countries will continue to outpace OECD countries, but the difference will narrow substantially over coming decades. In parallel, the next 50 years will see major changes in the composition of the world economy. In the absence of ambitious policy changes, global imbalances will emerge which could undermine growth. However, ambitious fiscal consolidation efforts and deep structural reforms can both raise long-run living standards and reduce the risks of major disruptions to growth by mitigating global imbalances.

何しろ、約50年先までの超長期見通しなんですが、読む前から明らかな点もいくつかあります。例えば、後にグラフを示しますが、中国が世界一の経済大国になり、OECD加盟34国と主要新興国8国の購買力平価のGDP合計における日本のシェアが2010年の7%から徐々に低下します。多くの日本人が直感的にしろホンワカと理解している将来像にかなり近いという気がします。ということで、今夜のエントリーでは、リポートからいくつかグラフを引用したいと思います。

Contribution of drivers of growth to annual average GDP per capita growth 2000-2011

まず、p.12 Figure 1. Scope for catch-up in productivity and human capital in many countries の B: Contribution of drivers of growth to annual average GDP per capita growth 2000-2011 を引用したのが上のグラフです。タイトルの通り、2000年から2011年までの1人当たりGDPの成長に対する労働、資本、生産性の寄与をプロットしています。そもそも、この期間で日本は1人当たりGDPの成長が極めて小さいんですが、このグラフでも労働と生産性がマイナスの寄与を示している一方で、資本はプラスに寄与しています。特に注目すべきは、量的な労働はマイナスの寄与ながら、質的な人的資本はこのマイナスを打ち消すほどのプラスを示していることです。繰返しになりますが、このグラフは将来推計ではなく2000年から2011年の実績です。

Educational attainment will increase over time

次に、p.19 Figure 6. Educational attainment will increase over time を引用しています。すなわち、量的に労働が減少して行く中で、質的な人的資本により生産性を補うとすれば教育がひとつのキーポイントになるとい私は考えており、先ほどの成長率のグラフでは我が国はイタリアに次いでほぼ左端に位置していたんですが、上のグラフのように成人が学校に通う年数を1970年時点、2010年時点、2060年時点でプロットすると、日本は右から6番目に来ます。現在の文部科学大臣が大学の数が多過ぎると考えているかどうかは私には不明ですが、大学の質はともかく、一般論として、教育年限が長いことは生産性に何らかのプラスの効果を有する可能性が高いと考えるべきです。

Multi-factor productivity tends to converge across countries over 2011-2060

次に、p.21 Figure 8. Multi-factor productivity tends to converge across countries over 2011-2060 を引用しています。少し話が元に戻りますが、このリポートはいかにもバロー教授などが提唱したような「収れん理論」に基礎を置いています。すなわち、1人当たりGDPで代理させている所得水準が高い国では所得の伸びは低く、逆に、所得水準の低い国では伸びが高くなり、長い目で見れば世界各国の所得水準は一定の範囲に収れんする方向に向かう、との理論です。ということで、上のグラフのように、縦軸に生産性の伸びを取り、横軸に生産性の水準を取れば、右下がりの負の相関を有するグラフが現れます。このグラフの中の日本に位置を見ると、生産性の水準はそれほど高くないのに、伸びはかなり低い、というように見受けられます。

Convergence in GDP across countries is mainly driven by education and productivity improvements

さらに、p.22 Figure 9. Convergence in GDP across countries is mainly driven by education and productivity improvements を引用しています。先行きの2011年から2060年のシナリオにおける推計されたGDP成長率への労働と資本と生産性の寄与をプロットしています。またしても、日本は成長率が低いので左から3番目に位置しているんですが、生産性と人的資本による成長への寄与は他の先進国と比べても遜色ないことが読み取れます。資本蓄積は各国とも長期にはほぼ成長に中立でしょうし、労働、すなわち、人口の減少が我が国経済の最大のネックになっているのかもしれません。

There will be major changes in the composition of global GDP

ということで、メディアが大いに取り上げている結論となる p.23 Figure 10. There will be major changes in the composition of global GDP のグラフが上の通りです。最初に書いたように、OECD加盟34国と主要新興国8国の購買力平価のGDP合計における日本のシェアは2010年の7%から2030年4%、2060年3%と低下します。逆に、中国やインドはシェアを拡大します。直感的に多くの日本人が理解している将来像に近く、このGDPシェアの低下を何としても避けなければならないと考えている日本人は多くないと私は受け止めています。むしろ、1人当たりのGDPで代理されている所得の豊かさのような指標とか、このリポートではほとんど取り上げられていない幸福度などの指標が日本では政策目標のひとつに取り入れられるべきであると考える日本人は少なくないと想像しています。

Global imbalances are projected to rise over the next two decades

結論までたどり着いてしまったので、最後の上のグラフはオマケなんですが、p.27 Figure 14. Global imbalances are projected to rise over the next two decades を引用しています。国際的な対外不均衡は2030年まで拡大し、後に縮小に向かうと想定されています。世界に占める相対的な経済規模が縮小することもあり、日本の経常収支不均衡は、2020年以降、ほとんど世界に影響を及ぼさなくなります。日本が貿易摩擦などに巻き込まれるのは過去の20世紀的な出来事だったのかもしれません。

国際機関のリポートを取り上げるのは、このブログのひとつの特徴なんですが、今夜のリポートは余り新味もなく、日本人であれば直感的に思い描いている世界経済の将来像に近い姿を示しているのではないかと私は受け止めています。

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